JPH0432251B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 イ 発明の目的 （産業上の利用分野） 本発明は、油圧作動室への作動油の給排により
駆動軸と被動軸との係脱を行わせる油圧作動クラ
ツチに関し、さらに詳しくは、このクラツチの作
動を確実に行わせるため、油圧作動室内に配設さ
れるリーフスプリング式のチエツクバルブに関す
る。

（従来の技術） 油圧作動クラツチは、駆動軸と被動軸との間に
設けられ、このクラツチの油圧作動室内への作動
油の給排により、両軸の係合・離脱を行うもので
ある。油圧作動室内に所定油圧の作動油を供給す
れば、この油圧によりクラツチが作動されて両軸
の係合がなされ、逆に、油圧作動室内の作動油を
排出すれば、クラツチの作動が解除されて両軸が
離脱される。ところが、クラツチが係合されてい
るときにはこのクラツチは両軸とともに回転して
おり、且つ油圧作動室内への作動油の供給は通
常、軸側から、すなわち、径方向内側からなされ
るため、油圧作動室内の作動油を排出しようとし
ても、油圧作動室内に供給された作動油はクラツ
チの回転による遠心力を受け、油圧作動室内に残
される傾向がある。油圧作動室内に残油がある
と、この残油にはクラツチの回転による遠心力に
対応した油圧が加わるため、この油圧によりクラ
ツチが係合方向に作動され、クラツチのひきずり
等を生じさせるという問題がある。

このようなことから、油圧作動室内の作動油排
出時に残油が生じないようにするための手段とし
て、油圧作動室内にチエツクバルブを配設するこ
とが知られている。このチエツクバルブとして
は、例えば、特開昭54−103940号公報に開示され
ているように、開弁方向に作用するスプリング力
を有してなるリーフスプリング式のチエツクバル
ブがある。なお、このチエツクバルブにおいて
は、クラツチの回転が高くなるとともに大きくな
る遠心力による油圧に対抗してチエツクバルブの
開閉作動を確実に行わせるため、リーフスプリン
グに、クラツチの回転による遠心力を受けてチエ
ツクバルブの開弁方向の力を助長する質量が、取
り付けられている。

（発明が解決しようとする問題点） 上記のようなリーフスプリング式のチエツクバ
ルブは油圧作動室内の限られたスペース内に配設
されるため、これをできるかぎり小型化してクラ
ツチが大型化するのを防止する必要がある。この
ため、上記質量は油圧作動室内においてできる限
り径方向外側に配設し、小さな質量で大きな遠心
力を得ることができるように構成されていた。こ
のため、リーフスプリング弁により開閉されるリ
ーク孔は、上記質量より径方向内方に位置せしめ
られることとなつていた。ところが、リーク孔が
径方向内方に位置せしめられた場合、油圧作動室
内におけるリーク孔より径方向外方部分にある作
動油は排出されず、この部分に残された作動油に
作用する遠心力によりクラツチが係合方向の力を
受けるおそれがあるという問題がある。

本発明はこのような問題に鑑み、クラツチによ
る駆動軸と被動軸との離脱等を行わせるため、油
圧作動室内の作動油の排出を行わせるときに、ク
ラツチの油圧作動室内に残される作動油を極く少
なくすることができるようなチエツクバルブを提
供することを目的とする。

ロ 発明の構成 （問題点を解決するための手段） 上記目的達成の手段として、本発明のチエツク
バルブは、油圧作動室内の作動油を外部へ排出さ
せるリーク孔と、油圧作動室内に配されて油圧作
動室内の作動油圧により閉弁方向の力を受けると
ともに開弁方向のスプリング力を有しリーク孔の
開閉を行うリーフスプリング弁と、リーフスプリ
ング弁に取り付けられ油圧作動クラツチの回転に
伴い遠心力を受けてリーフスプリング弁に開弁方
向の力を付加する質量とから構成され、且つ、上
記リーク孔および質量は、油圧作動室内において
共に径方向外端近傍に位置するとともに円周方向
に並んで設けられている。

（実施例） 以下、図面に基づいて本発明の好ましい実施例
について説明する。

本発明のチエツクバルブ２０を備えた油圧作動
クラツチ１０の断面を第１図に示す。このクラツ
チ１０は、駆動軸１と被動軸２との係合・離脱を
行わせるものである。被動軸２は、ギヤ２ｂを有
し、駆動軸１上にスラストベアリング３ａ，３ｂ
およびラジアルベアリング３ｃを介して相対回転
自在に配設されている。

クラツチ１０は、駆動軸１上にスプライン１１
ａにより結合されて取り付けられたクラツチシリ
ーズ１１と、該クラツチシリンダ１１内に軸方向
に移動自在に嵌入されたピストン１２とを有して
おり、シリンダ１１内にピストン１２により囲ま
れてシリンダ室（油圧作動室）１３が形成され
る。このシリンダ室１３は、駆動軸１に形成され
た油路１ａ，１ｂに連通しており、これらの油路
１ａ，１ｂを介してシリンダ室１３内に作動油の
供給を行うことができるようになつている。な
お、この供給作動油の漏れを防止するため、ピス
トン１２とシリンダ１１との内周面との間をシー
ルするシール部材１２ａ，１２ｂがピストン１２
に取り付けられている。

クラツチ１０はさらに、互いに交互に配置され
た複数のドライブプレート１５およびドリブンブ
レート１６を有し、これらのプレート１５，１６
は、シリンダ１１とスプライン１１ｂにより係合
するとともにスナツプリング１７ｂにより軸方向
右方向の動きと規制されたシリンダ１１に取り付
けられたエンドプレート１７ａとピストン１２と
の間の軸方向に並んで配設される。ドライブプレ
ート１５は、シリンダ１１とスプライン１１ｂに
より係合しており、シリンダ１１および駆動軸１
と一体に回転される。一方、ドリブンブレート１
６は、被動軸２から側方（左方）に突出して被動
軸２と一体に形成されたクラツチハブ２ａとスプ
ライン係合しており、被動軸２と一体に回転され
る。なお、ドリブンプレート１６はその両側面に
ドライブプレート１５との摩擦係合を行わせるた
めの摩擦フエーシング材が接合されている。

また、ピストン１２には、ドライブプレート１
５と対向する皿バネ１４が配設され、ピストン１
２の内周部にはシリンダ１１に対してピストン１
２をシリンダ室１３の方向に付勢する戻しバネ１
８が当接している。

上記構成のクラツチ１０に、シリンダ室１３内
の残油を排出するためのチエツクバルブ２０が配
設される。このチエツクバル２０は、矢印−
から見て示す第２図からも良く分かるように、シ
リンダ室１３を外部に連通させるようにピストン
１２に形成されたリーク孔２３と、内周側におい
てリベツト２１ａによりピストン１２に結合され
たリーフスプリング弁２１と、径方向外端近傍に
おいてリーフスプリング弁２１に固設されたウエ
ート（質量）２２と、両端部においてリベツト２
４ａ，２４ｂによりピストン１２に取り付けられ
ウエート２２の背面に当接してリーフスプリング
弁２１の所定量以上の開方向の移動を制御するス
トツパ２４とからなる。

なお、第２図に示すように、ウエート２２はリ
ーフスプリング弁２１の幅方向（円周方向）中央
部の径方向外端部近傍に固定されており、リーク
孔２３はこのウエート２２の円周方向側方に位置
して形成されている。このため、リーフスプリン
グ弁２１の外端部は中央部から右方に張り出して
おり、この張り出した部分にリーク孔２３が対向
する。リーフスプリング弁２１は開弁方向、すな
わちリベツト２１ａによる結合部を支点にリーク
孔２３から離れる方向のスプリング力を有してお
り、シリンダ室１３内の油圧が零の状態では、ウ
エート２２の背面がストツパ２４に当接するまで
開弁方向に移動して、リーク孔２３は開放されて
いる。なお、リーフスプリング２１の移動によつ
てウエート２２がピストン１２に当接するのを防
止するために、ウエート２２に対向してピストン
１２に凹部１２ｃが形成されている。

以上の構成の油圧作動クラツチによる駆動軸１
と被動軸２との係合・離脱作動について説明す
る。

この作動は、駆動軸１に形成された油路１ａ，
１ｂからシリンダ室１３内へ作動油の給排を行う
ことによりなされる。まず、シリンダ室１３内に
作動油がない場合には、ピストン１２は戻しバネ
１８の付勢力によりシリンダ１１の内側面に当接
するまで左動され（第１図の状態）、また、チエ
ツクバルブ２０のリーフスプリング弁２１は、そ
れ自体のスプリング力によりウエート２２がスト
ツパ２４に当接するまで開弁した状態にある。こ
のため、ピストン１２はドライブおよびドリブン
プレート１５，１６から離れており、両プレート
１５，１６は別々に回転可能であり、駆動軸１と
入力軸２とは離脱状態にある。

この状態から、油路１ａ，１ｂを介してシリン
ダ室１３内に所定油圧の作動油が供給されると、
この作動油の油圧により、リーフスプリング弁２
１が閉弁方向（リベツト２１ａによる結合部を支
点としてリーク孔２３に近づく方向）に移動さ
れ、リーク孔２３はこのリーフスプリング弁２１
により塞がれる。なお、このリーフスプリング弁
２１によりリーク孔２３の閉塞を確実に行わせる
ために、リーフスプリング弁２１の最大開弁量を
ストツパ２４により規制している。リーク孔２３
が閉塞されることにより、シリンダ室１３内には
油路１ａ，１ｂを介して供給される作動油が充満
し、この作動油の油圧がピストン１２に作用す
る。これにより、ピストン１２は第１図における
右方向に押圧され、ドライブおよびドリブンプレ
ート１５，１６をエンドプレート１７の方に押し
付ける。このため、ドリブンプレート１６の摩擦
フエーシング材とドライブプレート１５との摩擦
力により、両プレート１５，１６が一体になつて
回転し、これにより、駆動軸１と被動軸２とが係
合されて一体に回転される。なお、ピストン１２
が両プレート１５，１６を押圧する初期段階にお
いては、ピストン１２の押圧力はまず皿バネ１４
を介して両プレートに伝達され、これにより、両
プレート１５，１６の摩擦係合を徐々に行わせ
て、クラツチ１０による両軸１，２の係合を滑ら
かに行わせるようになつている。

次に、クラツチ１０の係合を解除する場合に
は、油路１ａ，１ｂの作動油の供給を断つととも
に、この油路１ａ，１ｂをドレン側に連通させ
る。これにより、油路１ａ内の作動油は、ドレン
側に排出させることができるが、両軸１，２およ
びクラツチ１０が回転している状態では、遠心力
の作用により、油路１ｂおよびシリンダ室１３内
の作動油を油路１ａを通つてドレン側に排出させ
ることはできない。

ところが、油路１ａがドレン側に連通すること
により、シリンダ室１３内の作動油の油圧は低下
し、遠心力により発生する油圧のみとなる。この
ため、リーフスプリング弁２１の開弁方向のスプ
リング力により、リーフスプリング弁２１は開弁
方向に移動し、リーク孔２３が開放され、シリン
ダ室１３内の作動油はこのリーク孔２３から外部
に排出される。なお、クラツチ１０の回転が高い
とシリンダ室１３内の作動油に発生する遠心油圧
が高いのであるが、リーフスプリング弁２１に取
り付けられたウエート２２に作用する遠心力も大
きくなり、このウエート２２に作用する遠心力は
リーフスプリング弁２１を開弁させる方向に作用
するので、回転の如何に拘らずリーフスプリング
弁２１が確実に開弁される。

このようにして、シリンダ室１３内の作動油を
リーク孔２３から外部に排出させると、ピストン
１２に作用する力は戻しバネ１８の付勢力だけと
なるので、ピストン１２はこの付勢力により左方
に移動され、両プレート１５，１６の押圧係合が
解除されて、駆動軸１と被動軸２とが離脱状態と
なる。

上記のようにして、シリンダ室１３内の作動油
がリーク孔２３から外部に排出されるときに、シ
リンダ室１３内におけるリーク孔２３より外周側
に位置する部分にある作動油は遠心力の影響によ
りリーク孔２３から排出されずにシリンダ室１３
内に残される。この残油は、クラツチ１０の回転
により遠心力を受けて所定の油圧を有するため、
この油圧によりピストン１２が係合方向（両プレ
ート１５，１６を押す方向）に押圧され両プレー
ト１５，１６に僅かに係合させてひきずり現象を
生じさせるおそれがあるのであるが、本例におい
ては、リーク孔２３はシリンダ室１３内における
円周方向外端近傍に形成されているので、残油が
殆どなく、戻しバネ１８により確実にピストン１
２を離脱方向（両プレート１５，１６から離れる
方向）に移動させることができ、ひきずりの発生
のおそれがない。

さらに、本例においては、ウエート２２も径方
向外端部に位置しているため、ウエート２２を径
方向内方に配設した場合に較べ、遠心力を低下さ
せることなくウエート２２を小さくすることがで
き、シリンダ室１３内に配設されるチエツクバル
ブを小型化することができる。

本発明のチエツクバルブの構成は上記例のもの
に限られるものではなく、第３図に示すように、
リベツト３１ａによりピストン１２に取り付けら
れたリーフスプリング弁３１に、２個のウエート
３２ａ，３２ｂを取り付けて構成しても良い。こ
のようにしても、リーク孔２３を外端近傍に位置
せしめたままウエート３２ａ，３２ｂを外周側に
位置せしめることができ、ウエート３２ａ，３２
ｂに作用する遠心力を低下させることなくその大
きさを小さくすることができる。

なお、上記の例においては、チエツクバルブ２
０，３０をピストン１２に配設した例を示した
が、チエツクバルブは、シリンダ室内におけるピ
ストンと反対側のシリンダ上に配設しても良い。

ハ 発明の効果 以上説明したように、本発明によれば、チエツ
クバルブを構成するリーク孔が油圧作動室（シリ
ンダ室）内における円周方向外端近傍に形成さ
れ、且つ質量も円周方向外端近傍においてリーフ
スプリング弁に取り付けられているので、チエツ
クバルブを開弁させて、油圧作動室内の作動油を
外部に排出させたときに、遠心力を受けて油圧作
動室内に残される作動油がほとんど無く、油圧作
動室内の残油に作用する遠心油圧によるクラツチ
のひきずり現象の発生を確実に防止することがで
きるとともに、質量をできる限り小さくしてチエ
ツクバルブを小型化することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係るチエツクバルブを有した
油圧作動クラツチの断面図、第２図は上記チエツ
クバルブを矢印−に沿つて示す側面図、第３
図は本発明のチエツクバルブの異なる例を示す側
面図である。 １…駆動軸、２…被動軸、１０…クラツチ、１
１…シリンダ、１２…ピストン、１３…シリンダ
室、１５…ドライブプレート、１６…ドリブンプ
レート、２０，３０，４０…チエツクバルブ、２
１，３１，４１…リーフスプリング弁、２２，３
２，４２…ウエート、２３，４３…リーク孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 油圧作動室内に供給される作動油圧により駆
   動軸と被動軸との係脱が制御される油圧作動クラ
   ツチにおいて、 前記油圧作動室内の作動油を外部へ排出させる
   リーク孔と、前記油圧作動室内に配されて該油圧
   作動室内の作動油圧により閉弁方向の力を受ける
   とともに開弁方向のスプリング力を有し前記リー
   ク孔の開閉を行うリーフスプリング弁と、該リー
   フスプリング弁に取り付けられ、前記油圧作動ク
   ラツチの回転に伴い遠心力を受けて前記リーフス
   プリング弁に開弁方向の力を付加する質量とから
   なり、 前記リーク孔および前記質量が、前記油圧作動
   室内における径方向外端近傍に位置するとともに
   円周方向に並んで設けられていることを特徴とす
   る油圧作動クラツチのチエツクバルブ。 ２ 前記リーフスプリング弁の径方向外端部にお
   ける円周方向中央部に前記質量が取り付けられ、
   この質量の円周方向側方に位置して前記リーク孔
   が形成されていることを特徴とする特許請求の範
   囲第１項に記載のチエツクバルブ。 ３ 前記リーフスプリング弁の径方向外端部にお
   ける円周方向中央部に対向する位置に前記リーク
   孔が形成され、この円周方向中央部の両側に前記
   質量が２分割されて取り付けられていることを特
   徴とする特許請求の範囲第１項に記載のチエツク
   バルブ。