JPH05124825A - ダイヤモンド様薄膜保護膜を有する金型 - Google Patents

ダイヤモンド様薄膜保護膜を有する金型

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JPH05124825A
JPH05124825A JP31148891A JP31148891A JPH05124825A JP H05124825 A JPH05124825 A JP H05124825A JP 31148891 A JP31148891 A JP 31148891A JP 31148891 A JP31148891 A JP 31148891A JP H05124825 A JPH05124825 A JP H05124825A
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正俊 中山
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 ダイヤモンド様薄膜保護膜を有する焼入れ鋼
金型への保護膜の結合力を向上させる。 【構成】 焼入れ鋼製の金型の表面に、けい素と炭素の
非晶質混合物からなる中間層と、ダイヤモンド様薄膜を
順に形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイヤモンド様薄膜で
保護した金型に関し、安価な鋼鉄を使用した高性能金型
とその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】従来、ガラスやプラスチックの射出成形、
押出成形、圧縮成形等の成形用または加工用金型は、超
硬質材料から製造されている。しかしこのような材料は
高価であり、手配及び製造に時間と費用が掛かる。また
靭性に欠けるため割れ易い欠点がある。超硬質材料の脆
さと耐摩耗性を補うために金型表面のうち摩擦面又は摺
動面をダイヤモンド様薄膜被覆して保護膜を作ることが
特開平2−15169、同2−22012、同2−15
170等により提案されているが、ダイヤモンド様薄膜
は金型基体の表面への結合力が弱く、微結晶の集まりで
あるため、外力の作用で金型表面から剥離し易い問題が
あった。そのため保護被覆として耐食性、耐摩耗性等が
必要な用途において充分に効果を発揮出来ない。
【0003】一方焼入れ鋼は安価に入手出来、加工にも
手間と費用が余りかからないが、金型表面が摩耗し易く
寿命が短い欠点がある。この欠点を改良するには上記特
開平2−15169、同2−22012、同2−151
70等に示されているような気相法によりダイヤモンド
様薄膜を被覆すると良いが、同じ理由から結合力が不十
分である。他の方法によるダイヤモンド様薄膜製造方法
には各種の形式がある(例えば「表面化学」第5巻第1
08号(1984年)第108−115頁の各種の方法
参照)が、一般に、600℃以上の高温度の基質温度が
必要であり、焼入れ鋼の焼鈍が生じて金型の硬度を損な
う問題がある。
【0004】
【発明が解決すべき課題】本発明は安価な焼入れ鋼を使
用して、耐摩耗性の高い金型を製造することを目的とす
る。しかしこの焼入れ鋼は耐熱性が低く、又ダイヤモン
ド様薄膜に対する接着性に乏しいので工業的に耐摩耗性
のダイヤモンド様薄膜被覆金型を構成することが出来な
かった。特願平1−214913号には金属やセラミッ
ク等の保護のためにArイオン等による基板ボンバード
とそれに続くイオン化蒸着法によるダイヤモンド成膜を
使用する技術が記載されているが、焼入れ鋼による金型
の製造への応用は開示していない。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、ダイヤモンド
様薄膜との親和性が悪い金型の表面に、けい素と炭素の
非晶質混合物からなる中間層と、ダイヤモンド様薄膜を
順に形成した保護膜を有する金型を提供する。
【0006】本発明に使用する中間層の物質は、次の3
種の物質のガスより誘導される非晶質の混合物である。
ここにガスとは次の1の炭素及びけい素を共に含有する
低分子量の化合物のガス、2と3、1と2、1と3、ま
たは1と2と3の低分子量の物質の混合ガスである。ダ
イヤモンド様膜を支持するので中間層も十分な硬度が必
要である。 (1)有機けい素化合物−メチルシランCH3 SiH
3 、ジメチルシラン(CH32 SiH2 、トリメチル
シラン(CH33 SiH、テトラメチルシランSi
(CH34 。 (2)けい素化合物−シランSiH4 ,ジシランSi2
6 、四フッ化けい素SiF4 。 (3)炭素化合物−メタンCH4 、エタンC26、プ
ロピレンC38 、エチレンC24 、アセチレンC2
2
【0007】中間層を形成するための方法は、特願平2
−14480号に記載されているバイアス印加プラズマ
CVD法、または特開昭58−174507号及び特開
平1−234396号に記載されたイオン化蒸着法が使
用できる。中間層の成膜後、その膜を空気にさらすこと
なく次のダイヤモンド様膜の形成工程に移行することが
望ましい。このため同じ真空槽を使用することが必要で
ある。なお、好ましくはこの工程に先立って、成膜装置
の真空室内に前記基体を配置し、Ar等のボンバード用
ガスを前記真空室内に導入し、熱陰極フィラメントとそ
の周りに設けられた陽極とよりなるイオン化手段により
電離してイオンの流れを形成し、これを前記陽極よりも
低電位にあるグリッドにより加速して基体の表面をボン
バードして活性化する前工程を採用してもよい。
【0008】得られる中間層は結晶質ではなくて非晶質
である。後で比較する様に結晶質の中間層に比して大き
い結合力を生じる。また、中間層は最初はけい素成分を
多くし、成膜にしたがってけい素成分を減少させ、炭素
成分を多くすることが望ましい。これにより結合力を更
に向上させることができる。中間層の膜厚は0.02〜
3μmが好適であり、更に好ましくは0.05〜0.5
μmである。余り薄いと効果がなく、余り厚過ぎても効
果が飽和する。
【0009】イオン化蒸着法及びバイアス印加プラズマ
CVDによる中間層の形成にあっては、前記の単独又は
混合ガスを用いる。またダイヤモンド様膜の形成にあっ
ては、炭化水素原料ガス又は分解又は反応により炭化水
素を生成し得る原料ガス(ここに炭化水素とはメタン、
エタン、プロパン等の飽和炭化水素、エチレン、プロピ
レン、アセチレン等の不飽和炭化水素等があり、分解し
て炭化水素を生成し得る原料ガスはメチルアルコール、
エチルアルコール等のアルコール類、アセトン、メチル
エチルケトン等のケトン類などがあり、又反応して炭化
水素ガスを生成する原料ガスには一酸化炭素、二酸化炭
素と水素との混合ガス等がある。また前記原料にはヘリ
ウム、ネオン、アルゴン等の希ガスあるいは水素、酸
素、窒素、水、一酸化炭素、二酸化炭素、等の少なくと
も一種を含ませることができる)を熱陰極フィラメント
−陽極間のアーク放電、陰極熱フィラメント−陽極間の
熱電子放出によるイオン化等の手段でイオン化してイオ
ン流とし、この流れを電場で加速して基体に差し向ける
ことによりダイヤモンド様薄膜を成膜する方法であり、
詳細は特開昭58−174507号及び特開平1−23
4396号に記載されている。
【0010】図1に成膜装置の好ましい例を示す。図中
30は真空容器、31はチャンバーであり、排気系38
に接続されて10-6Torr程度までの高真空に引かれ
る。32は基体(金型)Sの裏面に設けられ負の電位V
aに保たれた電極である。基体Sの表面に近接又は接触
してダイヤモンド様薄膜の形状を規制する窓を有するマ
スク42が設けられる。このマスクは基体に接していて
も良いが膜の周部の厚みを薄くして割れ(クラック)を
減じるためにはなるべくは離間させる。33は基体と同
一の電位Vaを与えられたグリッドで成膜工程で炭化水
素イオンの加速を行なうのに使用される。このグリッド
33は膜の連続性を高め且つ表面を平滑にするため適正
に定めた空間率(単位面積あたりの穴の面積)と穴密度
(単位長さあたりの穴の数)のグリッドを使用し、或い
はその面内方向に振動するための手段を有していても良
い。34は負の電位Vdに維持された熱陰極フィラメン
トであり、交流電源からの電流Ifによって加熱されて
熱電子を発生する。35は原料でガスの供給口であり、
37はガス供給通路、37’はプラズマ励起室である。
フィラメント34を取囲んで陽極36が配置されてい
る。この陽極はこの場合接地されているが、フィラメン
トに対しては正の電圧Vdを有し、電極32及びグリッ
ド33に対しては正の電位Vaを与えられている。フィ
ラメント34、陽極36及び供給口35の周りを取り囲
んでイオン化ガスの閉じ込め用の磁界を発生するために
電源Vcからの電流Icで励磁される電磁コイル39が
配置されている。従って、If、Va、Vd、コイルの
電流Icを調整することにより膜質を変えることができ
る。
【0011】成膜にあたり、チャンバー31内を10-6
Torrまで高真空とし、ガス供給通路37のバルブを
操作して所定流量の中間層成膜用のガス、またはダイヤ
モンド成膜用のガス、場合によりそれと水素との混合ガ
ス、或いはそれとAr、He、Ne等のキャリアガス等
を各供給口35から導入しながら排気系38を調整して
所定のガス圧例えば10-1Torrとする。一方、複数
の熱陰極フイラメント34には交流電流Ifを流して加
熱し、フイラメント34と陽極36の間には電位差Vd
を印加して放電を形成する。供給口35から供給された
原料ガスは熱分解されるとともにフィラメントからの熱
電子と衝突してプラスのイオンと電子を生じる。この電
子は別の熱分解粒子と衝突する。電磁コイルの磁界によ
る閉じ込め作用の下に、このような現象を繰り返すこと
により原料ガスは熱分解物質のプラスイオンとなる。プ
ラスイオンは電極32、グリッド36に印加された負電
位Vaにより引き寄せられ、基体Sの方へ向けて加速さ
れ、基体に衝突して成膜反応を行ない、中間層またはダ
イヤモンド様薄膜を形成する。なお、各部の電位、電
流、温度等の条件については上に述べた条件の他、先に
引用した特許公報を参照されたい。
【0012】中間層を成膜する方法としては図2のバイ
アス印加プラズマCVD法も上記イオン化蒸着法の他に
使用できる。その中間層の成膜装置を例示する。51は
チャンバー、52はRF電源、53は基板電極、54は
RF電極、55は保護すべき基体、56は電極53、5
4間にバイアス電圧を印加する可変直流バイアス電源、
57は原料ガスの導入口、及び58は排気口である。電
極間寸法は例えば約4cmである。バイアス電圧は例え
ば−50V〜−5KVが使用できる。RF電力は例えば
50W〜2KW、反応時間は10〜60分等が使用でき
る。中間層のけい素と炭素の非晶質混合物のビッカース
硬度は300〜2500Kg/mm2 が実現できる。以
下に本発明を例示する。
【0013】
【実施例の説明】
実施例1 原料としてSi26 及びCH4 を用い、図1のイオン
化蒸着装置を使用して表1に示す金型(SKS2及びS
KD11焼き入れ鋼成形金型)の面に中間層を成膜し、
次いでダイヤモンド様薄膜を成膜した。すなわち、フィ
ラメント34はコイル状としその幅3mm、その周りを
取り囲む電極36との隙間8mmとした。グリッド33
は5mm/分の速度で振動させた。If=25A、Va
=−500V、Vd=−30V、電磁コイルの磁束密度
400Gの条件で中間層を得た。X線で測定したところ
どこにもピークが検出されず、中間層は非晶質であっ
た。次に原料をCH4 に切替え、If=25A、Va=
−900V、Vd=−30V、電磁コイルの磁束密度4
00Gの条件で、膜厚3.0μmのダイヤモンド様薄膜
を得た。
【0014】実施例2 原料としてSi26 及びCH4 を用い、図2のバイア
ス印加プラズマCVD装置を使用し、バイアス電圧−2
50V、流量60(cm3 min-1)、全圧0.025
Torr、RF電力500W、反応時間10分、基板温
度200℃、電極間距離4.0cm、の条件で中間層を
成膜した。X線で測定したところどこにもピークが検出
されず、中間層は非晶質であった。次いで実施例1によ
りイオン化蒸着法でダイヤモンド膜を成膜した。
【0015】実施例3 原料として(CH3 )SiHを用い、実施例1と同様に
して中間層とダイヤモンド様薄膜を順に形成した。中間
層は非晶質であった。 実施例4
【0016】原料として(CH3 )SiHを用い、実施
例2と同様にして中間層とダイヤモンド様薄膜を順に形
成した。中間層は非晶質であった。
【0017】比較例1 原料として、SiCl4 、CH4 、H2 、Arを用い、
プラズマCVD法によりSiC中間層を成膜した。X線
で測定したところ中間層は結晶質であった。次いで実施
例1にしたがってダイヤモンド様薄膜を形成した。
【0018】比較例2 Arガス中でSi34 のターゲットを用い、RFスパ
ッタ法により中間層を成膜し、次いで、実施例1に従い
ダイヤモンド様薄膜を形成した。X線で測定したとこ
ろ、中間層は非晶質であった。
【0019】得られた保護膜付き金型の保護膜の特性は
表1に示す通りであった。ただし密着力とスクラッチ力
の評価は次の通りであった。密着力は1cm角、長さ1
0cmの角柱をダイヤモンド様薄膜にエポキシ樹脂で接
着し、引張試験機(テンシロン−商品名)で引っ張って
剥離し測定を行なった。又スクラッチ力はRhesca
社製のCSR−02試験機で測定した。ただし、いずれ
の値も表1の第1行(イオン化蒸着法)の値を1.0と
した相対値である。
【0020】
【表1】
【0021】SKD11を素材とする焼き入れ成形金型
の直径20mmのフェライトコア成形における耐用ショ
ット数は表2に示す通りであった。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】表1、2からわかるように本発明による
とけい素と炭素の非晶質混合物からなる中間層を介在す
ることによりダイヤモンド様薄膜を、通常では、結合が
困難な金型に施すことが可能となり、かつ金型の耐摩耗
性及び耐久性を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に使用するイオン化蒸着装置の概要を
示す。
【図2】 本発明に使用するバイアス印加イオン化CV
D蒸着装置の概要を示す。
【符号の説明】
32 基体 33 グリッド 34 熱フィラメント 35 ガス導入口 36 陽極 39 電磁コイル 51 チャンバー 52 RF電源 53 基板電極 54 RF電極 55 保護すべき基体 56 電極53と54間にバイアス電圧を印加する直流
バイアス電源 57 ガス原料の導入口 58 排気口

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金型の摩耗を受ける表面に、けい素と炭
    素の非晶質混合物からなる中間層と、ダイヤモンド様薄
    膜を順に形成した、保護膜を有する金型。
  2. 【請求項2】 中間層はバイアス印加プラズマCVD法
    またはイオン化蒸着法により形成されたものである請求
    項1に記載の保護膜を有する金型。
  3. 【請求項3】 中間層の膜厚は0.02〜3.0μmで
    ある請求項1または2に記載の保護膜を有する金型。
  4. 【請求項4】 中間層のけい素濃度が金型側からダイヤ
    モンド様膜側へ向けて減少し、炭素濃度が逆の勾配にな
    っていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか
    に記載の金型。
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