JPH0517160A

JPH0517160A - 塩化第一鉄廃液からの塩酸及び硫酸鉄の回収方法

Info

Publication number: JPH0517160A
Application number: JP16726991A
Authority: JP
Inventors: Keita Yamada; 慶太山田
Original assignee: Asaka Riken Industrial Co Ltd
Current assignee: Asaka Riken Industrial Co Ltd
Priority date: 1991-07-08
Filing date: 1991-07-08
Publication date: 1993-01-26

Abstract

(57)【要約】【目的】、エッチング処理工程等から排出される廃液か
ら、有用性のある塩酸及び硫酸鉄を分離回収することに
より、効率的な資源の再利用を計り、無駄のないリサイ
クル循環系を形成する塩酸及び硫酸鉄の回収方法を提供
する。【構成】塩酸含有銅廃液に鉄を添加して銅と塩化第一鉄
廃液に分離し、この塩化第一鉄廃液に、濃硫酸を添加混
合し、この混合液を晶析させ、液相と固相を分離し、液
相の塩酸と硫酸の混合物は回収し、固相を晶析させて硫
酸鉄七水和物を取り出す。これを精製して硫酸鉄結晶を
回収する。次に、前記の回収した塩化水素及び塩酸を、
蒸留し濃度３５％以上の塩酸とする。さらに、缶出液に
共沸剤として硫酸を添加し、濃度３５％以上の塩酸を取
り出す。また、硫酸は濃縮後、再び共沸剤として循環利
用する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、工業生産過程で排出さ
れる塩化第一鉄廃液から塩酸及び硫酸鉄を分離回収する
回収方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】工業生産過程では、様々の化学薬品が使
用され排出される。例えば、銅プリント配線基板のエッ
チングには、塩化第二銅を主成分とし、これに塩酸及び
過酸化水素を添加したエッチング剤及び塩化第二鉄を主
成分とするエッチング剤が多量に使用されている。エッ
チング後、その廃液は塩化銅を含有する溶液と成って排
出される。一般に、これらエッチング廃液からは、化学
還元処理によって銅を回収する方法が採られている。こ
れは、かかるエッチング廃液に鉄を添加して鉄還元反応
によって銅を析出回収しており、このとき塩化第一鉄液
が廃液として系外に排出される。

【０００３】また、鉄板へメッキする場合、用途により
その表面を塩酸で洗浄する前処理が施される場合があ
る。その処理排水は、酸性廃液の塩化第一鉄液となって
系外へ排出される。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかし、かかるエッチ
ング廃液に対する従来の処理方法では、銅は回収される
が、その後の廃液処理に問題があった。すなわち、かか
る廃液（塩化第一鉄液）は酸性が強く、このまま放流す
ることはできないため、中和法により中和して廃棄放流
しなければならなかった。そのため、中和費用が嵩むば
かりでなく、たとえ中和したとしても継続的かつ大量の
処理水及び大量の金属スラッジは、環境に与える影響も
無視できない状態にある。また、廃液処理の許容量を越
えた所謂未処理廃液のダブつきは、製品のエッチング加
工量、又はメッキ加工量等にも影響を及ぼすようになっ
てきており、逆にエッチング等の加工量は、廃液の処理
能力如何に係わるのが現状となってきていた。

【０００５】また近年の流れとして、地域環境保全に加
えて、資源の再利用も重要な問題になってきており、工
業生産過程においても、これらへの対応が迫られてい
る。そのため、エッチング・メッキ加工業界等において
も、かかる廃液の効果的処理による公害の未然防止と、
資源の再利用が重要な懸案となっている。そこで、本発
明は、上記現状に鑑み、この解決を目的としてなされた
ものである。すなわち、各種工業生産過程から排出され
る塩化第一鉄廃液から、有用性のある塩酸及び硫酸鉄を
分離回収することにより、効率的な資源の再利用を計
り、無駄のないリサイクル循環系を形成することのでき
る、塩化第一鉄廃液からの塩酸及び硫酸鉄の回収方法を
提供するものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するため次の工程を採る。図１は、その工程の概略フ
ローを示す図である。先ず、原料としては、塩化第一鉄
廃液を用いる。ここで利用される塩化第一鉄廃液は、次
のようにして排出されるものである。

【０００７】例えば、銅プリント配線基板のエッチング
工程により排出される塩化水素、塩化第二銅を含む塩酸
含有銅廃液に鉄を添加して反応させ、銅を析出回収し、
そのときの廃液として塩化第一鉄液が系外に排出され
る。また、同じく、エッチング工程において排出され
る、塩化銅液と塩化鉄との混合液に鉄を添加して反応さ
せることにより塩化第一鉄液が作られる。さらまた、鉄
板のメッキ面の前処理して塩酸で洗浄したときの廃液と
しても塩化第一鉄液が排出される。

【０００８】以上のようにして排出された塩化第一鉄液
に、濃硫酸を添加混合して反応させ、混合液を晶析さ
せ、気相に塩酸、液相には塩酸と硫酸の混合物、固相に
は硫酸第一鉄七水和物（FeSO₄7H₂O) を得る。かかる気
相の塩酸は回収され、またかかる液相と固相は分離さ
れ、液相の塩酸と硫酸の混合物は、分離後、母液として
晶析缶に戻される。固相の硫酸第一鉄七水和物（以下
「硫酸鉄」と略称する。）には、未だ塩化水素が含有す
るため、次の工程を行う。硫酸鉄を塩酸を除去した硫酸
含有鉄廃液に溶解し、これを晶析して取り出した硫酸鉄
を、さらに洗浄水で洗浄して遠心分離機を用いて生成し
て、塩化水素が低減されて精製された硫酸鉄結晶を回収
すことができる。残りは、前出の硫酸鉄の溶解に使用さ
れて循環することになる。これにより、塩酸含有鉄廃液
を、塩酸と硫酸鉄とに分離し回収することができる。

【０００９】次に、ここで回収した塩酸の濃度は、原料
濃度及び添加する硫酸濃度によって約２０％から約３７
％の間の変化が見られる（後述の表１の塩酸ｆの項を参
照。）。そこで、さらに有用性のある濃度に上げるた
め、さらに上記工程に次の工程を付加する。前記工程で
回収した濃度３５％に満たない塩化水素及び塩酸を蒸留
する。その結果、留出液においては、濃度３５％以上の
塩酸とすることができる。ここで用いられる蒸留装置
は、通常一般的な公知のものが用いられている。

【００１０】さらに、上記工程の後、蒸留塔底の蒸留缶
またはボトムから系外に抜き出されたいわゆる缶出液に
は、もはや蒸留では回収することのできない、共沸状態
の塩酸が存在するため、これを更に、塩酸を回収するた
め抽出蒸留工程を付加する。共沸剤として硫酸を添加
し、共沸点を移動させて塩酸を回収する。これにより濃
度３５％以上の塩酸を取り出すことが可能となる。共沸
剤として用いられる硫酸は、当初は共沸剤として系外か
ら硫酸が添加されるが、抽出蒸留後は、缶出液の希釈硫
酸を濃縮することにより、再びこれを共沸剤として抽出
蒸留に使用する。これにより、硫酸は再利用され抽出蒸
留工程内を循環する。

【００１１】なお、各工程の反応条件は、特に限定的な
ものではなく、それぞれの工程の対象物の組成により適
宜、最適の温度、圧力が決定される。

【００１２】

【作用】かかる工程により、塩酸含有鉄廃液（又は塩化
第一鉄廃液）は、硫酸の添加により塩化鉄が硫酸鉄に換
えられ、晶析工程で硫酸鉄の結晶化が行われ、精製の後
回収される。さらに、晶析工程で気相又は液相として生
じる塩酸は、その濃度にバラツキがあるため、蒸留によ
り濃度３５％以上の塩酸として回収され、缶出液として
残留する塩酸は、次の抽出蒸留によって濃縮され濃度３
５％以上の塩酸が取り出される。この時の缶出液の硫酸
は、濃縮され再び共沸剤として、再利用される。なお、
晶析工程の段階で回収される塩酸は、塩化第一鉄廃液及
び添加する硫酸濃度の組成によって高濃度（３５％以
上）のものが得られる場合がある。

【００１３】

【効果】以上の構成により、本発明は以下のような効果
を奏する。塩酸含有鉄廃液に硫酸を添加して、硫酸鉄と
塩酸とに分離して回収するため、エッチング工程で排出
された廃液を、廃棄放流することがなく、すべて有効に
活用することができるばかりでなく、他の工業生産過程
で排出される廃液を塩酸含有鉄廃液に変換することによ
り上述の回収方法を活用することができる。

【００１４】ここで精製回収した硫酸鉄は、医薬品、消
毒剤、インキ、及び媒染剤等の原料として付加価値の高
い製品として有効に活用することができる。また、分離
回収した塩酸も、本発明の蒸留、抽出蒸留工程を経るこ
とにより濃度の高い塩酸とすることができるため、工業
的利用性のある塩酸溶液として再利用が可能となる。こ
こで回収された塩酸は、塩素化反応で得られたいわゆる
副成塩酸とはその品質が大きく異なり、通常エッチング
工程で用いられている合成塩酸と同等の品質を有する組
成が認められた。したがって、エッチング工程で排出さ
れた廃液を原料として本願方法で回収精製された塩酸
は、再びエンチング工程で十分使用に耐える塩酸溶液と
することができ、資源の再利用が可能である。

【００１５】さらに、添加する硫酸は、鉄と結合して硫
酸鉄の結晶として使用されるもの以外は、母液として系
内に戻して再利用されるため、消費した分のみが補充さ
れる。そのため、原料の塩化第一鉄廃液はすべて有用な
硫酸鉄と塩酸に換えられ、資源の効率的な回収をするこ
とができる。硫酸は消費分のみが補充され、かつ廃水は
ほんの僅かであるため、閉鎖したリサイクル循環系を形
成することができ、無駄に破棄される含有成分を無くす
ることができる効果がある。

【００１６】中和法により中和して廃液を処理するもの
でないため、コスト節減に役立つばかりでなく、公害防
止、及び環境保全にも寄与するものである。

【００１７】

【実施例】次に本願発明にかかる回収法を実証するた
め、幾つかのサンプルに基づいて、以下に、実施例を示
すが、本発明はこれに限定されるものではない。表１に
示す実施例No.1〜No.６は、塩化水素ａと、塩化第一鉄
ｂと、水ｃを含む銅プリント配線基板のエッチングで生
じた塩酸含有銅廃液を鉄還元して得た塩酸含有鉄廃液ｄ
（又は、同じく銅プリント配線基板のエッチングで生じ
た塩酸含有銅・鉄混合廃液を鉄還元して得た塩酸含有鉄
廃液ｄ、又は鋼の塩酸洗浄で得た塩酸含有鉄廃液ｄ）に
濃硫酸ｅを加え、晶析塔で晶析した後に、回収した塩酸
ｆの濃度と回収量、及び硫酸鉄七水和物ｇの重量と、こ
れに含まれる塩化水素ｈの重量を示したものである。

【００１８】

【表１】表２は、晶析塔から取り出された硫酸第一鉄七水和物ｇ
の塩化水素ｈ（表１）の量を低減させるため、硫酸第一
鉄七水和物ｇの約４倍重量相当の塩酸を除去した硫酸含
有鉄廃液に当該硫酸第一鉄七水和物ｇを溶解し、その溶
液を、さらに別の晶析塔で晶析して回収した場合の、硫
酸第一鉄七水和物ｊと、その中の塩化水素ｋの量を示し
たものである。

【００１９】

【表２】表３は、上記別の晶析塔で晶析して回収した硫酸第一鉄
七水和物ｊの塩化水素ｋ（表２）の量をさらに低減させ
るために、当該硫酸第一鉄七水和物ｊと等重量相当の水
ｌで洗浄し、遠心分離機にて遠心分離をさせた場合の、
硫酸第一鉄七水和物ｍと、その中に含まれる塩化水素ｎ
の量を示したものである。

【００２０】

【表３】表４は、表１に示す実施例No１〜No４で回収した塩酸ｆ
をさらに濃縮するため、蒸留塔で蒸留し、得られた留出
液中の塩酸ｏと、缶出液中の塩酸ｐの回収重量及び濃度
を示したものである。なお、実施例No５、No６は、所定
の濃度に達したため、系外に取り出し回収した。

【００２１】

【表４】表５は、缶出液中の塩酸ｐに共沸剤としての硫酸を添加
して抽出蒸留塔で抽出蒸留した結果得られた、塩酸ｑの
濃度及び回収重量を示したものである。

【００２２】

【表５】

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の回収方法の工程概略を表わすフロー図
である。

Claims

【特許請求の範囲】

【請求項１】塩化第一鉄液に硫酸を反応させ、該反応液
を晶析させて、塩酸と硫酸鉄結晶とに分離し回収するこ
とを特徴とする塩化第一鉄廃液からの塩酸及び硫酸鉄の
回収方法。
【請求項２】前記晶析の後に、回収した塩酸を蒸留し、
留出液として濃塩酸を回収すると共に、缶出液に対して
は、共沸剤として硫酸を添加して抽出蒸留を行い、さら
に濃塩酸を留出液として回収し、かつ液相の硫酸は、濃
縮して前記抽出蒸留の共沸剤として再び用いることを特
徴とする請求項２記載の塩化第一鉄廃液からの塩酸及び
硫酸鉄の回収方法。