JPH0515379Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、対応するダイスと協働して、楕円
穴を穿設する楕円用穴あけポンチに関する。

〔従来の技術〕

穿設加工において、穴あけポンチ（パンチとも
いう）がダイスと組合わされて使用されている。
ポンチは、たとえば、油圧パンチヤーのピストン
先端に装着され、対応するダイスがポンチに対向
して油圧パンチヤーの本体に固定され、ポンチの
外形と相似な切抜き穴が、ダイスに形成されてい
る。そして、被加工物をダイスにのせて、ポン
チ、ダイス間に配設した後、ピストンが前進され
る。すると、ポンチがピストンとともに前進し、
ダイスの切抜き孔に嵌合されて、ポンチの外形と
同一形状の破片（切抜き片）が被加工物から切抜
かれ、ポンチの外形と同一形状の穴が被加工物に
穿設される。切抜き片はダイスの切抜き孔を介し
て放出される。

なお、円錐形の小突起がポンチ先端の中心に設
けられ、この小突起は穿設加工の芯出しガイドと
して機能する。また、せん断を生じない程度の小
さな応力のもとでは、この小突起によつて、小さ
な凹部が被加工物に形成されて、穿設中心が確認
される。

このようなポンチを利用した穿設加工におい
て、ポンチ先端の刃先が平坦だと、ポンチからの
押力が、広い面積で同時に被加工物に伝達される
ため、大きな押力を加えなければ、せん断が生じ
ない。

そのため、一般に、ポンチ先端の中央を短軸に
沿つて直接状に残して平坦な刃先とし、刃先の両
サイドに斜面（逃げ面）を設けて、ポンチを形成
している。このように、中央に直線状の刃先を残
存させたポンチでは、ポンチの押力が、分散して
徐々に被加工物に伝達される。そのため、せん断
が円滑に生じ、小さな押力のもとで穿設加工が行
える。

〔考案が解決しようとする課題〕

ポンチとして、楕円形ポンチと真円形ポンチと
が、広く使用されている。そして、第３図に示す
ように、先端中央の刃先１１２は、楕円ポンチ１
１０において、楕円の短軸１４に沿つて形成され
ている。

ポンチ１１０によるせん断を微細に観察する
と、ポンチ中心の小突起２０が被加工物に押し付
けられた後、刃先１１２が被加工物に押圧され、
まず、刃先の端面１１２ａに沿つて、せん断が生
じる。このとき、刃先の両サイドの斜面１１８
は、被加工物に押し付けられておらず、斜面の端
面１１８ａに沿つたせん断は生じていない。そし
て、刃先１１２が被加工物内を前進するにつれ
て、せん断が刃先の端面１１２ａから刃先の両サ
イドの斜面の端面１１８ａに生じ、矢視のよう
に、刃先の端面から斜面の端面に沿つて、せん断
面が移動し、最終的に、ポンチの外形と同一な穴
が穿設される。

せん断が刃先の端面１１２ａに沿つて生じて、
刃先の端面に沿つた被加工物の一部が分断された
時点で、斜面の端面１１８ａに沿つた被加工物の
一部は、移動せずその位置に留まる。そのため、
ポンチの長軸１６方向で、被加工物にひずみが
徐々に生じ、切抜き片１２２は、第４図に示すよ
うに、外方に凸に変形する。そして、第４図Ｂか
らよくわかるように、ひずみは半径方向に徐々に
大きくなり、長軸方向の端面において、最大のひ
ずみβが生じる。ひずみの存在により、切抜き片
１１２の端面は傾斜し、被加工物に穿設された穴
の周面も同様に傾斜したものとなる。しかし、被
加工物の弾性によつて、穴の周囲は傾斜した状態
から、第４図Ｂに一点鎖線で示す平坦な形状（原
形）に復帰する傾向にある。なお、刃面１１２の
のびた楕円の短軸方向にもひずみが生じるが、長
軸方向に比較してかなり小さく、無視できる。

所定の孔を穿設して、ダイスの切抜き穴まで前
進した後、ポンチはピストンとともに後退され
る。しかし、上記のように、穴の周囲が原形に復
帰しようとして縮むため、弾性力のもとで被加工
物はポンチに押圧され、被加工物、ポンチ間に摩
擦力が生じる。そして、この摩擦力は、ポンチの
後退（上昇）を妨げる抵抗力として作用する。

そのため、被加工物はポンチから分離されにく
くなり、自重に抗して被加工物がポンチとともに
持ち上げられる傾向にある。そして、分離性が悪
いため、被加工物をポンチからたたき落して強制
的に分離しなければならず、穿設加工が円滑、迅
速に行なえない。また、被加工物の強制的な分離
は、ポンチを破損させる虞れがある。そして、も
し、被加工物を固定して被加工物の持ち上がりを
防止すれば、ポンチの円滑な後退が困難となり、
ポンチが間欠的に後退し、パンチヤー等の故障の
原因となる。

この考案は、ポンチからの被加工物の分離性を
改善した楕円用穴あけポンチの提供を目的として
いる。

〔課題を解決するための手段〕

この考案では、被加工物の弾性力が、切抜き片
のひずみに起因することに注目している。つま
り、切抜き片のひずみが小さければ、切抜き片の
端面の傾斜も小さく、穿設された穴の周面の傾斜
も同様に小さくなり、被加工物の弾性力が減少し
て被加工物の分離性が改善される。

そのため、刃先を楕円の短軸でなく、楕円の長
軸に沿つて直線状に残すことによつて、切抜き片
のひずみを小さくしている。

〔実施例〕

以下、図面を参照しながらこの考案の実施例に
ついて詳細に説明する。

第１図に示すように、この考案の一実施例に係
る楕円用ポンチ１０によれば、刃先１２は、短軸
１４でなく長軸１６に沿つてポンチ先端１１の中
央に残存されている。刃先１２は、従来と同様に
直線状とされ、刃先の両サイドに逃げ面としての
斜面１８が設けられることによつて、平坦な刃先
として存在する。そして、小突起２０がポンチ先
端１１の中心に形成されている。

上記構成のポンチ１０による穿設加工におい
て、小突起２０が被加工物に押し付けられて凹部
２０′（第２図参照）を形成しながら、平坦な刃
先１２が被加工物に押圧され、刃先の端面１２ａ
に沿つてせん断が生じる。しかし、この時点で
は、斜面１８は被加工物に押し付けられておら
ず、斜面の端面１８ａに沿つたせん断は生じてい
ない。そして、刃先１２が被加工物内を前進する
につれて、せん断が刃先の端面１２ａから斜面の
端面１８ａに移り、刃先の両サイドの斜面の端面
に沿つて、せん断が生じ、切抜き片２２が被加工
物から切抜かれて、ポンチ１０の外形と同一な穴
が穿設される。

せん断が刃先の端面１２ａ、斜面の端面１８ａ
に同時に生じていないため、せん断面が、第１図
に矢視で示すように、刃先の端面１２ａから斜面
の端面１８ａに移動するにつれて、ひずみがポン
チの短軸方向で被加工物に生じる。そして、最大
のひずみαは短軸方向の端面に生じ、外方に凸に
変形した切抜き片２２が被加工物から切抜かれる
（第２図参照）。なお、刃先１２が強く押圧される
ために、刃先の軌跡１２′が切抜き片の表面に残
される。

しかし、ひずみが半径方向の距離に比例するた
め、最大のひずみαは短径２Ｘの半径ｘに比例
し、長径２ｙの半径ｙに比例した公知のポンチの
最大ひずみより小さくなる。このように、生じる
ひずみが小さいため、この考案のポンチ１０によ
る切抜き片２２を公知のポンチによる切抜き片１
２２と比較するとよくわかるように、切抜き片２
２の最大変形量は小さく、切抜き片の端面はさほ
ど傾斜しない（第２図Ｃ、第４図Ｂ参照）。

そのため、被加工物に穿設された穴の周面も同
様にさほど傾斜せず、穴の周囲の縮みも小さく、
大きな弾性力が被加工物に生じない。従つて、被
加工物の自重が弾性力による被加工物、ポンチ１
０間の摩擦力に打ち勝つて、被加工物は、ポンチ
から容易に分離され、ポンチとともに持ち上げら
れない。そのため、ポンチ１０から被加工物を強
制的に分離する必要もなく、ポンチを損傷するこ
となく、穿設加工が円滑、迅速に行なえ、パンチ
ヤー等も故障しない。

上述した実施例は、この考案を説明するための
ものであり、この考案を何ら限定するものでな
く、この考案の技術範囲内で変形、改造等の施さ
れたものも全てこの考案に包含されることはいう
までもない。

〔考案の効果〕

上記のように、この考案に係る楕円用パンチヤ
ーによれば、被加工物に生じるひずみが小さくな
り、被加工物に穿設された穴の周面もさほど傾斜
しない。そのため、穴の周囲の縮みも小さく、大
きな弾性力が被加工物に生じず、被加工物は、ポ
ンチから容易に分離し、ポンチとともに持ち上げ
られることがない。従つて、穿設加工が円滑、迅
速に行え、パンチヤー等も故障しない。

【図面の簡単な説明】

第１図Ａ，Ｂは、この考案の一実施例に係る楕
円用穴あけポンチの正面図および側面図、第２図
Ａ，Ｂ，Ｃは、第１図に示す楕円用穴あけポンチ
によつて切抜かれた切抜き片の正面図、縦断面図
および横断面図、第３図Ａ，Ｂは公知の楕円用穴
あけポンチの正面図および側面図、第４図Ａ，
Ｂ，Ｃは、公知の楕円用穴あけポンチによつて切
抜かれた切抜き片の正面図、縦断面図および横断
面図である。 １０……楕円用穴あけポンチ、１１……ポンチ
先端、１２……刃先、１２ａ……ポンチの端面、
１４……短軸、１６……長軸、１８……ポンチの
斜面、１８ａ……斜面の端面、２０……ポンチの
小突起、２２……切抜き片。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 楕円の長軸に沿つて直線状の平坦な刃先を持
   ち、刃先の左右に斜面を有する楕円用穴あけポン
   チ。