JPH0457624B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は自動者のフロントガラスや、建築物の
窓ガラス等に用いられる耐貫通性にすぐれた合せ
ガラスに関し、詳しくは有機過酸化物を配合ある
いは含浸したエチレン−ビニルアセテート共重合
体からなる少なくとも２層の各中間層間に有機樹
脂からなるフイルムをそれぞれ間挿した積層体を
２枚のガラス板体間に介在させて一体化し、中間
層を熱硬化してなる合せガラスに関するものであ
り、さらには上記フイルムにデザインを施して装
飾性を付与し、あるいはフイルムに着色を施して
熱線吸収を可能にし、さらにフイルムに金属ある
いはその酸化物の薄膜を蒸着等により付着して、
熱線反射効果あるいは導電性を付与した合せガラ
スに関するものであり、本発明に於てはガラス板
体そのものを熱線反射／吸収ガラスとして熱線反
射あるいは吸収を可能にすることもできる合せガ
ラスに関するものである。

本出願人は、エチレン−酢酸ビニル共重合体に
有機過酸化物を配合した樹脂中間層をガラス板間
に介在させて一体化し、この樹脂層を熱硬化して
なる合せガラスを特願昭56−80915号（特開昭57
−196747号）にて提起したが、かかる合せガラス
に於てはエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビ
ニル含有率は15乃至50重量％が好ましく、酢酸ビ
ニル含有率が15％以下であると高温時に架橋硬化
させる場合に透明度が充分とならず、一方50重量
％以上であると透明度は良好となるが、モジユラ
スが低下し、良好な耐貫通性能を得ることができ
ない。

本発明は上述の欠点を排除して、透明にして耐
貫通性能を充分に発揮しうる合せガラスを提供す
るものであり、その要旨とするところは、有機過
酸化物を配合したエチレン−ビニルアセテート共
重合体からなる少なくとも２層の各中間層間に有
機樹脂からなるフイルムをそれぞれ間挿した積層
体を２枚のガラス板体間に介在させて一体化し、
中間層を熱硬化してなる合せガラスに存し、本発
明により合せガラスは後述するようにエチレン−
ビニルアセテート共重合体中のビニルアセテート
量を限定することなく、耐貫通性能に於てきわめ
てすぐれた合せガラスを提供しうるものである。

すなわち、エチレン−ビニルアセテート共重合
体は熱架橋時フイルムを構成する有機樹脂ときわ
めて良く接着し、透明度をほとんど損わないため
エチレンビニルアセテート共重合体のビニルアセ
テート含有量を高めても、有機樹脂がフイルムと
して中間層間に介在するためすぐれた耐貫通性能
を発揮しうる。すなわちビニルアセテート含有量
が50重量％を超えてもすぐれた耐貫通性能を発揮
しうるものである。

本発明に使用する有機樹脂からなるフイルムの
材質としては、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、
ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、エチレン−
ビニルアセテート共重合体、鹸化エチレン−ビニ
ルアセテート共重合体、ポリメタクリル酸メチ
ル、ポリビニルブチラール、エチレン−エチルア
クリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレ
ート共重合体、金属イオン架橋エチレン−メタク
リル酸共重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、
ポリカーボネート、セロフアン等であり、フイル
ムの平滑性、表面光沢（蒸着等により金属の薄膜
を形成するために要求される）、強度、作業性等
の観点から最も好ましいのはポリエステルフイル
ムである。

本発明による合せガラスの製造に際してエチレ
ン−ビニルアセテート共重合体の硬化剤として使
用される有機過酸化物としては、100℃以上の温
度で分解してラジカルを生ずるものであればいず
れも使用可能であるが、配合時の安定性を考慮に
入れれば、半減期10時間の分解温度が70℃以上の
ものが好ましく、例えば２，５−ジメチルヘキサ
ン−２，５−ジハイドロパーオキサイド；２，５
−ジメチル−２，５−ジ（ｔ−ブチルパーオキ
シ）ヘキサン−３；ジ−ｔ−ブチルパーオキサイ
ド；ｔ−ブチルクミルパーオキサイド；２，５−
ジメチル−２，５−ジ（ｔ−ブチルパーオキシ）
ヘキサン；ジクミルパーオキサイド；α，α′−ビ
ス（ｔ−ブチルパーオキシイソプロピル）ベンゼ
ン；ｎ−ブチル−４，４−ビス（ｔ−ブチルパー
オキシ）バレレート；２，２−ビス（ｔ−ブチル
パーオキシ）ブタン；１，１−ビス（ｔ−ブチル
パーオキシ）シクロヘキサン；１，１−ビス（ｔ
−ブチルパーオキシ）−３，３，５−トリメチル
シクロサキサン；ｔ−ブチルパーオキシベンズエ
ート；ベンゾイルパーオキサイド等を挙げること
ができる。有機過酸化物としては、これらの内の
少なくとも１種が選択され、その配合量はエチレ
ン−ビニルアセテート共重合体100重量部に対し
て５重量部又はそれ以上で充分である。

本発明はさらに安全性にきわめてすぐれた熱線
反射／吸収ガラスに関するものである。

従来、熱線反射／吸収ガラスそのものは多く使
用されているが、きわめて割れやすく、一旦破損
するとガラスが飛散するので、とくに建築用窓ガ
ラス等に使用すると、何らかの原因によりガラス
が破損するとその破片が飛散、落下しきわめて危
険である。

これに対して本発明の合せガラスは前述のよう
にガラスと中間層は強固に接着されており。さら
に各中間層間は有機樹脂フイルムを介して強固に
装着されている。したがつてガラスは破損しにく
く、たとえ破損してもその破片は飛散しない。

また、従来熱線の反射又は吸収を行う場合、ガ
ラスの表面に熱線反射／吸収膜フイルムを貼付し
ていたが、かかるガラスの場合膜の貼付そのもの
は比較的簡単であり、ガラスの破損による飛散の
防止は一応可能であるが、膜自体の耐久性に問題
があり、且つ剥離しやすく、耐擦傷性が低い。ま
た、ガラス自体に熱線反射／吸収効果をもたせる
ためガラス表面に反射膜を蒸着等で付着したもの
及びガラス自体を着色して熱線吸収効果を付与し
たものも市販されているが、これらは非常に高価
である反面ガラス自体の強度は通常のものと変ら
ず、安全ガラスの機能はもつていない。

これに対し、本発明の合せガラスは合せガラス
自体に熱線反射／吸収能があるので、上述の欠点
を完全に排除できる。

また、ガラス表面に各種図柄、絵、写真、文字
等で全表面又は部分的にデザインを施こして装飾
性を付与してガラスは、従来各方面に於て使用さ
れているが、かかる場合、その耐久性に問題があ
り、とくに湿気の高い場所に於ては変色あるいは
剥離等が発生しやすい。

これに対し、本発明による合せガラスは外部か
ら完全に隔離された硬化樹脂間のフイルムに上記
の如きデザインが施こされているので、上記の如
き欠点が完全に排除される。

さらに、本発明による合せガラスはその中間に
接着介在するフイルムに熱線吸収のために着色を
施すこと、熱線反射効果あるいは導電性を付与す
るために金属あるいは金属酸化物を蒸着等の手段
で施すことが可能であり、前述の如くフイルムが
中間に存在するので、きわめて耐久性のあるもの
が得られる。

本発明に於てフイルムに金属あるいは金属酸化
物の薄膜を付着形成する方法としては蒸着、スパ
ツタ、イオンプレーテイング等の方法があり、そ
のための金属又は金属酸化物の主成分としては酸
化インジウム、酸化クロム、金、パラジウム、
錫、酸化カドミウム、銀、プラチナ、アルミニウ
ム、銅、沃化銅、酸化錫、酸化アンチモン錫、酸
化チタン等が用いられる。

本発明による合せガラスにおいてその中間層た
るエチレン−ビニルアセテート樹脂の初期モジユ
ラスを向上して耐貫通性能を高めるために、アク
リロキシ基又はメタクリロキシ基含有化合物を添
加することができる。この目的に供される化合物
としてはアクリル酸又はメタクリル酸誘導体例え
ばそのエステル及びアミドがもつとも一般的であ
り、エステルのアルコール残基としてはメチル
基、エチル基、ドデシル基、ステアリル基、ラウ
リル基のようなアルキル基の外に、シクロヘキシ
ル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル
基、２−ヒドロキシエチル基、３−ヒドロキシプ
ロピル基、３−クロロ−２−ヒドロキシプロピル
基等を挙げることができる。更に、エチレングリ
コール、トリエチレングリコール、ポリエチレン
グリコール等の多官能アルコールとのエステルも
同様に用いることができ、又アミドの代表として
はジアセトンアクリルアミドを挙げることができ
る。

エチレン−ビニルアセテート樹脂とガラスとの
接着力を更に向上せしめる目的でシランカツプリ
ング剤を添加することができる。この目的に供さ
れるシランカツプリング剤としては公知のもの例
えばγ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニル
トリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、
ビニル−トリス（β−メトキシエトキシ）シラ
ン、γ−メタクリロクキシプロピルトリメトキシ
シラン、β−（３，４−エトキシシクロヘキシル）
エチル−トリメトキシシラン、γ−グリシドキシ
プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセト
キシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキ
シシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラ
ン、Ｎ−β−（アミノエチル）−γ−アミノプロピ
ルトリメトキシシラン等を挙げることができる。

以下に実施例及び比較例を示し、本発明をさら
に詳細に説明する。

実施例 １ エチレン−ビニルアセテート共重合体とポリエ
ステル樹脂フイルムとの接着性を下記の如くにし
て求めた。

すなわち、市販のエチレン−ビニルアセテート
共重合体（以下EVAと略称する）（ビニルアセテ
ート含有量26％）100重量部に有機過酸化物とし
てジクミルパーオキサイド１重量部及びシランカ
プリング剤としてγ−メタクリロキシプロピルト
リメトキシシラン0.3重量部を配合し、該配合物
をＶ型ミキサーで均一に分散させた後、シリンダ
ー径40mmのプラスチツク用押出機（設定温度80〜
100℃）にてリツプ巾400mmのＴダイから厚さ0.4
mmのEVAシートを押出した。

このシート２枚の間に厚さ50μの市販ポリエス
テル樹脂フイルムを間挿し、この積層体をゴム製
の袋の中に入れて脱気しながら150℃のオーブン
中にて40分間熱処理して装着試験用のサンプルを
得た。

このサンプルを１インチ巾に切りだし、島津オ
ートグラフIS−5000を用いて180℃剥離により接
着力を測定し、６Kg／inchの接着力値を得た。

すなわち、エチレン−ビニルアセテート共重合
体とポリエステル樹脂フイルムとはきわめて良く
接着することが確認された。

実施例 ２ 実施例１と同様にして厚さ0.2mmのEVAシート
を２台の押出機よりそれぞれ押出し、２枚の
EVAシートの間に片側にアルミニウム薄膜を蒸
着した厚さ50μのポリエステル樹脂フイルムを間
挿し、この積層シートを尺角サイズ（305×305
mm）に切断し、切断積層シートを厚さ３mmの尺角
サイズのフロートガラス板体間に挾着し、この積
層体をゴム製の袋中に入れ、袋内部を真空にした
後、そのままの状態で150℃のオーブン中に40分
間放置して合せガラスを得た。

得られた合せガラスにエヤーの混入がまつたく
みとめられず、ガラス表面に直接金属を蒸着した
熱線反射ガラスと同等の熱線反射効果がみとめら
れた。

本発明者らはこの熱線反射安全合せガラスの表
面にJIS R3025にもとづき2.25Kgの剛球をそれぞ
れ２ｍ、1.5ｍの高さから落下させて破壊状況を
観察した。

２ｍ及び1.5ｍ落下のいずれの場合も剛球は合
せガラスを貫通せず、２ｍ落下の場合は70mmの亀
裂が膜に生じたが、1.5ｍ落下の場合には亀裂が
全く生じなかつた。

比較例 １ 厚さ0.2mmのEVAシート２枚を重ね、これを厚
さ３mmのフロートガラス板体２枚の間に挾着し、
実施例２と同様にして合せガラスを得た。

この合せガラスについてJIS R3025にもとづき
2.25Kgの剛球を1.5ｍの高さから落下させたとこ
ろ、２回の繰返しテストに於ていずれも剛球は貫
通した。

実施例 ３ 実施例と同様にして0.4mmのEVAシートを押出
し、エンボスロールとゴムロールの間を通過させ
て該シートを冷却させることにより、両面に適当
なエンボス処理を施した。

このEVAシートを尺角に切断したもの２層の
間に厚さ50μのポリエステル樹脂よりなる着色熱
線吸収フイルムを挾み、その積層体を厚さ３mmの
尺角フロートガラス板２枚の間に挾着し、それを
ゴム製の袋中に入れて袋内を真空にした後、その
ままの状態で150℃のオーブン中に40分間投入し、
エヤーのない合せガラスを得た。

このようにして得た本発明による合せガラスは
エヤーの混在がなく、フイルムにしわがなく、透
視像にゆがみがないものであり、熱線吸収効果も
ガラスに着色シートを貼付したもののそれと同等
のものであつた。

得られた合せガラス６組にそれぞれ2.25Kgの剛
球を４ｍの高さから落下させて耐貫通性を測定し
たが、１組以外は貫通しなかつた。

比較例 ２ 実施例１と同様にして得た２枚のEVAシート
を、実施例３と同様にフロートガラスで挾み合せ
ガラスを得た。

得られた合せガラス６組にそれぞれ2.25Kgの剛
球を４ｍの高さから落下させて耐貫通性を測定し
たが、６組とも貫通した。

実施例 ４ カラーグラビア印刷を施したポリエステルフイ
ルムの上下に実施例１で押出したEVAシート各
１枚を重ね合せ、この積層体をガラス板体２枚の
間に挾着し、実施例１と同様のエヤー入り等の欠
陥の全くない装飾用合せガラスを得た。

この合せガラスの一部をサンシヤインウエザー
メータ（スガ試験機製）中にて500時間促進暴露
を行つた。

条件：デユーサイクル ブラツクパネル温度 63℃ 槽内温度 40℃ サンシヤインカーボン使用 一方、この装飾用合せガラスの他の一部に対し
１年間の屋外暴露を行つた。

促進暴露及び屋外暴露のいずれの場合にも発
泡、退色、変色等の徴候はみとめられず、原サン
プルと同じ色調を保つていた。

実施例 ５ 市販のポリエステルフイルム（厚さ50μ）の片
面に酸化インジウム（In₂O₃）を薄層で蒸着させ
たフイルムを合せるガラスの大きさよりやや大き
めに切断しておく。

このフイルムの上下に実施例１と押出した
EVAシートを各１枚重ね合せ、得られた積層体
を２枚のガラス板体間に挾着し、実施例１と同様
の操作を行なつてエアー入りのない導電性合せガ
ラス(A)を得た。

これとは別に、ポリエステルフイルムの片面に
酸化インジウム蒸着を施こさないが、他はすべて
同様にして得られた合せガラス(B)を得た。

この両者を０℃の冷蔵庫中に保管し、30分後に
両者をとり出し、(A)にはガラスよりはみ出した
In₂O₃蒸着ポリエステル部分を利用して対応する
２辺に電極を迅速にセツトし、定電圧（24ボル
ト）条件下で電流を流し続ける。

冷蔵庫よりとり出した直後から両者(A)及び(B)の
ガラス表面には水滴にする曇りが全面に生じた
が、合せガラス(A)では速やかに曇りが消えはじ
め、合せガラス(B)に比して圧倒的に早くすべての
曇りが消失した。

上記の結果より本発明による合せガラスは曇り
防止の安全ガラスとして適性があることが明らか
である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 有機過酸化物を配合したエチレン−ビニルア
   セテート共重合体からなる少なくとも２層の各中
   間層間に有機樹脂からなるフイルムを間挿した積
   層体を２枚のガラス板体間に介在させて一体化
   し、中間層を熱硬化してなることを特徴とする合
   せガラス。 ２ ２枚のガラス板体が熱線反射／吸収ガラスで
   ある特許請求の範囲１記載の合せガラス。 ３ 有機樹脂よりなるフイルムが透明であり、且
   つその全面あるいは一部に各種のデザインが施こ
   されている特許請求の範囲１記載の合せガラス。 ４ 有機樹脂よりなるフイルムの全体あるいは一
   部が熱線吸収のため着色されている特許請求の範
   囲１記載の合せガラス。 ５ 有機樹脂よりなるフイルムの表面に熱線反射
   効果あるいは導電性を付与するために金属あるい
   は金属酸化物の薄膜が付着形成されている特許請
   求の範囲１記載の合せガラス。 ６ 金属あるいは金属酸化物の薄膜の付着形成が
   蒸着、スパツタ、イオンプレーテイング等の方法
   による特許請求の範囲５記載の合せガラス。 ７ 導電性付与あるいは熱線反射効果付与のため
   形成する金属あるいは金属酸化物の主成分が酸化
   インジウム、酸化クロム、金、パラジウム、錫、
   酸化カドミウム、銀、プラチナ、アルミニウム、
   銅、沃化銅、酸化錫、酸化アンチモン錫、酸化チ
   タン等である特許請求の範囲５又は６記載の合せ
   ガラス。