JPH05162312A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 ノズル部に撥インク処理することなくインク
メニスカスを安定にし、かつ不要なインクによるインク
滴噴射への影響をなくす。 【構成】 インクに対する濡れ性の高い材料に加圧室５
を複数平行に配列した流路板１の端面に、撥インク性の
高い最表面層２-１と、該最表面層２-１よりも撥インク
性の低い接着層２-２と、ベース層２-３とからなる多層
構造のノズル板２を接着して接着層２-４を形成し、該
ノズル板２の加圧室５に対応する位置にエキシマレーザ
ー等のレーザー光線によりノズル３の穴加工を施す。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【技術分野】本発明は、インクジェット記録装置におけ
るインクジェット記録ヘッドに関し、より詳細には、イ
ンク滴の噴射を安定にするためにノズル板を濡れ性の異
なる材料で構成したインクジェットヘッドである。例え
ば、濡れ性のコントロールを伴う樹脂アブレーション
（融除）加工等に応用される。

【０００２】

【従来技術】オンデマンド型のインクジェット記録ヘッ
ドは、インク供給路と、該インク供給路から供給される
インクを加圧するための加圧室と、該加圧室に設けられ
たノズルとを有し、画像信号に基づいて加圧室に印加さ
れる加圧手段により圧力波を発生して該圧力波に基づい
てノズルよりインク滴を噴射し、記録媒体に記録するた
めのインクジェット記録装置の要部をなすものである。
本発明に係る公知の技術文献として、例えば、特開平３
−２０７６５７号公報における「インクジェット記録ヘ
ッド及び該記録ヘッドの製造方法」がある。この記録ヘ
ッドの製造方法は、まず、インク流路の先端部に設けら
れる吐出口（ノズル）面を未加工の状態で切断して研削
加工する。次に、切断された吐出口（ノズル）を形成す
るためにレーザー光を用いて穴加工を施し、インク流路
に連通させるものである。

【０００３】この記録ヘッドの製造方法では、インク流
路は感光性樹脂をパターン露光して、これを現像・硬化
して形成される。従って、流路壁から吐出口（ノズル）
表面までは同一材質で形成される。流路壁は、インク充
填やインクのメニスカス安定性からインクに対してよく
濡れるように、濡れ性の優れた材料であることが望まし
い。これに対して、吐出口（ノズル）表面は、インク液
滴の吐出方向を安定されること、および複合材料から構
成されることを考慮した場合、撥インク性となることが
望ましい。従って、上記の条件を充たすためには、同一
材料で形成された吐出口（ノズル）表面に撥インク処理
を行わなければならない。上記の方法によれば、撥イン
ク処理をする場合は、同一面上で同一素材であるために
撥インク処理剤の塗布は容易となる。しかし、経時的変
化や耐摩粍性および均一性を確保することが必要で、そ
の処理方法の管理が困難である。

【０００４】

【目的】本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされた
もので、ノズル部材を、濡れ性の異なる多層構造とする
ことにより撥インクの処理工程を省くこと、また、ノズ
ル最表面層の撥インク性の高い層をノズル近傍で残し、
他のノズル最表面層の部分を除去することにより、ノズ
ル表面に任意に親インク領域と撥インク領域とを設け、
ノズル近傍の不要なインクを親インク領域に移動させる
作用を与えることにより、雑音振動から生じる不要イン
クによる飛翔インク滴の軌道の曲りとか空気吸引を防止
し、インク滴噴射を安定にするようにしたインクジェッ
ト記録ヘッドを提供することを目的としてなされたもの
である。

【０００５】

【構成】本発明は、上記目的を達成するために、（１）
インク供給路と、該インク供給路から供給されたインク
を加圧する加圧室と、該加圧室の端部に設けられ、加圧
室に作用する圧力波によりインク滴を噴射するノズルを
設けたノズル板とを有するインクジェット記録ヘッドに
おいて、前記ノズルはノズル板の加圧室に対応する位置
に穿孔され、前記ノズル板をインクに対する濡れ性の異
なる材料を複合した板状の多層構造としたこと、更に
は、（２）前記（１）において、ノズル板を樹脂などの
有機材料を用いること、更には、（３）前記（１）にお
いて、ノズル板をガラス，金属などの無機材料を用いる
こと、更には、（４）前記（１）において、前記ノズル
板を、有機材料と無機材料とを組合せた多層構造板状体
としたこと、更には、（５）前記（１）において、前記
ノズル板の材料構成を、最表面層の材料の撥インク性を
他の層の材料の撥インク性よりも高くしたこと、更に
は、（６）前記（１）において、前記ノズル板における
最表面層をノズル周辺部を残して部分的に除去するこ
と、更には、（７）前記（１）において、前記ノズル板
の穴形成をレーザー光線を使用して行うこと、更には、
（８）前記（６）において、前記ノズル板表面層の部分
的除去をレーザー光線を使用して行うこと、或いは、
（９）インク供給路と、該インク供給路から供給された
インクを加圧する加圧室と、該加圧室の端部に設けら
れ、加圧室に作用する圧力波によりインク滴を噴射する
ノズルを有するインクジェット記録ヘッドにおいて、前
記ノズルを、加圧室部材の端部と、接着剤と、撥インク
性が他の部材よりも高い板状部材とで構成したこと、更
には、（１０）前記（９）において、前記ノズルの板状
部材を部分的に除去したこと、更には、（１１）前記
（９）において、前記ノズル板の穴形成をレーザー光線
を使用して行うこと、更には、（１２）前記（１０）に
おいて、前記ノズル板表面層の部分的除去をレーザー光
線を使用して行うことを特徴とするものである。以下、
本発明の実施例に基づいて説明する。まず、本発明を適
用するインクジェット記録ヘッドの一例として、圧電体
を加圧手段とするインクジェット記録ヘッドの基本構成
について述べる。

【０００６】図８（ａ）,（ｂ）,（ｃ）は、インクジェ
ット記録装置のインクジェットヘッドの基本構成を示す
図で、図（ａ）は構成要素を示す斜視図、図（ｂ）は流
路板の裏面を示す斜視図、図（ｃ）は構成要素を一体に
接合したときの斜視図である。図中、１は流路板、２は
ノズル板、３はノズル、４は隔壁、５は加圧室、６はイ
ンク室、７はインク供給口、８は圧電体、９は仕切スリ
ット、１０は歪部、１１は充填剤、１２は基板である。

【０００７】図示において、流路板１には、インク供給
口７よりインクの供給を受けてインクを収容するインク
室６が、図（ｂ）に示すごとく裏面に凹部として設けら
れており、更に該インク室６に連通して隔壁４により区
画されてインクの流路となり、加圧によりインク内に圧
力波を発生させる加圧室５が複数平行して設けられてい
る。流路板１には、順に圧電体８と基板１２とが接合さ
れ、圧電体８には加圧室５に対応して加圧する歪部１０
が設けられている。歪部１０は仕切スリット９により区
画され、該仕切スリット９内には弾性のある軟質な充填
剤１１が充填されている。流路板１の加圧室５のノズル
例５ａには、加圧室５に対応したノズル３を有するノズ
ル板２が接合され、図８（ｃ）に図示する如く一体構成
される。歪部１０に画像情報に基づく信号が印加される
と、加圧室５内は体積変化して圧力波を発生し、ノズル
よりインク滴を噴射する。

【０００８】図１は、本発明におけるインクジェット記
録ヘッドのノズルおよび加圧室を説明するための部分断
面図で、図中、１は流路板、２はノズル板、２-１は最
表面層、２-２，２-４は接着剤、２-３はベース層、３
はノズル、４は隔壁、５は加圧室である。

【０００９】図示において、ノズル板２は、ノズル３側
から最表面層２-１と接着層２-２とベース層２-３とか
らなり、流路板１のノズル３側に接着することにより接
着層２-４を形成して多層構造としたものである。ここ
で、最表面層２-１は、他層である接着層２-２や２-４
とベース層２-３および流路板１を構成する材料よりも
撥インク性の高い材料が使用されている。また、ノズル
３は、予めノズル板２に穿孔されたものではなく、ノズ
ル板２を流路板１に接着した後に穴加工されたものであ
る。

【００１０】図２は、図１のノズルの穴加工する以前に
おいて、ノズル板を流路板に接合した状態を示す断面図
で、図中、図１と同じ作用をする部分には図１と同一の
参照番号を付してある。

【００１１】ノズル板２を構成する材料としては、ＵＶ
（紫外線）アブレーション加工が可能なポリマフィルム
や樹脂やガラスおよびセラミックス等が用いられる。こ
のとき、前述の如く最表面層２-１の材料は、他の構成
部材である接着層２-２や２-４とベース層２-３および
流路板１を構成する材料よりも撥インク性の高い材料を
選ぶ。このために、最表面層２-１のインクに対する接
触角は９０℃以上であることが望ましい。これに対し
て、接着層２-２や２-４とベース層２-３および流路板
１は、インクに濡れ易いものを選ぶ。これらの材料とし
ては、表面張力が大きく、また官能基等によるインク成
分の吸着を起こすものが望ましい。ノズル３の穴加工
は、希ガスとハロゲンガスとの混合気体を放電励起する
ことで、ＵＶ（紫外）光を発振するエキシマレーザー発
生装置を用いる。すなわち、エキシマレーザー発生装置
から発生するＵＶ（紫外）光を用い、コンフォーマルマ
スク法あるいはマスクイメージ法などによりアブレーシ
ョン加工を行う。

【００１２】図３（ａ）,（ｂ）は、本発明におけるイ
ンクジェット記録ヘッドの他の実施例を説明するための
図で、図３（ａ）はノズル側から見た部分正面図、図３
（ｂ）は図３（ａ）の矢視Ａ−Ａ線断面図で、図中、２
-５は最表面層、２-６はリング部、２-７はノズル外周
部で、その他、図１と同じ作用をする部分は、図１と同
一の参照番号を付してある。

【００１３】図示において、表面層２-５はノズル板２
の他の構成膜の材料よりも撥インク性の高い材料からな
っており、ノズル３を中心としてノズル３近傍の周辺部
にリング部２-６を設けている。リング部２-６は隣り同
士で重なり、接着層２-２が露出する。ノズル３の外周
には最表面層２-５からなるノズル外周部２-７が形成さ
れ、隣接するノズル３の間は接着層２-２により区画さ
れる。次に、ノズル３の一つに着目して効果を述べる。
ノズル３からインク滴を噴射したとき微速なサテライト
滴が発生したり、雑音振動などによりノズル近傍に不要
なインクが発生してノズル３近傍に付着した場合、ノズ
ル外周部２-７と接着層２-２との間で濡れ性の差や段差
の作用により、前記不要なインクは露出接着層２-２又
はノズル３の内部に移動し易くなる。すなわち、ノズル
３の近傍には不要インクの溜りが発生しにくくなり、更
に滴噴射の安定性が向上する。最表面層２-５の部分的
な除去は、エキシマレーザー発光装置によるＵＶ（紫
外）光を最表面層２-５に照射部を定めるための別マス
クを用いてＵＶ（紫外）光アブレーション加工を行うこ
とによりできる。また、ＹＡＧ（イツトリューム・アル
ミニウム・ガーネット）レーザーやＣＯ₂（炭酸ガス）
レーザー等による熱加工を組合せることにより、面粗さ
をコントロールすることができる。また面粗さを選択す
ることにより必要な濡れ性のものが得られる。

【００１４】図４は、図３のインクジェット記録ヘッド
の他の実施例を説明するためのノズル側から見た部分図
で、図中、２-８は不要インク通路、２-９はインク吸収
部材であり、その他、図３と同じ作用をする部分は、図
３と同一の参照番号を付してある。

【００１５】図示のインクジェット記録ヘッドは、図３
に図示したと同様に最表面層２-５を部分的に除去する
とともに、部分的に除去して露出した接着層２-２のリ
ング部２-６に不要インク通路２-８を連通し、更に該不
要インク通路２-８に多孔材質のインク吸収部材２-９を
連通したものである。該インク吸収部材２-９は多孔材
質であるからインク吸収性が優れている。従来リング部
２-６に収容された不要なインクは長期間使用するとリ
ング部２-６内を充たし、終にはインク溢れをもたらし
たが、インク吸収部材２-９を設けることにより、リン
グ部２-６のインクは不用インク流路２-８を経てインク
吸収材２-９に吸収されるので、不要なインクの溢れを
防止することができる。

【００１６】図５，図６は、本発明におけるインクジェ
ット記録ヘッドの更に他の実施例を説明するためのノズ
ルおよび加圧室の部分断面図で、図６は、図５のノズル
穴加工を施す以前の図で、図中、５-１は流路板端部
で、その他、図１と同じ作用をする部分は、図１と同一
の参照番号を付してある。

【００１７】図５のインクジェット記録ヘッドは、ノズ
ルの穴加工をノズル板２のみに施すのではなく、流路板
１にも穴加工するものである。すなわち、図６に図示す
るように、流路板１の加圧室５の加工を流路板ノズル側
５ａを開口させずに流路板端５-１を残して面加工し、
該流路板端５-１面に撥インク性の最表面層２-１を接着
し、該最表面層２-１と流路板端５-１との間に接着層２
-２を形成するものである。この場合も、最表面層２-１
の撥インク性は接着層２-２や流路板１の隔壁４よりも
高い。また、ノズル３の穴加工も図１の場合と同様にエ
キシマレーザーから得られるＵＶ（紫外）光を用い、コ
ンフォーマルマスク法あるいはマスクイメージ法などに
よりアブレーション加工によりなされる。

【００１８】図７（ａ）,（ｂ）は、本発明によるイン
クジェット記録ヘッドの作用を説明するための図で、図
７（ａ）は図１の場合、図７（ｂ）は図５の場合におけ
るノズル近傍のインクメニスカスを示す断面図で、図
１，図５の加圧室５を紙面に垂直方向に切断したもので
ある。

【００１９】ノズル３を形成する最表面層２-１は撥イ
ンク性の材料であり、その内側の層の材料はインクに濡
れ易い材料であるから、最表面層２-１のインクに対す
る接触角は他の層よりも大きい。このため、インクのメ
ニスカスの接部は最表面層２-１とその内側の接着層２-
２の境界線部に存在し、安定した凹面を形成するので、
インク滴噴射もこの状態からなされ、安定したインク滴
の噴射が得られる。

【００２０】

【効果】以上の説明から明らかなように、本発明による
と、以下のような効果がある。 （１）請求項１〜３,５及び構成２，３，７，１１に対
応する効果：ノズル板をインク濡れ性の異なる材料を用
いた層構造としているので、撥インク処理をすることな
く、メニスカス接部位置を固定できるので、安定したイ
ンク滴噴射が得られる。 （２）請求項４及び構成８，１０，１２に対応する効
果：ノズル表面に撥インク領域と、親インク（濡れやす
い）領域をつくり、ノズル近傍の不要インク溜りの発生
を抑えているので、さらに滴噴射安定性は向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明におけるインクジェット記録ヘッドの
ノズルおよび加圧室を説明するための部分断面図であ
る。

【図２】 図１のノズルの穴加工する以前において、ノ
ズル板を流路板に接合した状態の断面図である。

【図３】 本発明におけるインクジェット記録ヘッドの
他の実施例を説明するための図である。

【図４】 図３のインクジェット記録ヘッドの他の実施
例を説明するためのノズル側から見た部分図である。

【図５】 本発明におけるインクジェット記録ヘッドの
更に他の実施例を説明するためのノズルおよび加工室の
部分断面図である。

【図６】 本発明におけるインクジェット記録ヘッドの
更に他の実施例を説明するためのノズルおよび加工室の
部分断面図である。

【図７】 本発明によるインクジェット記録ヘッドの作
用を説明するための図である。

【図８】 インクジェット記録装置のインクジェットヘ
ッドの基本構成を示す図である。

【符号の説明】

１…流路板、２…ノズル板、２-１…最表面層、２-２，
２-４…接着剤、２-３…ベース層、３…ノズル、４…隔
壁、５…加圧室。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 平川 利和 東京都大田区中馬込１丁目３番６号 株式 会社リコー内 (72)発明者 石井 雄一郎 東京都大田区中馬込１丁目３番６号 株式 会社リコー内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 インク供給路と、該インク供給路から供
   給されたインクを加圧する加圧室と、該加圧室の端部に
   設けられ、加圧室に作用する圧力波によりインク滴を噴
   射するノズルを設けたノズル板とを有するインクジェッ
   ト記録ヘッドにおいて、前記ノズルはノズル板の加圧室
   に対応する位置に穿孔され、前記ノズル板をインクに対
   する濡れ性の異なる材料を複合した板状の多層構造とし
   たことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
2. 【請求項２】 前記ノズル板を、有機材料と無機材料と
   を組合せた多層構造板状体としたことを特徴とする請求
   項１記載のインクジェット記録ヘッド。
3. 【請求項３】 前記ノズル板の材料構成を、最表面層の
   材料の撥インク性を他の層の材料の撥インク性よりも高
   くしたことを特徴とする請求項１記載のインクジェット
   記録ヘッド。
4. 【請求項４】 前記ノズル板における最表面層をノズル
   周辺部を残して部分的に除去することを特徴とする請求
   項１記載のインクジェット記録ヘッド。
5. 【請求項５】 インク供給路と、該インク供給路から供
   給されたインクを加圧する加圧室と、該加圧室の端部に
   設けられ、加圧室に作用する圧力波によりインク滴を噴
   射するノズルを有するインクジェット記録ヘッドにおい
   て、前記ノズルを、加圧室部材の端部と、接着剤と、撥
   インク性が他の部材よりも高い板状部材とで構成したこ
   とを特徴とするインクジェット記録ヘッド。