JPH042799B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【産業上の利用分野】

本発明は冷凍・空調用の冷媒圧縮機あるいはヘ
リウム用圧縮機として用いられる密閉形スクロー
ル圧縮機に係り、特に油分離機能を有する密閉容
器を備えたスクロール圧縮機に関するものであ
る。

【従来の技術】

密閉形スクロール圧縮機の密閉容器の構造につ
いては特開昭58−183887号等にて開示されてい
る。 第６図に従来の密閉形スクロール圧縮機の全体
構造を示す。 密閉容器１は、上チヤンバ部１ａ、容器胴部１
ｂと下チヤンバ部１ｃから成る。軸受部等を支持
するフレーム１１は、容器胴部１ｂの内壁面とで
見かけ上密着して固定されている。この固定法は
第７図に示すようにフレーム１１の外周部１１ｍ
と容器胴部１ｂに内壁面とが焼ばめにより固着さ
れている。また、容器胴部１ｂは薄板材を円筒状
に巻いて、その両端部を溶接（電気アーク溶接
法）にて接合して形成している。該接合部１ｍ
は、吐出管１９の近傍に位置している。

【発明が解決しようとする課題】

第８図に示すように、従来構造では、該溶接接
合部１ｍには容器内部に突き生た凸部１m′が形
成される。これは接合部の強度を維持する上で必
要な肉厚分である。該接合部１ｍの両側には、上
記凸部１m′の影響により、容器胴部１ｂが溶接
工程時に、容器自体が変形し、結果としてフレー
ム１１の外周面１１ｍに対して、隙間１１ｐ，１
１ｑが形成される。該溶接接合部１ｍは、容器胴
部１ｂの軸方向に伸びて形成される。第８図に示
すように、溶接接合部１ｍには容器胴部１ｂに対
して段付構造を余義なくされる。このように実質
的には連通路１８を除いて上部容器室（吐出室）
２ａと下部容器室（電動機室）２ｂとのシール性
が完全でなくなる。 また、上記接合部１ｍに吐出管１９がさらに近
接して配置されている場合には、吐出管の密閉容
器胴部への溶接時に更に熱が加えられて、上記隙
間１１ｐ，１１ｑが大きくなることもある。 本来、冷媒ガスと油の通る通路は、連通路１
８，１８ａ，１８ｂであるが、上述した溶接接合
部１ｍの周りには、隙間１１ｐ，１１ｑが介在す
ると、吐出室でガス中から分離された油の一部は
該隙間を介して吐出室２ａから電動機室２ｂへ漏
れ込むようになる。なお、スクロール圧縮機の内
部の油の流れは、特開昭59−141793号公報に開示
されているので、こゝでは省略する。上記引用例
に示した密閉形スクロール圧縮機において、固定
スクロール部材の中央部にある吐出口から出た冷
媒ガスと油は、比較的広い空間の吐出室に導か
れ、こゝで冷媒ガス中の一部の油は分離される。
そして、油を混合した冷媒ガスと分離された油と
は一緒になつて吐出室２ａから連通路１８ａ，１
８ｂを介して電動機室２ｂに至る。ここで、さら
に広い空間になるので、ガス流速がさらに落ち
て、冷媒ガス中の油は分離されることになる。 第８図に示すように、吐出管１９の近傍に容器
胴部の接合部１ｍが位置していると、第９図に示
すように、上部の吐出室２ａ内で分離された油２
２ａが上記フレーム外周部の隙間１１ｐ，１１ｑ
を介して、電動機室２ｂへ漏れ込み易くなり、ひ
いては吐出管１９へ直接油が流れ機外へ流出す
る。このように、上記フレームの隙間１１ｐ，１
１ｑが吐出管１９の近傍あるいは連通路１８ｂと
吐出管の中間にあると該隙間１１ｂ，１１ｑを介
して吐出室２ａの油が直接機外へ流出する結果と
なり、密閉容器１全体の油分離効率が半減する。
上記隙間１１ｐ，１１ｑから漏れる油の量は、吐
出室２ａと電動機室２ｂの差圧に比例して増加す
るので、スクロール圧縮機がインバータ駆動によ
つて高速運転されると、ガスの流れに伴う両室の
圧力差が増加して更に容器自体の油上り量が増大
する。また、前記隙間１１ｐ，１１ｑの大きさ
は、溶接時の熱変形の具合により変化し、これら
の隙間はばらつく。従つて、この事は吐出室２ａ
の油が該隙間を介して機外へ流出する量（油上り
量）のバラツキとなつて現われる。このように、
溶接接合部の隙間は、容器自体の油上り量を助長
させ、かつ油上り量のバラツキにも大きな要因と
なりうるもので、製品の品質管理の面でも問題と
なる。 本発明は、上記問題点に鑑みて発明されたもの
で、密閉容器胴部の溶接接合部の突出部や変形の
影響で、設定した連通路以外のフレーム外周部に
漏洩隙間を形成しないようにし、それによつて密
閉容器内の油を効率よく分離し、油が機外へ流出
することを防止することのできる密閉形スクロー
ル圧縮機を得ることを目的とするものである。

【課題を解決するための手段】

上記目的を達成するための本発明は、密閉容器
内に、スクロール圧縮機と電動機をフレームに支
承した回転軸を介して連設して収納すると共に、
密閉容器室をフレームを介して上下室に区画し、
スクロール圧縮機は、円板状鏡板に渦巻状のラツ
プを直立する固定スクロール部材及び旋回スクロ
ール部材を、ラツプを内側にしてかみ合せ、旋回
スクロール部材を回転軸に連設する偏心軸部に係
合し、旋回スクロール部材に自転防止手段を設
け、旋回スクロール部材を自転することなく固定
スクロール部材に対し旋回運動させ、固定スクロ
ール部材には中心部に開口する吐出口と外周部に
開口する吸入口を設け、吸入口よりガスを吸入
し、両スクロール部材にて形成される圧縮空間を
中心に移動させ容積を減少してガスを圧縮し、吐
出口より圧縮ガスを上部容器室に吐出し、密閉容
器に沿つて設けた連通路を介して下部容器室に導
びき、吐出管を介し器外に吐出する密閉形スクロ
ール圧縮機において、密閉容器を上下チヤンバ部
と胴部に分割し、上記各部を互いに接合して形成
し、容器胴部は、薄板材を円筒状に巻いて両端縁
を溶接にて接合して形成し、この溶接接合部を前
記上下室を連通する連通路部に位置させたことを
特徴とするものである。

【作用】

本発明では、密閉容器胴部の溶接接合部が段付
形状になつても、該接合部を、上部容器室（吐出
室）と下部容器室（電動機室）とを連通する連通
路部に位置させた構造としたことにより、連通路
以外のフレーム外周部は密閉容器と密着した状態
となり、上記フレーム外周部には連通路部を除い
ては隙間が存在しなくなる。 このため、冷媒ガスとともに吐出室に吐出され
ガス中から分離した油は、冷媒ガスとともに設定
した連通路のみを流通して下部の電動機室に流
れ、電動機の周囲に行きわたるように流れる。す
なわち、上記した吐出室で分離された油は、連通
路を通つて直接下方に導かれ、従来のように、油
が吐出室２ａから密閉容器胴部の隙間を通つて電
動機室２ｂへ流れ直接吐出管へ流出するような油
の短絡的な流れがなくなる。このように、油が圧
縮機の機外へ流出する量（油上り量）が低減さ
れ、また隙間１１ｐ，１１ｑが無くなることによ
り、密閉容器内の油を効率良く分離することがで
き、油が機外へ流出するのを防止できる。

【実施例】

以下本発明の一実施例を図面にもとづき説明す
る。 第１図は密閉形スクロール圧縮機の全体構造を
示す。密閉容器１内の上方に圧縮機部が、下方に
電動機部が収納されている。そして、密閉容器１
内は上部容器室（吐出室）２ａと下部容器室（電
動機室）２ｂとに区画されている。 圧縮機部は固定スクロール部材５と旋回スクロ
ール部材６を互いに噛み合わせて圧縮室（密閉空
間）を形成している。固定スクロール部材５は、
円板状の鏡板５ａと、これに直立しインボリユー
ト曲線あるいはこれに近似の曲線に形成されたラ
ツプ５ｂからなり、その中心部に吐出口１０、外
周部に吸入口７を備えている。旋回スクロール部
材６は円板状の鏡板６ａと、これに直立し、固定
スクロールのラツプと同一形状に形成されたラツ
プ６ｂと、鏡板の反ラツプ面に形成されたボス６
ｃとからなつている。フレーム１１は中央部に軸
受部を形成し、この軸受部に回転軸１４が支承さ
れ、回転軸先端に偏心軸１４ａは、上記ボス６ｃ
に旋回運動が可能なように挿入されている。また
フレーム１１１には固定スクロール部材５が複数
本のボルトによつて固定され、旋回スクロール部
材６はランダム機構１２によつてフレーム１１に
支承され、旋回スクロール部材６は固定スクロー
ル部材５に対して、自転しない旋回運動をするよ
うに形成されている。回転軸１４には下部に電動
機軸１４ｂを一体に連設し、電動機部を直結して
いる。固定スクロール部材５の吸入口７には密閉
容器１を貫通して垂直方向の吸入管１７が接続さ
れ、吐出口１０が開口している吐出室２ａは通路
１８ａ，１８ｂおよび吐出通路ガイド４０を介し
て上部の電動機室２ｂと連通している。この上部
電動機室２ｂは電動機ステータ３ａと密閉容器１
側壁との間の通路４５を介して下部電動機室２ｃ
に連通している。また、上部電動機室２ｂは密閉
容器１を貫通する吐出管１１９に連通している。 なお、１１ｆは電動機３をフレーム側に固定す
るためのフレーム台座部である。また、吐出通路
ガイド４０は、電動機の冷却作用を図るため冷媒
ガスと油を電動機３まで直接案内するために設け
た部品で、詳細構造を以下説明する。 第２図乃至第５図は、容器胴部１ｂの溶接接合
部１ｎとその他の圧縮機内部の構成部材（フレー
ム１１の連通路１８ｂ及び電動機３のステータ３
ａ等）との位置関係を明示している。 第２図と第３図において、溶接接合部１ｎは吐
出通路ガイド４０及びフレーム１１の外周部に設
けた連通路１８ｂと対向した位置に設定してい
る。本来、この通路４０ａと１８ｂは、冷媒ガス
と圧縮機内の潤滑と冷却作用をなす油が通る通路
であり、該溶接接合部１ｎの両端に派生する段付
部１n′がそのまゝ残つていても、両者の流れを阻
害するものではない。該接合部１ｎの容器内部に
突き出た凸部１n′は、これと対向する部材（例え
ば、固定スクロール５の外周部、フレーム１１の
外周部、電動機３のスターテ外周部等）とは、切
欠き部でもつて形成する通路１８ａ，１８ｂ及び
電動機３のスターテ３ａの外周部の空間４５（第
４図と第５図参照）でもつて完全に離れており、
接触する恐れがない。このため、該凸部１n′はそ
のまゝ残しておいても、圧縮機の組立上何ら問題
はない。 第４図と第５図に示すように、密閉容器胴部１
ｂを形成する薄板材の溶接接合部１ｎに対して、
ほゞ反対の位置にガスを吐出する吐出管１９を容
器胴部に設定している。これは、油とガスが流れ
る通路系（例えば１８ａ，１８ｂや４５）に対し
て極力遠隔の位置関係となるように、吐出管を設
定し、これによつて、密閉容器内でのガスと油の
通る流路長さを最も長く維持し、この過程で、冷
媒ガス中から油を分離するものである。 第１図に示すように、本実施例によれば、容器
胴部１ｂの溶接接合部１ｎを連通路側１８，１８
ａ，１８ｂに設定するようにしたので、密閉容器
１内をフレーム１１にて二分した構造で、吐出室
２ａ→連通路１８→電動機室２ｂ→吐出管１９に
至る流路系以外の部分にシール性、すなわち上部
空間の吐出室２ａと電動機室２ｂとのシール性
（密封性）を確実に持たせることができる。なお、
該シール性を有する範囲は連通路１８ｂを除くフ
レーム１１の外周部である。上記フレーム１１の
外周部のシール性は、圧縮機構部（スクロール部
５，６とフレーム１１等の組立品）を容器胴部１
ｂに圧入することにより形成する。 また、本実施例によれば、ガス中から分離した
油は、冷媒ガスとともに設定した連通路のみを流
通して下部の電動機室に流れ、電動機の周囲に行
きわたる。すなわち、上記した吐出室で分離され
た油は、連通路を通つて直接下方に導かれ、従来
のように、油が吐出室２ａから密閉容器胴部の隙
間を通つて電動機室２ｂへ流れ直接吐出管へ流出
するような油の短絡的な流れがなくなるから、連
通路を通つた油は、電動機の冷却作用に有効に供
され、油による電動機の冷却効果をさらに上げる
ことができるとともに、油の圧縮機外への流出量
（油上り量）も低減される。さらに、前記隙間１
１ｐ，１１ｑが無いので、容器全体としての油分
離効率は各圧縮機とも一定に確保され、圧縮機の
信頼性向上も図れる。 この他、従来技術では、溶接接合部の凸部は、
フレーム１１の外周部と接触しており、組立ての
面でもこの凸部が大きい場合にはフレームを圧入
する以前に該凸部を削除するといつた余分の作業
を余義なくされていたが、本実施例によれば、上
記溶接接合部の凸部をそのまま残しておいてもフ
レームと接触する恐れはなく、加工、組立性の面
でも従来技術に対して工数低減の効果、ひいては
製品価格を低廉化できる効果もある。

【発明の効果】

以上説明したように本発明によれば、密閉容器
胴部の溶接接合部の突出部や変形の影響があつて
も、設定した連通路以外のフレーム外周部に漏洩
隙間を形成しないようにできるから、密閉容器内
の油を効率よく分離でき、油が機外へ流出するこ
とを防止することができるという効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す密閉形スクロ
ール圧縮機の縦断面図、第２図は第１図における
密閉容器胴部の溶接接合部と通路ガイド部を示す
部分拡大斜視図、第３図は第１図における密閉容
器胴部の溶接接合部とフレームの連通路部分を示
す部分横断面図、第４図は第４図の−線矢視
断面図、第５図は第１図の−線矢視断面図、
第６図乃至第９図は従来例を示し、第６図は密閉
形スクロール圧縮機の縦断面図、第７図は第６図
の−線矢視断面図、第８図は第６図における
密閉容器胴部の溶接接合部とフレームとの接触部
分を示す部分横断面図、第９図はフレーム外周部
の油漏れの状態を説明する部分縦断面図である。 １…密閉容器、１ａ…上チヤンバ部、１ｂ…胴
部、ｃ…下チヤンバ部、１ｍ，１ｎ…溶接接合
部、１m′，１n′…段付部（凸部）、２ａ…上部容
器室（吐出室）、２ｂ…下部容器室（電動機室）、
３…電動機、５…固定スクロール部材、６…旋回
スクロール部材、１１…フレーム、１８，１８
ａ，１８ｂ…連通路、１９…吐出管。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 密閉容器内に、スクロール圧縮機と電動機を
   フレームに支承した回転軸を介して連設して収納
   すると共に、密閉容器室をフレームを介して上下
   室に区画し、スクロール圧縮機は、円板状鏡板に
   渦巻状のラツプを直立する固定スクロール部材及
   び旋回スクロール部材を、ラツプを内側にしてか
   み合せ、旋回スクロール部材を回転軸に連設する
   偏心軸部に係合し、旋回スクロール部材に自転防
   止手段を設け、旋回スクロール部材を自転するこ
   となく固定スクロール部材に対して旋回運動さ
   せ、固定スクロール部材には中心部に開口する吐
   出口と外周部に開口する吸入口を設け、吸入口よ
   りガスを吸入し、両スクロール部材にて形成され
   る圧縮空間を中心に移動させ容積を減少してガス
   を圧縮し、吐出口より圧縮ガスを上部容器室に吐
   出し、密閉容器に沿つて設けた連通路を介して下
   部容器室に導びき、吐出管を介し器外に吐出する
   密閉形スクロール圧縮機において、密閉容器を上
   下チヤンバ部と胴部に分割し、上記各部を互いに
   接合して形成し、容器胴部は、薄板材を円筒状に
   巻いて両端縁を溶接にて接合して形成し、この溶
   接接合部を前記上下室を連通する連通路部に位置
   させたことを特徴とする密閉形スクロール圧縮
   機。 ２ 連通路部以外のフレーム外周部を密閉容器の
   胴部に圧入して密着させたことを特徴とする特許
   請求の範囲第１項に記載の密閉形スクロール圧縮
   機。 ３ 密閉容器胴部を形成する薄板材の溶接接合部
   に対して、ほぼ反対の位置に吐出管を配置し、容
   器胴部に接続してなる特許請求の範囲第１項また
   は第２項記載の密閉形スクロール圧縮機。