JPH037379B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜産業上の利用分野＞ 本発明は膝屈曲角度の設定と所定屈曲角度以上
であぐら振りが自在となる骨格義足における膝関
節に関するものである。

＜従来の技術＞ 近時、義足の発展も著しく、外観は健常肢と同
様な形状を呈すウレタンホーム等の外装部材を配
す所謂骨格義足（モジユラー義足）が主流を占め
るに至つている。この場合、第一に問題となる点
は、膝関節機構である。即ち、現在一般に用いら
れている義足の膝関節としては、遊動型、固定
型、セフテイー型等が挙げられるが、これ等は歩
容は円滑だが馴れないと膝折れを招いたり、棒状
態で安定性は高いが歩容姿勢が悪かつたり、体重
によりブレーキのきき具合が左右されたりする。

例えば、特公昭52−46432号公報の膝関節は、
ブレーキの一方の連結部分が関節軸自体からな
り、他方の連結部分が関節軸を取巻くスリツト付
軸クランプからなり、該軸クランプの下方の脚部
が関節上部分に旋回軸を介し関着の旋回レバーを
形成し、上方の脚部が自由に運動可能な締付レバ
ーを形成し、この締付レバーの上に関節上部分が
支えられるセフテイー構成である。この場合、直
接のブレーキ構造は割ドラムを呈し、自重により
スリツト間隙を狭めるものである。

＜発明が解決しようとする問題点＞ 即ち、自重による締付機構（ブレーキ方式）で
は、体重（自重）の軽い人にあつてはブレーキが
働かず、重い人には喰い込みすぎブレーキリリー
スが遅く、歩行時にけつまずく危険性を有し、円
滑、確実な膝関節とならない。勿論、この膝関節
には歩行時の膝の折曲げ角の調整手段はない。ま
た、このタイプは一軸方式のため、完全な二つ折
曲げ（180゜屈曲）ができず、和式座り（正座）は
不可能で、且つあぐらを組む等の横振りもできな
い。

本発明は上記実情に鑑み、二つ折り可能な二軸
型関節主体とすると共に、関節上部と関節下部間
に介在するリンク駒体で歩行時の屈曲角度の調整
をし、且つ該リンク駒体の所定角度以上の回動が
関節上部側の取付台座が回動しあぐら振りが可能
な骨格義足における膝関節を提供することを目的
としたものである。

＜問題点を解決するための手段＞ 本発明は、関節上部端と関節下部端に設けた互
いに噛合する歯車部及び、該歯車部位置に配す双
方の関節軸に支承するリンク駒体とで形成した二
軸型関節主体と、前記リンク駒体の端面に接触自
在とした制動駒体及び、該制動駒体に配す位置決
め用操作軸よりなる屈曲角度設定手段と、前記リ
ンク駒体と下部に常時突上げる弾撥機構を配す屈
曲助長兼屈曲戻し手段と、前記リンク駒体が所定
角度以上に回動したとき、該リンク駒体に起因し
て関節上部側取付台座の係止を自動的に外し該取
付台座を回転自在とするあぐら振り手段とを備え
たものである。

＜作用＞ 上記のような構成のため、先ず膝関節の屈曲を
零とし棒状として歩行したいときは、関節下部側
に横貫通せる操作軸の押しボタンのレバー部を回
動し、該操作軸に一体となる制動駒体の緩衝受部
材を、起立せる関節主体のリンク駒体の前端面に
接触位置とすれば、該リンク駒体は横倒（後方回
動）できず、関節上部端と関節下部端の歯車部の
噛合転動もなく棒状関節を保ち、初期の切断者の
歩行に適するものとなる。次に、適宜の膝屈曲
（半遊動）をもたせ円滑な歩容を得るには、操作
軸を押し込み該操作軸端のフエースラチエツトの
係合を外し乍ら少し回動し、制動駒体の緩衝受部
材とリンク駒体の前端面間に適宜の間隙を設けれ
ば、その間隙分だけリンク駒体が横倒し関節が適
宜角度屈曲する。但し、歩行時にはリンク駒体は
下部の常時突上げられる作動アームの枢着点が、
上下の関節軸の軸線上の外側に位置し絶えず戻し
作用を与えているため、歩行の遊脚相時に屈曲が
自動的に戻るものとなる。

また、正座の如き膝屈曲を二つ折り状とするに
当つては、操作軸の押しボタンのレバー部をフリ
ー位置とし、この状態で下肢側を順次回動し二つ
折り（180゜屈曲）とすればよい。この時、当然リ
ンク駒体も横倒するが、該リンク駒体が所定角度
に回動すると、この突出カム部が関節上部側に臨
んだ係止ピン部を取付台座内へ後退させるため、
該取付台座は関節上部内にあつて回動自在とな
る。即ち、膝屈曲が所定角度以上となれば取付台
座と関節上部の固定が自動的に外れ、あぐらを組
む等の如きに下肢の横振りも自在となる。また、
リンク駒体が所定角度以上に回動すると作動アー
ムの枢着点が、上下の関節軸の軸線上より内側に
位置し弾撥による突上げ作用が働くため、屈曲し
だした関節が確実に二つ折曲（180゜屈曲）強制と
する。

＜実施例＞ 以下、本発明を実施例の図面に基づいて詳述す
れば、次の通りである。

１は頂部にソケツト用取付台座２を回動自在に
嵌合設置してなる関節上部で、該関節上部１の下
端後縁に突設の両膨出脚部１ａの内側に配す歯車
部３に、関節下部４の上端後部に突設の両膨出脚
部４ａの内側に配す歯車部３′を噛合させると共
に、該歯車部３，３′の各中心位置に横挿通する
関節軸５，６を、この対向せる歯車部３，３，
３′，３′間となる連結溝部１ｂ，４ｂに嵌合の締
付型リンク駒体７の上下の軸孔８，９を挿通して
連結し、全体として二軸型関節主体１０とする。
この場合、リンク駒体７は中央にスリツト１１を
もち直交横挿通の締付ボルト１２の締付けで、
上、下関節軸５，６を固定すると共に、該リンク
駒体７の外側肩部に突設形成した突出カム部１３
を、該リンク駒体７及び関節上部１の回動に伴
い、該関節上部１の案内溝１ｃに突出係合の取付
台座２側に組込んだスプリング１４と係止ピン１
５よりなるクリツク機構１６を押圧する如くして
なり、該クリツク機構１６と突出カム部１３にて
あぐら振り手段１７となる。また、リンク駒体７
の下端には弾撥伝達用作動アーム１８の上端を枢
着し、該作動アーム１８の弯曲下端に形成した玉
受座部１８ａに、関節下部４の下肢接続部４ｃ内
に取付けた支持筒１９にセツトのスプリング製弾
撥機構２０の上端に配す摺動駒２１の鋼球２２を
当接し屈曲助長兼屈曲戻し手段２３となる。この
場合、作動アーム１８の枢着点ａは、膝屈曲角度
零（棒状態）にあつて上、下関節軸５，６の軸線
ｂより外側に位置してなる（第４図参照）。２４
は関節下部４の中央溝内に設置した制動駒体で、
該制動駒体２４に繰出自在に組込んだ硬質合成樹
脂製緩衝受部材２５を、前記リンク駒体７の前端
面７ａとなる接衝面２６に回動で接触自在となり
屈曲角度設定手段２７とする。この場合、制動駒
体２４は関節下部４に横貫通の操作軸２８に固定
され、該操作軸２８端の押しボタン２９の操作レ
バー部２９ａの廻しで制動駒体２４が回動するも
のとなる。尚、操作レバー部２９ａの屈曲角度設
定の回転に当つては、該押しボタン２９を結合用
スプリング３０に抗して押し込み操作軸２８をス
ライドさせ、該操作軸２８の他端に設けたフエー
スラチエツト３１を関節下部４の側壁に設けたフ
エースラチエツト３１′の係合を解き、適宜回動
すればよい。また、この操作レバー部２９のフエ
ースラチエツト３１′端には位置規制爪３２を一
体とし、関節下部４側の受け片３３に、必要以上
に回動したときに当接し、反復の操作レバー部２
９ａのセツトに当つても常時一定屈曲角度を保つ
機構となる。３４は関節上部１の下面位置に差渡
した支持板３５に取付いてなる硬質合成樹脂製緩
衝片で、該緩衝片３４はリンク駒体７の上部に接
衝自在とし関節上部１が戻り関節下部４上にきた
ときの接衝音防止機構となる。

次に、この作用を説明すると、先ず上記の構成
をもつてなる膝関節３６の使用に際し、関節上部
１上の取付台座２の中央に大腿ソケツト３７のソ
ケツトアダプター３８を取付け、関節下部４の下
肢接続筒部４ｃに下肢骨格パイプ３９を設け、且
つ外周囲にウレタン製外装部材４０を配する。ま
た、このとき関節上部１と関節下部４の屈曲側に
は外装喰い込み防止用ガード部材４１をその中間
に設置するものである。

ここにおいて、所定の断端を大腿ソケツト３７
に嵌めて歩行すればよい。この場合、切断初期の
如きに膝折れを好まないときは（膝折れ歩行が恐
ろしい）、膝屈曲角度を零とする。このセツトは、
押しボタン２９を一旦操作軸２８の軸方向へスプ
リング３０に抗して押込み、他端に有するフエー
スラチエツト３１を固定となるフエースラチエツ
ト３１′に対する噛合を外し乍ら操作レバー部２
９ａを回動すれば（例えば、45゜）、該操作レバー
部２９ａの操作軸２８と一体の制動駒体２４が回
動し、この周面に突出の緩衝受部材２５が起立状
となる隣りのリンク駒体７の接衝面２６に圧接
し、該リンク駒体７の回動を規制する。従つて、
リンク駒体７は横倒することなく不動で、これに
伴い上下の関節軸５，６を挿通の関節上部１及び
関節下部４の屈曲をみない。勿論、互いに噛合の
歯車部３，３′の転動もなく、膝が実質的に棒状
を呈する（第２図参照）。

次に、歩行に際し膝を少し屈曲したい場合は、
操作レバー部２９ａを前記同様に操作して制動駒
体２４の緩衝受部材２８の位置を少し上方へ回動
し接衝面２６間に間隙ｃを設ける（第４図参照）。
この状態にて歩行を始め関節上部１を屈曲させて
行けば、歯車部３が固定側（着地条件下にあつ
て）となる関節下部４の歯車部３′に対し噛合転
動をみると共に、関節軸５に一体のリンク駒体７
も下部の関節軸６を基点として外方へ回動（横
倒）して行くものである。このリンク駒体７が適
宜角度回動し接衝面２６が制動駒体２４の緩衝受
部材２６に接衝した位置で回動は停止する（第５
図参照）。即ち、このリンク駒体７が回動した角
度が関節上部１の開きとなり膝屈曲角度αとな
る。このとき（一般歩行時）、リンク駒体７の下
端の作動アーム１８の枢着点ａは、また関節軸６
の垂直軸線ｂよりも外方に位置しており、従つて
該リンク駒体７には下方の弾撥機構２０よりの突
き上げにて戻りのテコ作用が働くものである。こ
のことは、所定の膝屈曲をもつて歩行した場合、
遊脚相の如きに下肢が浮くと自動的に棒状に戻る
機構となり、踵よりの着地ができ円滑な歩容を得
るものである。勿論、一旦セツトした操作レバー
部２９ａの位置は、操作軸２８が一端のフエース
ラチエツト３１と固定フエースラチエツト３１′
の係合のために不動となる。

また、正座或いはあぐらを組みたく膝を二つ折
り（180゜屈曲）としたい場合は、押しボタン２９
を押込み操作軸２８端のフエースラチエツト３１
と固定のフエースラチエツト３１′の係合を解い
た状態で膝を折れば、このときリンク駒体７が回
動すると共に、該リンク駒体７に接している制動
駒体２４は摩擦により反転する（但し、セツト位
置にあつては、緩衝受部材２５は関節軸６の横軸
線上より下方に位置する）。

また、必要にあつては緩衝受部材２５の位置
を、リンク駒体７の回動に支障を来たさない位置
まで制動駒体２４を廻した所謂フリー位置として
もよい。

ここにおいて、関節上部１が90゜屈曲した位置
ぐらいとなると、リンク駒体７の後方肩部に突設
してなる突出カム部１３が関節上部１の連結溝部
１ｂ位置の案内溝１ｃに進入し、該案内溝１ｃ内
に突出してなる関節上部１内の取付台座２のクリ
ツク機構１６となる係止ピン１５をスプリング１
４に抗して押戻すため、該関節上部１の嵌合溝１
ｄに嵌まつた取付台座２の固定が解ける。即ち、
膝関節が90゜以上に回動すれば取付台座２は自動
的にフリー状態となるため、あぐらを組むとか単
なる脚組みする等にて下肢を横に振りたいとき、
下肢を横に振れば（第１１図参照）、取付台座２
は係止ピン１５が孔４２より後退しているため、
嵌合溝１ｄ面に滑り移り回転する。

一方、更に関節上部１を屈曲して行けば、リン
ク駒体７は横倒し該関節上部１は180゜屈曲とな
る。勿論、このリンク駒体７の横倒が始まり作動
アーム１８の枢着点ａが関節軸６の垂直軸線ｂの
内側へ移行すれば、該作動アーム１８に与える弾
撥の突上げ力は、更にリンク駒体７を横倒させる
テコ作用として働くため、所定以上の屈曲では急
に戻り作動を受けることはなく、円滑に二つ折り
となり得る。

また、関節上部１が180゜屈曲したきには、リン
ク駒体７の後端面７ｂに設けた係止段部４４が関
節上部１の連結溝部１ｂの後縁４５に当接し、そ
れ以上の回動をみない。

尚、長期使用において、関節上部１と関節下部
４の歯車部３，３′が互いに摩滅しガタを生じた
場合は、関節軸５，６中、一方の軸本体を偏心胴
部４３としてなるため、該偏心胴部４３のセツト
位置を少し回動すればよい。また、この歯車部
３，３′は、膨出脚部１ａ，４ａの内側に形成し
てなるため、膝屈曲運動に当つて外装部材４０の
喰い込みもなく、円滑な噛合転動を得る。

＜発明の効果＞ 上述のように本発明の骨格義足における膝関節
は、関節上部と関節下部の一端を互いに噛合する
歯車接合と、夫々に挿通の関節軸にリンク駒体を
介在し、且つ該リンク駒体を弾撥により下方より
突上げとすると共に、該リンク駒体の側面に方よ
り操作する押しボタンに一体の制動駒体の緩衝受
部材を圧接自在とし、また該リンク駒体の上部に
突設の突出カム部と関節上部に嵌めた取付台座の
クリツク機構の組合となる構成としたことによ
り、リンク駒体の緩衝受部材のセツト状態によつ
て膝屈曲角度零（リンク駒体に予め緩衝受部材を
接触させる）から所望の屈曲角度（リンク駒体と
緩衝受部材に間隙を配す）を自在に取り得る。し
かも、この場合リンク駒体には弾撥による戻し作
用が働いているため、円滑な歩行動が行ない得
る。即ち、本発明の膝関節を用いれば、切断患者
の初期の歩行練習の如きに棒脚状態でないとこわ
い場合の膝屈曲角度零（棒状）から、馴れるに従
い屈曲角度を付ける半遊動等の操作が患者自身の
手動扱い（押ボタンの位置決め）にて簡単に行な
えることは勿論のこと、速く歩きたいときの歩幅
の設定とか（角度が小さければ速歩きができる）、
階段を昇るとき、危険じやない屈曲角度の設定と
か、段階を下りるとき、膝が曲ることがこわいた
めの固定等が現場において行なえる。更に、本発
明で良い点は、関節上部（先端からみれば関節下
部）が正座するために約90゜以上屈曲すれば、リ
ンク駒体の突出カム部で関節上部の取付台座の係
止ピンの係止を自動的に外すため、該取付台座が
回動自在となり支肢の横振りができ、あぐら組み
とか、横座りも即可能となる。勿論、二軸型であ
るため、二つ折り（180゜屈曲）となる正座もでき
る。また、この膝関節は二軸型でリンク駒体及び
互いに噛合する歯車部の関節構成のため、円滑に
屈曲すると共に、確実な荷重受けとなり、堅牢で
長期使用に耐える。しかも、屈曲動に当つての戻
りにはリンク駒体の上基部に関節上部側の緩衝片
が直接当る構成のため、義足で問題となる起立時
の不快音も一層し得、且つ制動駒体の緩衝受部材
はリンク駒体側へ繰出し自在となつているため、
該緩衝受部材の繰り出し調整にても屈曲角度の微
調整が可能となる等の効果を奏する。尚、弾撥機
構は、図示にあつてスプリングを示したが、エア
ー、油圧等のシリンダーでもよいことは勿論であ
る。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例を示すもので、第１図は
正面図、第２図は要部縦断側面図、第３図は分離
した斜面図、第４図、第５図は歩行状態となる膝
屈曲の説明図、第６図、第７図は180゜屈曲の説明
図、第８図Ａ，Ｂは操作軸部の作動状態の説明
図、第９図は関節上部の底面図、第１０図は使用
状態の側面図、第１１図はあぐら組み用となる横
振り状態の説明図である。 １……関節上部、２……取付台座、３，３′…
…歯車部、４……関節下部、５，６……関節軸、
７……リンク駒体、１０……二軸型関節主体、１
４……スプリング、１５……係止ピン、１６……
クリツク機構、１７……あぐら振り手段、１８…
…作動アーム、２０……弾撥機構、２３……屈曲
助長兼屈曲戻し手段、２４……制動駒体、２５…
…緩衝受部材、２６……接衝面、２７……屈曲角
度設定手段、２８……操作軸、２９……押しボタ
ン、２９ａ……操作レバー部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 関節上部端と関節下部端に設けた互いに噛合
   する歯車部及び、該歯車部位置に配す双方の関節
   軸に支承するリンク駒体とで形成した二軸型関節
   主体と、前記リンク駒体の端面に接触自在とした
   制動駒体及び、該制動駒体に配す位置決め用操作
   軸よりなる屈曲角度設定手段と、前記リンク駒体
   と下部に常時突上げる弾撥機構を配す屈曲助長兼
   屈曲戻し手段と、前記リンク駒体が所定角度以上
   に回動したとき、該リンク駒体に起因して関節上
   部側取付台座の係止を自動的に外し該取付台座を
   回転自在とするあぐら振り手段とを備えたことを
   特徴とする骨格義足における膝関節。 ２ あぐら振り手段が、リンク駒体に設けた突出
   カム部と、関節上部に嵌めた回動自在の取付台座
   側に埋設のスプリング付係止ピン部が関節上部に
   臨むクリツク機構よりなる特許請求の範囲第１項
   記載の骨格義足における膝関節。 ３ 制動駒体が、繰出し自在の緩衝受部材付制動
   駒体である特許請求の範囲の第１項記載の骨格義
   足における膝関節。