JP2016141725A - 粘着テープ - Google Patents

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Yusuke MIYATAKE
祐介 宮武
宮崎 健太郎
Kentaro Miyazaki
健太郎 宮崎
田矢 直紀
Naoki Taya
直紀 田矢
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Abstract

【課題】被着体に対する貼付性を適切に確保しつつ、粘着テープから被着体への移行成分の量を低減させることが可能な粘着テープを提供する。
【解決手段】基材と、基材の一方の面上に設けられた粘着剤層とを備えた粘着テープであって、粘着剤層は、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成されたものであって、粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量が100ppm以下である粘着テープ。
【選択図】なし

Description

本発明は、粘着テープに関し、詳しくは、食品や医療分野など、品質および管理体制の高さが求められる分野において使用されることが好適な、被着体への移行成分量が低減された粘着テープに関するものである。なお、本明細書において、「テープ」の概念は、「シート」および「フィルム」の概念を包含するものとする。
粘着テープは様々な用途に使用されるが、単に被着体に対する粘着性が高いことだけでなく、被着体から粘着テープを剥離させた際に、粘着テープの粘着剤層を構成する物質が被着体に残留する、いわゆる糊残りが生じにくいことが求められる場合がある。
そのような糊残り少ない粘着テープを提供することを目的として、特許文献1には、基材と前記基材の少なくとも片面に形成された粘着剤層とを含む粘着テープであって、前記粘着剤層が、(A)(a)アルキル基の炭素数が5〜12の(メタ)アクリル酸アルキルエステル83〜99重量%、(b)カルボキシル基含有単量体1.0〜3.0重量%(c)その他重合可能な単量体0〜15重量%を含有する単量体混合物を重合することにより得られる(メタ)アクリル系共重合体100重量部、(B)粘着付与樹脂Bとして重合ロジン系樹脂0.5〜15重量部、(C)可塑剤としてポリエステル系化合物を1〜15重量部、及び(D)硬化剤としてカルボジイミド系化合物2.0〜5.0重量部含有する粘着剤組成物を塗工してなるものである、粘着テープが記載されている。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸およびメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語についても同様である。
特開2014−224208号公報
特許文献1に記載される粘着テープは、塗装作業の際の養生テープ、荷物運搬作業時に壁等にビニールシートを固定するためのテープなどとして好適に使用することができるとされている。しかしながら、食品や医療分野など、品質および管理体制の高さが求められる分野では、被着体の汚染を抑制したり、被着体から粘着テープを剥離した際に粘着剤層を構成する成分が被着体に残留しにくくしたりすることができるように、粘着剤層から被着体への移行成分量を100ppm程度以下に低減することが求められる場合があり、このような要請に対して、特許文献1に記載される粘着テープでは、被着体に対する貼付性を適切に確保しつつ応えることが困難である。
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、被着体に対する貼付性を適切に確保しつつ、粘着テープから被着体への移行成分量を低減させることが可能な粘着テープを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために提供される本発明は次のとおりである。
(1)基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層とを備えた粘着テープであって、前記粘着剤層は、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成されたものであって、前記粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量が100ppm以下であることを特徴とする粘着テープ。
(2)前記ブロック共重合体は、トリブロック共重合体を主成分とする、上記(1)に記載の粘着テープ。
(3)前記トリブロック共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が30,000以上300,000以下であることと、分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であることとの少なくとも一方を満たす、上記(2)に記載の粘着テープ。
(4)JIS Z0237:2009に準拠して測定されたSUS板(SUS304#600)に対する180°引きはがし粘着力が、0.1N/25mm以上である、上記(1)から(3)のいずれかに記載の粘着テープ。
(5)JIS Z0237:2009に準拠して測定された傾斜角30°におけるボールタック値が10以上である、上記(1)から(4)のいずれかに記載の粘着テープ。
(6)JIS Z0237:2009に準拠して行われた、サンプル貼付面積25mm×25mm、荷重1kg、温度40℃の保持力試験において、保持時間が7万秒間以上である、上記(1)から(5)のいずれかに記載の粘着テープ。
(7)前記粘着剤層は押出成形により製造される、上記(1)から(6)のいずれかに記載の粘着テープ。
本発明によれば、被着体に対する貼付性を適切に確保しつつ、粘着テープから被着体への移行成分の量を低減させることが可能な粘着テープが提供される。
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の一実施形態に係る粘着テープは、基材と、基材の一方の面上に設けられた粘着剤層とを備える。かかる粘着テープは、粘着剤層の基材に対向する面と反対側の面上に設けられた剥離シートをさらに備えていてもよい。
本発明の一実施形態に係る粘着テープは、当該粘着テープが備える粘着剤層が、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成されたものである。
通常、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物がアクリル系モノマーの重合体をベースポリマーとする場合には、かかる重合体を得るためのアクリル系モノマーの重合は、通常、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等の重合開始剤を用いたフリーラジカル重合により行われる。しかしながら、この場合には、得られた重合体の分子量分布はブロードなピークを有しやすく、数百ppmの未反応のモノマー原料が残存してしまう。
これに対し、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物がアクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする場合には、かかるブロック共重合体を得るためのアクリル系モノマーのブロック共重合は、リビングアニオン重合により行われる。リビングアニオン重合により得られた共重合体の分子量分布はフリーラジカル重合により得られた重合体の分子量分布に比べてシャープなピークを有する傾向があるため、アクリル系モノマーのブロック共重合体には、未反応のモノマー原料が残存しにくい。
具体的には、本発明の一実施形態に係る粘着テープが備える粘着剤層は、当該粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量が100ppm以下である。本明細書において、粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量の測定は、次のように行われたものを意味する。粘着テープにおける表出している粘着剤層の面が20cmとなるように粘着テープを切断して評価試料とする。この評価試料をアンプル瓶に封入し、アンプル瓶をパージ&トラップGCMass(日本電子工業社製「JHS−100A」)にて、120℃で30分間加熱してガスを採取し、その後GCMass(PerkinElmer社製「TurboMass」)に導入して、n‐デカンを用いて作成した検量線より、発生するモノマー量を、n‐デカン換算量(単位:ppm)として求め、これを未反応のモノマー原料の総量とする。
上記のように、粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量が100ppm以下である場合には、粘着剤層から被着体への移行成分量が少なくなり、被着体の汚染や糊残りの問題が生じにくい。本明細書において、粘着剤層から被着体への移行成分量は、「食品接触プラスチック材料及び物品の構成成分の移行試験に必要な基本原則」(Directive 82/711/EEC、97/48/EC)に準じて実施された試験方法により行われたものを意味する。具体的には、粘着テープの剥離シートを剥がし、所定サイズ(面積3dm)の粘着剤層の面を露出させるための枠型治具に貼付け、試験サンプルとする。次いで、粘着シートの粘着剤層の面と抽出溶媒(95体積%エタノール)150mlが接触するようにして、20℃で24時間静置する。その後、抽出溶液のみを20℃にて乾燥させ、さらに120℃30分間の乾燥作業を行う。乾燥後の残渣物の重量を測定し、その測定値を移行成分量とする。
前述のように、アクリル系モノマーのブロック共重合体は比較的シャープなピークを有する分子量分布を有する。このため、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、当該粘着剤層内の移動が比較的容易な低分子量成分(本明細書において、「低分子量成分」とは、未反応のモノマー原料および重合の程度が低く分子量が10,000程度以下のオリゴマーの総称を意味する。)の含有量が少なくなりうる。それゆえ、本発明の一実施形態に係る粘着シートが備える粘着剤層は被着体への移行成分量が少ないと考えられる。
上記アクリル系モノマーのブロック共重合体は、トリブロック共重合体を主成分とすることが好ましい。かかるトリブロック共重合体の具体例として、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)−ポリアクリル酸ブチル(PBA)−ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)−ポリアクリル酸‐2‐エチルヘキシル(2EHA)−ポリメタクリル酸メチル(PMMA)などが挙げられる。トリブロック共重合体は、PBAや2EHAからなる相対的に軟質なセグメント(ソフトセグメント)の両端に、PMMAからなる比較的硬質であって擬似架橋可能なセグメント(ハードセグメント)が連結した構造を有する。
ソフトセグメントの種類や長さ、ソフトセグメントとハードセグメントとの量的バランスなどを調整することなどにより、トリブロック共重合体全体の凝集力を制御することも可能である。したがって、本発明の一実施形態に係る粘着テープは、当該粘着テープが備える粘着剤層の粘着剤がトリブロック共重合体を主成分とすることにより、被着体に対して優れた貼付性(再剥離性も含む。)を有することが可能である。
また、トリブロック共重合体は、温度が高い場合には、各重合体が単独で存在しやすいが、温度が室温に近い温度の場合には、末端に位置する擬似架橋可能なセグメントにおいて、他の重合体の擬似架橋可能なセグメントと相互作用して、全体として3次元的な集合構造を有するように設計することが可能である。したがって、本発明の一実施形態に係る粘着テープが備える粘着剤層を形成するための粘着剤組成物がトリブロック共重合体をベースポリマーとすることにより、射出成形や押出成形の際には良好な流動性を維持しつつ、成形後の状態では、3次元的な集合構造に起因して優れた物性(貯蔵弾性率、引張強度など)を有する粘着剤層を得ることが可能である。この温度による物性の変化を別の観点から説明すれば、トリブロック共重合体は、成形機のホッパーに投入する段階ではペレット同士の自着が生じにくく、溶融させた段階では流動性を高めることができるため、成形によって粘着剤層を形成する際に不具合が生じにくい。
上記のトリブロック共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が、30,000以上300,000以下であることと、分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であることとの少なくとも一方を満たすことが好ましい。
なお、本明細書において、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の値は、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒とするゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による標準ポリスチレン換算値として測定された値を意味する。具体的には、GPC測定装置(東ソー社製「HLC−8220GPC」)を使用して、以下に示す条件にて行うものとする。
カラム:TSKgelGMHXL→TSKgelGMHXL→TSKgel2000HXL
注入量:80μl
測定温度:40℃
流速:1ml/分
検出器:示差屈折計
試料濃度:1%(w/v)
上記のトリブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が30,000以上300,000以下であることにより、かかるトリブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、被着体に対する密着性の高さと、粘着剤層の凝集力の高さとを兼ね備えやすい。したがって、かかる粘着剤層を備える本発明の一実施形態に係る粘着テープは、被着体に対する貼付性が良好である。上記のアクリル系ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は、粘着テープの被着体に対する密着性と粘着剤層の凝集力を安定的に高める観点から、上記アクリルブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)は30,000から300,000の範囲にあることが好ましく、40,000から250,000の範囲にあることがより好ましく、50,000から200,000の範囲にあることが極めて好ましい。
上記のトリブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であることにより、トリブロック共重合体に含有される低分子量成分の量を少なくすることがより安定的に実現される。上記の低分子量成分の量をさらに安定的に低減させる観点から、上記のトリブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0以上5.0以下であることが好ましく、1.0以上3.0以下であることがより好ましく、1.0以上2.0以下であることが特に好ましい。上記のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の範囲に関する条件をも満たす場合には、トリブロック共重合体に含有される低分子量成分の量を特に安定的に低減させることができる。したがって、上記の分子量分布(Mw/Mn)に関する条件を満たし、好ましくは上記のポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)の範囲に関する条件をも満たすことにより、本発明の一実施形態に係る粘着テープについて、粘着テープから被着体への移行成分量を低減させることがより安定的に実現される。
本発明の一実施形態に係る粘着テープは、JIS Z0237:2009(ISO 29862−29864:2007)に準拠して測定されたSUS板(SUS304#600)に対する180°引きはがし粘着力が、0.1N/25mm以上であることが好ましい。従来技術に係るようなラジカル重合により重合させたアクリル系重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成された粘着剤層は、低分子量成分を数百ppm含有している場合がある。このような低分子量成分は、粘着剤層内で、いわゆる粘着付与剤のように、粘着テープの被着体に対する粘着性を高める成分として機能しうる。したがって、本発明の一実施形態に係る粘着テープのように、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成された粘着剤層を備える粘着テープは、被着体に対する貼付性、特に粘着性が低下する傾向を有しうる。
しかしながら、上記の180°引きはがし粘着力が0.1N/25mm以上であれば、本発明の一実施形態に係る粘着テープは被着体に対する貼付性が適切に確保され、好ましい。粘着テープの被着体に対する貼付性を適切に確保することをより安定的に実現する観点から、上記の180°引きはがし粘着力は、0.5N/25mm以上であることがより好ましく、1.0N/25mm以上であることがさらに好ましく、3.0N/25mm以上であることが特に好ましい。
上記の粘着力の上限は設定されない。用途に応じて適宜設定されるべきものである。限定されない例として、50N/25mm以下であること(再剥離性を有しない場合)、30N/25mm以下であること(再剥離性を有する場合)などが挙げられる。
本発明の一実施形態に係る粘着テープは、JIS Z0237:2009に準拠して測定された、J.Dow法による傾斜角30°におけるボールタック値が10以上であることが好ましい。上記のボールタック値が10以上であることにより、粘着テープの粘着剤層の面のべたつきがより適切となって、かかる粘着テープの被着体への貼付性が向上する。粘着テープの被着体に対する貼付性を適切に確保することをより安定的に実現する観点から、上記のボールタック値は、12以上であることがより好ましく、15以上であることがさらに好ましい。
本発明の一実施形態に係る粘着テープは、JIS Z0237:2009に準拠して行われた、サンプル貼付面積25mm×25mm、荷重1kg、温度40℃の保持力試験において、粘着テープが剥がれて、印加荷重となる錘が落下するまでの時間、すなわち、保持時間が7万秒間以上であることが好ましい。かかる保持時間が7万秒間以上であることにより、粘着テープを被着体に貼付したときに、粘着剤層の構成成分が染み出す問題が生じにくく、粘着テープの被着体に対して適切な貼付性を有しやすい。
本発明の一実施形態に係る粘着テープが備える基材の材料は限定されない。樹脂系の材料を主成分とする樹脂系シートから構成されていてもよいし、紙系の材料から構成されていてもよい。
樹脂系シートに係る樹脂の成分として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等のオレフィン系重合体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のエステル系重合体;ナイロン6,6、ナイロン6等のアミド系重合体などが例示される。上記の樹脂系シートに係る樹脂として、上記の成分を含有する樹脂のほかに、例えば、アセテート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステルアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリ‐p‐フェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルエステル樹脂などが挙げられる。基材はこれらの材料の一種を含有してもよいし、二種以上を含有してもよい。
基材は、上記の樹脂系シートの一層から構成されていてもよいし、上記の樹脂系シートが複数積層されて基材を構成していてもよい。また、基材が樹脂系シートを備える場合には、その樹脂系シートは未延伸のものであってもよいし、縦、横などの一軸方向または二軸方向に延伸されたものであってもよい。
基材が樹脂系の材料から構成される場合には、基材は、粘着剤層と共押出成形により製造されたものであってもよい。
基材が紙系の材料から構成される場合の具体例として、グラシン紙、コート紙、上質紙等の紙基材、および上記の紙基材にポリエチレン等の熱可塑性樹脂をラミネートしたラミネート紙が挙げられる。
基材には、印刷層、プライマーコート層、コーティング層、金属蒸着層、紫外線防止層等が形成されていてもよい。
基材を構成する材料が着色材料(カーボンブラック、二酸化チタンなどの顔料、および染料が例示される。)を含有することにより、基材が着色されていてもよい。さらに、機械特性を高めたり耐ブロッキング性を付与したりする観点から、基材を構成する材料がシリカなどの微粒子を含有していてもよい。基材は、用途に応じて、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分をさらに含有していてもよい。
基材の厚さは、用途に応じて適宜設定されるべきものであり、限定されない。基材の厚さは、通常は10μmから1000μm、好ましくは20μmから500μm、特に好ましくは25μmから200μm程度である。
本発明の一実施形態に係る粘着シートが備える粘着剤層の組成は、上記のとおり、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成されたこと、および粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量が100ppm以下であることを満たす限り、限定されない。
粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は常温で固体であって、粘着剤層は、粘着剤組成物を成形加工することを含む製造方法により製造されてもよい。成形加工は、射出成形であってもよいし、押出成形であってもよい。
粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、常温で液状であってもよい。この場合において、液状の粘着剤組成物は、アクリル系モノマーのブロック共重合体からなるベースポリマーに加えて、イソシアネート系化合物、エポキシ化合物などの架橋剤を含有していてもよい。液状の粘着剤組成物が架橋剤を含有する場合には、粘着剤層は、ベースポリマーと架橋剤との架橋物を含有する。
粘着剤層は、構成する材料が着色材料(カーボンブラック、二酸化チタンなどの顔料、および染料が例示される。)を含有することにより、粘着剤層が着色されていてもよい。粘着剤層は、用途に応じて、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの成分をさらに含有していてもよい。
粘着剤層の厚さは、用途に応じて適宜設定されるべきものであり、限定されない。基本的な傾向として、粘着剤層が厚くなると、粘着テープの被着体に対する粘着性は向上するが、粘着テープから被着体への移行成分量も増加しやすくなる。粘着剤層の厚さは、通常は1μmから1000μm、好ましくは2μmから500μm、より好ましくは5μmから100μm、特に好ましくは10μmから50μm程度である。
本発明の一実施形態に係る粘着シートは、長尺状であって巻回されていてもよい。この場合において、使用時まで、粘着シートの粘着剤層の面は、粘着シートの基材の粘着剤層に対向する側と反対側の面により保護されていてもよい。
本発明の一実施形態に係る粘着シートの粘着剤層の面を保護する目的で、粘着シートの粘着剤層側の面に剥離シートが貼付されていてもよい。
剥離シートとして、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルムなどのフィルムや、グラシン紙や上質紙などの紙を用いることができる。また、これらのフィルムの複数が積層された積層フィルムであってもよい。
上記剥離シートの剥離面(粘着剤層と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シートの厚さについては特に限定されず、通常、20μmから150μm程度である。
剥離シートは、押出成形など成形加工により製造されたものであってもよい。この場合において、剥離シートは粘着剤層と共押出成形により形成されてもよい。
本発明の一実施形態に係る粘着シートの製造方法は限定されない。限定されない例として次のような製造方法を挙げることができる。
(方法1)粘着剤層を形成するための粘着剤組成物を用いて、押出成形により、基材上に粘着剤層を形成する。必要に応じて、得られた粘着剤層の面に剥離シートを貼付してもよいし、押出成形体を基材と剥離シートとでラミネートしてもよい。
(方法2)粘着剤層を形成するための粘着剤組成物および基材を形成するための樹脂組成物を用いて、共押出成形により、剥離シート上に粘着剤層と基材との積層体を形成する。
(方法3)粘着剤層を形成するための粘着剤組成物および剥離シートを形成するための樹脂組成物を用いて、共押出成形により、基材上に粘着剤層と剥離シートとの積層体を形成する。
(方法4)粘着剤層を形成するための粘着剤組成物、基材を形成するための樹脂組成物および剥離シートを形成するための樹脂組成物を用いて、共押出成形により、基材層、粘着剤層および剥離シートの積層体を形成する。
(方法5)粘着剤層を形成するための液状の粘着剤組成物を基材上に塗布し、乾燥等を行って、基材上に粘着剤層を形成する。必要に応じて、得られた粘着剤層の面に剥離シートを貼付する。
(方法6)粘着剤層を形成するための液状の粘着剤組成物を剥離シート上に塗布し、乾燥等を行って、剥離シート上に粘着剤層を形成する。得られた粘着剤層の面に基材を貼付する。
TVOCを抑える観点で製膜プロセスにおいて溶剤を使用しないことが好ましいことから方法1から4の粘着シートの製造方法が好ましい。
上記の方法1から4の場合には、粘着剤層は押出成形により製造されたものとなる。この場合において、粘着剤層を形成するための粘着剤組成物は、トリブロック共重合体を含有することが好ましい。トリブロック共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が30,000以上300,000以下であることと、分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であることとの少なくとも一方を満たすことが好ましい。
方法1から6における、具体的な方法および条件(塗布方法および条件、乾燥等の方法および条件、押出成形の方法および条件、共押出成形の方法および条件)は、製造される粘着シート(剥離シートをさらに備える場合もある。)の構造や用途、粘着シート(剥離シートをさらに備える場合もある。)の製造に際して使用される材料などに応じて適宜設定される。
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。実施例においてMwはポリスチレン換算重量平均分子量を意味し、Mnはポリスチレン換算数平均分子量を意味する。
〔実施例1〕
ペレット状アクリル酸系トリブロック粘着剤(クラレ社製、「クラリティLA3320」、ポリメタクリル酸(PMMA)−ポリアクリル酸ブチル(PBA)−PMMA、PMMA比率=18.7mol%、Mw=11.9万、Mw/Mn=1.1)100重量部に、PMMA微粒子(積水化成品社製「テクポリマーMB−4」、Mw=77.5万)を0.5重量部添加し、タンブラーで10分間混合して、粘着剤層を形成するための材料として粘着剤組成物Aを得た。
粘着剤組成物Aを押出機に投入し、粘着剤層の厚さが20μmとなるようにTダイを用いてフィルム化して粘着剤層を形成した。得られた粘着剤層の一方の面に対向するように位置させたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ社製「ルミラー50T60」、厚さ50μm)と、粘着剤層におけるPETフィルムに対向する面と反対側の面に位置させた剥離シート(リンテック社製「SP−PET381031」)と、を用いて、粘着剤層をラミネートすることで、粘着テープを剥離シートが貼付された状態で得た。
〔実施例2〕
ペレット状アクリル酸系トリブロック粘着剤として、実施例1において使用した材料とは異なるペレット状アクリルトリブロック共重合体(カネカ社製、商品名「NABSTAR N800AS」、PMMA−PBA−PMMAトリブロック共重合体、PMMA比率=27.0mol%、Mw=12.7万、Mw/Mn=1.3)を使用した以外は実施例1と同様の作業を行って、粘着剤組成物Bを得た。粘着剤組成物Bを用いて実施例1と同様の作業を行って、粘着テープを剥離シートが貼付された状態で得た。
〔比較例1〕
温度計、攪拌機、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応装置を用い、トルエン75質量部、酢酸エチル75質量部、ブチルアクリレート(BA)90質量部およびアクリル酸(AA)10質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3質量部を加え、窒素ガス雰囲気下で80℃にて8時間重合反応を行い、BA−AA共重合体溶液を得た。BA−AA共重合体は、Mwが50万であり、BAに基づく構成単位とAAに基づく構成単位との質量比(BA:AA)が90:10であった。得られたBA−AA共重合体溶液にトルエンを加え、固形分34質量%に調整し、アクリル系共重合体溶液Cを得た。
得られたアクリル共重合体溶液C100質量部に対して、イソシアネート系架橋剤としてトルエンジイソシアネート(TDI、東洋インキ社製、商品名「BHS−8515」、固形分37.5質量%)1.0質量部および希釈溶剤としてトルエン50質量部を配合し、液状の粘着剤組成物Dを製造した。
剥離材(リンテック社製、「SP−PET381031」)のシリコーン樹脂剥離処理面に、上記の液状の粘着剤組成物Dをロールナイフコーターにて塗布し、乾燥(90℃、1分間)させ、粘着剤層(厚さ30μm)を形成した。得られた剥離材付き粘着剤層の粘着剤層の面にPETフィルム(東レ社製「ルミラー50T60」)を貼り合わせて、粘着テープを剥離シートが貼付された状態で得た。
〔比較例2〕
温度計、攪拌機、還流冷却器、および窒素ガス導入管を備えた反応装置を用い、トルエン75質量部、酢酸エチル75質量部、2‐エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90質量部およびアクリル酸(AA)10質量部を仕込み、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3質量部を加え、窒素ガス雰囲気下で80℃にて8時間重合反応を行い、2EHA−AA共重合体溶液を得た。2EHA−AA共重合体は、Mwが55万であり、2EHAに基づく構成単位とAAに基づく構成単位との質量比(2EHA:AA)は90:10であった。得られた2EHA−AA共重合体溶液にトルエンを加え、固形分34質量%に調整して、アクリル系共重合体溶液Eを得た。得られたアクリル系共重合体溶液Eをアクリル系共重合体溶液Cに代えて用いたこと以外は比較例1と同様に作業を行って、粘着テープを剥離シートが貼付された状態で得た。
〔試験例1〕モノマー原料の総量の測定
実施例および比較例にて作製した粘着テープのそれぞれの剥離シートを剥離し、表出した粘着剤層の面が20cmとなるように粘着テープを切断して評価試料とした。この評価試料をアンプル瓶に封入し、アンプル瓶をパージ&トラップGCMass(日本電子工業社製「JHS−100A」)にて、120℃で30分間加熱してガスを採取し、その後GCMass(PerkinElmer社製「TurboMass」)に導入して、n‐デカンを用いて作成した検量線より、発生するモノマー原料の総量を、n‐デカン換算量(単位:ppm)として求めた。結果を表1に示す。
〔試験例2〕移行成分量の測定
「食品接触プラスチック材料及び物品の構成成分の移行試験に必要な基本原則」(Directive 82/711/EEC、97/48/EC)に準じて試験を実施した。実施例および比較例にて作製した粘着テープのそれぞれの剥離シートを剥離し、得られた粘着シートを所定サイズ(面積3dm)の粘着剤層の面を露出させるための枠型治具に貼付け、試験サンプルとした。次いで、粘着シートの粘着剤層の面と抽出溶媒(95体積%エタノール)150mlが接触するようにして、20℃で24時間静置した。その後、抽出溶液のみを20℃にて乾燥させ、さらに120℃30分間の乾燥作業を行った。乾燥後の残渣物の重量(単位:μg/cm)を測定し、その測定値を移行成分量とした。なお、1μg/cmは、0.1mg/dmに相当する。結果を表1に示す。
〔試験例3〕粘着力の測定
実施例および比較例にて作製した粘着テープの剥離材を剥がし、得られた粘着シートを25mm×150mmに切断して粘着シート試験片を得た。JIS Z 0237:2009(ISO 29862−29864:2007)に基づき、23℃、相対湿度50%環境下で、上記の粘着シート試験片を被着体(SUS304#600)に貼付して試験サンプルとした。貼付24時間後の粘着力(単位:N/25mm)を、180°引きはがし法によって引張り速度300mm/分にて測定した。結果を表1に示す。
〔試験例4〕ボールタックの測定
実施例および比較例にて作製した粘着テープの剥離材を剥がし、得られた粘着シートを12mm×150mmに切断して粘着シート試験片を得た。JIS Z 0237:2009(ISO 29862−29864:2007)に基づき、23℃、相対湿度50%環境下で、傾斜角30°におけるボールタック値を測定した。結果を表1に示す。
〔試験例5〕保持力の測定
実施例および比較例にて作製した粘着テープの剥離材を剥がし、得られた粘着シートを25mm×150mmに切断して粘着シート試験片を得た。JIS Z 0237:2009(ISO 29862−29864:2007)に基づき、23℃、相対湿度50%環境下で、1kgの錘で荷重(9.8N)を加えて、錘が落下するまでの時間(保持時間)測定することにより、保持力を評価した。結果を表1に示す。なお、試験時間は70000秒間とした。表1中の「70000」なる数値は、試験時間が70000秒間を経過しても錘が落下しなかったこと、すなわち、保持時間が70000秒間以上であったことを意味する。「70000」以外の数値は錘が落下するまでの時間(単位:秒間)である。
Figure 2016141725
本発明に係る粘着テープは、食品や医療分野など、品質および管理体制の高さが求められる分野において使用される粘着テープに好適に使用されうる。

Claims (7)

  1. 基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層とを備えた粘着テープであって、
    前記粘着剤層は、アクリル系モノマーのブロック共重合体をベースポリマーとする粘着剤組成物から形成されたものであって、
    前記粘着剤層に含まれる未反応のモノマー原料の総量が100ppm以下であること
    を特徴とする粘着テープ。
  2. 前記ブロック共重合体は、トリブロック共重合体を主成分とする、請求項1に記載の粘着テープ。
  3. 前記トリブロック共重合体は、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が30,000以上300,000以下であることと、分子量分布(Mw/Mn)が5.0以下であることとの少なくとも一方を満たす、請求項2に記載の粘着テープ。
  4. JIS Z0237:2009に準拠して測定されたSUS板(SUS304#600)に対する180°引きはがし粘着力が、0.1N/25mm以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着テープ。
  5. JIS Z0237:2009に準拠して測定された傾斜角30°におけるボールタック値が10以上である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着テープ。
  6. JIS Z0237:2009に準拠して行われた、サンプル貼付面積25mm×25mm、荷重1kg、温度40℃の保持力試験において、保持時間が7万秒間以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着テープ。
  7. 前記粘着剤層は押出成形により製造される、請求項1から6のいずれか一項に記載の粘着テープ。
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