JPH0366150B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はステンレス板、アルミ板等の表面に仮
着させる表面保護シートに関する。更に詳しく
は、深絞り加工や多段絞り加工に適する表面保護
シートに関するものである。

〔従来技術〕

一般にステンレス板、アルミ板、カラー鋼板等
の表面保護用にポリ塩化ビニル、ポリエチレン、
ポリプロピレン等の可撓性プラスチツクフイルム
の片面に感圧性あるいは感熱性接着剤層を設けた
シートが使用されている。その中でポリ塩化ビニ
ル系の表面保護シートは保護性に優れ、輸送や保
管中の保護、絞り加工時の保護等に広範囲に用い
られている。ところで、ポリ塩化ビニルではシー
トにしたときに可撓性を付与するために可撓剤等
が添加されており、その可塑剤等が基材シートの
背面にブリードし、そのため金属面や塗装樹脂面
との絞り等に起因する深絞り加工性が悪いという
欠点があり、これを解決するために通常は基材シ
ートの背面にシリコーン樹脂やアクリル樹脂等の
薄膜を設ける方法が取られている（例えば、特公
昭51−14554号）。しかしながら、シリコーン樹脂
やアクリル樹脂等の薄膜を設けることにより、絞
り加工性が向上するのであるが、この薄膜が支持
フイルムから剥離脱落し、脱落した物質が表面保
護シートの他の部分に付着する。そのため絞り加
工時には押し込み用ピストンとの間に挟まりシー
トを押し破つたり、破らないまでもシートを通し
て被着体に傷つけるという欠点がある。

本発明者らはかかる問題を解決するため微粒状
無機充填剤を基材である塩化ビニル樹脂シートに
入れることを試み、良好な表面保護シートを得る
ことができた（特公昭56−69158号）が、まだ絞
り加工性が不充分である。

〔発明が解決しようとする課題〕

以上の点に鑑み、本発明は深絞り加工及び多段
絞り加工に適する表面保護シートを提供すること
を目的とする。

〔目的を解決するための手段〕

本発明者らは更に良好な滑り性等を付与し、深
絞り加工性及び多段絞り加工性に優れた表面保護
シートにつき鋭意検討し、メチレンビスステアロ
アミドの特定量を基材である塩化ビニル樹脂のシ
ートに含ませることにより絞り加工性が向上する
ことを見出し、遂に本発明を完成するに至つた。

即ち、本発明は塩化ビニル樹脂100重量部に対
しメチレンビスステアロアミド0.005〜８重量部
を含む塩化ビニル樹脂シートの片面に粘着層を設
けてなる表面保護シートである。

本発明に用いる塩化ビニル樹脂は塩化ビニルの
ポリマー及び塩化ビニルを主体とする他の塩化ビ
ニルと共重合可能なモノマーとの共重合体を含む
ものである。塩化ビニルと共重合可能なモノマー
としては酢酸ビニル等のビニルエステル類、エチ
レンビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチ
レン、プロピレン、１−ブテン等のα−オレフイ
ン類、メチルアクリレート、エチルアクリレー
ト、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレー
ト等のアクリレート類、塩化ビニリデンなどをあ
げることができる。これらの塩化ビニルを主体と
するモノマーは懸濁重合、乳化重合、塊状重合、
溶液重合等の公知の重合方法で重合され、本発明
の塩化ビニル樹脂として用いられる。もちろん、
これらの重合物の混合物でもかまわない。

本発明では上記塩化ビニル樹脂100重量部に対
し、ジオクチルフタレート等の可塑剤を10〜60重
量部添加し、必要により安定剤、粒滴剤、滑剤、
着色剤、顔料、紫外線吸収剤等の他の添加剤を加
え、カレンダー法、押出法等の公知の方法により
フイルムとされ、表面保護シートの基材シートと
されるのである。

本発明ではこのシートにメチレンビスステアロ
アミドを添加しておくことが重要であり、そうす
ることにより表面保護シートとしたときの絞り加
工性が格段に向上するのである。メチレンビスア
ミド系以外の滑剤では耐熱性が劣るため、基材樹
脂である塩化ビニル樹脂シートを、例えばカレン
ダー法等のより成形する際、滑剤が熱劣化し、そ
の劣化物が該シートの表面に浮き出し、被着体で
ある金属板を汚染する欠点がある。

熱劣化に伴い、フイルム中の液状安定剤、可塑
剤等がブリードし、そのために被着体を汚染させ
るばかりでなく、これらが絞り加工性を阻害し低
下させる結果となる。金属板の深絞り加工性及び
多段絞り加工性を向上させるためには、表面保護
シートに良好な滑り性を付与する必要があるが、
メチレンビスアミド系滑剤の内でメチレンビスス
テアロアミドが最も滑り性が優れている事を見出
し、本願発明の目的を達成した。

メチレンビスステアロアミドの添加量は塩化ビ
ニル樹脂100重量部に対し0.005〜８重量部であ
り、好ましくは0.01〜５重量部、特に好ましくは
0.1〜１重量部である。0.005重量部未満では絞り
加工性が向上しない。又、８重量部を越して添加
すると浮き出し量が多くなり、被着体を汚染した
り、粘着剤層の表面に移染して粘着力の低下を引
き起こす原因となり好ましくない。

上記メチレンビスステアロアミドを含む塩化ビ
ニル樹脂シートの片面にアクリレート系粘着剤、
ゴム系粘着剤、ウレタン系粘着剤等の仮着性粘着
剤を塗布あるいはラミネートして、本発明の表面
保護シートとされる。なお、基材シート及び粘着
剤の厚みは目的により決定される。

本発明の表面保護シートは基材シートにメチレ
ンビスステアロアミドが添加されているので、基
材シートの表面に適正に浮き出し、深絞り加工や
多段絞り加工で金型がスムーズに滑り、従来問題
であつた表面保護シートの破れや背面処理剤の剥
離による被着体の汚染や絞り加工で傷をつけると
いう問題が解決される。

以下、実施例により本発明を説明する。

実施例 １ 塩化ビニル樹脂100重量部、ジオクチルフタレ
ート30重量部、カルシウムステアレート１重量
部、バリウムステアレート１重量部及びメチレン
ビスステアロアミド0.2重量部を混合し、カレン
ダー法で厚み70μｍのシートを得た。このシート
の片面に、メチルメタクリレート31重量部、２−
エチルヘキシルアクリレート65重量部、グリシジ
ルメタクリレート２重量部及びメタクリル酸２重
量部を水150重量部中で乳化重合して得たアクリ
ルエマルジヨンを塗布し、120℃で１分間乾燥し
て、厚み55μｍの粘着層を設けた表面保護シート
Ａを得た。

実施例 ２ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
の添加量を１重量部に増す他は実施例１と同様に
して表面保護シートＢを得た。

実施例 ３ 実施例１においてアクリルエマルジヨンとして
メチルメタクリレート21重量部、ｎ−ブチルアク
リレート75重量部、Ｎ−メチロールアクリルアミ
ド２重量部及びグリシジルメタクリレート２重量
部を水150重量部中で乳化重合して得られたもの
を用いる他は実施例１と同様にして表面保護シー
トＣを得た。

比較例 １ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
を用いない他は実施例１と同様にして表面保護シ
ートＤを得た。

比較例 ２ 比較例１においてアクリルエマルジヨンを塗布
乾燥する前に、アクリルエマルジヨンを塗布しな
い側にあらかじめジメチルシロキサン20重量部と
無水酢酸１重量部をトルエン100重量部に溶かし
た溶液を塗布し、150℃で２分間加熱して厚み
0.5μｍの背面処理層を設ける。その後、比較例１
と同様にして表面保護シートＥを得た。

比較例 ３ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
の代わりに平均粒径5μｍのシリカ微粉末を0.5重
量部用いる他は実施例１と同様にして表面保護シ
ートＦを得た。

比較例 ４ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
の代わりにエチレンビスステアロアミド0.2重量
部を用いる他は実施例１と同様にして表面保護シ
ートＧを得た。

比較例 ５ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
の代わりにベヘニン酸アミド0.2重量部を用いる
他は実施例１と同様にして表面保護シートＨを得
た。

比較例 ６ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
の代わりにメチレンビスステアロベヘンアミド
（商標“スリパツクスKN”日本化成(株)製）用い
る他は実施例１と同様にして表面保護シート１を
得た。

比較例 ７ 実施例１においてメチレンビスステアロアミド
の添加量を９重量部に増す他は実施例１と同様に
して表面保護シートＪを得た。

これらの表面保護シートの静摩擦係数を第１表
に、更に荷重１Kg／cm²の際の繰返し静摩擦係数を
第２表に示す。また、第１図に示すエレクセン試
験機を用いた絞り加工テストと被着体の汚染を目
視にて評価した結果を第３表に示した。

なお、上記各試験は下記に示す通りである。

() 静摩擦係数 東洋精機(株)製の摩擦角測定器を用いて測定し
た。〔測定法〕表面保護シートを貼着した平面
上に表面保護シートを貼着した平面底を有した
荷重体を表面保護シートの背面同士が互いに接
するように置き、徐々に傾斜させて、該荷重体
が滑り始める角度即ち摩擦角θを測定する。こ
の摩擦角θよりモランの法則に従つて次式によ
り静摩擦係数μ₀を求める。

μ₀＝tanθ なお、本発明では荷重として10Kg／cm²、100
ｇ／cm²及び１Kg／cm²を用いた。

() 繰返し静摩擦係数 （）の静摩擦係数を測定したと同様にし
て、荷重１Kg／cm²の場合、同一試料を所定回数
測定する。

なお、初回は（）の静摩擦係数と同一にな
る。

() 絞り加工テスト エレクセン試験機（西ドイツ、コルトハウス
社製）に、ステンレススチール（SUS430）の
鏡面バフ仕上げ板（厚み0.6mm）に保護シート
を貼着したものをセツトし、絞り速度５mm／分
で絞り深さ16mmになるまで絞り加工を行う。そ
の結果の表面保護シートの状態及びステンレス
加工面の状態を目視により判定する。

なお、本試験機の絞り加工テスト部の断面図
を第１図に示す。ステンレス板１に表面保護シ
ート２を貼り合せた試料を外筒３にはさみ、ブ
ランジヤー４により試料を絞り加工する。な
お、各部位の大きさは図中に示してある。

〔発明の効果〕

第１表にみられる用に、本発明の表面保護シー
トの表面滑性は良好なものである。

第２表に見られるように、本発明の表面保護シ
ートでは繰返し静摩擦係数がほとんど増加せず、
多段絞り加工に適するものであることがわかる。

第３表に見られるように、本発明の表面保護シ
ートは破れ、剥れ又は浮きも発生せず、かつ被保
護面にも傷が生じない良好なものであることがわ
かる。

【図面の簡単な説明】

第１図は絞り加工試験に用いたエレクセン試験
機の絞り加工テスト部の断面図である。

【表】

【表】

【表】

【表】 場合を有とした。
注2) 被着体の光沢が若干低下した。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 塩化ビニル樹脂100重量部に対し、メチレン
   ビスステアロアミド0.005〜８重量部を含む塩化
   ビニル樹脂シートの片面に粘着剤層を設けてなる
   表面保護シート。