JPH05179411A - アルミニウム合金製部材の表面改質方法 - Google Patents

アルミニウム合金製部材の表面改質方法

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JPH05179411A
JPH05179411A JP34000791A JP34000791A JPH05179411A JP H05179411 A JPH05179411 A JP H05179411A JP 34000791 A JP34000791 A JP 34000791A JP 34000791 A JP34000791 A JP 34000791A JP H05179411 A JPH05179411 A JP H05179411A
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aluminum alloy
hard
residual stress
compressive residual
treatment
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Kazuhiko Shirai
和彦 白井
Masaru Takato
勝 高藤
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Mazda Motor Corp
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ショットピーニング加工等の圧縮残留応力付
与処理により表面に発生する圧縮残留応力を高くし、ア
ルミニウム合金製部材の疲労強度を向上させる。 【構成】 硬質粒子、繊維、あるいは発泡金属等の硬質
部材を表面部に分散含有したアルミニウム合金製部材を
得、該表面部にショットピーニング等の圧縮残留応力付
与処理を施す。また、必要に応じ、少なくとも該表面部
を拡散熱処理するか再溶融処理したのち、圧縮残留応力
付与処理を施す。 【効果】 硬質部材が、表面部を強化する作用、及びシ
ョットピーニング加工を受けたとき塑性加工を促進する
作用を有し、もって表面に発生する圧縮残留応力を高い
ものとすることができる。また、拡散熱処理又は再溶融
処理により、硬質部材とアルミニウム合金基地との界面
に硬質の金属間化合物を生成するとともに、密着性を改
善する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ショットピーニング加
工等の圧縮残留応力付与処理により表面に発生する圧縮
残留応力を高くし、アルミニウム合金製部材の疲労強度
を向上させようとするものである。
【0002】
【従来の技術】近時、自動車の小型化、軽量化、高出力
化に伴い、部材の軽量化が必要不可欠になり、こうした
状況の中で軽量材料としてアルミニウム合金が注目され
ている。一般に、自動車材料は部材によって強度、耐摩
耗性や耐食性などの機能が高いレベルで要求されるが、
アルミニウム合金は鉄鋼材料に比べ強度、耐摩耗性など
に劣り、実用化する面で大きな技術的課題となってい
る。例えば、シャーシを構成する部品には、大きい繰り
返し荷重が加わるものが多く、アルミニウム合金の利用
のためには疲労強度を向上させることが不可欠であっ
た。
【0003】これまでアルミニウム合金製部材の疲労強
度を向上させるための手段として、ショットピーニング
加工や表面ロール加工が有効な方法として注目されてい
る。すなわち、ショットピーニング加工等により、アル
ミニウム合金製部材の表面を加工硬化するとともに、圧
縮残留応力を発生させ、この加工硬化と圧縮残留応力が
疲労強度の向上に寄与するというものである。
【0004】しかし、ショットピーニング加工等の圧縮
残留応力付与処理によって発生する加工硬化と圧縮残留
応力の大きさは、該処理を受ける素材の静的強度に大き
く依存するため、鋼や鋳鉄に比べ相対的に強度の低いア
ルミニウム合金の場合、疲労強度の向上には自ずから限
界があった。
【0005】そこで、例えば特開平1ー208415号
公報では、アルミニウム合金鋳物の所望部位表面を急速
溶融・急速凝固させ、再凝固層表面にショットピーニン
グ加工等の残留応力付与加工処理を施すことが提案され
ている。つまり、急速溶融・急速凝固により得られた再
凝固層は、欠陥が少なく微細化された組織を有するので
強度が高く、ショットピーニング加工等により大きい加
工硬化と圧縮残留応力を付与することができ、もってア
ルミニウム合金鋳物の疲労強度を高めることができると
いうものである。しかし、この方法は、アルミニウム合
金自体の強度不足を補うものではあるが、いまだ十分と
はいえなかった。しかも、急速溶融・急速凝固により均
一な厚さの再凝固層を得るための制御が複雑であるとい
う難点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来の問
題を解決するためになされたもので、ショットピーニン
グ加工等の圧縮残留応力付与処理により表面に発生する
加工硬化と圧縮残留応力を高くし、アルミニウム合金製
部材の疲労強度を顕著に向上させることを目的とするも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】このため本発明は、表面
部にアルミニウム合金よりも硬質な異種材料の硬質部材
を分散含有したアルミニウム合金製部材を得、次に該表
面部に圧縮残留応力付与処理を施すことを特徴とするも
のである。そして本発明は、必要に応じ、少なくとも該
表面部を拡散熱処理するか再溶融処理したのち、圧縮残
留応力付与処理を施すことを特徴とするものである。
【0008】
【作用】本発明は、表面部に硬質部材を分散含有するア
ルミニウム合金製部材の該表面部に、ショットピーニン
グ加工等の圧縮残留応力付与処理を施すのであるから、
従来のごとく表面部に硬質部材を分散含有しないアルミ
ニウム合金製部材に施すより、はるかに高い加工硬化と
圧縮残留応力を表面全域に発生させ、疲労強度を大きく
向上させることができるという作用を有する。
【0009】すなわち、さきに述べたように、圧縮残留
応力付与処理によって発生する残留応力の大きさは素材
の強度が高いほど大きくなる傾向にある。しかして、本
発明では、表面部に硬質部材を分散含有するためアルミ
ニウム合金製部材の表面強度は相当高く、圧縮残留応力
付与処理によって大きい残留応力を発生させることがで
きるものである。
【0010】さらに、表面部に硬質部材を分散含有する
アルミニウム合金製部材の該表面部に、例えばショット
ピーニング加工を施した場合、ショットの衝撃を受けた
硬質部材は自身も加工硬化と圧縮残留応力を発生する
が、同時に周囲のアルミニウム合金基地にその衝撃力を
与えて塑性加工を促進するので、自身の周囲に広範囲に
わたり大きい加工硬化と圧縮残留応力を発生させること
ができるものと考えられる。このとき無数の硬質部材が
均一にアルミニウム合金基地中に分散しているならば、
硬質部材の周囲に発生する加工硬化と圧縮残留応力はア
ルミニウム合金製部材の表面全域に及ぶことになる。
【0011】ところで、アルミニウム合金製部材の表面
部に分散含有される硬質部材は、均一に分散すると同時
に、アルミニウム合金基地との密着性を良くし、基地か
らの脱落や剥離がなく、そこがクラック等の発生起源と
ならないようにしておくことが望ましい。そこで本発明
においては必要に応じ、圧縮残留応力付与処理の前に、
少なくとも該表面部を拡散熱処理するか再溶融処理する
ことにより、硬質部材とアルミニウム合金基地の界面に
拡散層又は合金層(拡散によるときは拡散層といい、溶
融による時は合金層というが、実質的には同じものと考
えてよい。)を形成させる。従って、硬質部材とアルミ
ニウム合金基地との密着性がよくなり、該硬質部材がク
ラック等の発生起源となるようなことがなく、もって高
い圧縮残留応力及び疲労強度を得ることができるのであ
る。
【0012】
【実施例】本発明においては、アルミニウム合金よりも
硬質な異種材料の硬質部材として硬質粒子、繊維(ウイ
スカーを含む)、発泡金属等を用いることができる。こ
の場合、アルミニウム合金基地との間に拡散層又は合金
層、とりわけ硬質の金属間化合物層を形成する素材、例
えばFe、Niが好適である。硬質部材とアルミニウム
合金基地との密着性が改善されるとともに、硬質部材の
硬度を一層高めることができるからである。なお、ここ
で発泡金属とは、外部に通じる空洞が無数に空いた金属
体をいい、例えば、発泡ウレタン樹脂の気泡内表面に導
電性物質を付着し導電性とし、硬質金属をメッキし、次
いでウレタン樹脂を焼失させて製造した市販のものでよ
い。
【0013】表面部に硬質部材を分散含有するアルミニ
ウム合金製部材を得る手段としては、例えばショットピ
ーニング加工、レーザー等の高エネルギーの印可による
表面溶融処理、高圧鋳造等の手段を用いることができ
る。
【0014】ショットピーニング加工による方法は、先
の出願で提案(アルミニウム合金製部材の表面改質方法
の発明)したように、ショット材の中に硬質部材(微細
な硬質粒子が好適)を混入しておき、これをアルミニウ
ム合金製部材の表面部に噴射することによるものであ
る。この方法では、ショット材中に硬質部材が伴われる
状態でショットピーニング加工が行われ、硬質部材は、
ショットの打撃によりアルミニウム合金製部材の表面内
部に分散状態で埋め込まれる。この方法による場合、硬
質部材はアルミニウム合金基地中に機械的に埋め込まれ
るので、そのままであるとその界面がクラック等の発生
起源となる場合があり、引き続き拡散熱処理か再溶融処
理を施すことが望ましい。
【0015】レーザー等の高エネルギーの印可による表
面溶融処理による方法は、例えば、硬質部材(硬質粒子
や繊維が好適)をアルミニウム合金製部材の表面に載置
し、レーザー等により走査して該表面部のみ溶融し、硬
質部材をアルミニウム合金基地中にとけ込ませるもので
ある。このとき、硬質部材は、通常融点がアルミニウム
合金基地よりはるかに高いのでほとんど溶融しないが、
アルミニウムと合金化するような金属材料を用いた場
合、アルミニウム合金基地との界面に合金層が形成され
る。
【0016】高圧鋳造による方法は、例えば、硬質部材
(薄い繊維プリフォームや発泡金属が好適)を鋳型キャ
ビティの所定箇所に取り付け、アルミニウム合金溶湯を
注湯し、凝固が完了するまでのあいだ高圧力をかけ、硬
質物質を表面部に鋳ぐるむものである。溶融したアルミ
ニウム合金は、加えられた高圧力のため繊維プリフォー
ムや発泡金属の空隙に浸透するので、容易に表面部に硬
質部材を分散含有するアルミニウム合金製部材を得るこ
とができる。この場合も、硬質部材としてアルミニウム
と合金化するような金属材料を用いたときは、アルミニ
ウム合金基地との界面に合金層が形成される。
【0017】さて、先に述べたように、表面部に硬質部
材を分散含有するアルミニウム合金製部材は、好適に
は、少なくとも該表面部を拡散熱処理か再溶融処理する
ことにより、硬質物質とアルミニウム合金基地の界面に
拡散層又は合金層を形成する。
【0018】ここで拡散熱処理は、レーザー等を用い表
面部のみ加熱することにより行ってもよいが、アルミニ
ウム合金製部材全体を加熱することによって行ってもよ
い。例えば、アルミニウム合金に対しては、強化のため
T処理という時効析出熱処理(T−6処理であれば、溶
体化処理→焼入れ→焼戻し)を行う場合があり、この溶
体化処理に前記拡散熱処理を兼ねさせるのが好都合であ
る。
【0019】再溶融処理は、レーザー等の高エネルギー
を用い、表面部のみ再溶融することによって行う。この
場合も硬質物質は、通常アルミニウム合金基地よりはる
かに融点が高いので完全には溶融せず、溶融したアルミ
ニウム合金基地と硬質物質の界面に合金層が形成される
ことになる。
【0020】なお、かかる拡散熱処理又は再溶融処理
は、ショットピーニング加工により埋め込まれた硬質部
材に対し行うことに一義的な意味を有するが、それに限
らず、必要に応じ表面溶融処理や高圧鋳造により分散さ
れた硬質部材に対して行ってもよいことはいうまでもな
い。また、かかる拡散熱処理又は再溶融処理は、上記の
とおり硬質部材がアルミニウム合金基地との間に拡散層
又は合金層を生成するような素材の場合に特に効果的で
あるが、そのような素材でない場合でも、該処理により
硬質部材とアルミニウム合金基地の密着性を改善する効
果があるので行うことが望ましい。
【0021】ところで、表面溶融処理や高圧鋳造により
硬質部材を分散含有させたとき、また拡散熱処理や再溶
融合金化処理を行ったとき、アルミニウム合金基地と硬
質物質の界面に拡散層又は合金層が生成する旨述べた。
つまり、当初アルミニウム合金基地中に導入された硬質
部材の一部は拡散層又は合金層となり、その内部に硬質
部材の一部が残存している。しかしながら、拡散層又は
合金層として硬質の金属間化合物が生成するような場
合、当初の硬質物質の全てを該金属間化合物とすること
を排除するものではない。
【0022】本発明における圧縮残留応力付与処理のた
めの手段は、ショットピーニング加工に限らず、ロール
加工等の他のいかなる手段をも使用することができる。
【0023】以下、実験データを基に本発明の実施例を
詳細に説明する。
【0024】(参考例)まず図15は、各種アルミニウ
ム合金の疲労強度と硬度の関係をグラフにしたものであ
る。供試材として表1に示す4種類を選び、それぞれ図
16に示す形状の疲労試験片(回転曲げ、切欠係数α=
1.94)を作成し、そのうち半数にT6処理(溶体化
→焼入れ→焼戻し)を行った。なお、溶体化処理条件は
530℃×4H、焼戻し処理条件は、180℃×6Hと
した。図15に見られるように、一般に疲労強度は素材
硬度が高いほど大きくなる。したがって、疲労強度を上
げるためには、素材硬度の大きい材料を用いるか、ある
いは同じ材料であればT6処理などの熱処理をおこない
硬度を上げることが望ましい。なお、本発明を適用可能
なアルミニウム合金は、以上の4種類に限定されず、ア
ルミニウム合金全般に及ぶことはいうまでもない。
【0025】
【表1】
【0026】(実施例1ー硬質粒子)図1は、硬質部材
として硬質粒子を用いるときの代表的なプロセスを示
す。すなわち、(1)まずアルミニウム合金を鋳込み、
(2)ショットピーニング加工又はレーザー等による表
面溶融処理により、表面部に硬質粒子を分散含有させ
(加粒子分散という)、(3)溶体化処理により該硬質
粒子を拡散熱処理し、焼入れ、(4)焼戻しする。次い
で、(5)圧縮残留応力を付与するためのショットピー
ニング加工(S/P加工)を行う。なお、上記(3)及
び(4)のプロセスは省略することもできる。
【0027】さて、実施例1では、上記プロセスに従
い、具体的には表2に示す実施条件にて試験片を得た。
圧縮残留応力の測定結果と回転曲げ疲労試験の結果を図
3及び図4にAとして示す。
【0028】
【表2】
【0029】ここで、参考までに、表2の実施条件で上
記プロセス(1)〜(3)を経たアルミニウム合金製部
材の、表面部における硬鋼材の分散状態を図17〜20
の写真に示す。図17は走査電子線像であり、図18〜
図20は順にFe、Al、及びSiの特性X線写真で、
各写真中の白点はそれぞれFe、Al、及びSiを表
す。表面層にFe粒子が多く分散し、内部にいくにつれ
て疎らになっている。
【0030】(実施例2ー繊維)図2は、硬質部材とし
て繊維を用いるときの代表的なプロセスを示す。すなわ
ち、(11)まず薄い繊維プリフォームを鋳型キャビテ
ィ内の所定箇所にセットし、アルミニウム合金を高圧鋳
造して鋳ぐるみ、表面に繊維とアルミニウム合金の複合
層を有するアルミニウム合金製部材を得る。次いで、必
要に応じ、(12)溶体化処理し、焼入れ、(13)焼
戻しする。最後に、(14)圧縮残留応力を付与するた
めのショットピーニング加工(S/P加工)を行う。
【0031】さて、実施例2では、上記プロセスに従
い、具体的には表3に示す実施条件にて試験片を得た。
圧縮残留応力の測定結果と回転曲げ疲労試験の結果を図
3及び図4にBとして示す。
【0032】
【表3】
【0033】(実施例3ー発泡金属)硬質部材として発
泡金属を用いるときの代表的なプロセスは、図2に示す
とおりであり繊維と全く同様と考えてよい。すなわち、
(11)まず所定厚の発泡金属を鋳型キャビティ内の所
定箇所にセットし、アルミニウム合金を高圧鋳造して鋳
ぐるみ、表面に発泡金属とアルミニウム合金の複合層を
有するアルミニウム合金製部材を得る。次いで、必要に
応じ、(12)溶体化処理し、焼入れ、(13)焼戻し
する。最後に、(14)圧縮残留応力を付与するための
ショットピーニング加工(S/P加工)を行う。
【0034】さて、実施例3では、上記プロセスに従
い、具体的には表4に示す実施条件にて試験片を得た。
圧縮残留応力の測定結果と回転曲げ疲労試験の結果を図
4にCとして示す。
【0035】
【表4】
【0036】(実施例1〜3と従来例等との比較)図3
は、ショットピーニング加工後、表面に生成される圧縮
残留応力と表面からの深さの関係を示すグラフである。
図3において、Dは従来例であり、硬質部材を分散含有
させるプロセスを省略した以外は、AおよびBと同一の
実施条件で得られたものである。実施例1、2に相当す
るAおよびBは、単なるショットピーニング加工を加え
た従来例Dに比べ、圧縮残留応力が全体的にかなり大き
く、しかも表面から深い位置にまで及んでいる。
【0037】図4は、回転曲げ疲労強度を示すグラフ
で、縦軸に曲げ応力、横軸に繰り返し数をとっている。
図4において、Eは従来例のリメルト材(深さ1mm)
で、AC4C合金の表面部を急速溶融・急速冷却するこ
とによって、組織を著しく微細化したものである。試験
片の試作工程を図21(a)に、組織微細化のメカニズ
ムを図21(b)に示す。ここで、T.I.G.(タン
グステンイナートガス)アークの走査により局部溶融し
たリメルト部は、アーク通過後、内部への熱伝導により
直ちに急冷凝固する。Fは、Aと同一の実施条件でT−
6処理まで行い最後のショットピーニング加工のみ省略
した比較例、Gは、Bと同一の実施条件でTー6処理ま
で行い最後のショットピーニング加工のみ省略した比較
例、Hは、T−6処理のみのAC4C合金である。
【0038】図4から、本発明の実施例1〜3に相当す
るA〜Cは、いずれも他の従来例又は比較例に比べ疲労
強度が大きく向上している。
【0039】(実施例4ー硬質粒子)ここでは、硬質粒
子の分散条件を種々変えて試験を行い、硬質粒子を用い
たときの好ましい実施条件を見いだしたので、以下説明
する。なお、表2に示した実施例1の条件のうち、他の
条件は同一で硬質粒子の分散条件のみ変化させたものを
実施例とし、さらにT−6処理を省略したものを実施
例とした。得られた試験片に対し、回転曲げ疲労試験
を行った結果を以下に示す。
【0040】図5は、疲労強度の向上率と硬質粒子の大
きさの関係を示したグラフ(ただし、分散層厚60μ
m、分散量5wt%)である。ここで、実線が実施例
に相当し溶体化処理(すなわち拡散熱処理)を受けたも
の、点線は実施例に相当し該拡散熱処理を受けていな
いものである。また、疲労強度の向上率は、前記従来例
Dを基準にした(この点は、以下の図6、図7でも同
じ)。
【0041】実施例の疲労強度の向上率からみて、拡
散熱処理を行う場合は硬質粒子の大きさは1〜20μが
好適であることが分かる。すなわち、粒径が1μ以下と
著しく小さいと、強度の向上効果は少なく、逆に20μ
を越えるようであると、硬質粒子とアルミニウム合金基
地との界面に応力集中を生じてクラックが入りやすくな
るためと考えられる。実施例の場合は、粒径が0.1
μm以上でかなりの効果がある。しかし、疲労強度の向
上効果は実施例に比べてやや小さく、粒径の限界も1
0μである。実施例とでこのような差が出た理由
は、実施例では拡散熱処理により硬質粒子の周囲に金
属間化合物層(Fe2Al5、FeAl)が生成し、強度
が向上するとともに母材との密着性が改善するためであ
ると考えられる。
【0042】図6は、実施例につき疲労強度の向上率
と硬質粒子の分散層の厚さの関係を示したグラフ(ただ
し、粒子の大きさ10μm、分散量2〜11wt%;分
散層厚をショットピーニング加工時間で調整したため、
分散量が幅をもつ)である。疲労強度は、分散層の厚さ
が大きくなるとともに向上し、特に20μm以上あれば
効果的に向上する。ここで70μm以上の点線表示は、
ショットピーニング加工による硬質粒子の分散限界を示
す。
【0043】図7は、実施例につき疲労強度の向上率
と硬質粒子の分散量の関係を示したグラフ(ただし、粒
子の大きさ10μm、分散層厚40μm)である。疲労
強度は、当初分散量の増加とともに向上するが、多量に
なると効果が減退するので、1.3wt%以上から10
wt%位が効果的である。多量になると効果が減退する
のは、応力集中の度合が増えてくるためであると考えら
れる。
【0044】以上の結果を参考に、硬質粒子を使用する
場合の好ましい条件・範囲を表5にまとめた。なお、表
5には、ほぼ等価の代替条件を併記した。
【0045】
【表5】
【0046】(実施例5ー繊維)ここでは、繊維の混入
条件を種々変えて試験を行い、繊維を用いたときの好ま
しい実施条件を見いだしたので、以下説明する。試験片
としては、表3に示した実施例2の条件のうち、他の条
件は同一で繊維の混入条件のみ変化させた。得られた試
験片に対し、回転曲げ疲労試験を行った結果を以下に示
す。
【0047】図8は、疲労強度の向上率と繊維径の関係
を示したグラフ(ただし、繊維のアスペクト比約2.
5、混入層厚5mm、繊維体積15vol%)である。
また、疲労強度の向上率は、前記従来例Dを基準にした
(この点は以下の図9、図10でも同じ)。
【0048】図8から、繊維径は50〜250μmが好
適であることが分かる。すなわち、繊維径が、50μよ
り小さいと強度の向上効果は少なく、逆に250μmを
越えるようであると、繊維とアルミニウム合金基地との
界面に応力集中を生じてクラックが入りやすくなるため
と考えられる。但し、繊維の場合は、疲労破壊の際の引
っ張り応力に対する引き抜き効果(繊維の長さ方向に引
っ張り強度が高められる現象)が大きくなるために、粒
子の場合に比べて相対的に大きな繊維となっている。な
お、繊維の場合はこの引き抜き効果に起因して、硬質部
材を分散含有しないものに比べ耐衝撃性が20〜30%
向上する。
【0049】図9は、疲労強度の向上率と繊維層の厚さ
の関係を示したグラフ(ただし、繊維径150μm、繊
維長0.25mm、繊維体積15vol%)である。疲
労強度は繊維層の厚さが大きくなるとともに向上し、特
に1.5mm以上の厚さになると、繊維の引き抜き効果
が大きくなり、ショットピーニング加工の効果も大きく
なることが分かる。しかし、3.0mm以上でほぼ横ば
いで、それ以上厚くする必要はない。
【0050】図10は、疲労強度の向上率と繊維体積の
関係を示したグラフ(ただし、繊維径150μmm、繊
維長0.3mm、混入層厚3.0mm)である。疲労強
度は、当初体積の増加とともに向上するが、多量になる
と効果が減退するので、5〜30vol%が効果的であ
る。多量になると効果が減退するのは、応力集中の度合
が増えてくるためであると考えられる。
【0051】以上の結果を参考に、本実施例の好ましい
条件・範囲を表6にまとめた。なお、表6には、ほぼ等
価の代替条件を併記した。
【0052】
【表6】
【0053】(実施例6ー発泡金属)ここでは、発泡金
属の混入条件を種々変えて試験を行い、発泡金属を用い
たときの好ましい実施条件を見いだしたので、以下説明
する。試験片としては、表4に示した実施例3の条件の
うち、他の条件は同一で発泡金属の混入条件のみ変化さ
せた。得られた試験片に対し、回転曲げ疲労試験を行っ
た結果を以下に示す。
【0054】図11は、疲労強度の向上率と発泡金属層
の厚さの関係を示したグラフ(他の混入条件は表4と同
じ)である。また、疲労強度の向上率は、前記従来例D
を基準にした(この点は以下の図12〜図14でも同
じ)。
【0055】図11をみると、発泡金属を1mm以上の
厚さに鋳ぐるむことにより顕著な効果が現れ、5mm位
が最も効果が大きい。しかし、通常使用されるアルミニ
ウム合金製部材の板厚と、疲労強度の向上率の層厚依存
性が比較的小さいこと、の観点から1mm以上の厚さで
あれば十分実用的と考えられる。なお、発泡金属の場合
も、硬質部材を含有しない場合に比べ耐衝撃性が20〜
30%向上する。
【0056】図12は、疲労強度の向上率と発泡金属の
孔径の関係を示したグラフ(ただし、他の混入条件は表
4と同じ)である。図12から孔径は0.3〜3mmが
好適である。発泡金属の孔径があまり小さいと、アルミ
ニウム合金溶湯が孔のすみずみまで入りにくくなり、隙
間ができるなどのため効果が少なくなり、逆に孔径が大
きすぎても効果が少ないのは、湯流れはよくなるもの
の、界面への応力集中度合が増すためであると考えられ
る。
【0057】図13は、疲労強度の向上率と発泡金属の
多孔率の関係を示したグラフ(ただし、他の混入条件は
表4と同じ)である。図13から発泡金属の多孔率40
〜90%で効果が顕著である。多孔率が小さい範囲で効
果が少ないのは、孔にアルミニウム合金溶湯が入りにく
くなるためと考えられる。
【0058】図14は、疲労強度の向上率と発泡金属の
体積の関係を示したグラフ(ただし、多孔率60%、他
の混入条件は表4と同じ)である。疲労強度は、当初体
積の増加とともに向上するが、多量になると効果が減退
するので、10〜30vol%が好適であった。少なす
ぎるとショットピーニング加工効果が低く、多すぎると
界面での応力集中が生じやすくなるために向上率が低下
するものと考えられる。
【0059】以上の結果を参考に、本実施例の好ましい
条件・範囲を表7にまとめた。なお、表7には、ほぼ等
価の代替条件を併記した。
【0060】
【表7】
【0061】
【発明の効果】本発明は、表面部にアルミニウム合金よ
りも硬質な異種材料の硬質部材を分散含有するアルミニ
ウム合金製部材の該表面部に、ショットピーニング加工
等の圧縮残留応力付与処理を施すものである。したがっ
て、該硬質部材が、表面部を強化する作用と、ショット
ピーニング加工による塑性加工を促進する作用を果た
し、従来のごとく表面部に硬質部材を分散含有しないア
ルミニウム合金製部材に施すより、はるかに高い加工硬
化と圧縮残留応力を表面部に発生させることができる。
従って、本発明によれば、高い疲労強度を持ったアルミ
ニウム合金製部材を得ることができるのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】硬質粒子を用いて本発明を実施する場合の代表
的プロセスを示す図である。
【図2】繊維又は発泡金属を用いて本発明を実施する場
合の代表的プロセスを示す図である。
【図3】ショットピーニングにより表面に形成される圧
縮残留応力を示す図である。
【図4】疲労強度を示す図である。
【図5】硬質粒子の大きさと疲労強度の関係を示す図で
ある。
【図6】硬質粒子の分散層の厚さと疲労強度の関係を示
す図である。
【図7】硬質粒子の分散量と疲労強度の関係を示す図で
ある。
【図8】Al23繊維の径と疲労強度の関係を示す図で
ある。
【図9】Al23繊維層の厚さと疲労強度の関係を示す
図である。
【図10】Al23繊維の体積と疲労強度の関係を示す
図である。
【図11】Ni系発泡金属層の厚さと疲労強度の関係を
示す図である。
【図12】Ni系発泡金属の孔径と疲労強度の関係を示
す図である。
【図13】Ni系発泡金属の多孔率と疲労強度の関係を
示す図である。
【図14】Ni系発泡金属の体積と疲労強度の関係を示
す図である。
【図15】各種アルミニウム合金の硬度と疲労強度の関
係を示す図である。
【図16】回転曲げ疲労試験片を示す図である。
【図17】ショットピーニング加工による硬鋼材の分散
状態を示す走査電子線像である。
【図18】当該部分のFeの特性X線像である。
【図19】同じくAlの特性X線像である。
【図20】同じくSiの特性X線像である。
【図21】リメルト材の試作工程及び組織微細化のメカ
ニズムを示す図である。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成4年12月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図17
【補正方法】変更
【補正内容】
【図17】 ショットピーニング加工による硬鋼材の分
散状態を示す走査電子線像(金属組織写真)である。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図18
【補正方法】変更
【補正内容】
【図18】 当該部分のFeの特性X線像(金属組織写
真)である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図19
【補正方法】変更
【補正内容】
【図19】 同じくA1の特性X線像(金属組織写真)
である。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】図20
【補正方法】変更
【補正内容】
【図20】 同じくSiの特性X線像(金属組織写真)
である。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面部にアルミニウム合金よりも硬質な
    異種材料の硬質部材を分散含有したアルミニウム合金製
    部材を得、次に該表面部に圧縮残留応力付与処理を施す
    ことを特徴とするアルミニウム合金製部材の表面改質方
    法。
  2. 【請求項2】圧縮残留応力付与処理がショットピーニン
    グ加工であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム合金製部材の少なくとも該
    表面部を拡散熱処理したのち、圧縮残留応力付与処理を
    施すことを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  4. 【請求項4】 拡散熱処理がアルミニウム合金の溶体化
    熱処理であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
  5. 【請求項5】 硬質部材が金属粒子又は発泡金属である
    ことを特徴とする請求項3又は4に記載の方法。
  6. 【請求項6】 アルミニウム合金製部材の該表面部を再
    溶融処理したのち、圧縮残留応力付与処理を施すことを
    特徴とする請求項1又は2記載の方法。
  7. 【請求項7】 硬質部材が金属粒子又は発泡金属である
    ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
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