JPH04132412U - 内燃機関のバルブタイミング制御装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 （修正有） 【目的】 回転体とカムシャフトの相対回動位相変換時
における打音の発生を防止しつつ摩擦抵抗の発生を抑制
して、バルブタイミング制御の良好な応答性を確保す
る。 【構成】 タイミングプーリ１とカムシャフト２との相
対回動位相を筒状歯車４の軸方向の移動によって変換す
ると共に、前記両者１，２をコイルスプリング８のばね
力によって反対軸方向に押圧するバルブタイミング制御
装置において、コイルスプリング８の他端部８ｂとスリ
ーブ３との間にスラスト軸受及びスラストレースからな
る摩擦低減手段２０を介装した。

Description

【考案の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】

本考案は、内燃機関の吸気・排気バルブの開閉時期を可変にするバルブタイミ ング制御装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】

この種の従来のバルブタイミング制御装置としては、本出願人が先に出願した 実開平１−１１３１１１号公報に記載されているものが知られている。

【０００３】 これは、図３に示すように、機関のクランク軸によって駆動される略筒状のタ イミングプーリ１と、該タイミングプーリ１の内部に一端部２ａが設けられたカ ムシャフト２と、前記タイミングプーリ１とカムシャフト２に介装された筒状歯 車４とを備えている。この筒状歯車４は、軸直角方向から２分割された２つの歯 車構成部４ａ，４ｂで構成され、その内外周にタイミングプーリ１のインナ歯１ ａと、カムシャフト２に固定されたスリーブ３のアウタ歯３ａに噛合するはす歯 形の内外歯４ｃ，４ｄが形成されている。そして、この筒状歯車４を介してタイ ミングプーリ１の回転をカムシャフト２に伝達すると共に、歯車駆動機構による 筒状歯車４のカムシャフト軸方向の移動に伴いタイミングプーリ１とカムシャフ ト２との相対回動位相を変換して例えば吸気バルブの開閉時期を可変制御するよ うになっている。

【０００４】 また、前記タイミングプーリ１のリテーナ５の内端面５ａとスリーブ３のエン ジン側端面３ｂとの間には、筒状歯車４の軸方向移動を容易にさせるために軸方 向に隙間が形成されている一方、タイミングプーリ１のカバー端板６と、スリー ブ３をカムシャフト２に固定するボルト７の頭部７ａとの間にコイルスプリング ８が装着されており、このコイルスプリング８のばね力でタイミングプーリ１と カムシャフト２とを弾接させて前記隙間を吸収するようになっている。

【０００５】

【考案が解決しようとする課題】

然し乍ら、前記従来のバルブタイミング制御装置にあっては、コイルスプリン グ８のばね力によってタイミングプーリ１とカムシャフト２間の隙間を吸収して 位相変換時における両者１，２の干渉による打音の発生は防止できるものの、該 コイルスプリング８の両端部８ａ，８ｂが、カバー板６の内端面６ａとボルト７ 頭部７ａと一体のフランジ部７ｂに直接着座して互いに反対軸方向へ強いばね力 で押圧している。このため、筒状歯車４が左右軸方向に移動してタイミングプー リ１とカムシャフト２が相対回動位相を変換する際に、カバー板６とボルトフラ ンジ部７ｂとの間にコイルスプリング８のばね力による大きな摩擦抵抗が発生し 、前記相対回動位相変換の応答性が悪化するといった問題がある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】

本考案は、前記従来の問題点に鑑みて案出されたもので、機関により駆動され る回転体とカムシャフトとの相対回動位相を、該両者間に介装された筒状歯車の カムシャフト軸方向の移動により変換させると共に、前記回転体の一端開口を閉 塞するカバー板とカムシャフト端部との間に装着された弾性部材によって前記両 者を反対軸方向に押圧するバルブタイミング制御装置において、前記弾性部材の 端部と、該端部が弾着する前記カバー板の端面あるいはカムシャフト端部との間 に摩擦低減手段を介装したことを特徴としている。

【０００７】

【作用】

前記構成の本考案によれば、摩擦低減手段によって回転体とカムシャフトとの 相対回動位相変換時の摩擦抵抗が十分に低減される。このため、該回転体とカム シャフトとの相対回動位相変換の応答性が良好になる。

【０００８】

【実施例】

以下、本考案の一実施例を図１及び図２に基づいて説明する。尚、従来と共通 の構成個所には同一の符号を付して説明する。 即ち、図中１は前端部が円板状のカバー板６によって液密的に閉塞され、かつ 内周にインナ歯１ａが形成された回転体たるタイミングプーリ、２は該タイミン グプーリ１から回転力が伝達されて図外の吸気バルブを開閉作動させるカムシャ フトであって、前記タイミングプーリ１の後端部にはリテーナ５がかしめによっ て固定されている。一方、カムシャフト２の一端部２ａには、該一端部２ａのボ ルト孔２ｂに軸方向から螺着したボルト７によりスリーブ３が一体に結合されて おり、このスリーブ３の外周にアウタ歯３ａが形成されている。また、前記タイ ミングプーリ１とスリーブ３との間には、筒状歯車４が介装されている。

【０００９】 この筒状歯車４は、長尺の歯車を軸直角方向に切断分割して形成された２個の 歯車構成部４ａ，４ｂと、前側の歯車構成部４ａに嵌合されて両歯車構成部４ａ ，４ｂとを弾性的に連結するスプリング９ａ及び連結ピン９ｂとを備えている。 前記両歯車構成部４ａ，４ｂの内外周には、歯すじを僅かにずらして前記アウタ 歯３ａとインナ歯１ａに噛合したはす歯形の内歯４ｃと外歯４ｄが形成されてい る。また、この筒状歯車４は、前側の歯車構成部４ａの前端部が、タイミングプ ーリ１の内端縁に突き当たって最大前方向への移動が規制されるようになってい る。

【００１０】 更に、前記筒状歯車４は、歯車駆動機構によって駆動されるようになっており 、この歯車駆動機構は、筒状歯車４の前端側へ機関の潤滑油を給排する油圧給排 手段１０と、筒状歯車４の後端部と上記リテーナ５との間に装着されて前記筒状 歯車４を前方へ付勢する圧縮スプリング１１とから構成されている。

【００１１】 前記油圧給排手段１０は下流側でメインギャラリ１２から分岐した油圧通路１ ３と、該油圧通路１３の下流に配置された二方型の電磁弁１４とを備えている。 前記油圧通路１３は、シリンダヘッド１５及びカム軸受１５ａの内部と、カムシ ャフト一端部２ａの半径方向及び中心軸方向に沿って形成されていると共に、ボ ルト７内を軸心方向に沿って貫通形成されている。また、その端部が前記歯車構 成部４ａの前端側に形成された高圧室１６にスリーブ３先端の半径方向孔１３ａ を介して開口している。前記電磁弁１４は、図外のクランク角センサやエアーフ ローメータ等の各センサからの出力信号に基づいて機関の運転状態を検出するコ ンピュータユニット（図示せず）からの制御信号によってＯＮ−ＯＦＦ的に開閉 制御されている。

【００１２】 一方、前記圧縮スプリング１１は、機関停止時に、筒状歯車４が前方位置で停 止可能な程度にそのばね力が小さく設定されている。

【００１３】 そして、前記カバー板６とボルト７の頭部７ａに一体に設けられたフランジ部 ７ｂとの間には、弾性部材たるコイルスプリング８が装着されている。また、該 コイルスプリング８の他端部８ｂとフランジ部７ｂとの間には、円環状のスラス ト軸受２１とスラストレース２２からなる摩擦低減手段２０が設けられている。

【００１４】 前記コイルスプリング８は、図１にも示すように他端部８ｂが前記スラストレ ース２２の一側面２２ａに着座していると共に、一端部８ａがカバー板６の内端 面６ａに着座しており、そのばね力でタイミングプーリ１とスリーブ３（カムシ ャフト２）を互いに反対軸方向に押圧して、筒状歯車４の各内外歯４ｃ，４ｄと インナ歯１ａ及びアウタ歯３ａとの間の隙間（バックラッシュ）を吸収している と共に、スリーブ３の端面３ｂとリテーナ５の内端面５ａ間の隙間を吸収してい る。

【００１５】 前記摩擦低減手段２０のスラスト軸受２１は、図１に示すようにスラストレー ス２２とフランジ部７ｂとの間に介装され、内周側基部がボルト頭部７ａに固定 されたインナレース２１ａと、該インナレース２１ａの外周側に一体に有するア ウタレース２１ｂと、該インナ，アウタレース２１ａ，２１ｂとの間に有する支 持孔２１ｃ内に回転自在に支持された複数のローラ２１ｄ…とから構成されてい る。この複数のローラ２１ｄ…は、両側縁がスラストレース２２の他側面２２ｂ とフランジ部７ｂの内端面７ｃに線接触状態に当接してカムシャフト２の周方向 へ転動するようになっている。前記スラストレース２２は、内周部がボルト頭部 ７ａに回転自在に支持されている。尚、図中１７はスリーブ３の外端縁とフラン ジ部７ｂとの間に介装された円環状の座金である。

【００１６】 次に、この実施例の作用について説明する。まず、機関低負荷時には、電磁弁 １４にＯＦＦ信号が出力されて油圧通路１３から高圧室１６への高圧油の流入が 遮断される。このため、カムシャフト２の変動トルクが正になったとき、前側の 歯車構成部４ａはスラスト分力により機関前端方向（矢印Ｘ方向）へ移動しよう とするが、タイミングプーリ１の内端縁に規制されて移動不可能である。一方、 カムシャフト２に負のトルクが発生すると後側の歯車構成部４ｂがスプリング９ ａのばね力との合成力によって機関後端方向（矢印Ｙ方向）へ移動しようとする が、圧縮スプリング１１のばね力によって図示の位置つまり内端縁に規制された 最大前方向位置に付勢される。したがって、カムシャフト２は、タイミングプー リ１に対して一方向に相対回動位置に保持され、例えば吸気バルブの閉時期を遅 れ側に制御する。

【００１７】 また、低負荷域から高負荷域に変化すると、電磁弁１４がＯＦＦからＯＮに切 り換わり油圧通路１３を介して高圧室１６に圧油が導入される。このため、筒状 歯車４は、圧縮スプリング１１のばね力に抗して機関後端方向（矢印Ｙ方向）に 移動する。これにより、カムシャフト２は、タイミングプーリ１に対して該タイ ミングプーリ１の回転方向へ相対回動し、吸気バルブの閉時期を進み側に制御す る。

【００１８】 ここで、タイミングプー１とカムシャフト２は、前述のようにコイルスプリン グ８のばね力で互いに軸方向の反対方向へ付勢されて、各歯１ａ，３ａ，４ｃ， ４ｄ間のバックラッシが吸収されていると共に、スリーブ３とリテーナ５間の隙 間も吸収されているため、前記筒状歯車４の軸方向への移動切り換え時における 各歯１ａ，３ａ，４ｃ，４ｄ間、並びにスリーブ３とリテーナ５の干渉が抑制さ れ、該干渉による打音の発生が防止される。

【００１９】 また、コイルスプリング８によってタイミングプーリ１とスリーブ３とが軸方 向にばね荷重を受けるが、タイミングプーリ１とカムシャフト２との相対回動時 にスラスト軸受２１が周方向へ正逆自由に回転してタイミングプーリ１とボルト ７つまりカムシャフト２との回動摩擦抵抗が十分に低減される。したがって、前 記タイミングプーリ１とカムシャフト２との相対回動が円滑になると共に、が相 対回動位相変換の応答性が向上する。

【００２０】 更に、本実施例では、装置の組み立て時に、前記スラスト軸受２１やスラスト レース２２をボルト７の頭部７ａに装着した後に、コイルスプリング８を装着す るため、その組立作業が容易になり、作業能率の低下が防止される。

【００２１】 本考案は、前記実施例に限定されず、摩擦低減手段２０をカバー板６側に設け ることも可能であり、また、該摩擦低減手段２０を表面をフッ素処理した円環状 のプレートなどによって形成することも可能であり、このようにすれば、構造が 簡素化され、製造作業性やコストの点で有利となる。また、弾性部材は、コイル スプリングばかりか皿ばね等であってもよい。

【００２２】 更に、本装置は、排気バルブ側あるいは吸・排気バルブ側の両方に適用するこ とも可能である。

【００２３】

【考案の効果】

以上の説明で明らかなように、本考案に係る内燃機関のバルブタイミング制御 装置によれば、とりわけ回転体のカバー板とカムシャフト端部との間に弾性部材 を介装すると共に、弾性部材の端部と、該端部が弾着するカバー板の端面あるい はカムシャフト端部との間に摩擦低減手段を介装したため、回転体とカムシャフ トの相対回動位相の変換時における前記両者と筒状歯車との干渉が抑制され、打 音の発生が防止されることは勿論のこと、前記回転体とカムシャフトとの相対回 動位相変換の応答性が良好となり、バルブタイミング制御精度が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】図２のＡ部拡大図。

【図２】本考案の一実施例を示す縦断面図。

【図３】従来のバルブタイミング制御装置を示す縦断面
図。

【符号の説明】

１…タイミングプーリ（回転体）、２…カムシャフト、
２ａ…一端部、４…筒状歯車、６…カバー板、６ａ…内
端面、８…コイルスプリング（弾性部材）、２０…摩擦
低減手段。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】 機関により駆動される回転体とカムシャ
   フトとの相対回動位相を、該両者間に介装された筒状歯
   車のカムシャフト軸方向の移動により変換させると共
   に、前記回転体の一端開口を閉塞するカバー板とカムシ
   ャフト端部との間に装着された弾性部材によって前記両
   者を反対軸方向に押圧したバルブタイミング制御装置に
   おいて、前記弾性部材の端部と、該端部が弾着する前記
   カバー板の端面あるいはカムシャフト端部との間に摩擦
   低減手段を介装したことを特徴とする内燃機関のバルブ
   タイミング制御装置。