JPH0517207A - マグ・クロ質れんが - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 マグネシアクリンカーと、SiO₂５wt％以下を
含有するクロム鉄鉱とから主としてなるマグ・クロ質れ
んがであって、マグネシアクリンカーは、該クリンカー
に対し２wt％以上、10wt％以下に当たるZrO₂を焼結又は
電融によって粒界に分散させた粒子よりなり、れんが中
のクロム鉄鉱配合量を15wt％以上、50wt％以下とする。 【効果】 強度、耐熱スポーリング性を損なうことな
く、優れた耐食性が得られる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、溶湯の精錬容器の内
張りに使用する、強度、耐熱スポーリング性、耐食性に
優れるマグ・クロ質れんがを提供しようとするものであ
る。

【０００２】これまで、脱ガス装置等の溶湯精錬容器の
内張り炉材として、高温で容積安定性を有し、高強度
（高耐摩耗性）、高耐熱スポーリング性を有するマグ・
クロ質れんがが使用されてきた。しかしながら、近年、
高級鋼の需要が増大するにしたがって、二次精錬比率が
増加し、脱ガス槽の稼動率の向上のため槽寿命、すなわ
ち内張り炉材寿命の延長に対する要望が強まってきてい
る。

【０００３】

【従来の技術】従来から容器寿命を延長するために、そ
の内張り炉材として用いるマグ・クロ質れんがの耐食性
を向上する試みがあり、その一環として、MgO 成分、Cr
₂O₃ 成分以外の第３成分として、耐火度、耐食性向上の
観点から、ZrO₂成分に着目した提案がなされている。

【０００４】例えば、特開昭60-108361 号公報には、Mg
O 安定化ZrO₂粉末とマグネシアクリンカー及びCr₂O₃ 粉
末とを配合して焼成したMgO ‐ZrO₂‐Cr₂O₃ 質焼結耐火
物およびその製造方法が開示されている。また、特開昭
54-163910 号公報には、粒径0.2mm 以下のZrO₂粉末をマ
グネシアクリンカーと、クロム鉄鉱に添加した高強度の
マグ・クロ質れんが及びその製造方法が開示されてい
る。

【０００５】しかしながら、これらの手段はZrO₂を粉末
としてマグネシアクリンカーなどと配合する限りピクロ
クロマイト結合が阻外されるため、高温強度の低下や高
気孔率化による耐食性の低下などの問題が生じる。ま
た、ZrO₂粉末の安定化剤として最も一般的なCaO を用い
た場合、CaO 成分が、優先的にスラグ中へ離溶すること
により、耐食性の低下は避け得ない。したがって、ZrO₂
成分の粉末を用いてマトリックスに配合することは、耐
食性が不十分となり実用上満足すべきものとはならな
い。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】この発明は、精錬容器
の内張りに用いる耐火物における前記した問題点を有利
に解決しようとするもので、高強度、高耐熱スポーリン
グ性を損なうことなく、高耐食性を付与したマグ・クロ
質れんがを提供することを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明は、ジルコニア
を含有するマグネシアクリンカーとSiO₂含有量の少ない
クロム鉄鉱を用いることが、マグ・クロ質れんがの耐食
性の向上に有効であることを見出したことによるもので
ある。

【０００８】すなわち、この発明の要旨は、マグネシア
クリンカーと、SiO₂５wt％以下を含有するクロム鉄鉱と
から主としてなるマグ・クロ質れんがであって、マグネ
シアクリンカーは、該クリンカーに対し２wt％以上、10
wt％以下に当たるZrO₂を焼結又は電融によって粒界に分
散させた粒子よりなり、れんが中のクロム鉄鉱配合量は
15wt％以上、50wt％以下であることを特徴とするマグ・
クロ質れんがである。

【０００９】ここに、ZrO₂及びMgO の純度は、それぞれ
95wt％以上、98wt％以上とすることが好ましく、クロム
鉄鉱のSiO₂以外の主要成分組成は、Cr₂O₃ ：30％以上及
び Fe₂O₃：20％以下であることが望ましい。

【００１０】

【作用】この発明は、マグ・クロ質れんがの特性である
高温での容積安定性、溶湯が撹拌されることに対応する
高耐摩耗性（高強度）、高耐熱スポーリング性などを維
持しながら高耐食性を付与するために、マグ・クロ質れ
んがを、ジルコニア含有マグネシアリンカーとSiO₂含有
量の少ないクロム鉄鉱とから構成されることにある。

【００１１】すなわち、高耐火度、高耐食性を示すZrO₂
成分をマグネシアクリンカー内の粒界に分散含有させる
ことによりマグネシアクリンカーのSiO₂、FeO などの外
来成分による溶損を抑制させること、さらには、SiO₂含
有量の少ないクロム鉄鉱を用いることにより、れんが焼
成時の液相生成量を低減させ、ピクロクロマイト生成に
よる直接結合度を高めることなどにより耐食性を向上さ
せるものである。

【００１２】つぎに、これらの作用と成分組成範囲の限
定理由などを実験例を交えて以下に述べる。まず、図１
にクロム鉄鉱中のSiO₂含有量がマグ・クロ質れんがの耐
食性に及ぼす影響についての調査結果を示す。

【００１３】ここに、供試体の製造条件は以下の通りで
ある。マグネシアクリンカーにはMgO 99.5wt％の純度の
ものを用い、クロム鉄鉱は種々SiO₂含有量の異なるもの
を用いて、マグネシアクリンカー：クロム鉄鉱の配合比
率（重量比）を80：20に調整したのち、塩化マグネシウ
ム、又は硫酸マグネシウムの水溶性バインダーを適当量
添加して混練し、500kg/cm² 以上の成形圧で成形後、18
00℃で焼成して供試体とした。また、耐食性の調査は、
侵食試験としてロータリースラグ侵食法を用い、侵食剤
として転炉スラグ：普通鋼の比率（重量比）が１：１の
混合物を用い、1650℃・３時間の条件で侵食したのち、
供試体の容損量を測定した。

【００１４】図１は、上記測定結果をもとに、クロム鉄
鉱中のSiO₂含有量を横軸に、クロム鉄鉱中のSiO₂含有量
6.4 wt％を用いた供試体の上記測定値を100 とした相対
値表示の溶損指数を縦軸にして示したものである。

【００１５】図１から明らかなように、クロム鉄鉱中の
SiO₂含有量が５wt％を超えると溶損指数は急激に増加し
ている。すなわち、耐食性が劣化している。したがっ
て、上記結果より耐食性の向上をはかるためクロム鉄鉱
中のSiO₂含有量は５wt％以下とすることが必要である。

【００１６】なお、上記結果を考察すると以下の通りで
ある。クロム鉄鉱中のSiO₂成分は主として粒界に存在
し、焼成時粒界移動によりマグネシアクリンカーとの液
相結合を形成する。この液相結合部は容易に外来スラグ
成分と反応して低融化し、マグネシアクリンカー及びク
ロム鉄鉱粒の離脱が促進される。したがって、液相結合
部が多いほど、すなわち、SiO₂含有量が多いほどマグ・
クロ質れんがの溶損が進行するものと推察される。

【００１７】ついで、図２にマグネシアクリンカー内の
ZrO₂量がマグ・クロ質れんがの耐食性に及ぼす影響につ
いての調査結果を示す。

【００１８】ここで、供試体の製造条件は以下の通りで
ある。ジルコニア含有マグネシアクリンカーは、あらか
じめ所定量のZrO₂粉末とMgO 粉末を混合して1800℃〜20
00℃で焼成したものを用い、ジルコニア含有マグネシア
クリンカー：クロム鉄鉱の配合比率（重量比）を80：20
に調整した後、前記と同様の混練、成形、焼成を行い供
試体とし、前記と同様の測定を行った。

【００１９】図２は、上記測定結果をもとに、ジルコニ
ア含有マグネシアクリンカー内のZrO₂量を横軸に、ジル
コニアを含有しないマグネシアクリンカーを用いた供試
体の上記測定値を100 とした相対表示の溶損指数を縦軸
にして示したものである。また、図２には、比較のた
め、マグネシアクリンカーとクロム鉄鉱にZrO₂を粉末の
形で添加して焼成した供試体の測定結果も併記した。な
お、この場合のZrO₂（wt％) は、（ZrO₂／マグネシアク
リンカー＋ZrO₂）×100として算出したものである。

【００２０】図２から明らかなように、ジルコニア含有
マグネシアクリンカー内のZrO₂量が２〜10wt％の範囲内
で溶損指数は低くなり耐食性向上効果が認められる。し
たがって、上記結果よりジルコニア含有マグネシアクリ
ンカー内のZrO₂量は２wt％以上、10wt％以下とする必要
がある。

【００２１】上記のジルコニア含有マグネシアクリンカ
ー内のZrO₂の耐食性向上効果については、ZrO₂はマグネ
シア結晶粒界にAl₂O₃, SiO₂, Fe₂O₃等の他の不純物と共
に存在するが、耐火度が高いため焼成時に液相生成に寄
与することがなく、さらに、高耐食性を有しているた
め、外来のスラグ成分と反応することがないことから、
マグネシア粒界の侵食を抑止し、結晶粒の離脱を抑制す
るためと推察される。一方、ZrO₂量が多過ぎる場合に
は、マグネシア結晶の結合を分断する形態、さらには独
立してZrO₂が存在する形態になり、マグネシアクリンカ
ーとクロム鉄鉱との焼結を阻外し、ZrO₂を粉末で添加し
た場合にみられるように、マグ・クロ質れんがの高気孔
率化を招き耐食性が劣化するものと考えられる。

【００２２】なお、図２において、マグネシアクリンカ
ー、クロム鉄鉱にZrO₂を粉末の形で添加した比較例は、
前記したようにZrO₂粉末を添加することによりピクロク
ロマイト結合が阻外されるため、溶損指数は増加し耐食
性は低下している。

【００２３】つぎに、れんが中のクロム鉄鉱配合量の限
定理由について述べる。クロム鉄鉱配合量が15wt％より
少ないと、マグネシアが過多の状態となってピクロクロ
マイト結合が少なくなりマグ・クロ質れんがとしての強
度低下を招くほか、クロム鉄鉱とジルコニア含有マグネ
シアクリンカーの焼成時の膨張収縮差に起因するマイク
ロクラックの発生が少なくなることにより内部歪が集積
し易くなり、このため耐熱スポーリング性が低下する。
一方、50wt％より多いと耐食性が低下する。

【００２４】したがって、れんが中のクロム鉄鉱配合量
は、15wt％以上、50wt％以下とする必要がある。

【００２５】

【実施例】実施例１ ZrO₂粉末（ZrO₂ 92 wt％）とマグネシア粉末（MgO 99.5
wt ％）とを配合比率（重量比）５：95で混合し2000℃
で焼成したジルコニア含有マグネシアクリンカーと、表
１に示すＡの成分組成のクロム鉄鉱（SiO₂ 3.8wt％) と
を、75：25の比率（重量比）で配合し、上記マグネシア
クリンカーとクロム鉄鉱との合計量に対し硫酸マグネシ
ウム水溶液を５wt％注入して混練し、500kg/cm² 以上の
成形圧で成形した後1750℃で焼成したマグ・クロ質れん
がをこの発明の適合例とし、

【００２６】一方、マグネシアクリンカー（MgO 98wt％
でZrO₂を含まない) と、表１に示すＢの成分組成のクロ
ム鉄鉱（SiO₂ 6.4wt％) とを、75：25の比率（重量比）
で配合し、上記と同様の方法で焼成したマグ・クロ質れ
んがを従来例とした。

【００２７】

【００２８】上記２種類のマグ・クロ質れんがを85t RH
脱ガス槽の下部槽側壁に張り分け、390 ヒート処理後の
状態を調査した。

【００２９】この結果、適合例のマグ・クロ質れんが
は、従来例のマグ・クロ質れんがにくらべ、40mm突出し
た状態になっていて、耐食性に優れていることを示し
た。

【００３０】実施例２ 上記した適合例のマグ・クロ質れんがを85t RH脱ガス装
置の下部槽側壁に使用しその寿命を調査した。この結
果、従来の寿命が390 ヒートであったものが460ヒート
となり、大幅な寿命延長が達成できた。

【００３１】

【発明の効果】この発明は、ジルコニアを含有するマグ
ネシアクリンカーとSiO₂５wt％以下のクロム鉄鉱とから
成るマグ・クロ質れんがであって、この発明によるマグ
・クロ質れんがは、強度、耐熱スポーリング性を損なう
ことなく、優れた耐食性を示し、当該れんがを使用する
ことによって、RH脱ガス槽の寿命を大幅に延長させるこ
とができるばかりでなく、DH脱ガス槽、AOD, VODなどの
他の精錬容器にも有利に適合することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】クロム鉄鉱中のSiO₂含有量がマグ・クロ質れん
がの耐食性におよぼす影響を示すグラフである。

【図２】マグネシアクリンカー内のZrO₂量がマグ・クロ
質れんがの耐食性におよぼす影響を示すグラフである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山本 博 福岡県北九州市八幡西区東浜町１番１号 黒崎窯業株式会社内 (72)発明者 玉木 健之 福岡県北九州市八幡西区東浜町１番１号 黒崎窯業株式会社内

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 【請求項１】 マグネシアクリンカーと、SiO₂５wt％以
   下を含有するクロム鉄鉱とから主としてなるマグ・クロ
   質れんがであって、 マグネシアクリンカーは、該クリンカーに対し２wt％以
   上、10wt％以下に当たるZrO₂を焼結又は電融によって粒
   界に分散させた粒子よりなり、れんが中のクロム鉄鉱配
   合量は15wt％以上、50wt％以下であることを特徴とする
   マグ・クロ質れんが。