JPH0510943B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は歯内治療器具（endodontic
instrument）に関し、特に、人体の歯の根管の
中の物質を清掃し、又根管を拡大整形
（shaping）し充填の準備を行なうときに使用さ
れる根管鑢（file）即ちリーマーに関する。

［従来の技術及びその問題点］ 歯科では比較的に一般的だが難しい処置とし
て、患者の歯の根管の清掃及び充填がある。根管
の処置を行なう場合、先ず、奥歯の噛み合せ面、
前歯の場合は口部の内側の歯の側面が代表的だ
が、歯の歯冠又は露出部に穴が開けられる。次
に、一般的に根管鑢として知られている小さな歯
内治療器具を用い、根管の中に詰まつているもの
を清掃し、根管を整形し、テーパーのついた充填
材が根管の中に入れられる如くにする。

根管鑢として用いられる器具に２つの型があ
り、即ち、ヘドストローム（hedstrom）型器具
とＫ型器具とである。Ｋ型は棒体がねじれ、テー
パーが付き、三角又は四角の断面をした棒体で、
このテーパー付き棒体に３又は４本のスパイラル
状の切削刃が付き、又その端部が円錘形のテーパ
ーの付いた先端になつている。ヘドストローム型
は削り出し（lathe−cut）型の鑢で、棒体の先端
に至る全面に機械加工された１又は２条のスバイ
ラル状の切削溝が付いている。この２種類の型の
鑢の構造上の差異は、Ｋ型鑢は回転又は上下動の
いずれの場合も切込みが行われるのに対し、ヘド
ストローム型では根管に対し上下動したときのみ
切込みが行われる。

根管を清掃及び整形するときに、径が段階的に
増加する１連の鑢を用い根管が徐々に広げられ
る。鑢は歯科医の片手の親指と人差し指の間に挟
んで持つ。従来の１連の鑢は全て同じテーパーが
付いている。例えば、代表的Ｋ型の鑢セツトでは
テーパーは全て0.32mmで、鑢のサイズが非常に多
くなる。鑢を特徴付けるサイズ番号は鑢の先端の
径を1/100mm単位で表わしたもので、鑢の太い方
の端部は径は従つてこの先端の径より0.32mm大き
い。完全セツトは06、08、10、15、20、25、30、
35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110
及び120番のサイズを含み、一般的にはサイズ08
〜60番が使用される。ヘドストローム型も数多い
サイズでセツトを形成しており、代表的なものは
先端サイズが0.10から1.40mmで、一般的には0.15
から0.60mmのものが使用される。

鑢と異なり、根管が真直ぐなことは少ない。若
しも用いた鑢が根管の元の曲面と実質的的に違つ
ていると、歯は取戻すことの出来ない損傷を受け
る。若しも鑢が真直ぐ過ぎて歯根の側面を切り通
すと−これは歯根の穿孔（perforation）と言わ
れる−歯を抜かねばならぬこととなる。若しも鑢
の先端が歯溝に追随しないと、根管から分岐する
道穴を掘つてしまい−これはレツジイング
（ledging）と呼ばれる−問題点を外科的に修正す
る必要が生ずる。

従つて明らかな如く、根管を処置する為には、
鑢を根管に挿入して使用する前に、鑢を曲げなけ
ればならない。鑢を曲げることに加え、歯根の穿
孔を避ける為には、根管を整形するとき、予め曲
げられた鑢を根管の曲面の外側に沿つて引き寄せ
（pull）なければならない。この支持はいわゆる
反曲面動作（anti−curvature motion）で、歯
科医に教えるのが困難で、又最も熟練した医者だ
としても非常に時間の掛かる処置なのである。

更に、根管の清掃及び整形に適したテーパーの
付いた鑢のセツトを用いて行なう技術に、順次よ
り大きい鑢を用い根管の奥から段々と戻して来
る、いわゆる“ステツプ・バツク”（step−
back）技術がある。この技術が最も難しく又時
間が掛かる方法なのである。

［問題点を解決するための手段及び作用］ 本発明は上述の鑢と比較して２つの点で大きく
又好ましい方向で異なつている。第１には、サイ
ズが異なるがテーパーの同じ一連の鑢を用いず、
本発明ではテーパーの異なつた一連の鑢を使用す
る。第２には、鑢の１側面が切削面を持つていな
いことである。

本発明の第１の特徴に関しては、従来のものに
比し、テーパーの異なつた鑢を使用することによ
り多くの利点が得られる。歯内整形の目的は、根
管の先端で最も狭く、歯冠近くで最も広く、連続
したテーパー処置を行なうことである。困難で時
間の掛かるステツプ・バツク技術によりこれを行
なうより、本発明の連続的にテーパーの増加する
一連の鑢を用いれば、根管の清掃及び整形が効果
的に又効率良く行われる。

テーパーの異なる一連の鑢を使用すれば、従来
の鑢を９から10本使用する替わりに、３、４本の
鑢で根管の処置が出来ることがわかつている。９
から10本の器具を使用するより、４本の器具で行
なう方が効率の点で好ましいことは言うまでもな
いが、その結果が従来のものに比し遜色が有つて
はならない。ところが、その結果がむしろ良いの
である。

本発明により設計された鑢は異なつたテーパー
を持つているので、１つの標準テーパーのみを持
つ鑢の場合と異なり、鑢の先端により切削は行わ
れない。従来の鑢のセツトでは一連の鑢の先端径
が増加するが、本発明の場合はこの径が同じか又
はほとんど同じである。本発明では、鑢サイズの
差異は鑢の先端から取手近くの端部への径の増加
量によつて生じ、従つて、各鑢の径の差は取手に
最も近い端部で生じる。

本発明では先端の寸法が一定で、又この先端が
従来の鑢の如くには切削に用いられないので、先
端は丸くて良く、従つて、根管のレツジングが防
止される。この恩恵は鑢のテーパーを変化させる
ことの附随的な効果である。

本発明と従来技術との第２の重要な差異は、本
発明により設計された鑢がその切削溝にいわゆる
安全刃（safe edge）が付いていることである。
この安全刃は鑢の片側のみに付けられており、鑢
を使用してもこの面では切削が行なわれない。鑢
を適当な方向に向けることにより、安全刃が根管
の内側曲面に向き、たとえ鑢が適当に曲げられて
いなくても、根管の側面を損傷することが無い。
従つて、本発明の鑢を用いることにより歯根穿孔
の問題が解消することが理解戴けたと思う。

［実施例］ 本発明を説明するに先立ち、理解を助ける為に
根管処置方法に付いて第１〜３図に基づき簡単に
説明する。第１図は口部の骨１２に生えている歯
１０を示す。第１図の歯１０は門歯で、歯１０の
歯冠に開けられた開口部は口部（図示無し）の内
側で歯１０の側面に開けられている。その開口部
が破線１４で概略示されている。歯１０はその中
に根管１６を持ち、歯１０の歯冠の内側から、骨
１２に埋め込まれた歯１０の先端に向つて伸びて
いる。

第１Ａ図はヘドストローム型鑢２０を示し、鑢
２０を支持する取手２２を持つている。鑢２０は
鋭い先端２４を有し、これは一連の鑢の先端の径
が順次大きくなることにより必要とするものであ
る。従来の技術の説明でヘドストローム型の鑢を
例として説明したが、その他の同様のテーパーの
付いた根管用鑢に付いても同じことである。

第２図に根管１６に挿入された鑢２０が示され
ており、第１図のものを拡大して示している。従
来の鑢の場合、上述のステツプバツク技術が用い
られ、段々と径のより大きい鑢が挿入され、根管
１６に差込まれる深さが段々と浅くなる。根管１
６の先端部近くに根管１６に沿つて示されている
数字及び平行線は、その数字の番手の鑢の差し込
まれる最大深さ示し、サイズ番号10から60番まで
のもの（即ち径0.10から0.60mm）が使用されてい
る。上述の如く、９から11種類の鑢が必要で、時
にはもつと必要とすることがある。

次に第３図に、臼歯３２の根管３０に挿入され
た鑢２０が示されている。図によつて明らかな如
く、臼歯３２の場合は鑢２０を入れる穴３４が歯
３２の噛み合せ面に有る。鑢２０が十分に曲げら
れていなかつたので、鑢が符号３６で示す所が曲
がつた根管３０に穴を開けてしまつている。鑢２
０が上述の反曲面動作により根管３０の外側曲面
に対し引き寄せられないと、上述の如く、穿孔が
起る。

第３図に示す次の問題は、鑢２０の先端が根管
３０から離れ、根管３０の外側の曲面に沿つてレ
ツジを切つていることである。次の鑢は多分この
レツジにはまり込み、根管３０を適切に清掃及び
整形することが出来ないであろう。本発明は根管
の穿孔及びレツジングの問題を共に解消するばか
りでなく、根管の処置を迅速且つ容易に行なうこ
とを可能とする。

前述の如く、一般的に用いられる根管充填材に
は７種類のテーパーがある。第４図にそれを示し
ている。テーパーの異なる充填材４１，４２，４
３，４４，４５，４６及び４７はサイズが異な
り、サイズ４１のテーパーが一番小さく、サイズ
４７が最も大きい。

一連の７種類の鑢５１，５２，５３，５４，５
５，５６及び５７が第５図に示されている。主
に、３、４本の鑢のみが根管の清掃及び整形に使
用される。鑢５７にのみ取手４８が描かれている
が、勿論全ての鑢に取手が付いている。鑢５１，
５２，５３，５４，５５，５６及び５７は全て先
端が同じ小さな径をしており、先端と反対の端部
の径が異なつている。従つて各々テーパーが違つ
ている。

本発明の鑢を用いることにより、根管の処置が
非常に迅速且つ容易に行われる。各鑢５１，５
２，５３，５４，５５，５６及び５７の先端の径
は同一又は同一に近く、第２図で説明した従来の
鑢と異なり、各鑢が一番先まで挿入される。鑢５
１，５２，５３，５４，５５，５６及び５７の寸
法は充填材４１，４２，４３，４４，４５，４６
及び４７の寸法と正確に対応している。

第６Ａ及び６Ｂ図は本発明の鑢の１本の拡大詳
細図である。鑢５７は丸い先端を有し、他の鑢５
１，５２，５３，５４，５５及び５６は図示され
ていないが同様で、レツジングを有効に又完全に
防ぐ。先端６０を丸くすることが可能なのは、全
ての鑢５１，５２，５３，５４，５５，５６及び
５７の先端が同一の又はほとんど同一の先端径を
しているからである。この先端の径は各鑢が根管
の一番奥まで入れるように十分小さくなつてい
る。

鑢５７の片側側面は安全刃になつており、鑢５
７の側面の本来鋭い切削刃が付いているべき所
が、いくつもの平面６２になつている。平面６２
は鑢５７の側面を機械切削又は研磨することによ
り作られる。同様に鑢５１，５２，５３，５４，
５５及び５６も全て安全刃を持つている。

鑢を根管に挿入するとき、この安全刃を根管の
内側曲面に向けることにより、根管の穿孔が防止
される。このことにより上述の如き反曲面動作の
必要が無くなり、根管の清掃及び整形に必要とす
る時間及び技術水準が最少最低になる。取手４８
に平面６４を設けることにより、鑢５７の位置決
めが可能となる。この平面６４は第７Ａ及び７Ｂ
図に示す如く鑢５７の平面６２と同じ方向を向い
ている。

第８図は基準型板７０を示し、７種類の凹み面
７１，７２，７３，７４，７５，７６及び７７を
有し、７種類のテーパー付き充填材４１，４２，
４３，４４，４５，４６及び４７が正確に入る寸
法をしている。型板７０は歯のＸ線写真の上に型
板７０を載せることにより、使用すべき鑢のサイ
ズの選択に用いられる。

【図面の簡単な説明】

第１図は除去すべき部分を破線で示した歯の根
管の概念図、第１Ａ図は従来のヘドストローム型
鑢を示す図、第２図は第１図の根管に挿入された
11種類の従来型鑢の先端の最終位置を示し、この
ことによりステツプバツク技術を示す図、第３図
は第１Ａ図に示す従来の鑢を用い、根管の清掃及
び整形を行ない、特に、根管の穿孔及びレツジン
グを説明する概念図、第４図は、処置された根管
を充填するときの選択に用いられる各種のテーパ
ーの付いた充填材の７種類のサイズを示す図、第
５図は、本発明により作られた鑢の寸法を、比較
し易い大きさで並べた７種類のサイズの鑢で、６
本の鑢からは説明の為取手が取除かれた状態で示
す図、第６Ａ図は、第５図の鑢の１本の切削刃
で、特に丸い先端と安全刃とを示す正面図、第６
Ｂ図は、第５図の鑢の切削刃で、特に丸い先端及
び安全刃とを示す側面図、第７Ａ図は第５図の鑢
の取手の平らな面で、鑢の安全刃の方向決めに用
いられるものを正面図で示す図、第７Ｂ図は第５
図の鑢の取手の平らな面で、鑢の安全刃の方向決
めに用いられるものを示す側面図、第８図は、鑢
又は充填材の選択にテーパー・サイズを測るのに
用いられる型板を示す図である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 歯の中の根管の清掃及び整形に用いられる歯
   内治療器具で、テーパー部を有する鑢で、上記テ
   ーパー部がその１端に於いて大きな径を又他の１
   端に於いて小さな径を有し、上記鑢が、上記小さ
   な径を有する上記テーパー部の端部に滑らかで丸
   い先端を有するものと、及び、上記テーパー部の
   周囲に配置される切削刃で、上記切削刃が上記テ
   ーパー部の１つの立て側面に沿い除去されている
   ことを特徴とするもの、とを含む歯の根管の清掃
   及び整形用歯内治療器具。 ２ 上記鑢が複数あり、各々が、その周囲に配置
   される切削刃を伴うテーパー部を有し、又その切
   削刃がテーパー部の１つの縦側面に沿い除去され
   ており、上記複数の鑢の各々が互いに異なるテー
   パーを有し、上記複数の鑢の第１のものから最後
   のものに向つてそのテーパーが漸増する如くにな
   つていることを特徴とする、特許請求の範囲第１
   項に記載の歯の根管の清掃及び整形用歯内治療器
   具。 ３ 各鑢の上記テーパー部のテーパーが、準備を
   終えた根管を充填するのに用いられるテーパーの
   異なる１連の充填材の各テーパーと、互いに対応
   していることを特徴とする、特許請求の範囲第２
   項に記載の歯の根管の清掃及び整形用歯内治療器
   具。 ４ 上記の大きな径を有するテーパー部の端部に
   於いて、上記鑢に装着される取手を有し、上記取
   手が、上記切削刃が除去されている上記テーパー
   部の上記縦側面に対し同じ方向を向いている触知
   部を有することを特徴とする、特許請求の範囲第
   １から３項のいずれかの１項に記載の歯の根管の
   清掃及び整形用歯内治療器具。 ５ 上記取手が実質的に丸い断面をしており、そ
   の側部に切削刃が除去された鑢の側面と同一方向
   を向く１つの平らな側面を有することを特徴とす
   る、特許請求の範囲第４項に記載の歯の根管の清
   掃及び整形用歯内治療器具。 ６ 歯内治療器具の製作方法で、その手順が、１
   端に於いて大きな径を又他の１端に於いて小さな
   径を有するテーパーの付いた棒体を準備し、上記
   テーパーの付いた棒体に、上記大きな径の端部近
   くから上記小さな径の端部に至る間に切削面を形
   成し、上記小さな径を有する端部で、上記棒体の
   先端を機械加工して丸い表面を形成し、上記テー
   パーの付いた棒体の１つの縦側面から上記切削面
   を除去して切削面の無い安全面とすることを特徴
   とする、歯の根管の清掃及び整形用歯内治療器具
   の製作方法。 ７ 複数の鑢を作る方法で、上記棒体の各々が順
   次テーパーを異にしていることを特徴とする、特
   許請求の範囲第６項に記載の歯の根管の清掃及び
   整形用歯内治療器具の製作方法。 ８ 準備された根管の充填に用いられるテーパー
   の異なる１連の充填材の内の対応する１つと実質
   的に等しくなる如くに、各棒体のテーパーが選択
   されることを特徴とする、特許請求の範囲第７項
   に記載の歯の根管の清掃及び整形用歯内治療器具
   の製作方法。