JPH0413414Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、デイーゼルエンジン、特に中速又は
低速のデイーゼルエンジンの燃焼室内に燃料を噴
射する燃料噴射弁の燃料異常流出防止装置に関す
る。

〔従来の技術〕

デイーゼルエンジンの燃料噴射弁は、クランク
角が所定の角度にあるときだけ開弁してシリンダ
の燃焼室内へ燃料を噴射している。ところで、燃
料噴射弁のスピンドルが焼付きなどのステツク現
象で開弁状態のまま固着するような作動不良を生
じたときは、燃料が多量に燃焼室内および排気系
統内へ漏洩し、ガス爆発等の異常を発生する恐れ
があつた。

このような欠点を除去するために、燃料圧力と
ばね力とにより燃料噴射通路を開放する方向に付
勢された遮断弁と、シールオイル圧力により燃料
噴射通路を遮断する方向に付勢され、かつ遮断弁
に当接している受圧弁とを内蔵した燃料噴射弁が
同一出願人より実願昭59−183414号に開示されて
いる。上記燃料噴射弁において、スピンドルが焼
付きなどのステツク現象で開弁状態のまま固着し
た場合は、燃料噴射弁内の燃料圧力が低下し、燃
料圧力とばね圧力との和よりもシールオイル圧力
が大きくなつて受圧弁が遮断弁を燃料噴射通路を
遮断する方向に押圧し、これにより燃料噴射通路
の緊急遮断を行なつていた。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、上記実願昭59−183414号に開示されて
いる燃料噴射弁においては、遮断弁と受圧弁とを
設けた燃料異常流出防止装置は、遮断弁に加わる
燃料圧力と圧縮ばねのばね圧縮との和と、受圧弁
に加わるシールオイル圧力との相互関係によつて
作動するもので、シールオイル圧力、圧縮ばねの
ばね圧力の調整に十分留意する必要があり、その
調整作業は煩わしいものであつた。また燃料噴射
通路の遮断が迅速に行なわれないという問題があ
つた。

本考案は、このような問題点を解決し、燃料の
異常流出により燃料供給通路の燃料圧力が規定圧
力より低下したとき、直ちにスピンドルが下降し
て燃料噴射通路を遮断できるようにした燃料噴射
弁の燃料異常流出防止装置を提供することを目的
とする。

〔問題点を解決するための手段〕

かかる目的達成のため、本考案の燃料噴射弁の
燃料異常流出防止装置は、ほぼ円筒状で同心の外
筒と内筒との間に燃料通路を備え、内筒の一方の
端に燃料噴射通路が開口する燃料噴射弁本体と、
内筒の長手方向の中心穴に摺動可能に嵌入され、
一方の端部が燃料噴射通路に形成された弁座に当
接する先端形状を有するスピンドルと、中心穴の
他方に向かつて同軸上に延びる中空室内に設けら
れ、スピンドルを弁座方向に付勢する圧縮ばね
と、中空室内に摺動可能に嵌入され、前記圧縮ば
ねに抗してスピンドルの他方の端部に当接可能な
突出部であるリフトストツパ及び中空室の端壁と
の間に空間部を形成する突き当て部とを備えたピ
ストンと、燃料噴射通路に連通し、かつ燃料噴射
弁本体の外に導設された燃料供給通路に上流側か
ら下流側に向かつて順次配設された固定オリフイ
ス及び圧力検出器と、空間部に連通し、かつ燃料
噴射弁本体の外に導設されたシールオイル供給通
路に設けられ、圧力検出器の出力信号により開閉
するシールオイル切換弁と、を備えたものであ
る。

〔作用〕

上述の構成によれば、燃料供給通路に供給され
た燃料は、固定オリフイスにより絞られ高圧の燃
料となつて燃料噴射通路に供給される。また固定
オリフイスで絞られた燃料圧力の変動は、圧力検
出器により検出され、燃料圧力が規定圧力より低
下したときは、燃料噴射通路遮断信号が圧力検出
器から出力され、シールオイル切替弁が開かれ、
シールオイル圧力によりピストンを介してスピン
ドルが押し下げられて燃料噴射通路が遮断され、
燃料の供給が断れる。

〔実施例〕

以下、本考案を図面に示す実施例に基づいて説
明する。

第１図は燃料異常流出防止装置を備えた閉弁状
態における燃料噴射弁の縦断面図であり、燃料噴
射弁１は、外筒２と、内筒３と、スピンドル４と
を備えている。

外筒２は、ほぼ円筒状に形成され、燃料室であ
るシリンダ８に装着されたシリンダカバー１０に
嵌挿固定されている。内筒３は、外筒２の内周面
にシール部材１１を介して固定されており、外筒
２の内周面の直径より若干小径の大径部３ａと、
該大径部３ａの下端側に形成された小径部３ｂ
と、該小径部３ｂの下端側に形成され更に小径の
先端部３ｃとからなり、内筒３の外周面と外筒２
の内周面との間の部分が燃料通路１２とされてい
る。該燃料通路１２には、外筒２の外周面に形成
された燃料導入口１３が連通している。

スピンドル４は、内筒３の軸中心線上に形成さ
れた中心穴３ｄに軸方向に摺動可能に嵌挿されて
おり、大径部４ａと、該大径部４ａの下端側に形
成された小径部４ｂと、該小径部４ｂの下端側に
形成された更に小径の先端部４ｃとからなり、該
先端部４ｃにはテーパ部４ｄが形成されている。
また大径部４ａと小径部４ｂとを連結する部分に
は、小径部４ｂの直径より更に小径のネツク部４
ｅが形成されている。

内筒３の中心穴３ｄは、スピンドル４の大径部
４ａ，小径部４ｂがそれぞれ摺動可能に嵌挿され
るように形成されている。該中心穴３ｄには、第
１図に示す燃料噴射弁１閉弁状態において、スピ
ンドル４の大径部４ａ下面およびネツク部４ｅの
外周面を含む周回溝１５、小径部４ｂの中間部外
周面を含む周回溝１６、小径部４ｂ下面および先
端部４ｃの外周面を含む周回溝１８がそれぞれ形
成されている。周回溝１５には、内筒３に形成さ
れたコントロールオイル通路１９が連通されてお
り、外部からコントロールオイルが導入可能とさ
れている。周回溝１６には、内筒３に形成された
シールオイル通路２０が連通されており、外部か
らシールオイルが導入可能とされてイル。周回溝
１８には、内筒３の小径部３ｂ外周面に放射状に
形成された複数の穴２１が連通している。

内筒３の中心穴３ｄ下端部分は、小径となつて
燃料噴射通路２２とされており、該燃料噴射通路
２２の先端部には、シリンダ８内に連通する燃料
噴射口２３が放射状に複数形成されている。燃料
噴射通路２２と中心穴３ｄとの連結部分は、スピ
ンドル４のテーパ部４ｄに倣つたテーパ面に形成
されており、このテーパ面が燃料弁座２４となつ
ている。

燃料異常流出防止装置は、遮断機構を構成する
緊急遮断用のピストン３０と、シールオイル切換
弁３２とを備えている（第３図参照）。ピストン
３０は、内筒３の中心穴３ｄ上端部分に若干大径
で形成された中空室３ｅに上下方向摺動可能に嵌
挿されており、ピストン３０上面には突当て部３
３、下面にはリフトストツパ３４がそれぞれ突出
して一体的に形成されている。ピストン３０とス
ピンドル４の大径部４ａとの間の中空室３ｅに
は、リフトストツパ３４に巻装されて圧縮ばね３
５が収容されており、該圧縮ばね３５によりスピ
ンドル４は下方に付勢され、テーパ部４ｄが燃料
弁座２４に当接し、またピストン３０は上方に付
勢され突当て部３３が中空室３ｅの頂面に当接す
るようになつている。この場合、スピンドル４の
大径部４ａ上面とリフトストツパ３４の下面とは
一定の間隙をもつように設定されている。またピ
ストン３０の突当て部３３により中空室３ｅに形
成された空間部３６には、内筒３に形成されたシ
ールオイル導入口３８が連通している。

シールオイル切換弁３２は、シールオイル導入
口３８に連通するシールオイル供給通路４８に配
設されており、シールオイル切換弁３２上流のシ
ールオイル供給通路４８から分岐したシールオイ
ル分岐通路４９は、シールオイル通路２０に連通
している。そしてシールオイル切換弁３２は、圧
力検出器３１からの検出信号により作動して弁の
開閉が行なわれる。

圧力検出器３１は、燃料供給管４０から分岐し
て燃料導入口１３に連通する燃料供給通路４１に
配設されている。圧力検出器３１上流側の燃料供
給通路４１には上流に向つて順次固定オリフイス
４３、手動弁４５および逆止弁４６が配設されて
いる。そして燃料は、コンプレツサ（図示せず）
により燃料供給管４０、逆止弁４６、手動弁４５
および固定オリフイス４３を通つて燃料導入口１
３に供給される。

つぎに、本考案の実施例の作用を説明する。第
１図に示すように、閉弁状態にある燃料噴射弁１
においては、スピンドル４は圧縮ばね３５により
下方に付勢され、テーパ部４ｄにより燃料弁座２
４が閉塞されている。

周回溝１８には、燃料供給管４０、逆止弁４
６、手動弁４５を通り固定オリフイス４３により
絞られた高圧（200〜250Kg／cm²）の燃料が燃料供
給通路４１を通つて燃料導入口１３から常時供給
されている。また周回溝１６には、シールオイル
通路２０から燃料圧力より若干高目の圧力（280
Kg／cm²）のシールオイルが供給され周回溝１５に
は、コントロールオイル通路１９から通常低圧の
コントロールオイルが充填されている。

このような閉弁状態にある燃料噴射弁１を開弁
状態にするには、まずスピンドルコントロールオ
イルポンプ（図示せず）により加圧されたコント
ロールオイルをコントロールオイル通路１９を通
して周回溝１５に供給する。すると、スピンドル
４の大径部４ａがコントロールオイルの背圧を受
け、スピンドル４が圧縮ばね３５のばね力に抗し
てリフトストツパ３４に当接するまで上昇し、燃
料弁座２４が開放され、所定量の燃料が燃料噴射
通路２２を通つて燃料噴射口２３からシリンダ８
内に噴射される。

燃料の噴射が完了すると、加圧されたコントロ
ールオイルの供給が停止され、スピンドル４は圧
縮ばね３５の復原力により下降し、第１図に示す
ような閉弁状態となる。

ところで、燃料噴射弁１が開弁状態から閉弁状
態に移るとき、スピンドル４が焼付き等によるス
テツク現象で開弁状態で固着し動かなくなつてし
まうと、燃料弁座２４は常時開いた状態となり、
燃料通路１２内の燃料は連続的に燃料噴射口２３
から噴射される。

すると固定オリフイス４３より下流側の燃料圧
力は次第に低下する。この燃料圧力は圧力検出器
３１により検出され、燃料圧力が規定圧力より低
下すると、緊急遮断信号が圧力検出器３１からシ
ールオイル切換弁３２に送られる。これによりシ
ールオイル切換弁３２は開弁状態となり、シール
オイルがシールオイル供給通路４８およびシール
オイル導入口３８を通つて空間部３６に供給され
ると、シールオイル圧力によりピストン３０が圧
縮ばね３５のばね力に抗して下降し、リフトスト
ツパ３４を介してスピンドル４が下方に押圧さ
れ、テーパ部４ｄにより燃料弁座２４を閉塞し、
燃料の供給が断たれる。

第４図および第５図は上記の作用を明瞭に示し
た作動チヤートであり、第４図はスピンドル４の
リフトと燃料噴射との関係を示したもので、正常
燃料噴射の場合、実線で示すように、スピンドル
４上死点Ａで燃料噴射が行なわれ一定時間経過
後、スピンドル４は下降し下死点Ｂになる。異常
燃料噴射の場合は、破線で示すようにスピンドル
４の下死点Ｂ到達時期が遅れる。第５図は燃料噴
射時における燃料圧力変化とシールオイル切換弁
との関係を示したもので、正常燃料噴射の場合は
実線で示すように、スピンドル４上死点Ａから下
死点Ｂまでの燃料圧力は徐々に低下しており、下
死点Ｂに達すると、燃料弁座２４が閉塞されて燃
料圧力は徐々に高くなつている。異常燃料噴射の
場合は破線で示すように、燃料圧力が規定圧力Ｃ
より低下する。すると、圧力検出器３１から緊急
遮断信号がシールオイル切換弁３２に送られ、上
記のような作用を行なう。

なお、実施例では単一の燃料を使用した燃料噴
射弁１を一例として示したが、副燃料を併用した
燃料噴射弁１にも適用することができる。

〔考案の効果〕

上述のとおり、本考案によれば、固定オリフイ
スで燃料供給通路内の燃料圧力を圧力検出器によ
り検出するようになつているので、燃料圧力の変
動の検出を精度よく行なうことができる。この結
果、スピンドルが焼付き等のステツク現象で燃料
供給通路内の燃料圧力が規定圧力より低下した場
合には、燃料噴射通路が迅速に遮断され、シリン
ダへ燃料の異常流出が防止され安全性が向上す
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例に係り、第１図は燃料異
常流出防止装置を備えた閉弁時における燃料噴射
弁の縦断面図、第２図はシリンダのシリンダカバ
ーに燃料噴射弁を装着した状態を示す概略図、第
３図は燃料異常流出防止装置のシステム図、第４
図はスピンドルのリフトと燃料噴射との関係を示
す作動チヤート、第５図は燃料圧力の変動とシー
ルオイル切換弁との関係を示す作動チヤートであ
る。 １……燃料噴射弁、３１……圧力検出器、４１
……燃料供給通路、４３……固定オリフイス、４
５……手動弁、４６……逆止弁。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ほぼ円筒状で同心の外筒と内筒との間に燃料通
   路を備え内筒の一方の端に燃料噴射通路が開口す
   る燃料噴射弁本体と、前記内筒の長手方向の中心
   穴に摺動可能に嵌入され一方の端部が前記燃料噴
   射通路に形成された弁座に当接する先端形状を有
   するスピンドルと、前記中心穴の他方に向かつて
   同軸上に延びる中空室内に設けられ前記スピンド
   ルを弁座方向に付勢する圧縮ばねと、前記中空室
   内に摺動可能に嵌入され前記圧縮ばねに抗して前
   記スピンドルの他方の端部に当接可能な突出部で
   あるリフトストツパと前記中空室の端壁との間に
   空間部を形成する突き当て部とを備えたピストン
   と、前記燃料噴射通路に連通しかつ燃料噴射弁本
   体の外に導設された燃料供給通路に上流側から下
   流側に向かつて順次配設された固定オリフイス及
   び圧力検出器と、前記空間部に連通しかつ燃料噴
   射弁本体の外に導設されたシールオイル供給通路
   に設けられ前記圧力検出器の出力信号により開閉
   するシールオイル切換弁と、を備えた燃料噴射弁
   の燃料異常流出防止装置。