JPH05172072A - 流体圧縮機 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 組立性の向上を図ると共に部品点数を増やす
ことなく効率のよい圧縮状態を確保する。 【構成】 シリンダ１７の回転に対して回転体２１を相
対的に旋回運動させる左右一対の螺旋状の溝２５が形成
された回転体２１の旋回時に容積の大きい作動室２９か
ら容積の小さい作動室２９へ順次流体を移送させて外部
へ吐出する流体圧縮機において、シリンダ１７の回転に
対して回転体２１を旋回させるオルダム機構３５を、回
転体２１の中央部位に設けられた動力伝達部２３と嵌合
方向に沿ってスライド自在に嵌合し合うと共に一部分が
開放された開口部３７と、開口部３７を横切る中央軸心
線上で、かつ、右側側方及び左側側方に設けられた対向
し合う一対の係合凹部３９を有する断面Ｃ形状のオルダ
ムリング４１と、各係合凹部３９と中央軸心線に沿って
摺動自在に係合され、少なくとも一方のブレード２７の
端部を押えると共にシリンダ１７に固着された一対のブ
レードストッパー４３とで構成した。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、例えば冷凍サイクル
の冷媒ガスを圧縮するのに適する螺旋方式の流体圧縮機
に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より一般的な圧縮機として、レシプ
ロ方式、ロータリ方式等のものが知られており、その外
に、シリンダの吸込端側から作動室に流入した冷媒をシ
リンダの吐出端側の作動室へ順次移送させながら圧縮し
ていき外部へ吐出する螺旋方式の流体圧縮機が提供され
ている。

【０００３】螺旋方式の圧縮機の概要は、例えば、図６
に示す如くステータ１０１及びロータ１０３から成る駆
動手段によって回転するシリンダ１０５と、シリンダ１
０５内にｅだけ偏心して配置され一側、図面左側にオル
ダム機構１０７を介してシリンダ１０５に対し相対的に
旋回可能な回転ロッド１０９とを備え、回転ロッド１０
９の両支軸部１１１，１１１は各軸受１１３，１１３に
より回転自在に両端支持されている。回転ロッド１０９
の外周面には中央部から左右両側へ向かってピッチが徐
々に小さくなる一対の螺旋状の溝１１５が形成され各螺
旋状の溝１１５には、螺旋状のブレード１１７がそれぞ
れ出入自在に嵌合している。ブレード１１７の外周面は
シリンダ１０５の内周面と密着し合い、ブレード１１７
は回転ロッド１０９と一体的に旋回する。シリンダ１０
５に対する回転ロッド１０９は外周面の一部をシリンダ
１０５の内周面の一部と線接触しながら偏心して旋回す
るためブレード１１７が螺旋状の溝１１５に対して出入
することで回転ロッド１０９とシリンダ１０５との間の
空間に複数の作動室１１９が軸方向に沿って形成される
ようになる。作動室１１９の容積は、図７に示す如くブ
レード１１７が嵌合される螺旋状の溝１１１のピッチＰ
によって決定され、前記ブレード１１７によって形成さ
れる作動室１１９の容積は、中央部から左右両側に向か
って徐々に小さくなるため、吹込パイプ１２１から吹込
孔１２３を介して作動室１１９内に取込まれた流体は、
左右両側へ向けて順次移送される間に圧縮されて吐出パ
イプ１２５から外に吐出されるツインタイプの構造とな
っている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前記した如くツインタ
イプの流体圧縮機において、回転ロッド１０９にはシリ
ンダ１０５に対しオルダム機構１０７を介して相対的に
旋回運動が与えられる。回転ロッド１０９に旋回運動を
与えるオルダム機構１０７は、回転ロッド１０９の一
側、図面左側に設けられているために、動力は図面左側
から入力されるアンバランスな状態となる。このため
に、回転ロッド１０９の両側では、運動のずれが生じ、
これが回転ロッド１０９の捩れを発生させていく。この
捩れは、図面右側の回転ロッド１０９の運動の遅れを招
来し、シリンダ１０５と回転ロッド１０９との間のクリ
アランスを規定範囲を越えて大きくする等の不具合が起
きる。この結果、ブリード１１７によって仕切られた各
作動室１１９はガス漏れが多くなり、圧縮損失の増加か
ら圧縮効率が低下するようになる。また、運転中は各作
動室１１９の差圧の影響で場合によって螺旋状の溝１１
５から中央部側となるブレード１１７の端部が外れ出る
問題があった。

【０００５】この場合、前記問題を解消する手段とし
て、例えばオルダム機構１０７を回転ロッド１０９の左
右両側に設け、動力が回転ロッド１０９の両側から同時
にバランスよく入力させる手段が考えられるが、この手
段は構造が複雑になる。また、動力が左右同時に入力さ
れるよう同期させる調整が面倒となる等組付け性におい
て、また、部品点数の増加によるコストアップ及び部品
管理工数の面において望ましくない。

【０００６】そこで、この発明は組付性の向上を図ると
共に、部品点数を増やさなくても優れた圧縮効率が得ら
れる流体圧縮機を提供することを目的としている。

【０００７】

【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、この発明は、駆動手段により回転動力が与えられる
シリンダと、シリンダの軸方向に沿って偏心して配置さ
れ中央部から左右両側へ向かってピッチが徐々に小さく
なるか、又は左右両側から中央部へ向かってピッチが徐
々に小さくなる左右一対の螺旋状の溝が形成された円柱
状の回転体と、前記シリンダの回転に対して回転体を相
対的に旋回運動させるオルダム機構と、前記螺旋状の溝
に出入自在に嵌挿されると共に前記シリンダの内周面に
密着する外周面を有し前記シリンダと回転体との間を中
央部から左右両側へ向かって容積が順次小さくなるか、
又は左右両側から中央部へ向かって容積が順次小さくな
る複数の作動室に区画する左右一対の螺旋状のブレード
とを備え、回転体の旋回時に容積の大きい作動室から容
積の小さい作動室へ順次流体を移送させて外部へ吐出す
る流体圧縮機において、前記オルダム機構を、回転体の
ほぼ中央部位に設けられた動力伝達部と嵌合方向に沿っ
てスライド自在に嵌合し合うと共に一部分が開放された
開口部と、前記開口部を横切る中央軸心線上で、かつ、
右側側方及び左側側方に設けられた対向し合う一対の係
合凹部を有する断面Ｃ形状のオルダムリングと、前記各
係合凹部と中央軸心線に沿って摺動自在に係合され、少
なくとも一方のブレードの端部を押えると共に前記シリ
ンダに固着された一対のブレードストッパーとで構成し
てある。

【０００８】

【作用】かかる流体圧縮機によれば、シリンダからの動
力はほぼ中央部位から入力される結果、回転体にはバラ
ンスのとれた動力が与えられ大きな捩れは発生しない。
このため、圧縮損失は起こらず効率のよい運転が可能と
なる。また、オルダム機構は一箇所で済むと共にブレー
ドを抑える専用のブレード抑え部材の省略が図れる。

【０００９】

【実施例】以下、図１乃至図５の図面を参照しながらこ
の発明の一実施例を詳細に説明する。図１において、１
は冷凍サイクルに使用される密閉型の流体圧縮機３の密
閉ケースを示しており、密閉ケース１の一方には冷凍サ
イクルの吸込パイプ５が、他方には吐出パイプ７がそれ
ぞれ設けられている。密閉ケース１内には駆動手段とし
ての電動要素９および圧縮手段としての圧縮要素１１が
それぞれ配置されている。

【００１０】電動要素９は、密閉ケース１の内面に固定
されたステータ１３と、その内側に設けられた回転可能
なロータ１５とを有している。

【００１１】圧縮要素１１は両端が開放されたシリンダ
１７を有しており、シリンダ１７は密閉ケース１の内面
に固定された左右の軸受１９，２０により回転自在に両
端支持されている。各軸受１９，２０はシリンダ１７の
端部が回転自在に嵌合したボス部１９ａ，２０ａと、こ
れらボス部１９ａ，２０ａよりも大径で前記密閉ケース
１の内面に固定された基部１９ｂ，２０ｂとからなり、
シリンダ１７の両端は気密的に閉塞されている。

【００１２】シリンダ１７の内部には、シリンダ１７の
内径よりも小さい円筒状の回転体２１がシリンダ１７の
軸方向に沿って配設されている。回転体２１は鉄系また
は、その他の材料からなり、その中心軸線Ａがシリンダ
１７の中心軸線Ｂに対して距離ｅだけ図１において下方
に偏心して配設され一部が内周面と線接触している。

【００１３】回転体２１の両端部にはそれぞれ径の細い
支軸部２２，２２が設けられ、これら支軸部２２，２２
はそれぞれ前記各軸受１９，２０のボス部１９ａ，２０
ａに形成された軸受穴１９ｃ，２０ｃに回転自在に挿入
支持されている。さらに、回転体２１には、動力伝達部
２３と螺旋状の溝２５がそれぞれ設けられている。

【００１４】螺旋状の溝２５は、中央部から両側へ向か
ってピッチが順次小さくなるよう左右に一対設けられ、
各螺旋状の溝２５には、螺旋状のブレード２７，２７が
弾性力を利用して出入自在に嵌め込まれている。

【００１５】したがって、ブレード２７により、各作動
室２９が形成されると共に吹込部側となる中央の作動室
２９の容積が一番大きくなっている。以下、吐出部側と
なる左右両側へ向けて各作動室２９の容積が順次小さく
なるよう設定され、吐出部側となる左右両端の最終作動
室２９は、各軸受１９，２０に形成され密閉ケース１内
に開放された吐出孔３１と接続連通している。また、吸
込部側の第１番目の作動室２９は、回転体２１に設けら
れたメイン通路３３を介して前記冷凍サイクルの吸込パ
イプ５と接続連通している。これにより、吸込パイプ５
からシンリダ１７内に吸引される冷媒は第１番目の作動
室２９に途切れることなく確実に導入されるようになっ
ている。

【００１６】一方、動力伝達部２３は、前記螺旋状の溝
２５と連続すると共に回転体２１のほぼ中央部位に形成
された断面四角形の角柱状となっていて、この動力伝達
部２３にはオルダム機構３５が設けられている。

【００１７】オルダム機構３５は、図３に示すように一
部分が開放された開口部３７と、開口部３７を横切る中
央軸心線Ｗ上で、かつ、右側側方及び左側側方に設けら
れた対向し合う一対の係合凹部３９，３９とを有する断
面Ｃ形状のオルダムリング４１と、前記各係合凹部３
９，３９と中央軸心線Ｗに沿って摺動自在（矢印方向）
に係合された一対のブレードストッパー４３とから成
り、ブレードストッパー４３，４３は、取付けボルト４
５，４５により前記シリンダ１７に固定支持されると共
に図５に示すように中央部位側となるブレード２７の端
部２７ａを押えるよう機能する。

【００１８】これにより、前記回転体２１はシリンダ１
７に対して偏心した位置で無理なく結合状態が確保され
ると共に、シリンダ１７の回転力はオルダム機構３５を
介して回転体２１に伝達されるようになっている。

【００１９】従って、電動要素９の作動によりシリンダ
１７がロータ１５と一体的に回転することで、シリンダ
１７に対して回転体２１はオルダム機構３５を介して偏
心して回転運動する。この時、回転体２１の外周面と、
それに対向するシリンダ１７の内周面との間には相対速
度が生じ、一部線接触しながらシリンダ１７内で内転
し、シリンダ１７に対して旋回運動するようになる。

【００２０】なお、前記螺旋状の溝２５には、密閉ケー
ス１内の圧力が上昇することで、密閉ケース１の底部に
蓄えられた潤滑オイルが油導入路（図示していない）を
介して送り込まれることでブレード２７の出入時の潤滑
が確保されるようになっている。

【００２１】次に、このように構成された流体圧縮機の
動作について説明する。

【００２２】まず、電動要素９に通電するとロータ１５
が回転し、このロータ１５と一体にシリンダ１７も回転
する。シリンダ１７が回転すれば、オルダム機構３５を
介して回転体２１も回転する。シリンダ１７に対して回
転体２１は旋回運動し、この結果、中央部の作動室２１
に取り込まれた冷媒等の流体は閉じ込められた状態で回
転体２１の回転にともない左右両側の作動室２９へ向け
て順次送られながら圧縮され、吐出パイプ７から外へ吐
出されるようになる。

【００２３】この作動時において、シリンダ１７からの
動力は中央部位のオルダム機構３５を介して回転体２１
に伝えられるために、動力伝達に片寄りは発生せず、バ
ランスよく伝達される。したがって、回転体２１の捩れ
は最小に抑えられるようになり、作動室２９の効率のよ
い圧縮状態が得られる。一方、差圧の発生により、ブレ
ード２７は圧力が小さい吹込部側、矢印イ方向へ移動
し、溝２５から外れ出ようとするが、ブレードストッパ
ー４３によってその動きかが規制されるようになる。

【００２４】なお、この実施例では、中央部の吹込部側
から左右両側の吐出部側へ向けて圧縮する流体圧縮機に
この発明を適用したが、左右両側の吹込部側から中央部
の吐出部側へ向けて圧縮する流体圧縮機に適用しても同
様の効果が得られる。

【００２５】

【発明の効果】以上、説明したように、この発明によれ
ば、中央部位に設けたオルダム機構によってシリンダか
らの回転動力を回転体に対して片寄ることなくバランス
良く伝えることができる。したがって、回転体の捩れを
最小に抑えられ、作動室の圧縮効率の向上が図れる。ま
た、オルダム機構はオルダムリングの開口部によって組
付け易く、しかも、一箇所で済むため、部品点数、コス
ト面、組付工数の面において大変好ましいものとなる。
しかも、ブレードを抑える機能を有しているため、ブレ
ードを抑える部材の省略が可能となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明を実施した流体圧縮機の切断面図。

【図２】回転体の切断面図。

【図３】オルダム機構の分解斜視図。

【図４】図５のIV−IV線断面図。

【図５】オルダム機構の取付状態を示した拡大断面図。

【図６】従来例を示した図１と同様の断面図。

【図７】従来例を示した回転ロッドを示した斜視図。

【符号の説明】

９ 駆動手段（電動要素） １７ シリンダ ２１ 回転体 ２５ 螺旋状の溝 ２７ 螺旋状のブレード ２９ 作動室 ３５ オルダム機構 ３７ 開口部 ３９ 係合凹部 ４１ オルダムリング ４３ ブレードストッパー

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 駆動手段により回転動力が与えられるシ
   リンダと、シリンダの軸方向に沿って偏心して配置され
   中央部から左右両側へ向かってピッチが徐々に小さくな
   るか、又は左右両側から中央部へ向かってピッチが徐々
   に小さくなる左右一対の螺旋状の溝が形成された円柱状
   の回転体と、前記シリンダの回転に対して回転体を相対
   的に旋回運動させるオルダム機構と、前記螺旋状の溝に
   出入自在に嵌挿されると共に前記シリンダの内周面に密
   着する外周面を有し前記シリンダと回転体との間を中央
   部から左右両側へ向かって容積が順次小さくなるか、又
   は左右両側から中央部へ向かって容積が順次小さくなる
   複数の作動室に区画する左右一対の螺旋状のブレードと
   を備え、回転体の旋回時に容積の大きい作動室から容積
   の小さい作動室へ順次流体を移送させて外部へ吐出する
   流体圧縮機において、前記オルダム機構を、回転体のほ
   ぼ中央部位に設けられた動力伝達部と嵌合方向に沿って
   スライド自在に嵌合し合うと共に一部分が開放された開
   口部と、前記開口部を横切る中央軸心線上で、かつ、右
   側側方及び左側側方に設けられた対向し合う一対の係合
   凹部を有する断面Ｃ形状のオルダムリングと、前記各係
   合凹部と中央軸心線に沿って摺動自在に係合され、少な
   くとも一方のブレードの端部を押えると共に前記シリン
   ダに固着された一対のブレードストッパーとで構成した
   ことを特徴とする流体圧縮機。