JPH0371545B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は建築物の鉄骨梁に吹き付けた石綿（ア
スベスト）を取り除く装置に関する。

（従来の技術） 石綿は天然の鉱物繊維で、耐火、耐熱性に優れ
防音効果も有るため、古くから建物の内装に広く
使われている。

しかし近年、その極細繊維を吸い込むと肺に突
き刺さつて肺ガンを引き起こすことが明らかにな
つてから、既に建物に使われてしまつている石綿
を撤去する作業が実施されるようになつた。

ところが撤去の際、石綿の粉塵が飛散するた
め、作業者の健康安全や環境保全を考慮して従来
の撤去作業は次のように手作業により慎重に行わ
れている。

先づ建物内部の床、壁及び配管やダクト類をす
べてビニールシートで養生する。

次に作業用の足場を組立て、この足場もビニー
ルシートで養生する。

そして作業開始前に集塵機を設置し、作業中は
終始作業域全域を集塵する。

作業員は全員防塵服と防塵マスク及び手袋を着
装し、ヘラ等を用いて鉄骨梁に付着した石綿を掻
き落す。その後、残留がないようにワイヤブラシ
でこすり落す。こうして石綿を建物の床へ落して
から、ほう木などで掃き集めビニール袋に詰め密
封し外に持ち出す。その後、床をぬれたモツプで
拭いて清掃し石綿が残留しないようにする。

作業員は作業域より入退出する際に、出入用更
衣室内で防塵服や防塵マスクを着脱する。

石綿除去後はビニールシートを撤収し処分し、
足場を解体する。

（発明が解決しようとする課題） このように従来は手作業によるため能率が悪い
ばかりでなく、鉄骨梁の石綿は高所の作業である
ため作業に熟練を要し、容易に除去し難く取り残
しが生じ易いという欠点があつた。また作業中、
周囲に石綿の粉塵が飛散浮遊するため作業環境が
悪く健康上の危険を伴い、また作業者は気密性の
高い防塵服を着衣するため発汗を生じ重労働とな
るという欠点もあつた。

本発明はこのような従来の手作業による欠点を
解消するもので、機械化により作業能率を向上す
ると共に、鉄骨梁より石綿の残留がないよう完全
に除去し、また石綿の飛散を防ぎ作業の安全性を
向上することを目的とする。

（課題を解決するための手段） 本発明は、回転式のワイヤブラシとその外側を
内外２重に覆う防塵用の内フードと外フード、及
びこの外フードの余分な開口部を遮閉する可動フ
ード、並びにこれらを搭載する移動台車から成り
立つ。

本発明の外フードは石綿が付着した鉄骨梁に対
向すべきフード正面と上面が開放した構造で、こ
の外フードの前面と後面には鉄骨梁のフランジを
摺動自在に挿入すべき複数条のフランジ挿入スリ
ツトを穿設する。

外フードの内側には鉄骨梁に接触すべき柔軟な
材質から成る内フードを連設し、これら内外両フ
ードの間に外気吸入用の間隙を形成する。

そして内フードの内部に回転式ワイヤブラシを
収容してそのブラシ回転軸を外フードに対し上下
動可能に架設する。

そして前記外フードに対し上下動可能に可動フ
ードを連結して、鉄骨梁より下方にのぞむべき外
フードの余分な正面開口部をこの可動フードによ
り遮閉する。

そして、本発明の前記外フードの底部排出口に
は集塵機を経て吸引排風機に至る吸引ダクトを接
続すると共に、これら内外フード、可動フード及
び回転式ワイヤブラシを移動台車に対し高さが調
節できるように搭載する構成である。

（作用） 本発明装置を使用するには、移動台車を石綿の
付着した鉄骨梁の下方に寄せて、外フードの正面
開放部を鉄骨梁のウエブにまたその上面開放部を
鉄骨梁の上部フランジの下面にそれぞれ対向させ
ると共に、外フードの前面と後面のフランジ挿入
スリツトのひとつに鉄骨梁の下部フランジを挿入
し、併せて内フードを鉄骨梁のフランジに接触さ
せる。

そして可動フードの位置を上下に調節してその
上辺を鉄骨梁の下面に接近させて、鉄骨梁より下
方にのぞむ外フードの余分な正面開放部を遮閉す
る。

この状態で、吸引器を運転しフード内部を吸引
排気しながらワイヤブラシを回転して鉄骨梁の石
綿をはぎ取る。はぎ取られた石綿は内フードには
ばまれ外部に飛散しないし、また内フードと外フ
ードの間の間隙より吸入する空気に流され外フー
ドの底部排出口より吸引ダクトを経て機外に排出
される。

このように石綿をはぎ取りながら移動台車を鉄
骨梁の長さ方向に沿つて前進し、鉄骨梁の端部ま
で到達したらワイヤブラシを上方または下方に移
動して移動台車を後退し、取り残した石綿を同様
にはぎ取る。こうして何回か前進後退を繰り返す
ことにより鉄骨梁に付着した石綿全部を除去す
る。

鉄骨梁はサイズによりウエブの巾やフランジの
長さが異なるが、可動フードの上下の位置を変更
し、また鉄骨梁の下部フランジを対応する位置の
フランジ挿入スリツトに挿入すれば、本発明装置
は異なるサイズの鉄骨梁も同様に使用できる。

（実施例） 次に本発明の実施例を図面に示して説明する。

１は前進後退自由な自走式の移動台車で、これ
に昇降自在なリフト２を介して基台３を設置す
る。

４は垂直なガイドフレーム４ａと水平なサドル
フレーム４ｂを一体的に連設して成る移動フレー
ムで、サドルフレーム４ｂには上下１組の遊転輪
５を数組備える。

そして、基台３の左右方向の帯板状の案内レー
ル６を設け、上下の遊転輪５の間にこの案内レー
ル６を挿通し、１組の遊転輪５で案内レール６を
挟むように移動フレーム４を基台３に対し左右方
向に移動可能に連結する。７は移動フレーム４を
案内レール６に沿つて移動するフレーム移動用油
圧シリンダである。

ガイドフレーム４ａの上部には、防塵用の外フ
ード８を固着する。外フード８は、鉄骨梁９に対
向すべき側面（第１図の右側面）と上面が開放し
た形状で、その前面及び後面には、鉄骨梁９の下
部フランジ９ａが摺動自在に挿入すべき３条のフ
ランジ挿入スリツト１０を形成する。

外フード８の内側には、鉄骨梁９に接触すべき
柔軟な内フード１１を連設する。鉄骨梁９に接触
すべき内フード１１の開口縁部は、軟質の合成樹
脂繊維製のブラシ１２にゴム製の帯板１３を重ね
合わせた構成で、鉄骨梁９の表面に押圧するとた
わんで表面に密着する構造にする。なお、ブラシ
１２の植毛密度が充分高い場合にはゴム製の帯板
１３は省略できる。

内フード１１は、外フード８の側面及び上面の
開放部口縁に沿つて止着すると共に、外フード８
との間に外気吸入用の間隙１４を形成する。ま
た、内フード１１においても、外フード８のフラ
ンジ挿入スリツト１０に相当する筒所に、鉄骨梁
９の下部フランジ９ａが挿入するためのスリツト
（図示しない）を形成する。

これらのフランジ挿入スリツト１０にはスリツ
ト１０の内側に向けブラシ１０ａを植設し、これ
によりスリツト１０を開閉自在に閉鎖する。

次に、１５は内フード１１の内部に収容した回
転式ワイヤブラシで、第９図に拡大して示すとお
り、水平のブラシ回転軸１６の先端にカツプ状に
形成した面ブラシ部１５ａを止着すると共に、こ
れに隣接して回転軸１６を中心に放射状に８本の
棒状ブラシ部１５ｂを配列し成る。このワイヤブ
ラシ１５の外径は、鉄骨梁９のウエブ９ｂの最小
の規格の巾に略等しいか少なくもこれを越えない
大きさである。

ブラシ回転軸１６の基端は、外フード８の機壁
に穿つ上下方向の通孔１７を摺動自在に貫いて、
外フード８の外側とのブラシ回転モータ１８に連
結する。そして、ガイドフレーム４ａの内側に２
条の平行な案内溝を形成し、ブラシ回転モータ１
８を支持する摺動板１９を両案内溝間に嵌合す
る。２１はガイドフレーム４ａに設置したブラシ
昇降用油圧シリンダで、その伸縮ロツドの先端を
摺動板１９の一端に連結する。

２２は外フード８の外周に設ける可動フード
で、これにより鉄骨梁９の下方にのぞむべき外フ
ード８の側面開放部を遮閉する。外フード８の外
壁にはフエルト製のシール材２３の上下方向に張
着し、これにより可動フード２２と外フード８間
の空間を、可動フード２２の高さに関係なくシー
ルする。

２４は、可動フード２２を外フード８に沿つて
昇降する可動フード用油圧シリンダである。２５
は可動フード２２に止着する摺動子で、外フード
８の外側に固定した上下方向の案内ポール２６に
摺動子２５を摺動自在に連結して、シリンダ２４
の伸長または縮小により摺動子２５を案内ポール
２６に沿わせながら可動フード２２を昇降する。

そして外フード８の底部に排出口を開口し、こ
れに吸引ダクト２７を接続すると共に、ダクト２
７の他端を移動台車１上の石綿回収用のドラム缶
２８に接続する。

ドラム缶２８の上部は、さらに吸引ダクト２７
により、集塵用のサイクロン２９、バツグフイル
タ３０及びプレフイルタ３１を経て吸引排風機３
２に接続する。

しかしてこの装置を使用するには、移動台車１
を石綿Ａが付着している鉄骨梁９の下方に近付
け、リフト２により基台３の高さを調節し、次に
フレーム移動用油圧シリンダ７を駆動して外フー
ド８を鉄骨梁９の側方より接近し、内フード１１
の開口縁部を鉄骨梁９に密着すると共に、鉄骨梁
９の下部フランジ９ａを第１図に示すとおり外フ
ード８の下段のスリツト１０に挿入する。

次に可動フード用油圧シリンダ２４を駆動して
可動フード２２を上昇し、その上面開口縁に備え
るブラシ２２ａを鉄骨梁９の下部フランジ９ａの
下面に密着する。

この状態でモータ１８を始動してワイヤブラシ
１５を回転しながら、移動台車１を鉄骨梁９の長
さ方向に沿つてその始端より前進し、鉄骨梁９の
ウエブ９ｂの上部表面と上部フランジ９ｃの下面
の石綿Ａをはぎ落とす。

次に鉄骨梁９の終端に到達したら、ブラシ昇降
用油圧シリンダ２１を駆動してブラシ回転軸１
６、モータ１８及びワイヤブラシ１５を少し下降
し、今度は移動台車１を後退しながら面ブラシ部
１５ａだけで鉄骨梁９のウエブ９ｂの中央部表面
の石綿Ａをはぎ落とす。そして鉄骨梁９の始端に
戻つたら、ブラシ昇降用油圧シリンダ２１を再び
駆動してワイヤブラシ１５をさらに下降し、移動
台車１を再度前進しながら鉄骨梁９のウエブ９ｂ
の下部表面と下部フランジ部９ａの上面に付着し
た石綿を取り除く（第１１図参照）。

ウエブ９ｂの巾がワイヤブラシ１５の外径と同
じ程度の狭い小型の鉄骨梁においては、ワイヤブ
ラシ１５を鉄骨梁に沿つて１回移動するだけで足
りることはいまでもない。

なお下部フランジ部下面の石綿は別途除去す
る。

ワイヤブラシ１５による石綿除去作業中、吸引
器３２を運転して外気を内外のフード８，１１間
の間隙１４より吸引し、飛散する石綿の粉末を内
フード１１に衝突させて外部へもれ出るのを防止
すると共に、この粉末を空気流に乗せて外フード
８の底部排出口より吸引ダクト２７を経て排出
し、ドラム缶２８に回収する。間隙１３を流れる
空気流の速さは、風速５ｍ／秒以上が好ましい。

排出空気は、ドラム缶２８よりサイクロン２
９、バツグフイルタ３０、及びプレフイルタ３１
を経て次第に瀘過され、石綿の微粉末を取り除い
たのち外部へ放出する。

移動台車１の走行中、フレーム移動用油圧シリ
ンダ７を操作して内外フード８，１１の左右方向
の位置を調節し、これにより鉄骨梁９と内フード
１１の間に隙間が生ずるのを防ぐと共にワイヤブ
ラシ１５を鉄骨梁９に押し付ける。

こうして鉄骨梁９に付着する石綿を除去するの
であるが、一般に一戸の建物にはサイズの違う数
種の鉄骨梁９が使用されているので、サイズが相
違する場合には基台３の高さを調節し外フード８
を鉄骨梁９に合わせると共に、さらに可動フード
２２の上下の位置を鉄骨梁９の巾に合わせて調節
する。

第１２及び１３図は、この調節操作の説明図で
ある。第１２図のようにウエブの広い大型の鉄骨
梁の場合には可動フード２２を下げ、第１３図の
ようにウエブの狭い小型の鉄骨梁の場合には可動
フード２２を上げる。外フード８には、その上面
開口部を鉄骨梁の上部フランジとデツキプレート
に接触させたとき、各種の鉄骨梁の寸法に対応す
る高さにスリツト１０を複数条穿設してあるの
で、そのうちの高さの一致したスリツトを選択し
て挿入する。

外フード８は、スリツト１０の位置の異なるも
のを複数用意し、鉄骨梁のサイズに応じて交換し
てもよい。

可動フード２２は、外フード８の余分な側面開
放部と同じ面積の平板でもよい。

ワイヤブラシ１５は、鉄骨梁やデツキプレート
の形状に合わせて表面を凹凸に形成してもよい。

移動台車１は遠隔操縦可能にするとなおよい。

（発明の効果） これを要するに本発明によれば、移動台車にワ
イヤブラシを設置し動力で石綿を除去するので、
従来のヘラ等を用いる手作業に比較して能率が格
段に向上し省力化が図れる。

また、ワイヤブラシの外周を内フードと外フー
ドにより２重に覆い、両フードの内部を吸引排気
するので、石綿の微粉末が外部にもれ出て周辺の
環境を汚染する慮れがなく、作業性が向上する。

加えて、外フードの前面及び後面には各種サイ
ズの鉄骨梁に合わせて複数条のフランジ挿入スリ
ツトを穿設すると共に、可動フードにより鉄骨梁
より下方にのぞむ外フードの余分な側面開放部を
遮閉するので、鉄骨梁のサイズが相違してもその
フランジが外フードのいづれかのスリツトに挿入
でき、さらに可動フードを上昇または下降すれば
常に外フードの側面開放部を遮閉できる。このた
め各種サイズの鉄骨梁の石綿を１台の装置で支障
なく除去できるという効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明を実施した石綿除去装置の立面
図、第２図は第１図の左側面図、第３図は第１図
の装置に吸引排風機を接続した状態の石綿除去シ
ステム全体の説明図、第４図は第１図の要部を拡
大して示す横断面図、第５図はその縦断面図、第
６図は本発明装置における内外フード説明用の斜
視図、第７図は内フードの要部拡大断面図、第８
図は外フードの要部拡大正面図、第９図はワイヤ
ブラシの斜視図、第１０図は石綿が付着した鉄骨
梁の断面図、第１１図は本発明装置による石綿除
去作業の工程図、第１２図及び第１３図はそれぞ
れサイズの異なる鉄骨梁における作業説明図であ
る。 １は移動台車、２はリフト、３は基台、４は移
動フレーム、７は移動フレーム用油圧シリンダ、
８は外フード、９は鉄骨梁、９ａは鉄骨梁の下部
フランジ、１０はフランジ挿入スリツト、１１は
内フード、１４は間隙、１５はワイヤブラシ、１
８はブラシ回転モータ、２１はブラシ昇降用油圧
シリンダ、２２は可動フード、２４は可動フード
用油圧シリンダ、２７は吸引ダクト、３２は吸引
排風機。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 鉄骨梁に対向すべき側面と上面が開放した外
   フードを設け、この外フードの前面と後面には鉄
   骨梁のフランジ部を摺動自在に挿入すべき複数条
   のフランジ挿入スリツトを穿設し、 また、前記外フードの内側には鉄骨梁に接触す
   べき柔軟な内フードを連設し、これら内外両フー
   ド間に外気吸入用の間隙を形成すると共に、内フ
   ード内部に回転式ワイヤブラシを収容してそのブ
   ラシ回転軸を外フードに対し上下動可能に架設
   し、 さらに、前記外フードに対し上下動可能に可動
   フードを連結して鉄骨梁より下方にのぞむべき外
   フード側面開放部をこの可動フードにより遮閉
   し、 しかして、前記外フードの底部排出口に集塵機
   を経て吸引排風機に至る吸引ダクトを接続すると
   共に、これら内外フード、可動フード及びワイヤ
   ブラシを移動台車に対し高さ調節可能に搭載して
   成る鉄骨梁用石綿除去装置。