JPH0452893Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は、難燃性に優れ、かつ燃焼時煙の発生
が少ない難燃、低煙同軸ケーブルに関する。

〔考案の背景〕

近年、電子機器の発達に伴い、コンピユータ
ー、フアクシミリ等のいわゆるOA機器の普及が
著しい。これらのOA機器は、事務所やビル内に
設置される為、火災に対する配慮が必要となる。
そこで、これらの機器に使用される電線、ケーブ
ル類に対しては、単に難燃性を高めて延焼防止を
計るだけでなく、発煙性に対しても低煙化が要求
される様になつた。

一般に、難燃性、低煙性に優れた電線被覆材料
としては、FEP，PVDF等のフツ素樹脂がよく用
いられている。これらのフツ素樹脂は、難燃性、
低煙性、耐熱性に優れているものの非常に高価で
あるという欠点がある。しかも、フツ素樹脂を外
部被覆層として用いる場合の目的は、耐熱性より
も、難燃性、低煙性にあることが多い。従つて、
フツ素樹脂以外のポリマーでも難燃性、低煙性に
優れた材料であれば外部被覆層として使用できる
ことを示している。そこで、汎用樹脂を用いて、
難燃化、低煙化を検討し、廉価な難燃、低煙同軸
ケーブルの検討を行なつた。

一般に電線被覆材料等に用いられる高分子材料
の低煙化の方法としては、水酸化アルミニウム、
水酸化マグネシウム等の水和金属酸化物を多量に
添加刷するこがよく知られている。

今、難燃性の評価方法の１つである酸素指数法
（JIS−Ｋ−7201）によつて、水和金属酸化物及び
金属炭酸塩を充填したポリオレフイン樹脂組成物
の酸素指数を測定し、第１図に示した。

第１図において、１は炭酸マグネシウム、２は
水酸化マグネシウム、３は水酸化アルミニウム、
４はホウ酸亜鉛の充填剤量に対する酸素指数の変
化を示す。一般に難燃性を酸素指数で表わす場
合、水平難燃程度で酸素指数は22〜25、垂直難燃
で27〜30以上と言われている。今、垂直難燃の難
燃度である酸素指数30を達成するに必要な充填剤
量を第１図から求めると、100重量部以上の添加
が必要である。

発煙性については、NBSスモークデンシテイ
ーチヤンバーを用いて測定し、フレーミングでの
最大煙密度（Dm）を求めた。

低煙材料として用いられるフツ素樹脂のフレー
ミングでのDmは、FEPで40程度、PVDFで125
程度である。一方、フツ素樹脂の一種であるエチ
レン−四フツ化エチレン共重合体（ETFE）は、
低煙材料としては発煙量が高く使用できないと言
われており、この樹脂のDmは150程度である。
このことから、これらフツ素樹脂に代わる材料と
しては、Dmが125以下であることが必要である
ことがわかる。

今、水和金属酸化物及び金属炭酸塩を充填した
ポリオレフイン樹脂組成物のフレーミングでの
Dmを第２図に示した。第２図における符号は、
第１図と同様の充填剤を示す。この図から明らか
な様に発煙量は、充填剤添加量が増加するに従い
減少してゆく。従つて、大きな減煙効果を得る為
には多量の充填剤の添加が必要となる。

この様な観点から、使用するポリマーとしては
充填剤が多量添加出来るものが望ましく、ポリマ
ーとしてEPゴム等のゴム類、エチレン−酢酸ビ
ニル共重合体、エチレン−α−オレフイン共重合
体等がある。これらのポリマーの中でも酢酸ビニ
ル含有量が50％以上であるエチレン−酢酸ビニル
共重合体は、200〜300重量部の高充填でも成形す
ることが出来、フエラー高充填ポリマーとして適
している。ベースポリマーとして、エチレン−酢
酸ビニル共重合体単独で使用することが好ましい
が、要求される特性により、他のポリマー、例え
ばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢
酸ビニル共重合体（酢酸ビニル含有量50％未満）、
エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレ
ン−α−オレフイン共重合体、EPゴム
（EPDM）、ブチルゴム、ポリブタジエン、ポリ
ウレタン等とブレンドして使用することも可能で
ある。

この様な背景から、高価なフツ素樹脂に替わる
ものとして、廉価な難燃、低煙材料を使用した難
燃、低煙同軸ケーブルを開発すべく検討したもの
である。

〔考案の具体的な説明〕

本考案は、絶縁層として発煙性の少ないフツ素
樹脂を用い、被覆層として酢酸ビニル含有量が50
％以上であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を主
体とするポリオレフイン樹脂組成物100重量部に、
水和金属酸化物又は金属炭酸塩とホウ酸亜鉛を両
者合せて100重量以上添加し、かつ充填剤中のホ
ウ酸亜鉛の比率が0.25〜0.75である樹脂組成物か
ら成り、放射線照射により架橋された廉価な難
燃、低煙同軸ケーブルに関するものである。

絶縁層として用いられるフツ素樹脂は、発煙量
が少ないことがFEP，PVDF，FEPである。難
燃、低煙ポリオレフイン樹脂組成物を絶縁層とし
て使用する場合、誘電率が大きくなり要求特性の
厳しい用途には適さない。

外部被覆層としての難燃、低煙ポリオレフイン
樹脂組成物のベースポリマーにはフイラー高充填
が可能であるという理由から酢酸ビニル含有量が
50％以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体が適し
ている。又、要求特性に応じて、他のポリマーと
のブレンドも可能である。

添加する充填剤量が100重量部以上である理由
は、酸素指数が30以上にする為である。充填剤中
のホウ酸亜鉛の比率が0.25〜0.75である理由は、
第３図、第４図からわかる様に比率が0.25未満で
はDmが125を越えてしまい、0.75を越える時は酸
素指数が30未満となる為である。

放射線による架橋が必要な理由は、充填剤を多
量に添加する為に、強度低下が大きく、架橋によ
り機械的強度の向上を計る為である。放射線架橋
が適している理由は、有機ペルオキシドを用いた
化学架橋では、有機ペルオキシドの分解温度が
120℃〜200℃であり、充填剤が多いことから分解
温度より低い温度では押出時のトルクが大きく成
形出来ないためである。

〔実施例〕

以下に具体例をもつて本考案を説明する。

外径1.8mm（19／0.36）の錫メツキ撚線の上に
FEP樹脂を厚さ３mmで押出被覆した後、錫メツ
キ導体で編組打ちを行なつた。その後、エチレン
−酢酸ビニル共重合体（酢酸ビニル60％）100重
量部、ホウ酸亜鉛100重量部、炭酸マグネシウム
100重量部、酸化防止剤0.5重量部から成る樹脂組
成物を、厚さ0.8mmで被覆した後、電子線加速器
を用いて20Mrad電子線を照射し、外部被覆層を
架橋し、同軸ケーブルを製造した。

該同軸ケーブルを、外部被覆層にフツ素樹脂
（FEP）を用いた同軸ケーブルと発煙性、燃焼性
について比較試験を行なつた。その結果、難燃
性、発煙性に大差なく、しかも外部被覆層の価格
は、フツ素樹脂に比べ1/4〜1/5であることがわか
つた。

〔効果〕

本考案の同軸ケーブルは絶縁層にフツ素樹脂を
保護被覆層にエチレン−酢酸ビニル共重合体に特
定の材料を充填したものなので、従来のフツ素樹
脂同軸ケーブルと同様の難燃、発煙性でかつ価格
はきわめて安いという利点をもつている。

【図面の簡単な説明】

第１図は、各種充填剤添加量と酸素指数の関係
を示すグラフである。第２図は、各種充填剤添加
量と発煙量の関係を示すグラフである。第３図
は、充填剤中のホウ酸亜鉛の添加比率と発煙量の
関係を示すグラフである。第４図は、充填剤中の
ホウ酸亜鉛の添加比率と酸素指数の関係を示すグ
ラフである。第５図は、同軸ケーブルの断面図
で、１は金属導体、２は絶縁層、３は金属導体編
組、４は外部被覆層である。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) 絶縁層にフツ素樹脂を用いた絶縁電線上に、
   金属導体編組を施した後、酢酸ビニル含有量が
   50重量％以上のエチレン−酢酸ビニル共重合体
   を主体とするポリオレフイン樹脂組成物100重
   量部に、充填剤として水和金属酸化物あるいは
   金属炭酸塩とホウ酸亜鉛とを両者合せて100重
   量部以上添加し、かつ充填剤中のホウ酸亜鉛の
   比率が0.25〜0.75である樹脂組成物で被覆し、
   放射線により架橋することを特徴とする難燃、
   低煙同軸ケーブル。 (2) フツ素樹脂が、ポリビニリデンフルオライド
   （PVDF）、テトラフルオロエチレン−ヘキサフ
   ルオロプロピレン共重合体（FEP）又は、テ
   トラフルオロエチレン−パーフルオロアルキル
   ビニルエーテル共重合体（PFA）である実用
   新案登録請求の範囲第(1)項記載の難燃、低煙同
   軸ケーブル。 (3) 水和金属酸化物が、水酸化アルミニウム、水
   酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化
   バリウムから成る群より選ばれたものである実
   用新案登録請求の範囲第(1)項記載の難燃、低煙
   同軸ケーブル。 (4) 金属炭酸塩が炭酸マグネシウム、炭酸マグネ
   シウムカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜
   鉛、炭酸バリウムから成る群より選ばれたもの
   である実用新案登録請求の範囲第(1)項記載の難
   燃、低煙同軸ケーブル。