JPH05176758A - 鉄含有酵母の製造法 - Google Patents

鉄含有酵母の製造法

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JPH05176758A
JPH05176758A JP3359282A JP35928291A JPH05176758A JP H05176758 A JPH05176758 A JP H05176758A JP 3359282 A JP3359282 A JP 3359282A JP 35928291 A JP35928291 A JP 35928291A JP H05176758 A JPH05176758 A JP H05176758A
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iron
cells
water
ferrous
concentration
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JP3359282A
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English (en)
Inventor
Kotaro Nakajima
浩太郎 中嶋
Nobuaki Nakagawa
信明 中川
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 予め鉄分を添加しない実質的に鉄分を培地組
成由来鉄以外に含有しない培地で酵母菌体を培養・増殖
せしめることによる増殖速度が早く、また増殖率の優れ
た二価鉄含有酵母を製造する。 【構成】 二価の鉄を菌体内に蓄積することのできる可
食性の酵母を培養して得た菌体をバイオロジカルスペー
ス以上の菌体濃度とし、該菌体を高分子基質である有機
化合物および二価の水溶性鉄化合物を含有する水溶液に
分散せしめることにより、該菌体に二価の鉄を安定に蓄
積せしめて二価鉄含有酵母を製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二価鉄含有酵母の新規
な製造法に関し、本発明で得られる二価鉄含有酵母は動
物・水産動物用飼料、餌料または食品等に添加せしめる
ことにより、ヒトまたは動物・水産動物等に利用されや
すい鉄供給物として利用できる。
【0002】
【従来の技術】鉄分は生体中で最も重要な微量ミネラル
の一つであり、その生理作用は多種多様である。既に1
9世紀には鉄摂取不足による鉄欠乏性貧血が認められ
た。20世紀に入って鉄の代謝研究は更に大きく進展
し、鉄が関与する疾患の診断・予防・治療についての知
識は解明されている。しかし、食生活は豊になったにも
関わらず一般には栄養学的な知見は普及しておらず、嗜
好本意の偏食よる多量栄養素の摂取過剰、微量栄養素の
摂取不足を生じ、実際日本人の場合は、カルシウムや鉄
分が不足気味であることが知られている。特に、鉄欠乏
性貧血症は、発展途上国のみならず、先進諸国でも広く
多発している疾病である。また、哺乳類のみならず魚類
においても飼料・餌量中に鉄が不足すると鉄欠乏性貧血
を起こすことが知られている。
【0003】鉄分がヘモグロビンの成分として不可欠な
ものであり、二価の鉄が三価の鉄より胃腸管からの吸収
性に優れていることことが知られていることから、血液
性状の改善には従来、硫酸第一鉄、フマル酸第一鉄、コ
ハク酸第一鉄等が使用されてきた。しかし、硫酸第一鉄
等は、貯蔵中あるいは消化管中で酸化され吸収されずら
い三価の鉄化合物になりやすという欠点がある。
【0004】一方、鉄分を微生物等を使用して利用価値
を高めた方法に関するいくつかの報告がある。例えば、
予め培地に鉄の水溶性物質を溶解し、食用微生物を培養
し鉄を含有した菌体の製造法(特開昭57−68783
号公報)、鉄化合物の存在下に糖類含有栄養培地中で酵
母を培養し、培養液中に有機第一鉄化合物を含ましめる
製造法(特開昭58−101686号公報)、予め培地
中に鉄化合物を添加して微生物を培養することにより得
られた鉄を高含有する菌体、および培地中のマグネシウ
ムの濃度を10mg/l以下にして微生物を培養する製
造方法(特開昭62−134083号公報)が知られて
いる。さらに、鉄分を適宜に含有した糖液に酵母を加え
て培養して得られた酵母培養液ないしその培養エキスを
有効成分とする鉄分供与のための組成物としての飼料
(特開平1−304829号公報)が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述の鉄化合物から鉄
含有菌体および組成物を得る方法は、いずれも予め鉄分
を添加させた培地で微生物を培養・増殖せしめることに
より鉄含有菌体を得ている。鉄分を菌体に取り込ませよ
うとした場合、菌体に鉄分を取り込ませるに当たって鉄
化合物の存在下に微生物の増殖をも行わせて鉄分を取り
込ませるが、工業的なことも考慮して添加する鉄分の濃
度を高濃度とした場合、微生物が生育阻害を受けるた
め、添加する鉄化合物の濃度は該微生物の生育を著しく
阻害しない最低限度量に当然制限しなければならない。
また、添加する鉄分の濃度を微生物の生育を著しく阻害
しない濃度においても、やはり何ら鉄分を高濃度に添加
しない培地に比べると、菌体増殖に長時間を要す上、増
殖率も悪く、また菌体の鉄取り込み効率も悪いため鉄含
有菌体の収率はきわめて低くなる。また、培養中におい
て鉄分を取り込ませようとした場合には、菌体と鉄分の
接触時間に培養時間と同程度の16時間以上を必要とす
るため、培地中に添加した二価の水溶性鉄化合物が酸化
され不溶化し、効率よく利用されず、工業化に問題があ
った。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の問
題点を解決すべく鋭意研究を行ったところ、二価鉄を菌
体内に蓄積することのできる酵母を、予め実質的に鉄を
添加しない培地で適宜培養・増殖させ、その後菌体を集
菌し必要に応じて水洗して培養培地成分を除去した後菌
体の培養・増殖を必要としない条件、好ましくは菌体濃
度をバイオロジカルスペ−ス以上に調製し、該菌体を鉄
の高分子化基質となり得る有機化合物である糖と必用に
応じアミノ酸およびリン酸塩並びに水溶性鉄化合物を含
有する水溶液に分散せしめることにより、意外にも実質
的に菌体培養・増殖を必用とせずに鉄分が効率的に菌体
内に取り込まれ蛋白質等と結合され、短時間に菌体内に
安定に多量の二価鉄として蓄積せしめることが可能であ
ることを見出し、新規な二価鉄含有酵母の製造法を確立
するに至った。
【0007】本発明は上記の知見に基づいて完成された
もので、即ち、二価の鉄を菌体内に蓄積することのでき
る酵母を培養して得た菌体をバイオロジカルスペース以
上の菌体濃度とし、該菌体を鉄分の高分子化基質である
有機化合物および水溶性鉄化合物を含有する水溶液に分
散せしめることにより、該菌体に二価鉄を蓄積せしめる
ことを特徴とする高分子化二価鉄含有酵母の製造法であ
る。
【0008】本発明において、菌体を鉄分の高分子化基
質となり得る有機化合物および水溶性鉄化合物を含有す
る水溶液(以下、反応液ということがある)に分散せし
めることにより菌体に高分子化鉄が蓄積される過程を推
定すれば、まず鉄分の高分子化基質となり得るとした有
機化合物である糖および/またはアミノ酸等が、菌体の
培養・増殖を必要としない状態、好ましくはバイオロジ
カルスペース濃度以上に調製されて分散された菌体に接
触して菌体内でエネルギーを発生させる基質となり、水
溶性鉄化合物中の鉄を菌体内に取込む現象を活性化させ
るためのエネルギー源を与えると推測される。言い換え
れば、菌体が反応液に分散されて反応液中の糖やアミノ
酸等のエネルギー基質を基に菌体内反応機構である高エ
ネルギーリン酸化合物合成機構が働くことにより生成さ
れるエネルギーを利用して、菌体内に鉄を取込ませる反
応を触発せしめると推測される。高エネルギーリン酸化
合物にはアデノシン三リン酸(ATP),ウラノシル三
リン酸(UTP),グアノシル三リン酸(GTP),シ
トシル三リン酸(CTP)があるが、本発明で利用され
ているエネルギーは上記のいづれであってもよい。主に
糖および/またはアミノ酸を基質として菌体内で合成さ
れたそれらは、まず鉄が菌体細胞膜を透過するために利
用され、さらに細胞膜を透過した鉄が菌体内に取り込ま
れて菌体内蛋白質と結合して高分子鉄に変換される迄の
反応を通して有効に利用されると推測するが、本発明は
何らこれらによって限定されるものではない。本発明の
製造法の目的は、予め鉄分を添加しない実質的に鉄分を
培地組成由来鉄以外含有しない培地で菌体を培養・増殖
させるため、培養時に鉄による生育阻害が無く、従来技
術にある予め鉄分を添加させた培地で培養・増殖させる
場合に比すと菌体の増殖速度が早く、また増殖率も優れ
ている方法を提供する。
【0009】また、本発明は菌体を培地で充分培養・増
殖させ、集菌後に反応液へ該菌体を分散させるため、菌
体を濃縮化することが可能であることから反応系を小さ
くでき、したがって反応後の廃液を少量化することがで
き、また、反応液中に鉄以外の金属を含まないため廃液
処理を簡便にする方法を提供する。
【0010】さらに、本発明は菌体を適宜増殖させ、集
菌後に水洗して培養培地成分を除去した後菌体濃度を好
ましくはバイロジカルスペース以上に調製して培養・増
殖を停止させ、次いで反応液へ該菌体を分散させるた
め、当然反応せしめる際には菌体増殖の必要は無く、培
養時には高濃度では菌体増殖阻害を生ずる鉄分を、反応
液中では高濃度にすることが可能であり、かつ菌体内に
取込ませ蓄積できる高分子化鉄濃度も高く、高濃度の高
分子化鉄を含有した菌体を製造することを提供する。
【0011】さらに、従来法の場合、培養中において鉄
分を取り込ませようとした場合には、菌体と鉄の接触時
間に培養時間と同程度の16時間以上を必要とするた
め、培地中に添加した二価の水溶性鉄化合物が酸化され
不溶化するため、効率よく利用されなかったが、本方法
では菌体を適宜増殖させ、集菌後に水洗して培養培地成
分を除去した後菌体濃度を好ましくはバイロジカルスペ
ース以上に調製して培養・増殖を停止させ、次いで反応
液へ該菌体を分散させ反応させるため、反応時間を短時
間で終了せしめることが可能であり、水溶性鉄化合物中
の二価鉄が酸化され沈澱する前に二価の鉄分を効率よく
菌体内に取り込ませることが可能である。さらに、二価
鉄を取り込ませた菌体を凍結乾燥等の方法により乾燥さ
せた乾燥菌体、および90℃〜100℃にて加熱抽出し
た抽出物を乾燥した乾燥物中の二価鉄は安定で、保存中
に酸化され三価の鉄となることもほとんどない二価鉄供
給物として使用することが可能である。
【0012】以下に本発明を詳細に説明する。まず、使
用する酵母菌体に関しては、菌体内に鉄分を透過・吸収
して二価鉄を蓄積し、高分子化二価鉄含有菌体となりう
ることが可能な酵母であれば広く対象とすることができ
る。このような菌体は、鉄の高分子化基質である有機化
合物および水溶性鉄化合物を含有する水溶液の条件下に
て鉄分を菌体内に取込み蛋白質等と結合させ、菌体内反
応機構により二価鉄を高分子二価鉄に変換し得るものと
推測される。また、特に本発明で得られる鉄含有菌体
は、動物用飼料や餌料に添加して動物または水産動物に
給与したり、食品へ添加することが主に期待されるた
め、使用する菌体は可食性であることが好ましい。
【0013】上記の酵母菌体に該当するものとしては、
各種の食品製造に用いられ安全性が認められているもの
としてビール酵母,日本酒用酵母,パン酵母,アルコー
ル酵母,ワイン酵母等で知られている例えばサッカロミ
セス属に属する酵母が挙げられ、特に好ましくはサッカ
ロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)に
属する酵母であり、特に市販の酵母でもよく、また、み
そ・醤油等に用いられるものして例えばサッカロミセス
・ロキシ(Saccharomyces rouxii) やチゴサッカロミセ
ス・エスピー(Zygosaccharomyces sp.)に属する酵母
等、その他にもハンセヌラ(Hansenula)属、キャンディ
ダ(Candida)属、トルラスポラ(Torulasupora )属、ト
ルロプシス(Torulopsis)属、ミコトルラ(Mycotorula)属
に属する幅広い範囲の可食性酵母が本発明に使用でき
る。
【0014】このような高分子化鉄を蓄積することので
きる微生物菌体は、予め適当な方法に従って調製された
培地または媒体で適宜培養・増殖したものを用いればよ
い。培養に当たっては、上記に例示した対象とする菌体
のそれぞれを、通常培養する場合に使用されている培養
培地組成例えば炭素源,窒素源,無機等または培養媒体
組成を用い、好適培養温度にて培養すればよく、必要に
応じ予備培地または媒体で種菌培養した後各培養培地ま
たは媒体で適宜培養・増殖せしめればよい。培養を停止
し培養菌体を集菌する時期としては、単に菌体増殖曲線
における対数増殖期後期から定常期後期までの適宜な培
養を行って通常の遠心分離等の手段により集菌すればよ
い。例えば水溶性鉄化合物として硫酸第一鉄を用いる場
合、対数増殖期後期から定常期後期の段階まで適宜培養
して集菌すれば、増殖菌体数が多く好適であるととも
に、該菌体を用いて実質的に菌体増殖を必要としない条
件、好ましくはバイオロジカルスペース以上の菌体濃度
に調製して硫酸第一鉄を含有する反応液と反応せしめた
場合、培養中に鉄を取り込ませるようとした場合と比較
し反応時間を短時間とすることにより、反応液中の二価
鉄が酸化され不溶化することもなく効率的に利用せしめ
ることが可能である。例えば菌体として酵母を用いた場
合は、例えばYPG培地等で種菌培養した後糖蜜培地で
通常25℃〜35℃で12時間〜24時間特に好ましく
は18時間〜20時間培養・増殖させた後培養菌体を集
菌するのが好ましい。
【0015】次いで、該集菌した菌体から培養・増殖に
用いた培養培地または媒体を水等で数回洗浄して洗い流
して除去し、さらに、該菌体を鉄の高分子化基質および
/または水溶性鉄化合物を含有する水溶液に分散せしめ
て鉄を高分子化二価鉄として菌体内に蓄積せしめるが、
この反応をせしめる際、該菌体をバイオロジカルスペー
ス以上の菌体濃度に調製して菌体増殖による鉄の高分子
化基質の消費を完全に停止させ、鉄の高分子基質の消費
を専ら高分子化の反応用に向けさせることが必要であ
る。このバイオロジカルスペース以上の菌体濃度に調製
するとは、菌体懸濁液(反応液)が本質的には該菌体の
増殖を許す成分を含んでいても、懸濁液の一定容積中に
菌体が実質的にそれ以上増殖することのできない状態、
即ち菌体増殖曲線における定常状態の菌体濃度以上の濃
度の状況下に調製することを意味する。例えば、酵母で
は109 コ/ml以上であるので、反応に際しては酵母
では1〜5×109 コ/mlの菌体濃度で行えばよく、
実用上は酵母の懸濁液における菌体濃度の測定は分光光
度計によるOD値で行うことから、対象菌体の増殖曲線
の定常期状態における菌体濃度時点とする場合のOD値
の測定誤差を±10%とすればよい。
【0016】次いで、該菌体を鉄の高分子化基質となり
得る有機化合物および/または水溶性鉄化合物を含有す
る水溶液に分散せしめて、菌体内に高分子化鉄を蓄積せ
しめる。
【0017】反応液中で鉄の高分子化基質となり得る有
機化合物および水溶性鉄化合物を含有する水溶液は、両
方を混合した水溶液にして上述のバイオロジカルスペー
ス以上の菌体濃度に調製された菌体を該水溶液に同時に
分散させても、または逐次にまず該菌体を有機化合物水
溶液に分散させてから水溶性鉄化合物水溶液に分散させ
ても、または分散する順序を逆としてもいづれの過程を
経ていてもかまわず、バイオロジカルスペース以上の菌
体濃度に調製された菌体を上記の反応液に分散・接触せ
しめる過程であればいづれでもかまわない。
【0018】まず、鉄の高分子化基質となり得る有機化
合物とは、菌体内反応機構である高エネルギーリン酸化
合物合成機構、例えば解糖系反応機構やTCA回路反応
機構を作動させるに不可欠な成分であり、即ち菌体にと
ってエネルギー基質となり得る有機化合物であればよ
く、糖および/またはアミノ酸が挙げられる。糖として
は、例えば、単糖類であるグルコース、フルクトース、
ガラクトースや二糖類であるシュクロース、マルトー
ス、トレハロースが挙げられ、特に好ましくはグルコー
スである。アミノ酸としては、例えばロイシン、イソロ
イシン、セリン等のグルコゲニックアミノ酸系であれば
よく、特に好ましくはロイシンまたはイソロイシンであ
る。反応液である該有機化合物水溶液には少なくとも上
記糖および/またはアミノ酸と、必要に応じリン酸塩等
を含有する水溶液であるのが好ましい。
【0019】上記、有機化合物水溶液の反応に用いる
際、該水溶液のpHはpH2〜6特にpH3〜5に調製
するのが好ましい。リン酸塩等を用いた場合には該反応
液を好ましいpHに調製すればよい。有機化合物水溶液
の各々の成分の量的関係については、有機化合物水溶液
全量に対し、糖とアミノ酸は単独かまたは併用してもよ
く、糖は0.3 %〜2%を含有させるのが好ましく、アミ
ノ酸は0.3%〜2%、また必要に応じリン酸塩は0.01
M〜0.3 M用いpH調整することが好ましい。
【0020】次いで、本発明に使用できる鉄の供給源で
ある水溶性鉄化合物は、対象菌体の細胞膜を透過し、菌
体内で蛋白質と結合して高分子化鉄と変換されうる適当
な水溶性の鉄化合物、好ましくは二価の水溶性鉄化合物
であればよく、例えば硫酸第一鉄、塩化第一鉄等の無機
酸と二価鉄との水溶性塩類、クエン酸第一鉄、フマル酸
第一鉄、グルコン酸第一鉄、ラク酸第一鉄、酒石酸第一
鉄、コハク酸第一鉄、乳酸第一鉄等の有機酸と二価鉄と
の水溶性塩類が挙げられるが、特に硫酸第一鉄を用いる
のが好ましい。反応に用いる量としては反応液中の鉄濃
度が10ppm以上、好ましくは50〜500ppmと
なるように水溶性鉄化合物の添加量を調製すればよい。
【0021】上述のとうり、反応液へ菌体を同時または
逐次に分散し、振盪させて反応せしめるが、反応におけ
る反応温度は20℃〜40℃特に好ましくは25℃〜3
5℃で、反応時間は1時間以上、特に2〜12時間反応
せしめるのが好ましい。
【0022】反応後、遠心分離等の手段で集菌し、さら
に回収菌体を水で数回洗浄することにより高分子化され
た鉄を含有する酵母菌体が得られる。また得られた高分
子化鉄含有菌体は必要に応じ凍結乾燥等をして保存すれ
ばよい。
【0023】本発明は、以上のようにして効率的で安定
な高分子化二価鉄含有酵母菌体を得る方法を提供する。
【0024】
【実施例】以下、実施例を上げて本発明を具体的に説明
するが、本発明はこれらによって何ら限定されるもので
はない。
【0025】実施例1 酵母の培養と増殖 pH5に調整したYPD培地(グルコ−ス4%、ペプト
ン1%、イ−ストエキス0.5%、リン酸1カリウム
0.5%、硫酸マグネシウム0.2%)100mlを5
00ml容の三角フラスコに分注し121℃で15分殺
菌した後、サッカロミセス・セレビシエ237NG(市
販商品名:45イースト;東洋醸造社製)を1白金耳植
付け、30℃で24時間振盪培養し種菌とした。その
後、pH5に調整した糖蜜培地(糖蜜10%(蔗糖とし
て4%含有)、尿素0.5%、75%リン酸0.1%、
硫酸亜鉛0.0003%)100mlに種菌5mlを植
付け、30℃で32時間培養して増殖速度を求め、増殖
曲線を図1に示した。このように、培地中に実質的に鉄
分を天然糖蜜由来以外に含有しないことから菌体増殖は
極めて良好であった。
【0026】実施例2 硫酸第一鉄との反応による二価
鉄の酵母への取込み 実施例1の方法により得られた菌体を100mlの水で
3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/mlに
調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度の状
態とし、該菌体を1%グルコース0.1M、リン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解した硫酸第一鉄120mg(鉄濃度として24
0ppm)を加えて30℃4時間振盪して反応せしめ、
遠心分離にて集菌し、さらに菌体を100mlの水で2
回洗浄し、0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100
mlで洗浄し、続いて100mlの水で2回洗浄した後
凍結乾燥し、乾燥菌体1.20g(菌体内鉄濃度995
0ppm)を得た(取込み率95%)。取り込まれた鉄
の98%は二価の鉄として検出された。
【0027】尚、菌体濃度の測定は反応液を水で適宜希
釈し、660nmで吸光度を測定したものであり、また
菌体内に取り込まれた鉄濃度の測定は、乾燥菌体約10
0mgを秤量し湿式灰化した後、原子吸光法にて測定し
たものであり、また菌体内に取り込まれた二価鉄の測定
は、オルトフェナントリン法により測定したものであ
り、以下の実施例および参考例における菌体濃度および
菌体内に取り込まれた鉄の濃度および取り込まれた鉄の
二価鉄の測定はすべて同様の方法にて行った。
【0028】参考例1 予め二価の鉄化合物を添加した
培地で培養した場合の菌体増殖の影響 糖蜜培地100mlに予め硫酸第一鉄を10mg,20
mg,50mg,10mg,250mg(鉄として20
ppm,40ppm,100ppm,200ppm,5
00ppm)を加え、実施例1のYPG培地で培養した
サッカロマイセス・セレビシエ237NGの種菌0.1
mlを植付け、30℃で24時間培養し、14、16、
20、24時間ごとに菌体濃度を測定した。その結果を
表1に示す。
【0029】
【0030】以上から、予め硫酸第一鉄を添加した培地
で培養しながら二価の鉄を菌体に取り込ませようとした
場合、菌体の増殖が阻害された。
【0031】参考例2 予め二価の鉄化合物を添加した
培地で培養した場合の鉄取込みへの影響 糖蜜培地100mlに予め硫酸第一鉄を鉄として100
ppm添加し、実施例1のYPG培地で培養したサッカ
ロミセス・セレビシエ237NGの種菌0.1mlを植
付けた培地で、24時間培養した菌体の菌体濃度は2
3.2(OD660nm )で、菌体内鉄濃度は1200pp
mであり、培地中に添加した鉄の20.4%の取込みし
か見られず、本発明よりも菌体の鉄の取込率みが極めて
低いことがわかった。
【0032】実施例3 クエン酸第一鉄を用いた場合の
鉄取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解したクエン第一鉄を鉄濃度として120ppm
加えて30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離にて
集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し、
0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄
し、続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥
し、乾燥菌体1.22g(菌体内鉄濃度10000pp
m)を得た(取込み率93%)。また、取り込まれた鉄
の98%が二価の鉄として検出された。
【0033】実施例4 塩化第一鉄を用いた場合の鉄取
込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解した塩化第一鉄を鉄濃度として120ppm加
えて30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離にて集
菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し、0.
1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄し、
続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥し、乾
燥菌体1.21g(菌体内鉄濃度9772ppm)を得
た(取込み率94%)。また、取り込まれた鉄の98%
が二価の鉄として検出された。
【0034】実施例5 フマル酸第一鉄を用いた場合の
鉄取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解したフマル酸第一鉄を鉄濃度として120pp
m加えて30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離に
て集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し、
0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄
し、続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥
し、乾燥菌体1.20g(菌体内鉄濃度9250pp
m)を得た(取込み率88%)。また、取り込まれた鉄
の97%が二価の鉄として検出された。
【0035】実施例6 グルコン酸第一鉄を用いた場合
の鉄取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解したグルコン酸第一鉄を鉄濃度として120p
pm加えて30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離
にて集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄
し、0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで
洗浄し、続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾
燥し、乾燥菌体1.19g(菌体内鉄濃度9525pp
m)を得た(取込み率90%)。また、取り込まれた鉄
の98%が二価の鉄として検出された。
【0036】実施例7 ラク酸第一鉄を用いた場合の鉄
取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解したラク酸第一鉄を鉄濃度として120ppm
加えて30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離にて
集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し、
0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄
し、続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥
し、乾燥菌体1.22g(菌体内鉄濃度8810pp
m)を得た(取込み率85%)。また、取り込まれた鉄
の96%が二価の鉄として検出された。
【0037】実施例8 酒石酸第一鉄を用いた場合の鉄
取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.5×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解した酒石酸第一鉄を鉄濃度として120ppm
加えて30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離にて
集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し、
0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄
し、続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥
し、乾燥菌体1.22g(菌体内鉄濃度8909pp
m)を得た(取込み率86%)。また、取り込まれた鉄
の97%が二価の鉄として検出された。
【0038】実施例9 硫酸第一鉄濃度による鉄取込み
への影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.6×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解した硫酸第一鉄を0g(鉄濃度として0pp
m),0.25g(鉄濃度として50ppm),0.5
g(鉄濃度として100ppm),1g(鉄濃度として
200ppm),2.5g(鉄濃度として500pp
m)を各々加えて調製し、30℃4時間振盪して反応せ
しめ、遠心分離にて集菌し、さらに菌体を100mlの
水で2回洗浄し、0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各
100mlで洗浄し、続いて100mlの水で2回洗浄
した後凍結乾燥し、乾燥菌体量と菌体内に取り込まれた
鉄濃度を測定した。その結果を表2に示す。 以上のことから、反応液へ添加する硫酸第一鉄は、1
2.5〜125mg(鉄濃度として50〜500pp
m)を使用することにより良好に菌体に鉄が取り込まれ
た。
【0039】実施例10 反応液のpHによる鉄への影
響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.8×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加し、各々pH2、3、4、5、6に調製し
50mlに懸濁し、硫酸第一鉄を鉄濃度として120p
pm加え、30℃4時間振盪して反応せしめ、遠心分離
にて集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄
し、0.1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで
洗浄し、続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾
燥し、菌体内に取り込まれた鉄濃度を各々測定した。そ
の結果を表3に示す。以上から、反応液のpHは3〜5
に調整することにより、良好に菌体内に鉄が取り込まれ
た。
【0040】実施例11 反応(振盪)温度による鉄の
取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.7×109 コ/m
lに調整して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、1Mリン酸1カ
リウムを添加してpH4に調整し、50mlに懸濁し、
水に溶解した硫酸第一鉄を鉄濃度として120ppm加
えて20℃、25℃、30℃、35℃、40℃の各々の
温度範囲で4時間振盪して反応せしめ、遠心分離にて集
菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し、0.
1規定の塩酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄し、
続いて100mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥し、菌
体内に取り込まれた鉄濃度を各々測定した。その結果を
表4に示す。 以上から、反応せしめる際の反応液の温度は25℃〜3
5℃であることにより良好に菌体内に鉄が取り込まれ
た。
【0041】実施例12 実施例1と同様の条件でYPG培地で24時間フラスコ
培養したサッカロミセス・セレビシエ237NGの種菌
各々500mlを30lジャーファーメンター4基を用
い、pH5に調製して120℃30分加熱滅菌した糖蜜
培地20リットルに植付け、32℃、通気量30リット
ル/分、撹拌速度300rpmで16時間培養した。連
続遠心機を使用して集菌し(120リットル/時間)、
約20リットルの水を加えて菌体を懸濁し、遠心分離し
て菌体を洗浄した。この操作を3回繰り返した後、菌体
濃度を2.5×109 コ/mlに調製してバイオロジカ
ルスペース以上の菌体濃度の状態とし、該菌体を1%グ
ルコース、1Mリン酸1カリウムを添加してpH4に調
整し5リットルに懸濁し、硫酸第一鉄を鉄濃度として1
20ppmとなるように添加し、通気量10リットル/
分、撹拌速度200rpm、反応温度30℃で反応せし
めた。4時間後、遠心分離して集菌し、さらに20リッ
トルの水で3回洗浄し、湿菌体3.5Kgを得た。その
後、7リットルの水を加えて撹拌、分散した後、90℃
15分間加熱し、コチワ式スプレードライヤーを用い、
送風140℃、排風60℃、送液4リットル/時間の条
件でスプレードライし、乾燥粉末1.1Kgを得た(水
分4.1%、菌体内鉄濃度9920ppm)。
【0042】溶出パターンと鉄の分布 上記実施例12で得られた菌体5gを50mlの水に懸
濁し1N苛性ソーダでpH7に調製した後、ポジトロン
破砕機で菌体を破砕し、16000rpmで20分間遠
心分離し、上清36mlを得た(鉄濃度804pp
m)。上清10mlを凍結乾燥した後、2mlの水に溶
解し、その内1mlを用いてセファデックスG−25の
100mlカラム(2×32cm)溶出パターンと鉄の
分布を調べた。その結果、図2に示す通り、9割以上の
鉄が高分子分画に存在した。
【0043】実施例13 グルコース濃度と反応時間に
よる鉄取込みへの影響 実施例2と同様の条件で、サッカロミセス・セレビシエ
FTY−3を30℃で16時間培養して得た培養液60
0mlを遠心分離して集菌し(3000rpm,15
分)、500mlの水で3回洗浄した後、菌体濃度を
1.4×109 コ/mlに調製してバイオロジカルスペ
ースの菌体濃度の状態とし、1Mリン酸1カリウムを添
加してpH4に調整し懸濁して300mlにメスアップ
し、その内50mlを500ml容三角フラスコに分注
し、硫酸第一鉄を鉄として120ppmと、グルコース
0%、0.1%、0.3%、1%、2%、3%、5%の
各々を加えて30℃で振盪し反応せしめた。その後、
2、4、6時間目の各々で菌体濃度を測定し、遠心分離
して集菌し、さらに菌体を100mlの水で2回洗浄し
た後凍結乾燥し、乾燥菌体内に取り込まれた鉄濃度を測
定した。その結果を表5に示す。 以上から、鉄の取込み基質である有機化合物としてグル
コースを使用した場合、添加濃度は0.3ppm以上で
あることが好ましかった。
【0044】実施例14 糖源の種類による鉄取込みへ
の影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.8×109 コ/m
lに調製して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を1%グルコース、フラクトース、
ガラクトース、シュークロース、マルトース、トレハロ
ースを各々含み、1Mリン酸1カリウムを添加してpH
4に調整し、50mlに懸濁し、水に溶解した硫酸第一
鉄を鉄濃度として120ppm加えて、30℃で4時間
振盪して反応せしめ、遠心分離にて集菌し、さらに菌体
を100mlの水で2回洗浄し、0.1規定の塩酸およ
び苛性ソーダ各100mlで洗浄し、続いて100ml
の水で2回洗浄した後凍結乾燥し、菌体内に取り込まれ
た鉄濃度を各々測定した。その結果について、表6に示
す。 以上のことから、鉄の取り込み基質である有機化合物と
してグルコース以外にもフラクトース、シュクロース、
マルトース、トレハロースを使用することにより、良好
に菌体内に鉄を取り込ませることができた。
【0045】実施例15 アミノ酸添加による鉄取込み
への影響 実施例2と同様の条件で、得られた菌体を100mlの
水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.9×109 コ/m
lに調製して、バイオロジカルスペース以上の菌体濃度
の状態とし、該菌体を0.5%のロイシン、イソロイシ
ン、セリンを各々含み、1Mリン酸1カリウムを添加し
てpH4に調整し、50mlに懸濁し、水に溶解した硫
酸第一鉄を鉄濃度として120ppm加えて、30℃で
4時間振盪して反応せしめ、遠心分離にて集菌し、さら
に菌体を100mlの水で2回洗浄し、0.1規定の塩
酸および苛性ソーダ各100mlで洗浄し、続いて10
0mlの水で2回洗浄した後凍結乾燥し、菌体内に取り
込まれた鉄濃度を各々測定した。その結果を表7に示
す。 以上から、鉄の取込み基質である有機化合物としてロイ
シン、イソロイシンを使用することによ良好に菌体に鉄
を取り込ませることが出来た。
【0046】実施例16 酵母をキャンディダ・クルゼ
イとした場合 キャンディダ・クルゼイ(Candeda kruse
i)156−25A(IFO−0841)をYPD培地
で20時間培養し、培養液100mlから得られた菌体
を100mlの水で3回洗浄した後、菌体濃度を1.3
×109 コ/mlに調整して、バイオロジカルスペース
以上の菌体濃度の状態とし、該菌体を1%グルコースを
含み、1Mリン酸1カリウムを添加してpH4に調整
し、25mlに懸濁し、水に溶解した硫酸第一鉄を鉄濃
度として120ppm加えて、30℃で5時間振盪して
反応せしめ、遠心分離にて集菌し、さらに菌体を100
mlの水で2回洗浄し、0.1規定の塩酸および苛性ソ
ーダ各100mlで洗浄し、続いて100mlの水で2
回洗浄した後凍結乾燥し、菌体内に取り込まれた鉄濃度
を測定した。その結果を表8に示す。 以上から、キャンディダ属の酵母を使用した場合も良好
に菌体に鉄を取り込ませることができた。
【0047】実施例17 菌体に取り込まれた二価鉄の
保存安定性 以下に示した4つのサンプルについて、2℃および37
°で0日、5日、10日、1カ月保存した場合の二価鉄
および全鉄をオルトフェナントロリン法にて測定した場
合の、全鉄中に占める二価鉄の割合を表9に示す。 サンプル1. 実施例2で得た酵母乾燥菌体 サンプル2. 実施例12で得た酵母乾燥粉末 サンプル3. 硫酸第一鉄・グルコース水溶液の凍結乾
燥品(鉄として9500ppm含有) サンプル4. 硫酸第一鉄・パン酵母懸濁液の凍結乾燥
品(鉄として9500ppm含有) 以上から、本発明法により菌体内に二価の鉄を取り込ま
せた場合には、乾燥品中の二価鉄の保存安定性が、二価
の鉄化合物よりも格段に優れていることがわかった。
【0047】実施例18 培養液中の攪拌による二価鉄
の酸化 予め糖蜜培地、YPD培地、蒸留水に硫酸第一鉄を鉄と
して0,250,500、2000ppmとなるように
添加し、バッフル付き三角フラスコに100mlを各々
分注し、16時間攪拌を行った後の各液中の二価鉄の測
定を行った。その結果を表10に示す。以上から、予め
培地中に二価の鉄を添加した場合は、攪拌することによ
り培地中に添加した二価の鉄が三価の鉄となり不溶化さ
れたため、非常に利用効率が低下することがわかった。
【0048】
【発明の効果】本発明は、予め鉄分を添加しない実質的
に鉄分を培地組成由来鉄以外含有しない培地で菌体を培
養・増殖させるため、培養時に鉄分による生育阻害が無
く、従来技術にある予め鉄分を添加させた培地で培養・
増殖させる場合に比すと菌体の増殖速度が早く、また増
殖率も優れている方法を提供する。また、本発明は菌体
を培地で充分培養・増殖させ、集菌後に反応液へ該菌体
を分散させるため、菌体を濃縮化することが可能である
ことから反応系を小さくでき、したがって反応後の廃液
を少量化することができ、また、反応液中に鉄以外の金
属を含まないため廃液処理を簡便にする方法を提供す
る。
【0049】さらに、本発明は菌体を適宜増殖させ、集
菌後に水洗して培養培地成分を除去した後菌体濃度を好
ましくはバイロジカルスペース以上に調製して培養・増
殖を停止させ、次いで反応液へ該菌体を分散させるた
め、当然反応せしめる際には菌体増殖の必要は無く、培
養時には高濃度では菌体増殖阻害を生ずる鉄を、反応液
中では高濃度にすることが可能であり、かつ菌体内に取
込ませ蓄積できる高分子化鉄濃度も高く、高濃度の高分
子化二価鉄を二価の鉄として安定に含有した菌体を製造
することを提供する。
【0050】
【図面の簡単な説明】
図1は実施例1で求めた菌体の増殖曲線を示し、図2は
実施例12で求めた溶出パターンと鉄の分布を示す。
フロントページの続き (51)Int.Cl.5 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:865) (C12N 1/16 C12R 1:72) (C12P 3/00 C12R 1:865) (C12P 3/00 C12R 1:72)

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】二価の鉄分を菌体内に蓄積することのでき
    る可食性の酵母を培養して得た菌体をバイオロジカルス
    ペース以上の菌体濃度とし、該菌体を高分子化基質であ
    る有機化合物および二価の水溶性鉄化合物を含有する水
    溶液に分散せしめることにより、該菌体に二価の鉄分を
    安定に蓄積せしめることを特徴とする二価鉄含有酵母菌
    体の製造法。
  2. 【請求項2】二価の鉄分を菌体内に蓄積することのでき
    る可食性の酵母が、サッカロミセス(Saccharo
    myces)属、トルラスポラ(Torulasupo
    ra)属、トルロプシス(Torulopsis)属、
    ミコトルラ(Mycotorula)属、キャンディダ
    (Candida)属、ハンゼヌラ(Hansenul
    a)属に属する酵母である請求項1項記載の製造法。
  3. 【請求項3】二価の水溶性鉄化合物が、無機酸または有
    機酸と二価鉄との水溶性塩類である請求項1項記載の製
    造法。
  4. 【請求項4】二価鉄との水溶性塩類が、硫酸第一鉄、ク
    エン酸第一鉄、塩化第一鉄、フマル酸第一鉄、グルコン
    酸第一鉄、ラク酸第一鉄、酒石酸第一鉄、コハク酸第一
    鉄、乳酸第一鉄である請求項3項記載の製造法。
  5. 【請求項5】高分子化基質である有機化合物が、糖およ
    び/またはアミノ酸である請求項1項記載の製造法。
  6. 【請求項6】糖、がグルコース、フラクトース、シュク
    ロース、マルトース、またはトレハロースであり、アミ
    ノ酸がロイシンまたはイソロイシンである請求項5項記
    載の製造法。
  7. 【請求項7】高分子化基質である有機化合物を含有する
    水溶液が、少なくとも糖および/またはアミノ酸および
    リン酸塩を含有してなる請求項1項記載の製造法。
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