JP2778345B2 - Di缶用電気錫めっき鋼板の製造方法 - Google Patents

Di缶用電気錫めっき鋼板の製造方法

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JP2778345B2
JP2778345B2 JP4095872A JP9587292A JP2778345B2 JP 2778345 B2 JP2778345 B2 JP 2778345B2 JP 4095872 A JP4095872 A JP 4095872A JP 9587292 A JP9587292 A JP 9587292A JP 2778345 B2 JP2778345 B2 JP 2778345B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、主として、ドローイ
ング・アンド・アイアニング成形(以下、DI成形とい
う)即ち絞りしごき成形加工によって製造するドロウン
・アンド・アイアニング缶(以下、DI缶という) 用の電
気錫めっき鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属板からなる缶体の製造に当たり、DI
成形加工によって製造されるDI缶は、他の方法によって
製造される缶よりも、1缶当たりの金属板使用量が少な
くて済むことから、他の方法と比較して、缶の製造コス
トが安価である利点を有している。このようなDI缶は、
従来、ビールや炭酸清涼飲料等のように、その充填物自
体が、缶の内部から缶壁に対し圧力を加えるいわゆる内
圧缶のみにしか使用することができなかったが、最近で
は、窒素充填法による内圧付加技術の開発により、上述
したビールや炭酸清涼飲料等に限らず、幅広い充填物に
対しての使用が可能になってきたため、その需要は年々
増加している。
【0003】現在、DI缶用の金属板としては、電気錫め
っき鋼板またはアルミニウム合金板が使用されている。
電気錫めっき鋼板は、アルミニウム合金板に比べて安価
であるので、電気錫めっき鋼板で作られたDI缶の需要の
伸びが期待されている。
【0004】電気錫めっき鋼板は、次のような工程によ
って製造される。冷延鋼板を、脱脂し次いで焼鈍し、次
いで、焼鈍された鋼板を調質圧延する。このようにして
焼鈍および調質圧延が施された鋼板を電気錫めっきライ
ンに移送し、電気錫めっきラインにおいて、上記鋼板に
電気錫めっき処理を施して、鋼板の表面上に、所定量の
錫めっき層を形成する。
【0005】上述した各工程間においては、製造計画や
物流の関係によって、鋼板を、一時コイル状にして保管
する場合が生ずる。このような、コイル状の鋼板の移
送、保管等にかかるコストは、無視し得ない割合を占め
る。
【0006】電気錫めっき鋼板の製造に際し、製造工程
から生ずる上述した問題を解決する手段として、特開平
3−177597号公報および特開平3−207887号公報には、
リフロー処理を施さない電気錫めっき鋼板の製造方法に
おいて、連続焼鈍工程、調質圧延工程および電気錫めっ
き工程を連続化することにより、電気錫めっき鋼板の表
面上に存在する酸化膜が錫めっき面に与える影響を排除
し、耐食性および付着性の優れた電気錫めっき鋼板を製
造する方法(以下、先行技術という)が開示されてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】先行技術のような各工
程の連続化は、電気錫めっき鋼板の製造コストを低減す
る上において極めて有効である。しかしながら、単に各
工程を連続化させただけでは、それによって品質の優れ
た電気錫めっき鋼板を製造し得ても、その設備が長大化
するために、実際の操業管理上からは現実的ではない。
【0008】電気錫めっき鋼板の製造工程中、調質圧延
は、鋼板の機械的性質、形状安定性を確保する上におい
て、必要不可欠の工程であり、先行技術においては、鋼
板に対する調質圧延を、めっき工程の前に施している。
従って、先行技術においては、調質圧延後、めっき処理
を施す前に、調質圧延時に不可避的に発生した鉄粉を除
去するための処理工程が必要である。更に、調質圧延
を、調質圧延液を使用した湿式で行った場合には、鉄粉
の除去と共に調質圧延液を除去するための処理工程が必
要である。鋼板に対し、このような除去処理を施さない
と、めっき浴中に鉄粉が蓄積する。その結果、めっき浴
中の鉄イオンの増加や、めっき浴の循環配管中に設けら
れたフィルターの目ずまり、更に、不清浄な表面に起因
するめっき不良等の問題が発生する。
【0009】工程の連続化のために、上述した鉄粉また
は鉄粉および調質圧延液の除去処理工程のための設備
を、めっき工程の前に設置することは、設備が長大化す
るばかりではなく、操業管理面、スペース面、および、
設備の建設費やランニングコスト等の経済面から多くの
問題がある。
【0010】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決し、電気錫めっき鋼板を、各工程が連続した一貫
ラインで製造するに際し、調質圧延によって生ずる鉄粉
または鉄粉および調質圧延液の除去のための処理工程を
不要となし、これによって、製造工程を簡略化し、設備
およびコストの低減を図ることができる、主としてDI缶
用の品質の優れた電気錫めっき鋼板を安価に製造し得る
方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段〕本発明者等
は、上述した問題を解決すべく鋭意研究を重ねた。その
結果、次の知見を得た。 電気錫めっき鋼板を、連続した一貫ラインで製造す
るに際し、鋼板に対する調質圧延をめっき工程の後に行
えば、従来必要とされていた、調質圧延によって生ずる
鉄粉または鉄粉および調質圧延液の除去のための処理工
程を不要となし、製造工程を簡略化することができる。 鋼板に対する調質圧延を錫めっき工程の後に行え
ば、鋼板に形成された錫めっき層の固体潤滑作用によっ
て、調質圧延の際の圧延負荷を低減することができる。 【0012】 この発明は、上記知見に基づいてなされ
たもので、冷延鋼板を、連続的に脱脂、連続焼鈍し、次
いで、連続焼鈍された前記鋼板を酸洗した上、酸性電気
錫めっき浴中において、上記工程と連続的に電気めっき
して、前記鋼板の表面上に、前記鋼板の片面当たり0.1
〜2.8 g/m2の量の電気錫めっき層を形成し、次いで、こ
のように電気錫めっき層が形成された前記鋼板を、上記
工程と連続的に、1%超4%以下の圧延率で調質圧延す
ることに特徴を有するものである。
【0013】
【作用】この発明においては、連続焼鈍された鋼板は、
酸洗後、酸性電気錫めっき浴中において電気めっきさ
れ、その後に調質圧延が施される。このように、鋼板に
対する電気錫めっきは、鋼板に対する調質圧延の前に行
われるので、従来の、めっき工程の前に調質圧延を行っ
ていた場合のように、調質圧延時に生ずる鉄粉または鉄
粉および調質圧延液の除去のための処理工程は不要にな
る。
【0014】めっき工程の前に行われる酸洗は、鋼板の
表面上に存在する酸化物等を除去するために行われるも
のであるが、この発明において、酸洗すべき鋼板は、連
続焼鈍直後のものであるから、酸化物等の生成は極めて
少なく、従来のように、めっき前の滞留によってその表
面上に多量の酸化物等が生成している鋼板ではない。従
って、上述した、鉄粉または鉄粉および調質圧延液の除
去のための処理工程に比べて、格段に軽度の酸洗で済
む。
【0015】電気錫めっき手段は、通常のフェロスタン
浴、ハロゲン浴等の酸性電気錫めっき浴を使用する従来
の方法でよい。
【0016】 鋼板に対する調質圧延は、電気錫めっき
された鋼板に対して施されるので、錫めっき層の固体潤
滑作用により、調質圧延時の負荷が軽減され、1%超4
%以下の低圧延率で調質圧延することができる。更に調
質圧延時に鉄粉が発生することはなく、調質圧延機の圧
延ロールの寿命は伸び、ロールスタンドの組み替え頻度
も低減する。また、通常では、調質圧延液を使用しなけ
れば圧延ができないような、1%超4%以下の圧延率の
調質圧延も、錫めっき層の固体潤滑作用により、調質圧
延液を使用せずに行うことができる。
【0017】湿式の調質圧延が必要な場合には、調質圧
延液として、脂肪酸エステル系の油脂を使用することが
有効である。脂肪酸エステル系の油脂は、通常、電気錫
めっき鋼板の表面上に塗布される防錆潤滑油である。従
って、調質圧延後、めっき鋼板の表面上にこの油脂が残
留していても、そのまま防錆潤滑油として機能するの
で、これを除去する必要はない。
【0018】 上述したように、冷延鋼板を、連続的に
脱脂し次いで連続焼鈍し、次いで、連続焼鈍された鋼板
を酸洗後、上記工程と連続的に電気錫めっきし、次い
で、電気錫めっき層が形成された鋼板を、上記工程と連
続的に調質圧延することにより、従来、めっき工程の前
に行われていた、調質圧延時に生じた鉄粉または鉄粉お
よび調質圧延液の除去のための処理工程は不要になっ
て、製造工程を簡略化することができる。更に、鋼板の
表面上に形成された錫めっき層の固体潤滑作用により、
調質圧延時における圧延負荷が軽減され、1%超4%以
下の低圧延率で調質圧延することができ、鉄粉の発生も
ない等、工程の連続化によるメリットを最大限に発揮さ
せることができる。
【0019】上記のようにして製造された電気錫めっき
鋼板のうち、乾式で調質圧延が施された鋼板に対して
は、必要に応じてクロメート処理を施すことが有効であ
る。このようにクロメート処理を施すことによって、錫
めっき層の耐酸化性、一次防錆性、塗料密着性等を改善
することができる。なお、クロメート処理の手段は、通
常行われている一般的な方法でよい。
【0020】上述したクロメート処理を施さず、また
は、クロメート処理を施した後に、電気錫めっき鋼板の
表面上に、通常使用されている防錆潤滑油を塗布しても
よい。このように、防錆潤滑油を塗布することによっ
て、一次防錆性を高めることができると同時に、その潤
滑作用によって、めっき鋼板の取扱い時等における疵の
発生を防止することができる。なお、調質圧延液とし
て、脂肪酸エステル系の油脂を使用し湿式で調質圧延し
た場合に、めっき鋼板の表面上にこの油脂が残留してい
てもこれを除去する必要はなく、そのまま防錆潤滑油と
して機能することは、前述した通りである。
【0021】この発明において、鋼板の表面上に形成さ
れる電気錫めっき層のめっき量は、鋼板の片面当たり0.
1 〜2.8 g/m2の範囲内であることが必要である。上記め
っき量は、DI缶用の鋼板として要求されている、鋼板に
所定の防錆性および潤滑性を付与するための必要量であ
る。めっき量が、鋼板の片面当たり0.1 g/m2未満では、
鋼板に所定の防錆性および潤滑性を付与することができ
ず、且つ、調質圧延時に、錫めっき層の有する固体潤滑
作用を発揮させることができない。一方、めっき量が、
鋼板の片面当たり2.8 g/m2を超えても、より以上の効果
は得られず、不経済である。
【0022】乾式で調質圧延が施された電気錫めっき鋼
板に対して、クロメート処理を施す場合における、クロ
メート処理手段は、以下に述べるような、通常行われて
いる方法でよい。即ち、DI缶用の電気錫めっき鋼板の場
合には、重クロム酸ナトリウムの水溶液中に電気錫めっ
き鋼板を浸漬するか、または、電気錫めっき鋼板を陰極
として電解処理することにより、電気錫めっき層の上
に、クロム酸化物層からなるクロメート被膜を形成す
る。また、必要に応じて、無水クロム酸を主成分とする
水溶液中において、電気錫めっき鋼板を陰極として電解
処理することにより、電気錫めっき層の上に、金属クロ
ム層とクロム酸化物層とからなるクロメート被膜を形成
する。
【0023】本発明においては、上述したように、鋼板
に対し錫めっき後に調質圧延を施すが、このように、錫
めっき後に調質圧延を施すことは、従来行われていな
い。その理由は、錫めっき後、調質圧延を施すことによ
り、鋼板の表面上に形成された錫めっき層に剥離や破損
等が生じて、その耐食性が劣化する懸念があったためで
ある。
【0024】 例えば、所望の薄さと高強度を得るため
の圧延を2回行うDR(Double Reduced) 錫めっき鋼板
の製造方法として、2回目の圧延の前に錫めっきを施す
方法があった。この方法の場合には、2回目の圧延の影
響で、錫めっき層に劣化が生ずるという問題があった。
しかしながら、この圧延の場合の圧延率は、20〜50% に
及ぶものであって、調質圧延のような数%の圧延率では
ない。本発明者等の経験によれば、鋼板に対し、錫めっ
き後に、1%超4%以下の低圧延率で調質圧延を施して
も、錫めっき層が劣化する問題は生じない。
【0025】また、上記のようなDR錫めっき鋼板が製
造されていた当時は、その主たる用途は、内面が無塗装
で使用される缶用であった。これに対し、本発明によっ
て製造される電気錫めっき鋼板の主たる用途はDI缶であ
る。DI缶は、DI成形加工時に錫めっき層が極めて薄く引
き延ばされる結果、下地の鋼板が露出する場合が多い。
そのために、成形された缶の内面には、通常塗装によっ
て塗膜が形成され、この塗膜によって耐食性が保持され
る。従って、万一、調質圧延による影響が錫めっき層に
生じても、その耐食性は、上述した塗膜によって保持さ
れるから、問題は生じない。
【0026】この発明の方法によって製造される電気錫
めっき鋼板の用途は、主として、製造コストが安く経済
的に有利なDI缶であるが、DI缶以外の、例えば、DTR(Dr
awn& ThinRedrawn)缶、DRD(Drawn & Redrawn)缶または
内面塗装を施して使用される3ピース缶等に使用しても
問題はない。
【0027】次ぎに、この発明を、実施例により、比較
例と対比しながら説明する。 〔実施例1〕板厚0.245 mmの冷延鋼板の両表面を、連続
的に電解脱脂し水洗し乾燥した後、DI缶用鋼板として所
定の材質を具備させるための焼鈍を、還元雰囲気内にお
いて連続的に施した。次いで、このように連続焼鈍が施
された鋼板に対し、酸洗を施した後、下記に示すフェロ
スタンめっき浴またはハロゲンめっき浴により電気錫め
っき処理を施して、鋼板の両表面の各々の上に、片面当
たり0.1 〜2.8 mg/m2の量の錫めっき層を形成した。
【0028】フェロスタンめっき浴 Sn2+ : 30 g/l Sn4+ : 1 g/l 以下 遊離酸 : 20 g/l 添加剤 : 10 g/l 以下 浴温 : 45 ℃ 電流密度: 35 A/dm2
【0029】ハロゲンめっき浴 SnCl2 : 75 g/l NaF : 25 g/l KF・HF : 50 g/l NaCl : 45 g/l Sn2+ : 36 g/l Sn4+ : 1 g/l 添加剤 : 1〜2 g/l 浴温 : 65 ℃ 電流密度: 50 A/dm2
【0030】上述したようにして、鋼板の両表面に錫め
っき層を形成した後、乾式により、または、調質圧延液
として脂肪酸エステルであるジオクチルセバケート(DO
S) を使用した湿式により、0.3 〜5.0%の圧延率で下記
条件によって調質圧延を施し、表1および図1に、黒丸
印、黒六角印、黒三角印および黒四角印で示す、本発明
方法によって製造された電気錫めっき鋼板の供試体(以
下、本発明供試体という)No. 1〜4を調製した。
【0031】調質圧延条件 圧延ロール径:250 mm 圧延速度 : 1.5m/min 圧延張力 : 10 N/mm2(前、後方とも) ロール粗さ : ダル(Rmax 約5μm)
【0032】 比較のために、調質圧延を、連続焼鈍さ
れた鋼板に対し、電気錫めっき処理工程の前に施したほ
かは、実施例1と同様の条件で、表1および図1に、
丸印で示す、比較用電気錫めっき鋼板の供試体(以下、
比較用供試体という)No. 1を調製した。
【0033】
【表1】
【0034】上述した本発明供試体および比較用供試体
の各々について、調質圧延時における圧延率と単位幅荷
重との関係を調べ、その結果を、図1に示した。本発明
供試体に関しては、めっき浴の種類による有意差は無か
ったので、測定値は、めっき量毎に、各めっき浴の平均
値によって表示した。
【0035】図1から、乾式で調質圧延を施した、調質
圧延時に錫めっき層が形成されている本発明供試体No.
1〜3の単位幅荷重は、同じく乾式で調質圧延を施し
た、調質圧延時に錫めっき層が形成されていない比較用
供試体No. 1の単位幅荷重に比べ、圧延率が1%を超え
る領域において著しく低下しており、錫めっき層の固体
潤滑作用によって、圧延負荷の低減効果が得られること
がわかる。
【0036】圧延率が1%以下の領域では、単位幅荷重
の低下はそれ程顕著ではないが、調質圧延時に錫めっき
層が形成されている本発明供試体No. 1〜3の場合に
は、鉄粉の発生が認められず、調質圧延機の圧延ロール
の損傷も少なかった。また、湿式で調質圧延した本発明
供試体No. 4の単位幅荷重は、乾式で調質圧延した本発
明供試体No. 3に比べ、同じ圧延率において更に低下し
た。
【0037】図2は、調質圧延時に錫めっき層が形成さ
れている本発明供試体に対し、1.5%の圧延率で乾式調質
圧延を施した際の、供試体の錫めっき量と単位幅荷重と
の関係を示したグラフである。図1から明らかなよう
に、錫めっき量が増加するに従って、単位幅荷重は低下
した。これからも、錫めっき層の固体潤滑作用によっ
て、圧延負荷を低減し得ることがわかる。
【0038】 〔実施例2〕実施例1と同じように、板
厚0.245 mmの冷延鋼板に対し、その両表面を、連続的に
電解脱脂し水洗し乾燥した後、連続焼鈍を施し、次い
で、このように連続焼鈍が施された鋼板に対し酸洗を施
した後、前述した、フェロスタンめっき浴またはハロゲ
ンめっき浴の何れかによって、電気錫めっき処理を施し
て、鋼板の両表面の各々の上に、片面当たり1.1 〜2.8
mg/m2 の量の錫めっき層を形成した。次いで、乾式によ
り、または、調質圧延液として脂肪酸エステルであるジ
オクチルセバケート(DOS) を使用した湿式により、1.
5〜4%の圧延率で前述した条件により調質圧延を施し
た。乾式で調質圧延を施した供試体の一部に対しては、
下記条件によってクロメート処理を施し、電気錫めっき
層の上に、金属クロム換算で、1.5 mg/m2 のクロム酸化
物からなるクロメート皮膜を形成した。かくして、表2
に示す本発明供試体No. 5〜を調製した。
【0039】クロメート処理条件 Na2CrO7 : 30 g/l 浴のpH値 : 4.0 浴温 : 40 ℃ 浸漬時間 : 1 秒
【0040】 比較のために、調質圧延を、連続焼鈍さ
れた鋼板に対し、電気錫めっき処理工程の前に施し、つ
いで、鉄粉または調質圧延液の除去のための前処理を施
しまたは施さないほかは、実施例2と同様の条件で、表
2に併せて示す比較用供試体No. 2〜9を調製した。
【0041】
【表2】
【0042】このようにして調製された本発明供試体お
よび比較用供試体の各々の外観および一次防錆性を下記
によって評価し、評価結果を、表2に併せて示した。
【0043】(1) 外観 本発明供試体および比較用供試体の各々を有機溶剤によ
って脱脂した後、直ちに目視によってその外観を調べこ
れを評価した。評価基準は、次の通りである。 良好:めっきむら、くもり等がなく、外観が優れてい
る、 可 :めっきむら、くもり等が僅かに認められるが、実
用上問題がない、 不良:めっきむら、くもり等が多く、著しく外観が不良
である。
【0044】(2) 一次防錆性 本発明供試体および比較用供試体の各々の表面を有機溶
剤によって脱脂した後、屋内暴露によって放置し、点錆
の発生状態によって評価した。評価基準は、次の通りで
ある。 良好:80mm×80mmの面積中における点錆が、暴露後、15
〜21日の間に発生したもの、 可 :上記面積中における点錆が、暴露後、8〜14日の
間に発生したもの、 不良:上記面積中における点錆が、暴露後、7日以内に
発生したもの。
【0045】 連続焼鈍後、調質圧延し、次いで、直ち
にフェロスタンめっき浴中において電気錫めっき処理を
施した比較用供試体No. 2〜4の一次防錆性は不良であ
った。また、比較用供試体No. は、その外観も不良で
あった。一方、上記調質圧延後、鉄粉等の除去処理を施
した後に電気錫めっき処理を行った比較用供試体No.
〜7の外観および一防錆性は可または良好であった
が、鉄粉等の除去処理工程のための設備および作業が必
要であり、その製造コストが上昇した。
【0046】 連続焼鈍後、調質圧延し、次いで、直ち
にハロゲンめっき浴中において電気錫めっき処理を施し
た比較用供試体No. の一次防錆性は不良であった。一
方、上記調質圧延後、鉄粉等の除去処理を施した後に電
気錫めっき処理を行った比較用供試体No. の外観およ
び一防錆性は良好であったが、鉄粉等の除去処理工程
のための設備および作業が必要であり、その製造コスト
が上昇した。
【0047】 これに対し、連続焼鈍し次いで酸洗した
後、電気錫めっき処理を施し、次いで、調質圧延を行っ
た本発明供試体No. 5〜9は、めっき方式、調質圧延方
式および圧延率の如何に拘らず、その外観および一次防
錆性に優れていた。そして、調質圧延によって生ずる鉄
粉または鉄粉および調質圧延液の除去のための処理工程
を必要としないから、このような処理工程のための設備
および作業が不要であり、その製造コストを低減するこ
とができた。
【0048】
【発明の効果】以上述べたように、この発明の方法によ
れば、電気錫めっき鋼板を、連続した一貫ラインで製造
するに際し、調質圧延によって生ずる鉄粉または鉄粉お
よび調質圧延液の除去のための処理工程を不要となし、
また、調質圧延時の圧延負荷の軽減を可能とし、これに
よって、製造工程を簡略化し、設備およびコストの低減
を図ることができ、かくして、主としてDI缶用の品質の
優れた電気錫めっき鋼板を安価に製造し得る、工業上有
用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明供試体および比較用供試体の各々の、調
質圧延時における圧延率と単位幅荷重との関係を示すグ
ラフである。
【図2】調質圧延時に錫めっき層が形成されている本発
明供試体に対し、乾式調質圧延を施した際の、供試体の
錫めっき量と単位幅荷重との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 渡辺 豊文 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭58−174591(JP,A) 特開 平2−145792(JP,A) 特開 昭57−32324(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C25D 5/00 - 5/52

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 冷延鋼板を、連続的に脱脂、連続焼鈍
    し、次いで、連続焼鈍された前記鋼板を酸洗した上、酸
    性電気錫めっき浴中において、上記工程と連続的に電気
    めっきして、前記鋼板の表面上に、前記鋼板の片面当た
    り0.1 〜2.8 g/m2の量の電気錫めっき層を形成し、次い
    で、このように電気錫めっき層が形成された鋼板を、上
    記工程と連続的に、1%超4%以下の圧延率で調質圧延
    することを特徴とする、DI缶用電気錫めっき鋼板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 前記調質圧延を乾式で行う、請求項1記
    載の方法。
  3. 【請求項3】 前記乾式で調質圧延が施された、その表
    面上に電気錫めっき層が形成された前記鋼板に対し、次
    いで、上記工程と連続的にクロメート処理を施して、前
    記電気錫めっき層の上にクロメート被膜を形成する、請
    求項2記載の方法。
  4. 【請求項4】 前記乾式で調質圧延が施された、その表
    面上に電気錫めっき層が形成された前記鋼板に対し、次
    いで、前記電気錫めっき層の上に、上記工程と連続的に
    防錆潤滑油を塗布し、前記電気錫めっき層の上に塗油膜
    を形成する、請求項2記載の方法。
  5. 【請求項5】 前記乾式で調質圧延が施された、その表
    面上に電気錫めっき層が形成された前記鋼板に対し、次
    いで、上記工程と連続的にクロメート処理を施して、前
    記電気錫めっき層の上にクロメート被膜を形成し、次い
    で、上記工程と連続的に前記クロメート被膜の上に防錆
    潤滑油を塗布して、前記クロメート被膜の上に塗油膜を
    形成する、請求項2記載の方法。
  6. 【請求項6】 前記調質圧延を、脂肪酸エステル系の油
    脂からなる調質圧延液を使用して湿式で行う、請求項1
    記載の方法。
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