JPH05105791A - プロピレン重合体水性分散液 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 数平均分子量７，０００〜６０，０００、酸
価が１０以下のプロピレン重合体をカルボン酸を含有す
る水溶性（メタ）アクリル樹脂で水中に分散させたプロ
ピレン重合体水性分散液。 【効果】本発明のプロピレン重合体水性分散液は乾燥皮
膜の耐水性、接着強度に優れ、又、他物質との混和性に
優れるので、用途に応じた改質が容易でありプロピレン
重合体成形品と他基材とのヒートシール剤、ホットスタ
ンプ用接着剤等として特に有用である。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、プロピレン重合体水性
分散液に関するものである。さらに詳しくは、プロピレ
ン重合体成形品のヒートシール剤、ホットスタンプ剤、
水性インキ用艶消し剤、アンチブロッキング剤として有
用なプロピレン重合体水性分散液に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】プロピレン重合体は安価であり耐熱性、
耐薬品性、耐水性、機械的強度に優れることから、軽包
装用フィルム、電気製品のハウジング、自動車の内装材
・バンパー、あるいは雑貨用品等に広く利用されてい
る。そして、これらの特徴を生かした分散液として、例
えば特開昭６３−１２６５１号公報にはプロピレン重合
体成形品のヒートシール剤として好適な、無水マレイン
酸で変性されたポリプロピレンの有機溶剤分散液が開示
されている。しかしながら該分散液は有機溶剤を用いて
いるために加工時の作業環境問題や乾燥皮膜の残存溶剤
等、安全性に問題があり水分散体の出現が強く望まれて
いる。

【０００３】ポリプロピレンは本来無極性で融点が高く
溶融粘度も高い為、水性分散液化が技術的に難しく、現
在工業化されているのは酸化ポリプロピレンワックスあ
るいはカルボキシル化ポリプロピレンワックスといっ
た、酸価が高く数平均分子量が５，０００以下のワック
スを水中に分散したものが散見される程度であり、得ら
れる乾燥皮膜はワックス的で機械的強度に貧しく、しか
も多量の乳化剤を用いているため耐水性も劣るという欠
点を有している。

【０００４】上述の欠点を克服し皮膜の機械的強度、耐
水性に優れたプロピレン重合体水性分散液の製造方法が
特開昭５９−４７２４４号公報に開示されているが、該
製造方法によって得られる分散液は、分散剤に起因する
イオン性がカチオン性である為、アニオン性の水性分散
液、あるいはアニオン性水溶性樹脂、顔料、あるいは無
機フィラー等で改質しようとすると混和性に難があっ
た。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明は、乾燥皮膜の
耐水性、接着強度を損なうことなく他物質との混和性が
改良されたプロピレン重合体水性分散液を提供する事に
ある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、数平均
分子量が７，０００〜６０，０００であって、酸価が１
０以下であるプロピレン重合体をカルボン酸を含有する
水溶性（メタ）アクリル樹脂で水中に分散させたプロピ
レン重合体水性分散液を提供するものである。本発明に
用いられるプロピレン重合体は結晶性プロピレン重合体
であって、これらは公知のチタン系触媒、ジルコニル系
触媒等によって製造される重合体を用いることができ
る。プロピレン以外の共重合成分として他のα−オレフ
ィン、例えば、エチレン、１−ブテン、１−ヘキセン等
が３０重量％以下共重合されたもの、更にはそれらの重
合体を空気や酸素で酸化させたもの、あるいは、これら
の重合体を無水マレイン酸、（メタ）アクリル酸等の
α，β−不飽和カルボン酸でグラフト変性させたものが
用いられる。

【０００７】これらのプロピレン重合体にあって数平均
分子量は７，０００〜６０，０００であることが必要
で、好ましくは１０，０００〜５０，０００である。数
平均分子量が７，０００未満であると得られる乾燥皮膜
がワックス的で機械的強度に乏しい為接着強度が低くな
る。又、６０，０００を超えると分散粒子が不定形で、
しかも平均粒子径が大きくなって、結果として静置安定
性の悪い水性分散液しか得られない。又、ポリマー１ｇ
をＫＯＨで中和するに必要なｍｇ数で表す酸価は１０以
下である必要がある。酸価が１０を超えると分散粒子の
平均粒子径が大きくなって静置安定性が悪くなる傾向に
ある。

【０００８】本発明に用いられるプロピレン重合体は、
上記の全ての要件を満足する一種類のプロピレン重合体
であっても良いし、或いはプロピレン重合体同士を複数
組み合わせて最終的に全ての要件を満足させたものであ
っても良い。又、他の熱可塑性樹脂、例えばエチレン−
プロピレンランダム共重合体、スチレン−ブタジエン−
スチレンブロック共重合体等の熱可塑性ゴムを添加して
ピール強度を改良するとか、ロジン誘導体、テルペン誘
導体、石油樹脂等の粘着付与剤を添加して接着性を付与
する事も可能である。これら熱可塑性樹脂の配合量はプ
ロピレン重合体１００重合部あたり２０重量部以下に止
めないとプロピレン重合体の特性が失われることがあ
る。更に、帯電防止性、スリップ性、アンチブロッキン
グ性を付与するために添加剤を少量添加する事も可能で
ある。

【０００９】本発明の分散液は、プロピレン重合体を水
中に分散させる分散剤としてカルボン酸を含有する水溶
性（メタ）アクリル樹脂を用いる。この水溶性（メタ）
アクリル樹脂は、アニオン性であり、かつ、プロピレン
重合体の乳化分散剤であることから適度の親水性と親油
性を兼ね備えたものであり、親水性成分として（メタ）
アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、
マレイン酸等のα，β−不飽和カルボン酸の少なくとも
一種と、親油性成分として（メタ）アクリル酸メチル、
（メタ）アクリル酸エチル、（メタ）アクリル酸ブチ
ル、（メタ）アクリル酸ラウリル、（メタ）アクリル酸
ステアリル、（メタ）アクリル酸シクロヘキシル等の
（メタ）アクリル酸エステルから選ばれた少なくとも一
種との共重合体であり、必要に応じてカルボン酸の一
部、又は全部を塩基により中和したものである。

【００１０】全樹脂中に占める親水性成分であるα，β
−不飽和カルボン酸の割合はモル分率で１５〜５０であ
る事が好ましい。１５未満であると分散粒子の平均粒子
径が大きく不定形となりがちであり、５０を超えると耐
水性に乏しい乾燥皮膜となる傾向にある。又、中和に使
用する塩基として揮発性の塩基、例えばアンモニア、エ
タノールアミン等を使用すれば、加熱乾燥時に蒸発する
ので皮膜の耐水性がよくなり、しかもカルボン酸を含有
する（メタ）アクリル樹脂の水に対する溶解性が向上す
るので親水性と親油性のバランスがとりやすく特に好ま
しい。

【００１１】この分散剤を用いて、前述のプロピレン重
合体を水に分散する方法としては、キシレン、トルエン
等の芳香族炭化水素、トリクロロエチレン、テトラクロ
ロエチレン等のハロゲン化炭化水素等に加熱溶解させた
プロピレン重合体溶液を前記カルボン酸を含有する水溶
性（メタ）アクリル樹脂を分散剤としてホモミキサー等
により水中下で高速攪拌させて乳化状態とし、しかる後
に脱溶剤を実施して得る方法、或いはニーダー等のバッ
チ式混練機を用いて溶融下にあるプロピレン重合体に、
前記（メタ）アクリル樹脂の水溶液を加圧下に溶融混練
して製造する方法等も可能であるが、特に好ましい方法
は、特開昭５６−２１４９号公報の第１図に開示される
二軸押出機を用い、プロピレン重合体を押出機のホッパ
ーより連続的に供給し、これを加熱溶融混練させ、分散
剤の供給口より加熱加圧下に供給された分散剤の水溶液
と混練して均一混合物とし、さらに別個に設けられた水
の供給口より加熱加圧下に供給された水と混練すること
により得る方法である。

【００１２】分散剤はプロピレン重合体１００重量部あ
たり２〜１５重量部用いられる。これは、２重量部未満
であっても、あるいは、１５重量部を越えても得られる
プロピレン重合体分散液の平均粒子径が大きくなること
により静置安定性が悪くなるからである。水は、固形分
調整の為に添加されるものであり、水性分散液の固形分
が１０〜６５重量％、好ましくは２０〜５５重量％にな
るように添加される。

【００１３】かくして得られた本発明の水性分散液に
は、加工性を改良するためにアルキレンオキサイド系、
シリコン系、アセチレングリコール系等の消泡剤、ある
いはヒドロキシセルローズ、ポリビニルアルコール、ア
ルキレンオキサイド系共重合体、（メタ）アクリル酸−
（メタ）アクリル酸エステル共重合体等の粘度調節剤、
ジアルキルスルホコハクネート等の湿潤剤、更には乾燥
速度を早めるためのアルコール等に代表される低沸点親
水性有機溶剤等を直接添加混合することが可能である。
これらの消泡剤、粘度調節剤、湿潤剤は多量に使用する
と乾燥皮膜の物性を悪くするので、水性分散液中の固形
分１００重量部当たり５重量部以下に止めるべきであ
る。又、低沸点親水性有機溶剤は安全、衛生面を考慮し
て配合量を任意に決定し得る。

【００１４】更に、アクリル系エマルジョン、酢ビ系エ
マルジョン、ウレタン系エマルジョン、ポリエステル系
エマルジョン、塩化ビニリデン系エマルジョン、塩ビ系
エマルジョン、ゴム系エマルジョン、ポリオレフィン系
エマルジョン、ロジン系エマルジョン、テルペン系エマ
ルジョン、石油樹脂系エマルジョン、ワックスエマルジ
ョン、エポキシエマルジョン、フェノール樹脂エマルジ
ョン等の熱可塑性、あるいは熱硬化性樹脂エマルジョ
ン、更にはメラミン樹脂、尿素樹脂等の水溶性熱硬化性
樹脂等を前記水性分散液中の固形分１００重量部当たり
固形分で８０重量部の範囲で配合して、特定の基材に対
して接着性を高めるとか、乾燥皮膜の耐熱性を高めると
いったことが可能である

【００１５】

【発明の効果】本発明のプロピレン重合体水性分散液は
乾燥皮膜の耐水性、接着強度に優れ、又、他物質との混
和性に優れるので、用途に応じた改質が容易でありプロ
ピレン重合体成形品と他基材とのヒートシール剤、ホッ
トスタンプ用接着剤等として特に有用である。

【００１６】

【実施例】以下実施例をあげて本発明をさらに詳述す
る。なお、例中の％および部は特に例記しない限り重量
基準である。カルボン酸を含有する水溶性（メタ）アクリル樹脂の製
造例 アクリル酸３０モル％、エチルアクリレート３０モル
％、ブチルメタクリレート４０モル％からなる単量体１
００部およびイソプロピルアルコール１５０部とを攪拌
機、還流冷却管、温度計、滴下ロートを装着した４ツ口
フラスコ内に仕込み、窒素ガス置換後、２，２′−アゾ
ビスイソブチロニトリル０．６部を開始剤とし、８０℃
にて３時間重合した。次いで、２８％アンモニア水溶液
１８．２部で中和した後、イソプロピルアルコールを留
去しながら水を添加して置換し、最終的に固形分３０％
の粘稠な（メタ）アクリル系樹脂の水溶液を得た。

【００１７】実施例−１ 数平均分子量が４２，０００、酸価が０のプロピレン重
合体（エチレン含量４．６％、融点１２０℃）を１００
部／時間の割合で同方向噛合型二軸押出機（池貝鉄工社
製“ＰＣＭ４５”、三条ネジ浅溝型、Ｌ／Ｄ＝３０）の
ホッパーより連続的に供給した。また、同押出機の第一
ベント部に設けた供給口より、前記製造例で得たカルボ
ン酸を含有する水溶性アクリル樹脂の水溶液を１３部／
時間の割合でギヤポンプで加圧して連続的に供給し、更
に、第二ベント部に設けた供給口より９５℃の熱水を９
０部／時間の割合でプランジャーポンプにより連続的に
供給しながらシリンダー加熱温度を２２０℃を最高とし
て順次加熱温度を下げ、出口で９５℃になるように押し
出して乳白色の水性分散液を得た。この水性分散液を冷
却後、固形分が４０％になるように水で調製し、以下の
方法で評価した。結果を表−１に示す。

【００１８】平均粒子径 固形分が５％になるように水で希釈して顕微鏡により測
定した。安定性 水性分散液１００ｇを密栓付きの内容量２００ｃｃのメ
スシリンダーに入れ室温で一週間静置保存したとき水層
と樹脂層の分離が無いものを良好とした。

【００１９】耐水性 乾燥後の膜厚が１０μになるようにバーコーターでアル
ミ箔の光沢面に塗布し、１８０℃で３０秒間オーブン中
にて焼き付け後室温に戻して塗布サンプルを得た。この
塗布面にスポイトで１ｃｃ水を滴下して皮膜の白化、フ
クレ状態を観察し、白化、フクレの無いものを良好とし
た。接着強度 秤量５０ｇ／ｍ² の上質紙に乾燥後の膜厚が５μになる
ようにバーコーターで塗布し、１８０℃で１５秒間オー
ブン中にて焼き付け後室温に戻して塗布サンプルを得
た。この塗布サンプルの塗布面とポリプロピレンシート
（厚み２ｍｍ）を重ね合わせて上質紙側からヒートシー
ルバーを当て圧力２ｋｇ／ｃｍ² 、時間２秒の条件でヒ
ートシールした。このようにして作成したヒートシール
サンプルを１５ｍｍ巾に切り出し１８０°ピール試験を
ショッパーにてピール速度３００ｍｍ／分で実施した。

【００２０】混和性 市販のアクリルエマルジョン（三菱油化バーディツシュ
社製 アクロナール２３０Ｄ；固形分４０％、ｐＨ６．
５、アニオン性）、及び水性ポリエステル（大日本イン
キ社製 ファインテックス ＥＳ６１１；固形分２９
％、ｐＨ７、アニオン性）をそれぞれ別個の１００ｃｃ
ビーカーに２０ｇ採取し、実施例で得られた樹脂水性分
散液をそれぞれに８０ｇ添加して、マグネチックスター
ラーで充分攪拌した。更に、この混合物５０ｇを密栓付
きの１００ｃｃメスシリンダーに入れ一週間静置保存し
て液の状態を観察し、アクリルエマルジョンとの混合
物、水性ポリエステルとの混合物両方が凝集、二液分離
していなかった物を良好とした。

【００２１】実施例−２、比較例−１〜３ 無水マレイン酸変性ポリプロピレン（酸価２０、エチレ
ン含量２．６％、融点１３３℃）と各種未変性ポリプロ
ピレン（酸価０、融点１６０℃）とをスパーミキサーに
より混合した混合物（数平均分子量、酸価は表中に記
入。）を使用した以外は実施例−１と同様にして評価し
た。結果を表−１に示す。

【００２２】比較例−４ 実施例−２で用いたカルボン酸を含有する水溶性（メ
タ）アクリル樹脂を用いる代わりに特開昭５９−４７２
４４号公報の保護コロイド剤の製造例の例−１で開示し
たアミノ基を含有する水溶性（メタ）アクリル樹脂
（Ｎ，Ｎ−ジメチルアミノエチルメタアクリレート（４
０モル％）とブチルメタアクリレート（５０モル％）と
ラウリルメタアクリレート（１０モル％）とからなる共
重合体の酢酸中和物で固形分濃度３０％の水溶液）を用
いた以外は同様にして評価したところ平均粒子径；０．
７μ（球形）、安定性；良好、耐水性；良好、接着強
度；４１０ｇ／１５ｍｍ、混和性；不良（凝集）であっ
た。

【００２３】

【表１】

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 数平均分子量７，０００〜６０，００
   ０、酸価が１０以下のプロピレン重合体をカルボン酸を
   含有する水溶性（メタ）アクリル樹脂で水中に分散させ
   たプロピレン重合体水性分散液。