JPH0463939B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は建築用の構造部材である充填鋼管コン
クリート梁に関するものである。

「従来の技術」 従来、鉄筋コンクリート造りの建物等に用いら
れる梁としては、例えばＩ形鋼等の形鋼をそのま
ま用いた単一梁、あるいは数種の単一鋼材を組み
合わせてつくつた組み立て梁、または上記両梁の
外側にコンクリートを巻いた鉄骨コンクリート構
造の梁等が知られている。組み立て梁は主として
大荷重を支える大型の梁として用いられ、一般に
その断面が１形またはＴ形になるように組み立て
られたものである。

「発明が解決しようとする問題点」 ところで、梁にはいうまでもなくその適用箇所
に応じた強度が要求されるが、上記単一梁、組み
立て梁等は主として鋼材で構成されており、その
強度（特に長さ方向の圧縮強度）にはその断面形
状や断面積等に応じて自ずと限界がある。また、
鉄骨コンクリート構造の梁は、鋼材のみからなる
梁に比べて圧縮強度が優れているが、梁全体が大
型化する難点がある。

本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、
その目的とするところは、圧縮力に対する梁強度
の向上ならびに軽量化を実現する全く新しい梁
（充填鋼管コンクリート梁）を提供することにあ
る。

「問題点を解決するための手段」 かかる目的を達成するために本発明の梁は、梁
の一部を構成するウエブの一側縁部に、この一側
縁部に沿つて延びる鋼管を固設し、この鋼管の内
部にコンクリートを充填し、かつ、鋼管とコンク
リートとの間に両者を非付着状態に保持する分離
層を設け、さらに、鋼管の両端を閉塞するととも
にその軸方向の少なくとも一部に軸方向変形を吸
収する変形吸収部を設けたものである。

「作用」 本発明の充填鋼管コンクリート梁を、鋼管側を
上にして建築用の柱等の間に水平に架け渡すと、
主として梁の上部に管軸方向の圧縮力が働く。こ
のとき、鋼管とコンクリートとが、分離層の作用
で互いに軸方向にずれ合いながら別々に変位す
る。鋼管においては全体に生じるべき歪が変形吸
収部でほとんど吸収され、それ以外の部分では軸
方向の歪量および応力がゼロとなる。また、コン
クリートにおいてはコンクリートが実質的な圧縮
荷重を全て支えることになるから全体に歪および
応力が生じる。従つて、コンクリートの径方向外
方への変位に対し、鋼管が抵抗してコンクリート
を径方向内方に締め付けるコンフアインド効果が
得られる。

「実施例」 以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明
する。

第１図および第２図は本発明の充填鋼管コンク
リート梁の概略構造を示しており、図中符号１は
ウエブである。このウエブ１は鋼棒や小幅の鋼板
等の鋼材を斜めに配置してトラス形に組んだもの
で、全体としては第１図矢印方向に長く延びてい
る。ここで、便宜上ウエブ１を各鋼材間の空間を
も含めた帯板状の部分として捕らえると、ウエブ
１の一側縁部（第１図上側縁部）には、この一側
縁部に沿つて鋼管２が溶接固定され、他側縁部
（下側縁部）には、これに沿つてウエブとほぼ直
交する帯板状のフランジ（鋼板）３が溶接固定さ
れている。

前記鋼管２はその両端が閉塞板８により閉塞さ
れるとともに、その軸方向の複数箇所にその管壁
を貫通する多数の長孔４…を有するものである。
これら長孔４…は鋼管２の周方向に沿つて長く形
成されており、また、周方向に沿つて複数列に、
かつ、隣り合う列においては互いに周方向にずれ
て配置されている。すなわち、本実施例において
は前記長孔４…を有する部分が変形吸収部５とな
つている。そしてさらに、鋼管２の内面には分離
層６が設けられ、この分離層６を介して鋼管２の
内部にコンクリート７が充填されている。分離層
６は、例えばパラフイン、グリス、アスフアル
ト、あるいはプラスチツク等の層であり、鋼管２
とコンクリート７とをアンボンド状態（非付着状
態）に保持する役目を果している。

このように構成された充填鋼管コンクリート梁
を、前記鋼管２側を上に、かつ、フランジ３側を
下にして建築用の柱等の間に水平に架け渡すと、
梁の自重あるいは他の荷重の作用により、主とし
て梁の上部（鋼管２およびその内部のコンクリー
ト７）に前記軸方向の圧縮力が働く。このとき、
鋼管２とコンクリート７とは、分離層６の作用に
より互いに軸方向にずれ合いながら別々に変位す
る。すなわち、鋼管２においては長孔４…が軸方
向に変形することにより鋼管２全体に生じるべき
歪が変形吸収部５でほとんど吸収され、それ以外
の部分では軸方向の歪量および応力がゼロとな
る。また、コンクリート７においてはコンクリー
ト７が実質的た圧縮荷重を全て支えることになる
から全体に歪および応力が生じる。つまり、この
ときのコンクリート７の径方向外方への変位に対
し、鋼管２が抵抗してコンクリート７を径方向内
方に締め付けることになる。従つて、このような
鋼管２の作用（いわゆるコンフアインド効果）に
より梁上部は優れた耐圧縮強度を発揮する。

なお、上記実施例においてはウエブ１として鋼
材をトラス状に組んだものを用いたが、これに限
らず例えば帯板状の鋼板を用いてもよい。また、
コンクリート７を充填した鋼管２をウエブ１の両
側縁部に固設してもよい。さらに、鋼管２は断面
角形であつてもよい。さらにまた、変形吸収部５
は長孔４…を配設したものに限らず鋼管２を径方
向外方に曲げ変形させて膨出部を形成したもの等
であつてもよい。

「発明の効果」 以上説明したように、本発明によればウエブの
一側縁部にこの一側縁部に沿つて延びる鋼管を固
設し、この鋼管の内部にコンクリートを充填し、
かつ、鋼管とコンクリートとの間に両者を非付着
状態に保持する分離層を設け、さらに、鋼管の両
端を閉塞するとともに、その軸方向の少なくとも
一部にその軸方向変形を吸収する変形吸収部を設
けたので、次のような優れた効果を得ることがで
きる。

この充填鋼管コンクリート梁を、鋼管側を上に
して柱間に水平に架け渡すと、梁の上部に管軸方
向の圧縮力が働いたときに、コンクリートの径方
向外方への変位に対し、鋼管が抵抗してコンクリ
ートを径方向内方に締め付けるコンファド効果が
得られる。つまり、梁上部が優れた圧縮強度を有
するから、梁全体としては従来の梁に比べて断面
積を小さくして小型化を図ることができ、しか
も、従来と同等またはそれ以上の強度を確保する
ことができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す側面図、第２
図は第１図の−線矢視図である。 １……ウエブ、２……鋼管、３……フランジ、
４……長孔、５……変形吸収部、６……分離層、
７……コンクリート、８……閉塞板。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ウエブの一側縁部にこの一側縁部に沿つて延
   びる鋼管を固設し、この鋼管の内部にコンクリー
   トを充填するとともに、鋼管とコンクリートとの
   間に両者を非付着状態に保持する分離層を設け、
   しかも、前記鋼管はその両端が閉塞され、かつ、
   その軸方向の少なくとも一部に軸方向変形を吸収
   する変形吸収部を有することを特徴とする充填鋼
   管コンクリート梁。