JPH05146866A - 中空チルドカムシヤフトおよびその製造方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 中空円筒体と一体となった軸受部，チルドカ
ム部等を有する中空チルドカムシャフトおよびその製造
方法を得ること。 【構成】 中空円筒体に、別体のチルドカムピースを配
設し、消失性模型鋳造法により、中空円筒体の所定位置
に軸受部，チルドカム部等が前記中空円筒体を鋳ぐる
み、一体形成して中空チルドカムシャフトとする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、中空シャフト部の外周
に、該シャフト部とは別体に製作したチルドカムピース
を所定の位置に固着してなる中空チルドカムシャフトお
よびその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の中空カムシャフトおよびその製造
方法としては、例えば、 a) 中空シャフトにカムピース，ジャーナルピース等を
焼結またはバルジ成型等により組付ける手段 b) 中空部は中子を使用して鋳造により形成する手段 c) 鋳造または鍛造によりカムシャフトを形成した後、
工作機械を用いてシャフトに中空孔明け加工を行う手段 等があり、またチルドカムシャフトについては d) カムプロフィル部に冷し金を配し、鋳造と共にカム
部をチルド化する手段、等があり、前述の諸手段はいず
れも工法としては生型，ガス型，金型の鋳造法によるも
のである。

【０００３】また従来の中空カムシャフトの製造手段の
文献としては、特開昭６２ー１０４６６０号公報，特開
昭６２ー１０４６６１号公報，特開昭６３ー１２８０９
号公報等があり、消失性模型鋳造法の文献としては特開
平２ー８４２２８号公報がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】前述の各製造手段では
下記の問題点があった。

【０００５】a)の手段ではカムピース，ジャーナルピー
ス等は圧粉成形体のものが多く、崩壊し易く、高価でも
あり、これらのピースと中空シャフトとの組付手段にお
いても作業の困難性があり、出来上がった製品も精度が
劣るという問題があった。またバルジ加工工法において
は、中空シャフトを加工し易くするため、前処理（熱処
理）等を施すために、加工し易くなる反面強度的に弱く
なる欠点がある。また、前述の焼結，バルジ加工等にあ
っては、多くの設備費を要し、このためコスト高になる
欠点も有する。

【０００６】b)の手段では中空カムシャフトの鋳造後に
中子が中空カムシャフト内に残り、この中子の除去に困
難さがある。c)の手段ではカムシャフトの中空孔の機械
加工に多くの工数を要する欠点がある。d)の手段ではカ
ムプロフィルのチルド化を行っているが、これらの手段
では精度の高いカムシャフトを得ることが困難であると
いう問題点があった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明は下記の中空チル
ドカムシャフトおよびその製造方法を提供することによ
り、前述の課題を解決し得たものである。

【０００８】1) すなわち、シャフト部の外周に該シャ
フト部とは別に製作したカムピースを所定の位置に固着
してなるカムシャフトにおいて、前記シャフト部は中空
円筒体よりなり、前記カムピースは、ダクタイル鋳鉄，
チルド鋳鉄等の耐摩耗性金属よりなり、外形がカム形状
をなすリング状に形成され、かつ外周面がチルド化され
ており、前記カムピースが中空円筒体のカム形成位置に
カム部として消失性模型鋳造法による鋳ぐるみ溶着構造
で一体化されている構成の中空チルドカムシャフトによ
り解決した。

【０００９】2)また、所定寸法の中空円筒体でシャフト
でシャフト部を形成し、別にダクタイル鋳鉄またはチル
ド鋳鉄等の耐摩耗性金属により外形がカム形状をなすリ
ング状で、かつ外周面がチルド化されているカムピース
を製作しておき、前記中空円筒体の両端孔に、予め成形
されたセンタ中子をそれぞれ嵌入させ、また前記中空円
筒体に所定数の前記カムピースを挿着した後、前記中空
円筒体を消失性模型成型機用金型の軸位置にセットし、
前記カムピースをそれぞれ金型のカム凹部にセットし、
カムシャフトの消失性模型を形成すると同時にカムピー
スをカム部模型により中空円筒体に固着し、次いで消失
性模型鋳造法により前記中空円筒体の所定部分にフロン
ト端面軸受部、リヤ端面軸受部、カム部、ジャーナル部
および軸部のそれぞれを鋳ぐるみ溶着形成すると同時に
前記カム部にカムピースを鋳ぐるみ溶着して一体化する
中空チルドカムシャフトの製造方法により解決し得たも
のである。

【００１０】

【作用】シャフト部とカムピースを別体とし、シャフト
部は中空円筒体よりなり、カムピースは耐摩耗性のチル
ド化鋳物よりなり、中空円筒体の所定の位置にカムピー
スを配設し、消失性模型鋳造法により、フロント端面軸
受部，リヤ端面軸受部，ジャーナル部等と共に、前記カ
ムピースをジャーナル部に一体に鋳ぐるみ形成すること
により、消失性模型鋳造法の特長を十分に活用し、軽量
かつ強度大なシャフト部と精度高く耐摩耗性を有するカ
ム部とを有する中空カムシャフトが得られる作用を有す
る。

【００１１】

【実施例】以下図面に示す実施例により本発明の構成を
説明する。

【００１２】(1) 中空チルドカムシャフトについて、図
７に示すごとく、シャフト部の内芯は中空円筒体１から
なり、前記シャフト部と別に製作されたカムピース２
は、耐摩耗性のダクタイル鋳鉄またはチルド鋳鉄よりな
り、外形がカム形状をなすリング状に形成され、かつ外
周面がチルド化され仕上げられており、前記カムピース
２が中空円筒体のカム形成位置に配設され、消失性模型
鋳造法によりカム部３０として前記中空円筒体１に鋳ぐ
るみ溶着されて一体化されている。

【００１３】なお中空円筒体１には、消失性模型鋳造法
により前記カム部３０，３０の形成と同時に、フロント
端面軸受部２８、リヤ端面軸受部２９、ジャーナル部３
１，３１および軸部３２，３２が鋳ぐるまれて一体化さ
れて形成されている。

【００１４】またカム部３０の周面に給油孔を穿設する
必要がある場合、図１に示すごとく、予め給油孔３が穿
設されチルド化されたカムピース２を用いる。

【００１５】(2) 中空チルドカムシャフトの製造方法に
ついて、図１，図３，図５，図６，図７に示すごとく、
所定寸法の中空円筒体１をシャフト部とし、別にダクタ
イル鋳鉄またはチルド鋳鉄により外形がカム形状に仕上
げられているリング状で、かつ外周面がチルド化されて
いるカムピース２を製作しておく。

【００１６】前記中空円筒体１の両端孔３３，３４に、
予め成形されたセンタ中子１９，２０をそれぞれ嵌入さ
せ、また前記中空円筒体１に所定数のカムピース２，２
を挿着する。

【００１７】ついで、図４に示めされるごとく、成形凹
部を形成された固定金型５および可動金型６よりなる消
失性模型成型機用金型中の軸位置に、前記中空円筒体１
を、図３に示すごとくセットし、前記カムピース２，２
を、図３，図４に示すごとく、それぞれ金型５，６のカ
ム凹部１０，１０にセットする。

【００１８】次に、図３，図５，図６，図８に示すごと
く、カムシャフトの消失性模型３５を形成すると同時
に、図１，図３，図５，図８に示すごとく、カムピース
２，２、をカム部模型９，９により中空円筒体１に固着
し、またジャーナル部模型１３，１３、軸部模型１４，
１４、フロント端面軸受部模型１５、リヤ端面軸受部模
型１６を形成する。

【００１９】次いで前記消失性模型３５を、図６に示す
ごとく、湯口２１、湯道２２を接着して、消失性模型鋳
造装置のフラスコ２３内にセットし、消失性模型鋳造用
砂２４を充填し、湯口２１より注湯して、消失性模型鋳
造法により、前記中空円筒体１の所定部分に、図７に示
すごとく、フロント端面軸受部２８、リヤ端面軸受部２
９、カム部３０，３０、ジャーナル部３１，３１および
軸部３２，３２のそれぞれを鋳ぐるみ溶着形成すると同
時に、前記カム部３０にカムピース２を鋳ぐるみ溶着し
て一体化する中空チルドカムシャフトの製造方法であ
る。

【００２０】前記図１，図５に示すごときカムピース２
は、金型鋳造法にチルド化された耐摩耗性のＯリング状
である。なおカムピース２に図１に示すごとき給油孔３
を形成する場合には、チルド化後の給油孔孔明けは困難
であるから、前記金型鋳造法による製作時に給油孔３を
鋳抜孔として形成しておく。

【００２１】前記カムピース２を中空円筒体１上の所定
位置に仮配設後消失性模型成型機の金型に載置するが、
給油孔３を有するカム部を得るには、前述の仮配設され
たカムピース２の給油孔３に、図２に示すごとき給油孔
形成細棒４をカム部模型９を貫いて中空円筒体１に達す
るまで埋設して消失性模型３５を成型すると、図１に示
すごとく給油孔３の中心寄りにカム部模型９に給油孔下
孔１１が形成される。

【００２２】前記金型は、図３に示すごとく、消失性模
型成型機の固定側に取り付けられる固定金型５と、可動
側に取り付けられる可動金型６とよりなり、載置される
中空円筒体１の軸心で２分割されるようになっており、
両金型５，６には図４に示すごとく、カムシャフト凹部
７が形成され、該カムシャフト凹部７には、フロント軸
受部凹部２５、リヤ軸受部凹部２６、カム凹部１０，１
０、ジャーナル凹部１２，１２、軸凹部２７がそれぞれ
形成されている。なお図３は図４中〓ー〓線で示す位置
の断面図に相当する。

【００２３】前記金型５，６内に載置される中空円筒体
１は、図３に示すごとく、センタ中子１９，２０により
支持されているが、製造される中空チルドカムシャフト
によっては、図４に示すごとく、固定金型５に突設され
る受部８，８上に載置することもできる。

【００２４】前述の載置後消失性模型成型機を作動させ
ると、固定金型５に可動金型６が密着され、次いで図３
に示すごとく、固定金型５に設けられた噴出口１７より
発泡スチロール粒状体がカムシャフト凹部７内に噴出さ
れ、図４に示されるフロント軸受部凹部２５、リヤ軸受
部２６、カム凹部１０，１０、ジャーナル凹部１２，１
２、軸凹部２７，２７における中空円筒体１の周囲に充
填され、同時に蒸気流入口１８，１８より加熱蒸気が発
泡スチロール充填部に噴出され、発泡スチロールの粒子
が固定成型されて、図８に示すごとく、中空円筒体１が
発泡スチロールでくるまれ、かつカムピース２，２の固
着された中空チルドカムシャフトの消失性模型３５が得
られる。図５は該消失性模型３５の部分断面図である。

【００２５】前記消失性模型３５には中空円筒体１の両
端孔３３，３４に、それぞれセンタ中子１９，２０が嵌
入されているため、消失性模型鋳造装置における鋳造の
際、注湯時の溶湯の中空円筒体１内への浸入を防ぎ、中
空を保持し、また造型時の消失性模型３５の固定化を図
ることが出来る。

【００２６】なお、前記センタ中子１９，２０はシェル
中子であるが、必要に応じて芯金等で補強し、前記消失
性模型３５に、図６に示すごとく、湯口２１、湯道２２
を接着して造型用模型を形成する。

【００２７】該造型用模型３５を、フラスコ（型枠）２
３内に載置し、消失性模型鋳造用砂２４を充填して砂型
を造型する。

【００２８】次に湯口２１より溶湯を注湯すると、溶湯
は湯道２２に沿って流入し、中空円筒体１周りの消失性
模型３５と溶湯が置換して、同時に溶湯は中空円筒体１
およびカムピース２，２に溶着される。

【００２９】冷却後フラスコ（型枠）２３より鋳造品を
解体することにより高精度な中空チルドカムシャフトを
得ることが出来る。

【００３０】なお 給油孔３が設けられているものにつ
いては、機械加工により中空円筒体１に孔加工を行う。

【００３１】

【発明の効果】本発明の中空チルドカムシャフトは、中
空円筒体に、別工法，別材料で製作したチルドカムピー
スを配設し、消失性模型鋳造法により前記チルドカムピ
ースを中空円筒体に溶着一体化すると同時にカムシャフ
ト各部を中空円筒体に鋳ぐるみ一体鋳造形成されたもの
であり、軽量でしかも製品の精度が高く、機械加工等の
工数を低減することができコスト的に安価な中空チルド
カムシャフトを得ることが出来、カム部全周が硬化され
た本発明の中空チルドカムシャフトを用いることによ
り、機械のカム装置における油圧タペットの使用範囲が
拡大され、さらに高速化される内燃機関への活用範囲が
拡大されうる諸効果を有する。

【００３２】また本発明の中空チルドカムシャフトの製
造法は、中空円筒体に、別工法，別材料で製作したリン
グ状のチルドカムピースを配設し、消失性模型鋳造法に
より、該鋳造法の特徴を十分に活用し、前記チルドカム
ピースを中空円筒体に溶着一体化すると同時にカムシャ
フト各部を中空円筒体に鋳ぐるみ一体化鋳造形成する製
造方法であり、形状が単純で鋳造し易いチルドカムピー
スを別体として製造しておき、消失性模型鋳造法では、
複雑な冷し金治具等によるカム周面のチルド化装置を必
要とせず、精度の高いカムプロフィルを容易に形成し、
軽量，強靱な中空チルドカムシャフトの生産性の向上に
役立つ効果を有する。

【図面の簡単な説明】

【図１】カム部模型の実施例を示す図５中ＡーＡ線断面
図である。

【図２】給油孔形成細棒の実施例の側面図である。

【図３】消失性模型成型後の状態を示す消失性模型金型
の実施例のシャフト軸心水平断面図である。

【図４】固定側金型の実施例の斜視図である。

【図５】消失性模型の実施例の部分拡大したシャフト軸
心断面図である。

【図６】発泡スチロール模型のフラスコ内設置状態を示
す実施例のシャフト軸心垂直断面図である。

【図７】中空チルドカムシャフトの実施例の軸心断面図
である。

【図８】形成された中空チルドカムシャフトの発泡スチ
ロール模型の実施例の斜視図である。

【符号の説明】

１ 中空円筒体 ２ カムピース ５ 固定金型 ６ 可動金型 ９ カム部模型 １０ カム凹部 １９，２０ センタ中子 ２８ フロント端面軸受部 ２９ リヤ端面軸受部 ３０ カム部 ３１ ジャーナル部 ３２ 軸部 ３３，３４ 端口 ３５ 消失性模型

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 シャフト部の外周に該シャフト部とは別
   に製作したカムピースを所定の位置に固着してなるカム
   シャフトにおいて、前記シャフト部は、中空円筒体より
   なり、前記カムピースは、ダクタイル鋳鉄，チルド鋳鉄
   等の耐摩耗性金属よりなり、外形がカム形状となすリン
   グ状に形成され、かつ外周面がチルド化されており、該
   カムピースが、中空円筒体のカム形成位置にカム部とし
   て、消失性模型鋳造法による鋳ぐるみ溶着構造で一体化
   されていることを特徴とする中空チルドカムシャフト。
2. 【請求項２】 所定寸法の中空円筒体でシャフト部を形
   成し、別にダクタイル鋳鉄，チルド鋳鉄等の耐摩耗性金
   属により外形がカム形状をなすリング状で、かつ外周面
   がチルド化されているカムピースを製作しておき、前記
   中空円筒体の両端孔に、予め成形されたセンタ中子をそ
   れぞれ嵌入させ、また前記中空円筒体に所定数の前記カ
   ムピースを挿着した後、前記中空円筒体を消失性模型成
   型機用金型の軸位置にセットし、前記カムピースをそれ
   ぞれ金型のカム凹部にセットし、カムシャフトの消失性
   模型を形成すると同時に、カムピースをカム部模型によ
   り中空円筒体に固着し、次いで消失性模型鋳造法により
   前記中空円筒体の所定部分にフロント端面軸受部、リヤ
   端面軸受部、カム部、ジャーナル部および軸部のそれぞ
   れを鋳ぐるみ溶着形成すると同時に前記カム部にカムピ
   ースを鋳ぐるみ溶着して一体化することを特徴とする中
   空チルドカムシャフトの製造方法。