JPH05155731A - 歯科用印象材または石膏の練和方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 歯科用の印象材または石膏を水と練和すると
きに、ペーストへの気泡の混入を防いで、欠陥のない歯
型原型または精密賦形用型を製造できるようにする。 【構成】 シリコーンオイルをノニオン系界面活性剤で
乳化した水性エマルジョンを、適量添加して水との練和
を行なう。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、歯科領域において使用
する印象材または石膏を、水と練和する方法の改良に関
する。

【０００２】

【従来の技術】よく知られているとおり、補綴の準備の
ためには、まず印象材とよばれる、硬化性のシリコーン
ゴムまたはアルギン酸塩と石膏などからなる可塑性の材
料で患者の歯型原型をとり、次にそれを用いて石膏の精
密賦形用型をつくる。 賦形用型の製造に使用する石膏
は一般にα型半水石膏であって、３０〜４０％の混水率
で水と練和したとき、凝結時間が１５〜２０分間、凝結
線膨脹係数が０．２８％程度である。

【０００３】精密な賦型にとって重要なことは、石膏の
練和に当ってペースト中に気泡を入れないことである。
歯科用石膏では、混水率が低くペーストの粘度が高い
ために気泡が入りやすく、入ると型に欠陥が生じる。
石膏の使用に先立って行なう印象材の水との練和に関し
ても、これと同じ問題がある。 まず原型を正確につく
ることが先決であるという意味では、やはり気泡の入っ
ていない印象材ペーストをつくることは重要である。

【０００４】しかし、印象材にしても石膏にしても、こ
れまで適切な気泡混入防止策は見出せず、もっぱら歯科
技工士の熟練に頼るほかなかった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
の問題を解決し、気泡の混入を避けて歯科用の印象材ま
たは石膏を水と練和することを可能にした練和方法を提
供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明の歯科用の印象材
または石膏の練和方法は、歯科用の印象材または石膏に
水を練和して使用するに当り、シリコーンオイルをノニ
オン系界面活性剤を乳化剤として水中に分散させてなる
エマルジョンを添加することを特徴とする。

【０００７】

【作用】シリコーンオイルを水性エマルジョンにしたも
のは市販されているが、その用途は水に対する消泡剤、
すなわち排水処理のばっ気工程などで、泡立った水に添
加して泡を消すことにあった。

【０００８】そのような処理剤が歯科用の印象材および
石膏の水との練和に当って気泡が混入するのを防ぐ効果
があることは、本発明者がはじめて見出したところであ
って、その作用は、ペーストの流動性を高めることにあ
ると解される。

【０００９】石膏の凝結時の膨脹は、適度であれば精密
な型をとる上で好都合であるが、大きすぎるとかえって
不都合になる。 前記のように歯科用のα型半水石膏は
他の用途に向けるβ型の半水石膏にくらべて、凝結時の
膨脹の度合が高い。 本発明者の経験によれば、消泡剤
とかコンクリートの流動化剤として知られる薬剤の多く
は、歯科用石膏に添加したとき、凝結時の膨脹を助長す
る傾向がみられる。本発明に従ってシリコーンオイルを
ノニオン系界面活性剤で水エマルジョンにしたものは、
石膏の凝結時の膨脹率を高めない点で好ましい。 ただ
し、その場合でも、後記する例にみるように添加量が過
大になると膨脹率が高まるから、気泡混入防止の効果が
確保できる範囲内で、適切な添加量をえらぶべきであ
る。

【００１０】水と練和して使用する印象材はアルギン酸
塩を含むものが多いので、それを代表して例を示すが、
他の親水性高分子物質を含むものについても本発明が同
様に有効であることは、容易に理解されるとおりであ
る。

【００１１】

【実施例１】アルギン酸塩系の歯科用印象材の粉末１
６．８ｇを、水４０ｍｌと練和した。この水には、練和
に先立って、消泡剤として市販されている「プロナー
ル」（東邦化学工業（株）の商品、シリコーンオイルを
ノニオン系界面活性剤で乳化した水性エマルジョン、有
効成分３０％）を、種々の量添加して、軽く撹拌してお
いた。

【００１２】練和は３０秒間行ない、得られた印象材ペ
ーストから正確に５ｍｌをはかり取り、１０分間放置し
て硬化させた。 硬化体の重量を測定し、５回の平均値
を取った。 その結果を表１に示す。

【００１３】 表１ エマルジョン 硬化体の 添加量（％＊） 重量（ｇ） ０ ５．２７５ ＊ 印象材の粉末の ０．５ ５．２９８ 重量を基準とする。 １．０ ５．３３０ １．５ ５．３４４ ２．０ ５．３５０ ２．５ ５．３５５ ３．０ ５．３１８ このデータは、同じ混水量でも適量のエマルジョンの添
加により気泡の混入を防止して、無添加の場合より密度
の高い硬化体が得られること、また添加量が多過ぎても
かえって効果が低くなることを示している。

【００１４】

【実施例２】歯科用石膏１００ｇに水３３ｇを加えて練
和し、その際、上記「プロナール」のエマルジョンを種
々の量添加した。

【００１５】石膏ペーストをポリエチレンのチューブに
充填して凝結させ、その体積を測定した。 その結果
を、練和時の作業性とともに表２に示す。

【００１６】 表２ エマルジョン 凝結体の 練和時の 添加量（ｇ） 体積（ml） 作業性 ０ ６６．４ − ０．５ ６４．６ 不使用時と同じ １．０ ６３．６ 若干好転 １．５ ６２．４ やや良好 ２．０ ６２．０ 良 好 ２．５ ６１．７ 〃 ３．０ ６１．９ 〃 ３．５ ６２．９ 〃 上の結果から、ある程度の量のエマルジョンを添加する
ことにより気泡の混入を防いで密な凝結体が得られるこ
と、および添加量が多量に過ぎると、かえって密な凝結
体が得難くなることがわかる。 これは消泡剤が凝結時
の膨脹を増大させるためと考えられる。

【００１７】

【発明の効果】本発明により、歯科用の印象材または石
膏を水と練和するときに、気泡の混入を効果的に防い
で、欠陥のない歯型原型および精密賦形用型を製作する
ことが可能になった。 使用する添加剤はにおいがなく
無害であるから、練和および型取りの作業は、患者にと
っても歯科技工士にとっても快適に行なえる。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 歯科用の印象材に水を練和して使用する
   に当り、シリコーンオイルをノニオン系界面活性剤を乳
   化剤として水中に分散させてなるエマルジョンを添加す
   ることを特徴とする歯科用印象材の練和方法。
2. 【請求項２】 歯科用の石膏に水を練和して使用するに
   当り、シリコーンオイルをノニオン系界面活性剤を乳化
   剤として水中に分散させてなるエマルジョンを添加する
   ことを特徴とする歯科用石膏の練和方法。