JPH051100A - 腫瘍壊死因子活性抑制物質及びその製造方法 - Google Patents

腫瘍壊死因子活性抑制物質及びその製造方法

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JPH051100A
JPH051100A JP3195083A JP19508391A JPH051100A JP H051100 A JPH051100 A JP H051100A JP 3195083 A JP3195083 A JP 3195083A JP 19508391 A JP19508391 A JP 19508391A JP H051100 A JPH051100 A JP H051100A
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tnf
fraction
urine
cells
column
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JP3195083A
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Jun Suzuki
純 鈴木
Kenji Yone
賢二 米
Noriyuki Tsunekawa
典之 恒川
Yataro Ichikawa
弥太郎 市川
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明の目的は新規な腫瘍壊死因子活性抑制
物質を提供することにある。 【構成】 腫瘍壊死因子の殺細胞効果を抑制し、分子量
が約34KDaであり、N末端から1〜11番目のアミ
ノ酸がVal-Ala-Phe-Thr-Pro-Tyr-Ala-Pro-Ala-Pro-Thr
である新規腫瘍壊死因子活性抑制物質及びその製造方法
である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は腫瘍壊死因子の活性を抑
制しうる新しい物質及びその物質の単離、精製に関す
る。
【0002】
【従来の技術】腫瘍壊死因子(TNF)はCD−1 Sw
iss マウスにBacillus Calmette-Guerin(BCG)菌を
投与し、その2週間後に細菌内毒素(エンドトキシン)
を投与した際に血中に現われる生理活性物質として発見
され、1975年にCarswellらが報告[E.A. Carswell
ら、Proc. Natl. Acad, Sci., USA, 72, 3666 (1975)]
した生理活性蛋白質で、そのアミノ酸配列は1985年
にAggarwalら[B.B. Aggarwal ら、J. Biol. Chem. 26
0,2345 (1985) ]により明らかにされている。
【0003】またPennica ら、ShiraiらおよびWangらに
よって、ヒトTNFのアミノ酸配列および遺伝子配列が
明らかにされた[Pannica ら、Nature 312, 724 (198
5), Shiraiら、Nature 313, 803 (1985), Wangら、Scie
nce 288, 149 (1985) ]。当初その抗腫瘍活性から、癌
治療薬としての開発が進められていたTNFは、最近種
々の生理活性が明らかにされ、生体内での諸機能が解明
されつつある。
【0004】例えば、細菌感染によるエンドトキシンシ
ョックの生態内のメディエイターとしての活性[B. Beu
tlerら、Science, 229, 869 (1985)]、血管内皮細胞へ
の炎症反応の惹起[J.R. Gamble ら、Proc. Natl. Aca
d. Sci., USA, 82, 8667 (1985)]、発熱作用[C.A. Di
narelloら、J. Exp. Med. 163,1443 (1986) ]、炎症の
起因物質のひとつであるインターリウキン1[P.P. Naw
rothら、J.Exp. Med. 163, 1363 ]などとの関係が明ら
かにされつつある。
【0005】また、ある種の病気の患者の体液中にはT
NFが通常より多く含まれており、そのTNFの含有量
とその患者の病態には深い関係があることが明らかにな
りつつある。すなわち、TNFの過剰産生により、病態
の悪化が生じていると考えられる疾患が多く存在する。
このような疾患に対して、抗TNF作用を有する物質を
投与することにより、病態の改善が行なえうることは、
容易に推察ができる。事実、エンドトキシンショックに
対しては、抗TNF作用を有する物質として、抗TNF
抗体の投与が、動物を用いて行なわれ、顕著な効果を示
したことが報告されている[B. Beutlerら、Science, 2
99, 869(1985)]。
【0006】しかし、現在のところ、抗TNF抗体はヒ
ト以外の動物由来のものしか作成されておらず人体に対
する投与にはこのような抗体では大きな問題があると考
えられる。さらに、TNFが関与していると考えられる
急性、慢性の炎症反応においては、免疫複合体の形成
が、少なくとも病状を悪化させる要因のひとつであるこ
とが広く知られており、このような疾患に対して、抗T
NF作用を有する物質として、抗TNF抗体を治療のた
めに用いることは難しいと考えられる。
【0007】そこで、ヒトの体液中に天然に存在しうる
抗TNF作用物質を用いることができれば、TNFが関
与している疾患に対して、充分、有効かつ安全な治療薬
として使用しうるものであると推察されるようになっ
た。
【0008】かかるTNF活性抑制物質(TNFインヒ
ビターともいう)に関しては、C. Peetre ら[Eur. J.
Haematol, 41, 414 (1988), 42, 270 (1989)]、P. Sec
kingerら[J. Exp. Med. 167, 1551 (1988), J. Biol.
Chem. 264,11966 (1989) ]及び、H. Engelmannら[J.
Biol. Chem. 264, 11974 (1989)]により、尿から精製
が行なわれたことが報告されている。これらの物質はそ
のN末端アミノ酸配列と、その後、アミノ酸配列が決定
されたTNFリセプター[T.J. Schall ら、Cell 61, 3
61 (1990), H. Loetscher ら、Cell 61, 351(1990)]の
アミノ酸配列とが一致し、TNFリセプターの一部が切
断されて尿中に存在したものであろうと考えられてい
る。
【0009】また、H. Engelmannらは特定のN末端配列
を有する分子量約3万の2つの物質を尿より単離してい
る(H. Engelmann et al, J. Biol. Chem. 265, 1531
(1990))。また、C.A. Smithらも、かかる物質について
そのアミノ酸配列を開示している(C.A. Smith et al,
Science 248, 1019, 1990 )。
【0010】そこで本発明者は、新規なTNF活性抑制
物質を探索すべく、研究を進めた結果、本発明に到達し
た。
【0011】
【発明の目的】本発明は新規なTNF活性抑制物質、そ
れを含有する組成物及び該物質の製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0012】
【発明の構成】本発明は下記発明を包含する。すなわち
本発明は、(a)腫瘍壊死因子のL929 細胞への殺細胞
効果を抑制し、(b)SDS−PAGEにおける分子量
が還元状態で34K±1KDaであり、(c)N末端か
ら1〜11番目までのアミノ酸が配列番号1に示される
アミノ酸配列で表わされる物質である。
【0013】本発明の物質は、N末端から11番目のア
ミノ酸が配列番号1で示されるアミノ酸配列であること
を特徴とする。
【0014】本発明の物質は、C. Peetre ら[Eur. J.H
aematol. 41, 414 (1988)]記載の物質とは、その分子
量において、彼らの報告しているものが約50KDa、
本発明の物質が34K±1KDaという点で相違する。
【0015】また、P. Seckingerら[J. Exp. Med. 16
7, 1551 (1988), J. Biol. Chem. 264, 11966 (1989)
に記載されている物質とは、SDS−PAGEにおける
分子量はほぼ等しいものである。しかし、最終精製に用
いている逆相カラムからの溶出アセトニトリル濃度が、
カラムが異なるという条件を考慮しても、大きく異なる
という点で相違する。
【0016】また、H. Engelmannら[J. Biol. Chem. 2
64, 11974 (1989)]に記載されている物質とは、その分
子量及びN末端からのアミノ酸配列に全く相同性がない
という点で異なる。
【0017】また、H. Engelmannら[J. Biol. Chem. 2
65, 1531, 1990]に記載されている物質TBPIとは、
N末端からのアミノ酸配列が全く異なる。
【0018】また、TBPIIとは、彼らが報告している
ようなN末端アミノ酸の多様性が認められず、かつ、分
子量も若干異なる。
【0019】本発明においてTNFとは、Aggarwalら
[J. Biol. Chem. 260, 2345 (1985)]やShiraiら[Nat
ure 313, 803 (1985)]により報告されているTNF−
αであり、天然TNF及びリコンビナントTNFを含
む。
【0020】本発明において、L929細胞とは、マウ
スfibrosarcoma由来の樹立細胞株であり、ATCC株番
号はCCL−1、名称L929(NCTC clone
929)として登録されている細胞である。
【0021】本発明の物質の分子量は、SDS−PAG
Eにおける分子量が還元状態で34K±1KDaの物質
である。ここでSDS−PAGEにおける還元状態と
は、SDSポリアクリルアミドゲルにて電気泳動を行な
う以前に、サンプルを適当な還元剤、例えば、2−メル
カプトエタノール、ジチオスレイトール等の存在下に
て、100℃、数分間の処理を行なって、タンパク中の
ジスルフィド結合を開裂させた後、電気泳動を行なうこ
とをいう。
【0022】本発明は、該腫瘍壊死因子活性抑制物質を
含有する組成物を包含する。
【0023】本発明の物質は尿を精製することにより得
ることができる。特に、膜性増殖性糸球体腎炎患者の尿
を精製することにより得ることができる。
【0024】膜性増殖性糸球体腎炎は、臨床的には、腎
糸球体への免疫複合体の沈着が認められ、さらに血中補
体価の低下、糸球体基底膜の肥厚、メサンギウム細胞の
増殖等が認められる腎疾患である。本症発症原因はいま
だ不明であるが、最近、メサンギウム細胞増殖型腎炎に
はサイトカイン類、特にインターロイキン6の関与が示
唆されている[実験医学2,11(1989)]。イン
ターロイキン6の産生は、TNFやインターロイキン1
によって誘導されることが、多くの細胞で報告されてお
り[実験医学2,21(1989),現代免疫学93
(1988)]本疾患においてもTNFの産生亢進がお
こっていることが推測される。
【0025】本発明者は、種々の腎疾患患者の血中TN
F含量を測定したところ、膜性増殖性糸球体腎炎患者血
中に高濃度のTNFが含有されていることを明らかとし
た。さらに、本疾患患者尿を用いて、TNFの活性抑制
能を検討したところ、高いTNF活性抑制能があること
を見出したものである。
【0026】精製はイオン交換、逆相カラム、TNF固
定化カラム等の精製操作を組み合わせることにより行な
うことができる。
【0027】すなわち本発明は、腫瘍壊死因子活性抑制
物質の製造方法であって、(a)尿をイオン交換カラム
及び/又は逆相カラムへの吸着及び溶出によって精製
し、(b)腫瘍壊死因子固定化カラムへの吸着及び溶出
によって腫瘍壊死因子に結合する画分を分取し、(c)
腫瘍壊死因子のL929細胞への殺細胞効果を抑制する
画分を選択することからなる製造方法を包含する。
【0028】以下、本発明を詳述する。
【0029】検体尿の調製 尿は、初尿、蓄尿、スポット尿のいずれを用いてもかま
わない。好ましくは、後に、バイオアッセイを行なうた
めに、できるだけ無菌もしくは無菌に近い状態で採取さ
れたものがよい。採取した尿は、すみやかに冷凍保存
し、使用直前に融解して用いることが望ましい。カビや
バクテリアの繁殖を抑えるために、NaN3 や抗生物
質、また、プロテアーゼによる分解を防ぐためにプロテ
アーゼインヒビター等を、尿採取直後に添加してもかま
わないが、尿採取後、速やかに冷凍保存に移行すればこ
れらの添加物は不要である。それらの添加物を添加した
場合には、適当な操作、例えば、透析、限外濾過、ゲル
濾過等の操作により、バイオアッセイを行なう前に充
分、添加物を除去する必要がある。
【0030】検体尿からの精製 精製は、通常のタンパク質の精製法に従って行なえばよ
い。尿原液では、通常、低い活性しか認められないの
で、まず濃縮を行なうことが好ましい。濃縮法として
は、限外濾過、凍結乾燥、塩析等の通常の生化学実験法
に基づいて行なえばよいが、限外濾過、塩析等を行なう
場合には、目的とする物質の分子量や、沈殿を開始する
塩濃度等をあらかじめ調べておく必要がある。
【0031】濃縮後は、適当な精製操作、例えばイオン
交換、ゲル濾過、アフィニティークロマトグラフィー、
等電点電気泳動、疎水クロマトグラフィー、逆相クロマ
トグラフィー等を組み合わせて、精製を進めることがで
きる。
【0032】本発明の物質は、上記濃縮操作の後、TN
Fがカップリングしたカラムに吸着させることにより分
離精製を行ない、その後、逆相カラムによる溶出により
特定のアセトニトリル濃度の画分中に含まれる物質であ
る。アセトニトリル濃度は使用するカラム、アセトニト
リル濃度勾配によって異なるが、Protein C4,VYD
AC社、0.46×25cmを使用し、150分間の18
〜37%のアセトニトリル直線勾配を行なった場合はア
セトニトリル濃度27〜28%のものである。
【0033】TNF活性抑制能の測定 TNF活性の抑制能の測定法としては、既に知られてい
るTNF活性の測定を行なう系に、被験サンプルを添加
すればよい。すなわち、TNFのアッセイ法として知ら
れているin vitroの種々の腫瘍細胞に対する殺
細胞効果、細胞増殖抑制効果、脂肪細胞の脂肪酸代謝抑
制効果、正常線維芽細胞の増殖促進効果やIL−6産生
誘導効果、好中球の内皮細胞への付着促進効果や、スー
パーオキサイド分泌促進効果、血管内皮細胞の凝固活性
亢進効果、骨細胞への破骨効果、種々の細胞でのIL−
1やプロスタグランディン類の誘導効果を測定する系が
利用できる。特にL929細胞への殺細胞効果で測定す
ることが好適である。また、in vivoにおいても
ある種の癌細胞に対する出血壊死効果、エンドトキシン
ショックの誘導効果、発熱効果を測定する系を利用する
ことができる。しかし、in vivoでの活性や、多
くのin vitroでの活性は、TNF以外の物質で
も誘導しうる反応が多くあるため、できるだけ単純で、
かつ、TNF以外の物質の影響を受けない系、例えば、
in vitroの癌細胞に対する殺細胞活性を測定す
る系を用いることが望ましい。
【0034】本発明の腫瘍壊死因子活性抑制物質は、各
種のTNF関連疾患の治療剤として使用される。そのた
めの医薬組成物としては、本発明の腫瘍壊死因子活性抑
制物質を有効活性成分として含み、その他製薬学的に許
容しうる担体を含むものであればよい。
【0035】医薬組成物を調製する場合、有効活性成分
として使用する腫瘍壊死因子活性抑制物質の抗原性の低
減あるいは生理活性の増強などを目的として、例えばポ
リエチレングリコール(PEG)、デキストラン又はポ
リ−DL−アラニンなどの公知のポリマーによって修飾
することもできる。
【0036】医薬組成物の形態としては、注射用組成
物、坐剤その他が挙げられるが、注射用組成物としては
特に静注用組成物として使用するのが好ましい。
【0037】注射用組成物の場合は、本発明の腫瘍壊死
因子活性抑制物質の薬学的有効量及び製薬学的に許容し
うる担体の混合物であり、その中にはアミノ酸、糖類、
セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン類、無機化合
物類などの一般的に注射用組成物に添加される賦活剤を
用いることもできる。それらの具体例をあげると、アミ
ノ酸類としては、グリシン、アルギニン、アラニン及び
それらの薬学的に許容できる塩等があげられる。糖類と
しては、マンニトール、イノシトール、キシリトール、
乳糖、グルコース等があげられる。セルロース誘導体と
してはカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチル
セルロース等があげられる。ポリビニルピロリドン類と
しては分子量10,000〜1,000,000のポリ
ビニルピロリドンがあげられる。
【0038】有機酸類としては、アスコルビン酸、クエ
ン酸類等及びそれらの塩があげられる。無機化合物類と
してはリン酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酢
酸ナトリウムなどがある。
【0039】これら賦形剤を溶解させる液としては、注
射用蒸留水、注射用生理食塩水又は注射用リンゲル液が
ある。
【0040】その他注射液中には、安定剤、界面活性
剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、緩衝剤などが必要に
応じて添加される。これらの具体例を示すと、安定剤と
してはピロ亜硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸等の
抗酸化剤;EDTA、チオグリコール剤等のキレート剤
等があげられる。界面活性剤としては、ポリソルベー
ト、ポリオキシエチレン誘導体等の非イオン性界面活性
剤等があげられる。等張化剤としては塩化ナトリウム等
が挙げられる。
【0041】無痛化剤としてはベンジルアルコール、キ
シロカイン、プロカイン等が挙げられる。
【0042】防腐剤としてはパラベン類、クロロブタノ
ール、塩化ベンザルコニウム、チメロサール(Thimeros
al)等が挙げられる。
【0043】緩衝剤としては、クエン酸、酢酸、リン酸
等のナトリウム塩等が挙げられる。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば腫瘍壊死因子(TNF)
のL929細胞への殺細胞効果を抑制する新規な物質を
提供し、TNFが関与していると考えられる疾患、例え
ば、エンドトキシンショックや火傷時のショック、急性
肝不全、腎不全や多臓器不全、リウマチ、SLE、ベー
チェット病等の多くの自己免疫疾患、臓器移植時の拒絶
反応、川崎病、DIC等の凝固異常の治療、診断等に利
用できる。また上記物質の効率的な製造方法を提供する
ことが可能となった。
【0045】
【実施例】以下、実施例を掲げて本発明について詳細に
説明するが本発明は以下の実施例に限定されるものでは
ない。。
【0046】尿中TNF活性抑制物質の精製 (1)限外濾過による濃縮 膜性増殖性糸球体腎炎患者尿(サンプル1)29.5リ
ットルをペリコン(ミリポア社)による限外濾過で分子
量1万以上の画分を290mlまで濃縮、10mM Tr
is pH8.0にバッファー交換した(サンプル
2)。
【0047】(2)DEAE−Sepharose カラムによる
精製 濃縮尿サンプルを10mM Tris pH8.0にて
平衡化した4リットルのDEAE−Sepharose カラムに
かけた。流速400ml/hrにて、10mM Tris
pH8.0で洗った後、10mM Tris−100m
M NaClpH8.0にて、溶出を行ない、400ml
ずつフラクションを集めた。
【0048】各フラクションの1mlをセントリコン10
(アミコン社)による限外濾過で、PBSにバッファー
交換した後、各フラクションのOD280 と、L929細
胞に対するTNFの殺細胞効果の抑制能を測定し、活性
画分をプールし、ペリコンにより分子量1万以上の画分
を濃縮し、タンパク濃度17.8mg/mlの粗精製品10
3mlを得た(サンプル3)。サンプル3のL929細胞
に対するTNFの殺細胞効果の抑制能を測定した(表1
に示す)。
【0049】(3)逆相カラムによる精製 次にDEAE粗精製品(サンプル3)10mlを、0.1
%TFA(トリフルオロ酢酸)にて平衡化した逆相カラ
ム(Protein C4、VYDAC社、2×25cm)にか
け、40分間のアセトニトリル16%から、40%の直
線勾配で、流速5ml/min にて溶出を行ない、5ml/フ
ラクションにて、分取を行なった。この操作を9回繰り
返した後、各フラクションを凍結乾燥した。各フラクシ
ョンを1mlのPBSに融解した後、同じ溶出時間のフラ
クションをプールし、OD280 とL929細胞に対する
TNFの殺細胞効果の抑制能を測定した。TNF活性を
抑制する活性は主に2つのピーク(ピークI,ピークI
I)に認められた(図1に示す)。これらのL929細
胞に対するTNFの殺細胞効果を表1に示す。
【0050】ピークIの画分は、この後、TNFアフィ
ニティカラム、逆相カラムによる精製をさらに行ない、
N末端アミノ酸配列を決定したところ、Asp-Ser-Val-X-
Pro-Gln-Gly-Lys-Tyr-Ile-His-Pro-Gln-X-Asn-Ser-Ile
(Xは477A型プロテインシークエンサーでピークが
認められなかった残基)という配列が得られ、公知のT
NFインヒビター、あるいはTNFリセプター断片であ
ると推測された[I. Olsson ら、Eur. J. Haematol, 4
2, 270 (1989), H. Loetscherら、Cell 61, 351(1990),
T.J. Schallら、Cell 61, 361 (1990) ]。
【0051】(4)TNFアフィニティーカラムによる
精製 次に、18ml得られた逆相カラム粗精製品(ピークII)
のうち7mlを、1mgのTNFがカップリングした0.4
mlのAffi−Gel 10(BIO−RAD社)に通
した。ここで用いたTNFは比活性3.3×107 U/
mgのリコンビナントTNFであり、そのアミノ酸配列
は、Shiraiらの文献[Nature 313, 803 (1985)]に記載
されているものと同一である。PBS−0.02%Na
N3 を流して、充分、非特異的吸着成分を除去した
後、25mMクエン酸100mM NaCl−0.02
%NaN3 pH2.5により溶出を行なった。
【0052】(5)逆相カラムによる精製 溶出直後に、溶出液1.2mlを0.1%TFA−18%
アセトニトリルで平衡化した逆相カラム(Protein C
4、VYDAC社、0.46×25cm)にかけ、150
分間の18%から37%のアセトニトリル直線勾配によ
り、溶出を行なった。アセトニトリル濃度27〜28%
において、215nmの吸収でメインピークが1つ認めら
れその画分を分取した。これを最終精製品Aとよぶ。こ
の最終精製品AのL929細胞に対するTNFの殺細胞
効果の抑制能を表1に示す。
【0053】TNF活性抑制物質のアッセイ TNF活性抑制能のアッセイは、L929細胞を用い
て、TNF活性を測定するRuff & Giffordの系[J.Immu
nol,125, 1671 (1980)]に、TNFと同時にサンプルを
添加することにより行なった。すなわち、96ウエルプ
レートに4×105 cells /mlのL929細胞を、2μ
g/mlのアクチノマイシンDと混合し、100μl/ウ
エルで播種、5%CO2 ,37℃にて2時間培養す
る。この細胞に限外濾過、透析、もしくは凍結乾燥、再
融解等により、バッファーをPBSに置換したサンプル
50μlを加え、直後に2.6ng/mlのTNF溶液(比
活性3.3×107 U/mg)50μlをさらに添加し、
5%CO2 ,37℃にて18時間培養を行なった。培
養後、クリスタルバイオレットによる生細胞の染色を行
ない、染色された細胞を0.5%SDSにて溶解し、5
95nmの吸光度を測定した。 得られた595nmの吸光
度をもとに、TNF−Inhibition rate を算出した。T
NF−Inhibition rate の算出式は、以下に示すとおり
である。
【0054】 TNF−Inhibition rate = {([OD595 ]TNF+サンプル−[OD595 ]TNF) /([OD595 ]TNFなし−[OD595 ]TNF)}×100(%) 各サンプルは1/2稀釈系列によりアッセイを行ない、
それぞれTNF−Inhibition rate を算出した。30%
のTNF−Inhibition rate を与えるサンプルの最大稀
釈の逆数を1ユニット(U)と規定し、尿中TNF活性
抑制物質の各精製ステップにおけるTNF抑制活性を示
したものが表1である。
【0055】
【表1】
【0056】尿中TNF活性抑制物質の分子量 最終精製品A350μlを凍結乾燥し、230μlのP
BSに再溶解した。このサンプル9μlに10μlの2
×SDS−PAGEサンプルバッファー(1mM Tr
is−HCl pH6.8,10% Sucrose, 10%S
DS,0.25mg/mlブロモフェノールブルー)、1μ
lの2−メルカプトエタノールを加え、100℃、5分
間、加熱した後、10〜20%のSDSポリアクリルア
ミド勾配ゲル(第一化学、SDS−PAG PLATE
10/20)に全量をのせ、30mA定電流にて、12
0分間、泳動を行なった。分子量マーカーとしてはBI
O−RAD社Molecular WeightStandards-Lowを用い
た。電気泳動終了後、銀染色を行なった(図2にそのス
ケッチを示す)。サンプルをのせたレーンには、分子量
34K±1KDaのシングルバンドのみが認められ、尿
中のTNF活性抑制物質は、還元状態でのSDS−PA
GE上での分子量は、34K±1KDaであることが確
認された。
【0057】N末アミノ酸配列の決定 最終精製品A1mlを凍結乾燥にて、約100μlまで、
濃縮を行なった後、Applied Bio Systems 社製、477
A型プロテインシークエンサーで、N末アミノ酸配列の
分析を行なった。
【0058】2回の分析で、N末端より11番目のアミ
ノ酸まで、同一の配列が同定され、これは配列番号1に
示されるアミノ酸配列を有していた。
【配列表】
【0059】配列番号:1 配列の長さ:11 配列の型:アミノ酸 トポロジー:直鎖状 配列の種類:タンパク質 配列:
【図面の簡単な説明】
【図1】DEAE粗精製品を逆相カラムにかけた時の溶
出プロファイルである。
【図2】最終精製品Aの還元状態下におけるSDS−P
AGEの結果を示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 市川 弥太郎 東京都日野市旭が丘4丁目3番2号 帝人 株式会社東京研究センター内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(a)腫瘍壊死因子の、L929細胞への
    殺細胞効果を抑制し、(b)SDS−PAGEにおける
    分子量が還元状態で34K±1KDaであり、(c)N
    末端から1〜11番目までのアミノ酸が次の配列 Val-Ala-Phe-Thr-Pro-Tyr-Ala-Pro-Ala-Pro-Thr で表わされる物質。
  2. 【請求項2】 尿を精製することにより得られる請求項
    1記載の物質。
  3. 【請求項3】 尿が膜性増殖性糸球体腎炎患者由来のも
    のである請求項2記載の物質。
  4. 【請求項4】 腫瘍壊死因子活性抑制物質の製造方法で
    あって、(a)尿をイオン交換カラム及び/又は逆相カ
    ラムへの吸着及び溶出によって精製し、(b)腫瘍壊死
    因子固定化カラムへの吸着及び溶出によって腫瘍壊死因
    子に結合する画分を分取し、(c)腫瘍壊死因子のL9
    29細胞への殺細胞効果を抑制する画分を選択すること
    からなる製造方法。
JP3195083A 1990-07-11 1991-07-10 腫瘍壊死因子活性抑制物質及びその製造方法 Pending JPH051100A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH08510727A (ja) * 1993-05-17 1996-11-12 リサーチ ディベロップメント ファンデーション レチノン酸による腫瘍壊死因子および五酸化二窒素の生産の抑制方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JPH08510727A (ja) * 1993-05-17 1996-11-12 リサーチ ディベロップメント ファンデーション レチノン酸による腫瘍壊死因子および五酸化二窒素の生産の抑制方法

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