JPH05140182A - 5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体の製造方法 - Google Patents

5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体の製造方法

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JPH05140182A
JPH05140182A JP3332800A JP33280091A JPH05140182A JP H05140182 A JPH05140182 A JP H05140182A JP 3332800 A JP3332800 A JP 3332800A JP 33280091 A JP33280091 A JP 33280091A JP H05140182 A JPH05140182 A JP H05140182A
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Masahiro Koga
政博 古賀
Takao Fujii
隆雄 藤井
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 簡便、効率の良い、高純度の、かつ大量生産
に適した、5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導
体の製造方法を提供すること 【構成】 3′−置換−5−フルオロ−2′−デオキシ
ウリジンとリン酸モノエステル類とを縮合剤の存在下反
応せしめる、下記式〔I〕で表される5−フルオロ−
2′−デオキシウリジン誘導体の製造法において、該反
応物に水を加え、次いで得られる水層のpHを5.0以
上にして該水層から非酸性部分を除去したのち、該水層
に酢酸エチルなどの抽出溶媒を加えそのpHを3.0以
下にして抽出する。 【化1】

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は5−フルオロ−2′−デ
オキシウリジン誘導体の製造方法に関する。さらに詳細
には、本発明は、3′−置換−5−フルオロ−2′−デ
オキシウリジンとリン酸モノエステル類とを縮合剤の存
在下反応せしめ、次いで得られた目的物を一定条件下で
単離する、5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導
体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】制癌剤5−フルオロウラシル(5−F
U)は乳ガン、胃ガン、膵ガン、肝ガン、子宮ガンなど
の広い範囲の悪性腫瘍に対して単独または他剤との併用
などで用いられている。この5−FUの有効性、副作
用、体内動態などの面の改善を目的として種々の誘導体
が作られており、そのような5−FU誘導体として、強
力な制癌作用を有し、しかも経口投与においても有効な
ものとして、5′位にホスホジエステル結合を有する5
−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体が知られて
いる(特開昭59−93096号公報)。
【0003】この特開昭59−93096号公報によれ
ば、かかる5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導
体の製造方法として、まず3′−置換−5−フルオロ−
2′−デオキシウリジンとリン酸モノエステル類とを縮
合剤の存在下反応せしめ、必要に応じて保護基を除去す
ることにより得る方法が開示されている。そして、この
ようにして得られた5−フルオロ−2′−デオキシウリ
ジン誘導体生成物を抽出、シリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、高速
液体クロマトグラフィー、再結晶などの通常の操作を適
宜選択、組合せて目的物を単離する方法が記載されてい
る。
【0004】しかしながら、シリカゲルカラムクロマト
グラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、あ
るいは高速液体クロマトグラフィーを用いる従来の単離
方法では、大量生産をするには膨大な設備および煩雑な
操作が必要となり、工業的生産法としては問題があっ
た。また、前記公報には、抽出法が挙げられているが、
本方法においては、通常の抽出操作では目的物以外の副
産物も抽出されるので、再度クロマトグラフィーなどに
よる精製が必要となり、有効な手段とはなりえない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記5−フ
ルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体の製造法により
該化合物を大量生産するにあたり、各種クロマトグラフ
ィーなどの煩雑、かつ膨大な設備を必要としない、簡便
な精製法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記式 [II]
【化4】 (式中、Rはアルコールの保護基を表す。)で表される
3′−置換−5−フルオロ−2′−デオキシウリジン
と、下記式 [III]
【化5】 (式中、Aは炭素数1〜3の飽和または不飽和の2価の
脂肪族炭化水素基を表す。nは0または1を表し、nが
0の場合はYは酸素原子に直接結合していることを示
す。Yは水素原子、フェニル基または置換フェニル基を
表す。ただし、Yが水素原子の場合には、nは1であ
る。)で表されるリン酸モノエステル類とを縮合剤の存
在下反応せしめる下記式〔I〕
【化6】 (式中、A、n、YおよびRは前記式 [II] および [II
I]の定義と同じである。)で表される5−フルオロ−
2′−デオキシウリジン誘導体の製造方法において、縮
合剤の存在下反応させて得られたのち、水を加え、次い
で得られる水相のpHを5.0以上にして該水層から非
酸性部分を除去したのち、該水相のpHを3.0以下に
して5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体を抽
出することを特徴とする5−フルオロ−2′−デオキシ
ウリジン誘導体の製造方法である。
【0007】前記式〔I〕および〔II〕において、Rは
アルコールの保護基を表すが、かかる保護基としては、
例えばホルミル基、アセチル基、プロパノイル基、ブタ
ノイル基、イソブタノイル基、ペンタノイル基、ヘキサ
ノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、テトラデカ
ノイル基、オクタデカノイル基、ベンゾイル基、トルオ
イル基、p−クロロベンゾイル基などのアシル基;テト
ラヒドロピラニル基、テトラヒドロフリル基、2,2,
2−トリクロロエチル基、メトキシメチル基、1−エト
キシエチル基、4−メトキシ−4−ピラニル基、トリメ
チルシリル基、ジメチル−t−ブチルシリル基、t−ブ
チル−ジフェニルシリル基などのエーテル基などが挙げ
られる。これらの中でも、炭素数1〜10のアシル基が
好ましい。
【0008】また、前記式〔I〕および〔III]におい
て、Aは炭素数1〜30、好ましくは3〜24の飽和ま
たは不飽和の2価の脂肪族炭化水素基を表す。脂肪族炭
化水素基は、直鎖状のものであっても分岐を有している
ものであってもよい。不飽和の脂肪族炭化水素とは、分
子中の任意の位置に、二重結合または三重結合を1〜5
個、好ましくは1〜3個有するものをいう。
【0009】一般式〔I〕のYが水素原子の場合、基Y
−(A)n −はH−A−と表されるが、これは炭素数が
1〜30個の飽和または不飽和の1価の脂肪族炭化水素
基を表す。
【0010】飽和の脂肪族炭化水素基の例としては、例
えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペ
ンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、ノニル基、デシル
基、ウンデシル基(C11)、ドデシル基(C12)、トリ
デシル基(C13)、テトラデシル基(C14)、ペンタデ
シル基(C15)、ヘキサデシル基(C16)、ヘプタデシ
ル基(C17)、オクタデシル基(C18)、ノナデシル基
(C19)、エイコデシル基(C20)、ヘンエイコデシル
基(C21)、ドコシル基(C22)、トリコシル基
(C23)、テトラコシル基(C24)、ペンタコシル基
(C25)、ヘキサコシル基(C26)、ヘプタコシル基
(C27)、オクタコシル基(C28)、ノナコシル基(C
29)、トリアコンチル基(C30)、イソプロピル基、イ
ソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、
イソペンチル基、2−ウンデシル基、2−メチル−2−
ウンデシル基、3−ドデシル基、2−テトラデシル基、
2−メチル−2−テトラデシル基、4−メチル−2−テ
トラデシル基、2−ペンタデシル基、2−メチル−2−
ペンタデシル基、2−メチル−3−ヘキサデシル基、2
−ヘプタデシル基、2−メチル−2−ヘプタデシル基、
2−ノナデシル基、2−メチル−2−ノナデシル基、3
−メチル−3−エイコシル基、2−ヘンエイコシル基、
2−メチル−2−ヘンエイコシル基、2−トリコシル
基、2−メチル−2−トリコシル基、4,6−ジメチル
−2−トリコシル基などをあげることができるがこれに
限定されるものではない。
【0011】不飽和の脂肪族炭化水素基の例としては、
例えば、アリル基、3−ブテニル基、イソブテニル基、
2−ヘキセニル基、3−ヘキセニル基、4−オクテニル
基、2−オクテニル基、3−ノネニル基、2−デセニル
基、2−ドデセニル基、2−トリデセニル基、4−テト
ラデセニル基、4−ペンタデセニル基、2−ヘキサデセ
ニル基、9−ヘキサデセニル基、シス−6−オクタデセ
ニル基、シス−9−オクタデセニル基、トランス−11
−オクタデセニル基、2−エイコセニル基、2−トリア
コンテニル基、ゲラニル基、2,5−デカジエニル基、
2,5,8−テトラデカトリエニル基、リノリル基、リ
ノレニル基、アラキドニル基、エイコサペンタエニル
基、プロピニル基、3−ブチニル基、3−ペンチニル
基、4−オクチニル基、2−デシニル基、3−テトラデ
シニル基、3,5−テトラデカジエニル基、3−オクタ
デシニル基、4−エイコシニル基、エイコペンタイニル
基、テトラデカ−3−エン−6−イニル基、オクタデカ
−3−エン−6−イニル基が挙げられる。
【0012】これらのなかでも好ましいのは、炭素数が
8〜24個の飽和または不飽和の脂肪族炭化水素基であ
る。
【0013】一般式〔I〕のYがフェニル基の場合、基
Y−(A)n −は、C6 5 −またはC6 5 −A−と
表されるが、後者の例としては、例えば、ベンジル基、
フェネチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニル
プロピル基、4−フェニルブチル基、5−フェニルペン
チル基、3−フェニルペンチル基、6−フェニルヘキシ
ル基、7−フェニルヘプチル基、8−フェニルオクチル
基、9−フェニルノニル基、10−フェニルデシル基、
12−フェニルウンデシル基、14−フェニルテトラデ
シル基、16−フェニルヘキサデシル基、20−フェニ
ルエイコシル基、シンナミル基、4−フェニル−3−ブ
テニル基、6−フェニル−2−ヘキセニル基、5−フェ
ニル−3−ヘキセニル基、8−フェニル−3−オクテニ
ル基、7−フェニル−3−オクテニル基、9−フェニル
−3−ノネニル基、10−フェニル−2−デセニル基、
14−フェニル−3−テトラデセニル基、6−フェニル
−2,4−ヘキサジエニル基、8−フェニル−3,6−
オクタジエニル基、11−フェニル−2,5,8−ウン
デカトリエニル基、18−フェニル−2,6,10,1
4−オクタデカテトラエニル基、3−フェニル−2−プ
ロピニル基、4−フェニル−2−ブチニル基、6−フェ
ニル−3−ヘキシニル基、8−フェニル−3−オクチニ
ル基、8−フェニル−5−オクチニル基、10−フェニ
ル−2−デシニル基、14−フェニル−3−テトラデシ
ニル基、18−フェニル−3−テトラデシニル基、6−
フェニル−2,4−ヘキサジイニル基、6−フェニルヘ
キサ−2−エン−4−イニル基、8−フェニル−2,5
−オクタジイニル基、10−フェニル−デカ−2,5−
ジエン−8−イニル基、14−フェニル−2,5,8−
テトラデカトリイニル基が挙げられる。
【0014】一般式〔I〕のYが置換フェニル基の場
合、この置換フェニル基は、前記C6 5 −A−のフェ
ニル基上に1〜5個の置換基を導入したものである。置
換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状
または分岐を有する飽和または不飽和の脂肪族炭化水素
基、炭素数1〜20の直鎖状または分岐を有するアシル
基および不飽和アシル基、炭素数1〜10の直鎖状また
は分岐を有するアルキルオキシ基および不飽和アルキル
オキシ基、炭素数1〜10の直鎖状または分岐を有する
アシルオキシ基および不飽和アシルオキシ基などが挙げ
られる。
【0015】さらに具体的には、フッ素、塩素、臭素、
ヨウ素のハロゲン原子;メチル基、エチル基、プロピル
基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチ
ル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、2−ヘキシル
基、ヘプチル基、3−ヘプチル基、オクチル基、ノニル
基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデ
シル基、8−エチルデシル基、3−ブチル−テトラデシ
ル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基、3−ブテ
ニル基、イソペンテニル基、3−ヘキセニル基、4−デ
セニル基、6−テトラデセニル基、3−メチル−4−オ
クテニル基、7−エチル−5−メチル−3−デセニル
基、2,4−ヘキサジエニル基、エチニル基、プロパギ
ル基、3−ブチニル基、2−ペンチニル基、6−オクチ
ニル基、5−デシニル基、3,5−デカジイニル基など
の不飽和脂肪族炭化水素基;ホルミル基、アセチル基、
プロパノイル基、ブタノイル基、イソブタノイル基、ペ
ンタノイル基、ビバロイル基、ヘキサノイル基、オクタ
ノイル基、6−メチルヘプタノイル基、デカノイル基、
テトラデカノイル基、オクタデカノイル基、アクリロイ
ル基、2−ブテノイル基、4−ヘキセノイル基、5−デ
シノイル基などのアシル基;メトキシ基、エトキシ基、
プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘ
キシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ
基、デシルオキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ
基、イソアミルオキシ基、4−エチルヘキシルオキシ
基、3−プロピルヘプチルオキシ基、アリルオキシ基、
2−ブテニルオキシ基、イソペンテニルオキシ基、プロ
パギルオキシ基、3−オクチニルオキシ基、プロパノイ
ルオキシ基、ブタノイルオキシ基、ピバロイルオキシ
基、ヘキサノイルオキシ基、ヘプタノイルオキシ基、オ
クタニオイルオキシ基、ノナノイルオキシ基、デカノイ
ルオキシ基、アクリロイルオキシ基、2−ブテノイルオ
キシ基、4−ヘキセノイルオキシ基、5−デシノイルオ
キシ基などのアシルオキシ基が例示される。置換基とし
て好ましいのは、ハロゲン、炭素数1〜8個のアルキル
基または炭素数1〜8個のアシル基である。
【0016】一般式〔I〕のYがフェニル基または置換
フェニル基の場合には、Aは炭素数3〜8個の飽和また
は不飽和の脂肪族炭化水素基が好ましく、あるいはn=
0、すなわちフェニル基または置換フェニル基が直接に
酸素原子に結合しているものが好ましい。
【0017】これらのなかで、一般式〔I〕のY−
(A)n としては、テトラデシル基(C14)が最も好ま
しい。
【0018】本発明においては、まず、前記式〔II] で
表される3′−置換−5−フルオロ−2′−デオキシウ
リジンと、前記式〔III]で表されるリン酸モノエステル
類を縮合剤の存在下反応せしめるが、かかる縮合剤とし
ては、特開昭59−93096号公報に例示されるも
の、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどのカル
ボジイミド類;2,4,6−トリイソプロピルベンゼン
スルホニルクロリド、p−トルエンスルホニルクロリド
などのアリールスルホニルクロリド類;2,4,6−ト
リイソプロピルベンゼンスルホニルイミダゾリド、2,
4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニルトリアゾ
リドなどのアリールスルホンアミド類が挙げられる。ま
た、縮合助剤として、例えば、トリエチルアミン、ピリ
ジン、γ−ジメチルアミノピリジン、ジメチルアニリ
ン、トリブチルアミンなどの有機塩基を用いることもで
きる。
【0019】反応溶媒としては、溶解力が充分でかつ反
応の進行を妨げない非プロトン性の有機溶媒が好まし
い。一般的に好ましい溶媒としては、ピリジン、N,N
−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミ
ド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスフォラス
トリアミド、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、ジメト
キシエタン、ジオキサン、クロロホルム、塩化メチレン
などを単独または混合溶媒として用いることができる。
【0020】縮合反応の反応時間は、反応基質、縮合剤
の種類、溶媒によっても異なるが、一般に1時間〜4日
である。反応温度は−30℃〜100℃が好ましく、さ
らに好ましくは0℃〜室温であるが、反応性が悪い場合
には加熱してもよい。縮合反応においては、出発原料の
消失をTLCなどによりモニターして反応の終点を決定
することができる。
【0021】このようにして縮合反応が完結したら、水
を加えたのち、得られる水相のpHを5.0以上にし
て、該水相から非酸性部分を除去し、次いで該水相のp
Hを3.0以下にして前記式〔I〕で表される5−フル
オロ−2′−デオキシウリジン誘導体を抽出する。
【0022】この抽出工程においては、まず前記反応物
に水を加えるが、この水は縮合剤を失活させるため、お
よび目的物の酸性部分をまず水に溶かすため加える。水
の量はこの目的を達成する量であれば特に限定されない
が、出発原料の1〜10,000倍加えることが好まし
く、さらに好ましくは10〜1,000倍である。な
お、水を加えるに際して、反応液に直接水を加えること
もできるが、必要に応じて反応溶媒を分離し、得られた
反応物を水に溶解・混合する方法も本発明の好ましい態
様である。反応溶媒の分離方法としては、例えば、ロー
タリーエバポレーター、常圧、減圧による蒸留分離、ガ
ス吹き込みによる飛散分離、分離膜による分離などの方
法が挙げられる。
【0023】次いで、水を加えて得られる水相のpHを
5.0以上にする。水相のpHが5.0未満では目的酸
性部分が有機相に溶解されやすくなるため、収率が低下
し、また副生物との分離が困難となる。12を超えても
溶媒抽出のみでは分離が困難となる。水相のpHは、好
ましくは6.0〜10.0である。
【0024】水相のpHを5.0以上にする方法として
は、例えば、反応液のpHが5.0未満の場合は、Na
OH、KOH、LiOH、Na2 CO3 、NaHCO3
などのアルカリ性物質を直接または水溶液として加え、
水相をpH5.0以上にすればよい。逆に、反応液のp
Hが10を超える場合は、HCl、HNO3 、H2 SO
4 、KHSO4 、AcOH、HCOOH、CF3 COO
Hなどの酸性物質またはその水溶液を加え、水相をpH
10.0以下にすればよい。これらのなかでもアルカリ
性物質としてはNaOH、酸性物質としてはHCl、ま
たはそれらの水溶液が好ましい。
【0025】次いで、非酸性部分を除去した水相のpH
を3.0以下にして抽出溶媒で目的物を抽出する。該水
相のpHが3.0を超えると、目的とする酸性部分は水
相および有機相の両相に溶解するため目的物を抽出する
効率が悪くなる。水相のpHは好ましくはpH0.5〜
3.0である。例えばHCl、HNO3 、H2 SO4
KHSO4 、AcOH、HCOOH、CF3 COOHま
たはそれらの水溶液を加えることによって、水相のpH
を3.0以下にすることができる。なかでもHCl水溶
液が好ましい。
【0026】前記式〔I〕で表される5−フルオロ−
2′−デオキシウリジン誘導体の抽出は、例えばベンゼ
ン、トルエンなどの芳香族炭化水素;クロロホルム、ジ
クロールメタンなどのハロゲン炭化水素;酢酸エチル、
酢酸ブチルなどのエステル類などによって行われるが、
これらのなかでも酢酸エチルなどのエステル類が好まし
い。
【0027】また、5−フルオロ−2′−デオキシウリ
ジン誘導体の抽出は、0〜100℃下に行い、攪拌、振
動、超音波照射、液液連続抽出などの方法により、抽出
効率をさらに高めることができる。
【0028】かくして本発明の製造方法により、優れた
有効性で、かつ副作用の少ない5−FU誘導体である5
−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体を簡便かつ
収率よく大量生産することができる。
【0029】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明する。 実施例1(5−フルオロ−2′−デオキシウリジン−
3′−アセチル−5′−テトラデシルホスフェートの製
造) テトラデシルホスフェート(C14)3.385g(1
1.5mmol)と3′−アセチル−5−フルオロ−
2′−デオキシウリジン2.88g(10mmol)を
ピリジン40mlに溶解し、p−トルエンスルホニルク
ロリド4.0g(21mmol)をピリジン20mlに
溶解した溶液を30℃で攪拌しながら20分で滴下し
た。滴下終了後30℃で3時間攪拌して反応液を得た。
【0030】氷水7mlを反応液に加え、ピリジンを減
圧留去後、濃縮残渣に水150mlおよび酢酸エチル1
50mlを加え、さらに炭酸ナトリウム水を加えpHを
7.0とし、抽出分液し、酢酸エチル相より非酸性部分
の油状物0.83gを得た。次にpH7.0の水層に酢
酸エチル150mlを加え、1NのHCl水溶液を加
え、pH2.0とし、抽出分液し、酢酸エチル層を脱水
剤で乾燥、濾過し、濃縮して5−フルオロ−2′−デオ
キシウリジン−3′−アセチル−5′−テトラデシルホ
スフェート5.29g(収率94%)を得た(HPLC
純度100%)。
【0031】実施例2(5−フルオロ−2′−デオキシ
ウリジン−3′−アセチル−5′−ドコシルホスフェー
トの製造) ドコシルホスフェート(C22)4.88g(12mmo
l)と3′−アセチル−5−フルオロ−2′−デオキシ
ウリジン2.88g(10mmol)をピリジン40m
lに溶解し、p−トルエンスルホニルクロリド4.0g
(21mmol)をピリジン20mlに溶解した溶液を
30℃で攪拌しながら20分で滴下した。滴下終了後室
温で終夜攪拌して反応液を得た。
【0032】氷水10mlを反応液に加え、ピリジンを
減圧留去後、濃縮残渣に水150mlおよび酢酸エチル
150mlを加え、さらに炭酸ナトリウム水を加えpH
を8.0とし、抽出分液し、酢酸エチル相より非酸性部
分の油状物0.85gを得た。次にpH8.0の水層に
酢酸エチル150mlを加え、トリフルオロ酢酸を加え
てpH1.0とし、抽出分液し、酢酸エチル相を脱水剤
で乾燥、濾過し、濃縮して5−フルオロ−2′−デオキ
シウリジン−3′−アセチル−5′−ドコシルホスフェ
ート6.42g(収率95%)を得た(HPLC純度1
00%)。
【0033】実施例3(5−フルオロ−2′−デオキシ
ウリジン−3′−アセチル−5′−テトラデシルホスフ
ェートの製造) 炭酸ナトリウム水を加えてpHを8.0とし、さらに1
NのHCl水溶液に変えてギ酸を用いpHを3.0とす
るほかは、実施例1と同様にして5−フルオロ−2′−
デオキシウリジン−3′−アセチル−5′−テトラデシ
ルホスフェート4.11g(収率73%)を得た。
【0034】比較例1 実施例1と同様にして得られた反応液に、氷水7mlを
加え、ピリジンを減圧留去後、残渣に水150mlおよ
び酢酸エチル150mlを加え、さらに1NのHClを
加えてpHを1.0とし、反応生成物を抽出分液後、酢
酸エチル相を脱水剤で乾燥し、濾過し、濃縮し、6.1
9gの反応生成物を得た。HPLC純度は66%で不純
物を多量含むものであった。
【0035】比較例2 滴下終了後の攪拌時間を30分とするほかは実施例1と
同様にして反応液を得た。得られた反応液に氷水7ml
を加え、ピリジンを減圧留去後、残渣に水150mlお
よび酢酸エチル150mlを加え、炭酸ナトリウム水を
加えてpHを7.0とし、抽出分液後、pH7.0の水
相に酢酸エチル150mlを加え、さらにギ酸を加えて
pHを4.0とし、抽出分液を試みたが、分離が悪く、
かつ抽出効率が悪かった。
【0036】実施例4 実施例1で合成した5−フルオロ−2′−デオキシウリ
ジン−3′−アセチル−5′−テトラデシルホスフェー
ト2.82g(5mmol)をメタノール20mlに溶
解し、氷冷攪拌しながら、2NのNaOH6mlを滴下
し、氷冷下60分攪拌した。メタノールを減圧留去後、
残渣に水80mlと酢酸エチル80mlを加え、1Nの
HClでpHを1.0とし、分液後、酢酸エチル層にエ
タノール20mlを加え、脱水剤(硫酸マグネシウム)
で脱水し、濾過後、濃縮し、2.72gの加水分解反応
生成物を得た。ジクロロエタン/メタノール(=9/
1)混合溶媒16mlで再結晶し、1.93gの精製品
を得た。電位差滴定による純度測定の結果、純度は9
9.4%であった。HPLCによる純度測定の結果も9
9.4%であった。
【0037】比較例3 比較例1で合成した5−フルオロ−2′−デオキシウリ
ジン−3′−アセチル−5′−テトラデシルホスフェー
ト2.82g(5mmol)を実施例4と同様にして加
水分解し、同様の操作で再結晶を数回繰り返したが、5
−フルオロ−2′−デオキシウリジン−3′−アセチル
−5′−テトラデシルホスフェートの純度は95%以上
にはならなかった。
【0038】比較例4 ドコシルホスフェート(C22)1.9g(4.5mmo
l)と3′−アセチル−5−フルオロ−2′−デオキシ
ウリジン864mg(3mmol)を8.0mlの無水
ピリジンに溶解し、氷冷攪拌下p−トルエンスルホニル
クロライド1.72g(9mmol)を加え、室温で一
夜攪拌した。これに水3mlを加え、30分攪拌した
後、溶液を減圧にて留去して得た粗生成物に濃アンモニ
ア水20mlとメタノール40mlを加え、一夜室温で
攪拌した。反応混合物から溶媒を減圧にて留去し、残渣
に水と2規定水酸化ナトリウム水溶液を加えpHを約1
2とし、これをブタノールで洗った。水層を氷冷下2規
定塩酸を加え、pHを約2とし、析出した沈澱を遠心分
離した。この沈澱を少量のブタノールに溶かし、シリカ
ゲルカラムクロマトグラフィーに付し、ブタノール−酢
酸−水(20:1:1)〜(10:1:1)溶出部分を
集め、濃縮して得られた粉末を少量のメタノールで洗
い、485mgの5−フルオロ−2′−デオキシウリジ
ン−5′−ドコシルホスフェートを得た。収率は23%
であった。この様に目的物を単離精製するためにはシリ
カゲルクロマトグラフィー精製が必須であった。
【0039】
【発明の効果】本発明によれば、優れた有効性で、かつ
副作用の少ない5−FU誘導体である5−フルオロ−
2′−デオキシウリジン誘導体を簡便かつ収率よく大量
生産することができる。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記式 [II] 【化1】 (式中、Rはアルコールの保護基を表す。)で表される
    3′−置換−5−フルオロ−2′−デオキシウリジン
    と、下記式 [III] 【化2】 (式中、Aは炭素数1〜3の飽和または不飽和の2価の
    脂肪族炭化水素基を表す。nは0または1を表し、nが
    0の場合はYは酸素原子に直接結合していることを示
    す。Yは水素原子、フェニル基または置換フェニル基を
    表す。ただし、Yが水素原子の場合には、nは1であ
    る。)で表されるリン酸モノエステル類とを縮合剤の存
    在下反応せしめる下記式〔I〕 【化3】 (式中、A、n、YおよびRは前記式 [II] および [II
    I]の定義と同じである。)で表される5−フルオロ−
    2′−デオキシウリジン誘導体の製造方法において、縮
    合剤の存在下反応させて得られたのち、水を加え、次い
    で得られる水相のpHを5.0以上にして該水相から非
    酸性部分を除去したのち、該水相のpHを3.0以下に
    して5−フルオロ−2′−デオキシウリジン誘導体を抽
    出することを特徴とする5−フルオロ−2′−デオキシ
    ウリジン誘導体の製造方法。
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