JPH05154057A - 調理用プレート - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 優れた均熱性を有し、使用に際し衛生的で非
汚染性の性状を備える黒鉛製の調理用プレートを提供す
る。 【構成】 嵩密度1.7 g/cc、気孔率20％以下、平均気孔
径５μm 以下の特性を有する黒鉛板の表面に耐熱性樹脂
もしくはセラミックス材を被覆形成してなる調理用プレ
ート。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、食肉や野菜類を加熱調
理するためのプレートに係り、詳しくは特定性状の黒鉛
材料を基材とした均熱性に優れる調理用プレートに関す
る。

【０００２】

【従来の技術】肉や野菜などの生食品に熱を加えて調理
する加熱プレートには、フライパン、鍋、金網、鉄板な
どがあり、古くから広く使用されている。これらの調理
用プレートは、一般に鉄系やアルミ合金系の金属材料、
ガラスや陶磁器といったセラミックス材によって作製さ
れている。

【０００３】このうち、金属系の加熱プレートは、熱伝
導率の高い材料を軽重量にするために薄肉化している関
係で、加熱した際に全面が均一に熱せられる均熱性に乏
しく、部分的な焦げ付きや焼けむらが生じる欠点があ
る。この種の現象を解消するため、調理する金属面にフ
ッ素系樹脂を被覆したものも市販されているが、被覆樹
脂層の密着強度が十分でないため剥離しやすい問題があ
る。またセラミックス系の加熱プレートは熱伝導性の低
い材料を破壊し難い程度の厚みに成形しているため、高
重量で熱効率が悪い欠点がある。

【０００４】このよう金属またはセラミックス材質から
なる従来の加熱プレートに代えて、内部に多数の微細な
孔隙を形成した板状の炭素または黒鉛材からなる調理用
黒鉛加熱板が開発されている（特開昭63−270015号公
報) 。この黒鉛加熱板によれば、優れた熱伝導率と相当
な熱容量がある黒鉛材で構成されているため均熱性がよ
く、また油を引いたときにはその一部が黒鉛質の孔隙中
に含浸し、調理時に含浸した油が徐々に表面に浸出して
食品をソフトに焼き上げることができる等の効果がある
とされている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の
ような多孔質（嵩密度1.45〜1.6g/cc)の黒鉛組織では十
分な均熱性を付与するための熱伝導性は得られず、その
うえ加熱板に多数存在する孔隙には調理後に調理食品の
カスが残留して雑菌繁殖の原因となり、不衛生になり易
い問題点がある。さらに、黒鉛質の表面が露出している
ため、調理物や調理具が加熱板と擦れた際に食品を黒く
汚染する現象を招く。

【０００６】本発明の目的は、優れた均熱性を有し、使
用に際する衛生度の高い非汚染性の組織性状を備える黒
鉛製の調理用プレートを提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による調理用プレートは、嵩密度1.7 g/cc以
上、気孔率20％以下、平均気孔径５μm 以下の特性を有
する黒鉛板の表面に耐熱性樹脂もしくはセラミックス材
を被覆形成してなることを構成上の特徴としている。

【０００８】本発明の調理用プレート基材となる黒鉛板
のもつ嵩密度1.7 g/cc以上の特性は、組織を緻密質にし
て熱伝導率を高めることで優れた均熱性を与えるための
要件となるもので、好ましくは1.8 g/cc以上の高密度黒
鉛材を適用する。嵩密度が1.7 g/cc未満であると、均熱
性が低下して調理食品に焼けむらが発生したり、パサつ
きが生じる。気孔率20％以下と平均気孔径５μm 以下の
特性は高密度黒鉛組織を維持するとともに、一定サイズ
以下の気孔径を分布させることにより表面に被覆形成す
る樹脂やセラミックス材の食い付きを強固にして皮膜の
密着性を高めるために機能する。気孔率が20％を越え、
平均気孔径が５μm を上廻ると黒鉛組織の熱伝導率が減
退するうえ、樹脂やセラミックス材の皮膜密着性が悪く
なって剥離が生じ易くなる。

【０００９】黒鉛板の表面に被覆形成する材料は、遠赤
外線放射率の高い耐熱性樹脂もしくはセラミックス材か
ら選択される。耐熱性樹脂としては、例えばフッ素系あ
るいはシリコーン系の樹脂類を挙げることができるが、
このほか有害性がない耐熱性樹脂であれば種類の限定な
しに使用することができる。また、セラミックス材とし
てはアルミナ、シリカまたはアルミナ−シリカ複合系の
成分等が遠赤外線放射性がよく、好適な対象材料とな
る。被覆層の厚さは、調理食品に黒鉛基材からの熱を効
率よく伝えるため可及的に薄くすることが好ましいが、
黒鉛組織の表層部に存在する微細な気孔を完全に充填し
たうえで全面を覆うには少なくとも10μm、好適には10
〜50μm 範囲の層厚が必要となる。

【００１０】本発明による調理用プレートは、以下の工
程によって製造することができる。まず、粒径20μm 以
下の微細な黒鉛粉末とピッチのような易黒鉛化性のバイ
ンダーとを捏合し、混練物をラバープレスで1000kg/cm²
以上の圧力により成形したのち焼成炉で炭化処理し、引
き続き黒鉛化炉に移して2000℃を越える温度域で黒鉛化
処理を施す。得られた黒鉛質成形体を所定の板状あるい
はパン形状に切削加工し、表面を平滑にラッピングす
る。この際、プレートの厚さは５〜20mmの範囲に調整す
ることが望ましい。その表面 (調理面) にスプレー等に
より耐熱性樹脂またはセラミックス材を均一に塗布し、
焼付け処理する。

【００１１】

【作用】本発明の調理用プレートは、特定性状の高密度
黒鉛板の表面に樹脂、セラミックス等の薄い被覆層が形
成されているから、基材の緻密組織による高い熱伝導率
で優れた均熱性が与えられ、表面の被覆層により使用後
における調理食品のカスが組織内部に残留する現象は完
全に防止される。

【００１２】このため、調理食品に部分的な焦げつきや
焼けむらが生じることはなく、常に旨味を損ねることの
ない状態で加熱調理することが可能となる。とくに、遠
赤外線放射性を有する被覆層を形成している場合には、
肉などを均質でソフトに焼き上げることができる。ま
た、調理後は簡単な水洗で調理物のカスや汁などの付着
物を容易に洗い落とすことができるため極めて衛生的で
あるうえ、表面の被覆層は黒鉛組織の微細な気孔内部に
食い込んだ形態で強固に密着しているから、長期の使用
に際しても剥離が生じることはない。

【００１３】

【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して説
明する。

【００１４】実施例１ 嵩密度1.82 g/cc 、気孔率14％、平均気孔径 2.7μm の
特性を有する黒鉛材を直径200mm 、厚さ10mmの円盤状に
加工し、上面を平滑に研磨したのちポリテトラフロロエ
チレン(PTFE)樹脂を被覆して厚さ約40μm の均一な皮膜
を形成した調理用プレートを作製した。

【００１５】この調理用プレートを家庭用コンロに載
せ、樹脂被覆層を施した調理面に油を薄く引いた状態で
厚さ約15mm、重さ約150gの牛肉を焼いた。牛肉は18分で
均一でソフトに焼き上がり、旨味があってまろやかな味
覚であった。調理プレートを調理後に水洗したところ、
肉汁その他の付着物は完全に洗浄された。また、この加
熱調理を 500回反復しても樹脂被覆層は安定で、層剥離
などの現象は全く認められなかった。

【００１６】比較例１ 嵩密度1.70 g/cc 、気孔率25％、平均気孔径12μm の黒
鉛材を基材として、実施例１と同一方法で樹脂被覆を施
して同形の調理用プレートを作製した。この調理用プレ
ートを用い、実施例１と同一の条件で牛肉を焼いたとこ
ろ、実施例１と同様の良好な焼き上がり結果が得られ
た。しかし、加熱調理を十数回反復した段階で気孔を埋
めるために生じた樹脂被膜の肉厚部に剥離が生じ、以後
の使用が不可能となった。

【００１７】比較例２ 嵩密度1.50 g/cc 、気孔率31％、平均気孔径50μm の特
性を有する黒鉛材を切削して直径200mm 、厚さ10mmの円
盤状に加工し、表面を平滑に仕上げて調理プレートとし
た。この調理用プレートを用いて実施例１と同一の条件
で牛肉を焼いたところ、19分で均一に焼き上がったが、
味はややバサつく感じであった。また、数回調理を繰り
返すうちに、調理面に黒粉が発生するようになり、洗浄
後の黒鉛組織内に雑菌の繁殖が認められた。

【００１８】比較例３ 厚さ1.5mm の鉄製フライパンを用いて実施例１と同様に
牛肉を焼いたところ、16分で部分的に無数の焼き焦げの
ある状態に焼き上がった。味は焦げつきとバサつき味覚
を呈するものであった。

【００１９】

【発明の効果】以上のとおり、本発明の調理用プレート
は高い熱伝導率の黒鉛板に密着強固な耐熱性樹脂もしく
はセラミックスの皮膜を被覆形成して構成されているか
ら、優れた均熱性と長期に亘る安定した使用状態が保証
される。したがって、常に部分的な焦げつきや焼けむら
のない旨みのある調理をおこなうことができる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 嵩密度1.7 g/cc以上、気孔率20％以下、
   平均気孔径５μm 以下の特性を有する黒鉛板の表面に耐
   熱性樹脂もしくはセラミックス材を被覆形成してなるこ
   とを特徴とする調理用プレート。