JPH0361402B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（産業上の利用分野） 本発明は揮発性物質の蒸気を長時間にわたり、
安定的に均一に放出する揮発性物質徐放性製剤に
関するものである。 （従来の技術） 近年、香料、フエロモン、医薬品、農薬等の揮
発性物質を、目的の場所で長時間安定して継続的
に徐々に揮散せしめることが、実用的に重要な課
題となつている。 上記課題を実現させるための一つの方法が米国
特許第3539465号、同第3577515号に示されてお
り、これらはいずれもマイクロカプセルに揮発性
物質を収納する方法である。しかしこのような方
法はマイクロカプセル化において収納されるべき
揮発性物質を損失することが多く、また１カ月以
上にわたる長時間において均一な徐放性を発揮す
る製剤を製造することが困難であるなどの欠点を
有する。他方、米国特許第4017030号には、中空
繊維に揮発性物質を収納する方法が提案されてい
るが、この方法を揮発性の速さが大きく、また多
量の揮発性物質お収納する目的には不向きであ
る。 （発明の構成） 本発明者らはかかる課題に対し鋭意研究を重ね
た結果、酢酸ビニル含有率が１〜20重量％である
エチレン−酢酸ビニル共重合体から製作された中
空チユーブに揮発性物質を充填し両端をシールす
ることにより、ある条件下では比較的多量の揮発
性物質を長期にわたつて安定的に徐放することが
可能であること、特に該エチレン−酢酸ビニル共
重合体製チユーブはアルコール系の揮発性物質の
徐放性に適していることを見出し、本発明を完成
した。 すなわち、本発明は酢酸ビニル含有率が１〜20
重量％であるエチレン−酢酸ビニル共重合体から
あらかじめ熱成形により製作された、平均内径
0.4〜３mm、外周２〜20mm、長さ10〜1000mmを有
する細管に、揮発性物質として炭素数２〜14の飽
和もしくは不飽和アルコールを封入してなる揮発
性物質徐放性製剤に関するものである。本発明の
特に望ましい細管は、管の内径に基づき断面積Ｓ
mm²と外周Ａmm²との比Ａ／Ｓが２〜10mm^-1である細
管であり、このような材質と形状を満足した細管
を使用することにより、揮発性物質のうちでもと
りわけ上記アルコールと親和性がよく、きわめて
すぐれた均一な徐放性を有する製剤を得ることが
できる。 また上記細管に金属ワイヤーまたはこの金属ワ
イヤーをプラスチツクで被覆したものを添設する
ことにより、細管の長手方向の形状をいろいろの
形（ラセン状、カタツムリ状等）に保つことが可
能となり、樹木などに手作業で容易に付着係合さ
せることができる。 本発明の他の利点は透明性にすぐれたエチレン
−酢酸ビニル共重合体製の細管を使用することに
より、内容物の放出速度および残量を容易に確認
できることであり、特に内容物をあらかじめ着色
しておけば該放出速度および残量の確認が一段と
容易となる。 以下本発明をさらに詳しく説明する。 本発明で使用されるエチレン−酢酸ビニル共重
合体製の細管（チユーブ）は、前記したように、
平均内径0.4〜３mm、外周２〜20mm、長さ10〜
1000mmのもので、この内径が0.4mm以下では容積
が小さいばかりでなく、初期速度が大きく均一な
放出は得られず、一方３mm以上では放出速度がお
そいだけでなく、特に後半には著しく放出速度が
低下し本発明の目的を達することはできない。本
発明の目的に特に望ましくは平均内径0.8〜２mm
であり、内径に基づく断面積Ｓmm²と外周Ａmmとの
比Ａ／Ｓが２〜20cm^-1であるものである。Ａ／Ｓ
比が２以下になると収納された前記揮発性物質の
放出速度が小さくなりすぎて好ましくなく、Ａ／
Ｓ比が20以上になると該放出速度が初期に速く、
時間の経過にしたがつて急激に低下してしまうの
で好ましくない。 細管の断面形状は円形、正方形、星形等いかな
る形状でもよいが、工業的には円形、だ円形、波
形、星形が使用される。比較的大きい細管の場合
には波形または星形等の凸凹形状であることが好
ましい。比較的小さい細管では円形またはだ円形
のものが好ましい。 他方、本発明においては、前記形状の製剤とし
て炭素数２〜14の飽和もしくは不飽和アルコール
系の揮発性物質を適度な速度で放出する徐放性製
剤とするために、細管の材質として酢酸ビニルの
含有量が１〜20重量％特には２〜20重量％である
エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用することが
望ましく、酢酸ビニルの含有量が少なすぎると放
出速度が小さすぎて好ましくなく、また20重量％
以上であると放出速度が速くなりすぎ、目的とす
る均一な放出速度が得られない。 他方本発明の細管には、必要に応じ、金属ワイ
ヤーが添設される。この金属ワイヤーとしてはブ
リネル硬さ65以下である太さ0.5mm〜1.5mm径のも
のが好ましく、またプラスチツクで被覆したもの
を使用することが好ましい。 金属ワイヤーを使用する目的は、細管のみでは
このものを好ましい形に変形し好ましい形を保持
することが困難である点を改良すること、プラス
チツク製の徐放性製剤を樹木などに手作業で容易
に付着係合させることであり、したがつて鉄線な
どブリネル硬度の高いものは好ましくない。な
お、茶の葉の摘みとりあるいは果樹の摘みとりな
どの農作業には比較的強度の低い手バサミまたは
機械バサミを使用するが、鉄線などを組込んだ該
徐放性製剤の場合には上記ハサミで切断を行うと
ハサミの刃がかけることがしばしば認められるの
に対し、本発明の如くブリネル硬度が65以下の金
属ワイヤーが使用さてれている場合には刃がかけ
ることがなく、また樹木にそのような徐放性製剤
を付着させる場合の作業で手の疲れがなく、作業
が確実に実施でき、付着係合させた徐放性製剤は
風などで落下することがなく、長時間安定に前記
揮発性物質を放出する。なお、該金属ワイヤーと
してアルミニウム、銅またはこれらの合金からな
るものが好適とされ、太さは0.5〜1.5mm径のもの
が使用される。0.5mm径よりも細いものは形の保
持には弱すぎるし、また1.5mm径よりも太いもの
では曲げたりする手作業がしにくくなるほか金属
の使用量増加による経済上の不利が大きくなる。 金属ワイヤーが添設された徐放性製剤を作る具
体的方法は次のとおりである。すなわち前記エチ
レン−酢酸ビニル共重合体の細管を用意し、これ
にブリネル硬度65以下の金属ワイヤーあるいはこ
の金属ワイヤーをプラスチツクで被覆したものを
添設するか、プラスチツクチユーブとプラスチツ
クで被覆した金属ワイヤーを添設したものを、同
時に成形する。 第１図はその状態を概略的に例示したものであ
つて、同図はチユーブ１にプラスチツク被覆金属
ワイヤー２を直接熱融着、接着剤接合等の手段に
より添設したもである。 同図において１′は金属ワイヤー２を被覆して
いるプラスチツクである。なお、チユーブに対し
てワイヤーを２本添設したものあるいはワイヤー
を挟んで２本のチユーブを接合させたもの、さら
にチユーブとワイヤーをより合せたものであつて
もよい。 つぎに、チユーブの一端を減圧にしながら他端
から圧力をかけて前記揮発性物質を充填し、この
充填作業が終了したのち高周波加熱等の手段によ
り適当な間隔たとえば10cm毎にシールしその部分
で切断することにより目的の徐放性製剤（デスペ
ンサー）が多数得られる。 なお、前記揮発性物質が紫外線により分解され
易いものである場合には、チユーブを作る原料エ
チレン−酢酸ビニル共重合体中に紫外線防止剤、
染料または顔料を混入するとか、あるいは揮発性
物質にも酸化防止剤、安定剤等を含有させること
がよい。 本発明で対象とされる前記したアルコール系の
揮発性物質としては、たとえば殺菌性物質、抗菌
性物質、香料、医薬品、フエロモンなど各種生理
活性物質を挙げることができる。 つぎに本発明の具体的態様を実施例および比較
例をあげて詳細に説明する。 実施例 １ 酢酸ビニル含有量５重量％のエチレン−酢酸ビ
ニル共重合体から、内径0.9mm、外周の異なる長
さ200mmのチユーブＡ，ＢおよびＣを作り（表１
参照）、これらに第１図に示すようにエチレン−
酢酸ビニル共重合体で被覆した外径0.8mmのブリ
ネル硬度46のアルミニウムワイヤーを融着させ
た。 これらに、アルコール系揮発性物質として、
Ｅ，Ｅ−８，10−ドデカジエノール49重量％、ド
デカノール49重量％、テトラデカノール２重量％
の混合物90mgを封入し、40℃の条件下、該揮発性
物質の放出速度を測定した。

【表】 結果は第２図に示すとおりであつた。これから
判るようにチユーブＢおよびＣは良好な放出速度
を示したが、チユーブＡは初期は良好であるが後
半の放出速度が極端に小さくなり、本目的を充分
満足するものではなかつた。 実施例 ２ 酢酸ビニル含有量12重量％のエチレン−酢酸ビ
ニル共重合体から、内径が異なり外径が2.0mmの
長さ５cmのチユーブＤ，ＥおよびＦを作り（表２
参照）、これらにエチルアルコールを封入し、25
℃の条件下でエチルアルコールの放出速度を測定
した。

【表】 結果は第３図に示すとおりであつた。こらか
ら、チユーブＤおよびＥは良好な放出速度を示し
た。チユーブＦは後半の放出速度が小さく均一な
放出を達成できないばかりでなく、エチルアルコ
ールの封入量が少なく有効なものではなかつた。 実施例 ３ 断面形状が第４図イ，ロおよびハに示す形状を
有する長さ100mmのチユーブＧ，Ｈ，Ｉを酢酸ビ
ニル含有量８重量％のエチレン−酢酸ビニル共重
合体製造からした（表３参照）。

【表】 これら、各チユーブにドデカノールを封入し、
30℃の条件下で該揮発性物質の放出速度を測定し
た。結果は第５図に示すとおりであつた。 チユーブＨ，Ｉは良好な放出速度を示したが、
Ｇは時間の経過とともに放出量が低下し好ましく
なかつた。 比較例 １ 実施例１におけるチユーブに代えて、内径0.9
mm、外径1.6mm、長さ200mmのポリエチレンチユー
ブを作り、これに第１図に示すようにポリエチレ
ンで被覆した外径0.8mmのブリネル硬度46のアル
ミニウムワイヤーを融着させた。これに実施例１
で用いたのと同じアルコール系揮発性物質を封入
し、40℃の条件下、放出速度を測定したところ、
50日を経過しても該アルコール系揮発性物質は殆
ど放出されず、98％がチユーブ内に残つていた。 比較例 ２ 実施例２におけるチユーブに代えて、内径1.0
mm、外径2.0mm、長さ５cmのポリプロピレンチユ
ーブを作り、この中にエチルアルコールを封入し
たほかは実施例２と同様にしてエチルアルコール
の放出速度を測定したところ、50日を経過しても
エチルアルコールは全く放出されなかつた。 比較例 ３ 比較例１におけるポリエチレンチユーブに代え
て、同じ寸法の酢酸ビニル含有量25重量％のエチ
レン−酢酸ビニル共重合体チユーブを使用したほ
かは、比較例１と全く同様にして放出速度を測定
したところ、20日経過した時点ですべてのアルコ
ール系揮発性物質が放出されてしまつた。このポ
リマーは放出速度が速すぎて徐放性製剤には適さ
なかつた。

【図面の簡単な説明】

第１図はチユーブにプラスチツク被覆金属ワイ
ヤーを添設したもの、第４図イ，ロ，ハはチユー
ブの断面形状をそれぞれ示したものである。ま
た、第２図、第３図および第５図はそれぞれ各実
施例での揮発性物質残存量と経過日数との関係を
示したものである。 １……チユーブ、２……金属ワイヤー、１′…
…被覆プラスチツク。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 酢酸ビニル含有率が１〜20重量％であるエチ
   レン−酢酸ビニル共重合体からあらかじめ熱成形
   により製作された、平均内径0.4〜３mm、外周２
   〜20mm、長さ10〜1000mmの細管に、揮発性物質と
   して炭素数２〜14の飽和もしくは不飽和アルコー
   ルを封入してなる揮発性物質徐放性製剤。 ２ 細管が、管の内径に基づく断面積Ｓmm²と外周
   Ａmmとの比Ａ／Ｓとして２〜20mm^-1である特許請
   求の範囲第１項記載の揮発性物質徐放性製剤。 ３ 細管が、波形、星形等の凸凹の断面内形を有
   する特許請求の範囲第１項記載の揮発性物質徐放
   性製剤。 ４ 細管が、軸方向にブリネル硬さ65以下である
   太さ0.5〜1.5mm径の金属ワイヤーまたはこの金属
   ワイヤーをプラスチツクで被覆したものを添設し
   てなる特許請求の範囲第１項記載の揮発性物質徐
   放性製剤。