JP6561021B2 - ロープ状フェロモン製剤及びこれを用いた交信撹乱方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多数の放出源からフェロモンを空気中に放散させる回収可能なロープ状フェロモン製剤及びこれを用いた交信撹乱方法に関する。
近年では食の安全性や環境への負荷の観点から、殺虫剤の使用を必要最小限にとどめることが望ましく、殺虫剤散布に代わる新たな防除技術の開発が必要である。
殺虫剤散布に代わる防除技術として、フェロモンを利用した害虫防除が挙げられる。例えば性フェロモンの場合、雌成虫または雄成虫が分泌する化学物質であり、同種交尾相手に対して種特異的に誘引作用を示す。この性フェロモンを用いて雌雄の交尾行動を撹乱する交信撹乱法により、害虫の防除を行うことが可能である。フェロモンを用いた防除資材は、環境中で速やかに分解され、使用者や生態系への負荷も少ないことから注目されている。
例えば交信撹乱法を確立する上で重要なことは、交信撹乱を引き起こすのに十分な量の性フェロモン蒸気を防除の対象とする圃場全体に漂わせることである。そのため、性フェロモン物質を担持した、長さ20cm程のチューブ状製剤をおよそ250〜1,000本/ヘクタールのポイント数で圃場に設置し、当該点源から性フェロモンを放出させることで圃場全体をムラ無く処理をすることが可能となる。しかし、上記ポイント数にてチューブ状製剤を対象害虫の活動領域に設置するには多大な労力を要するため、本技術の普及の上で省力化は極めて大きな課題であった。
上記課題を解決する手段として、例えばチューブ状製剤の長さを10mとし、支柱を用いてサトウキビ畑の畝上に張り渡したことが報告されている(特許文献1)。
その他の方法として、例えば0.5〜5.0cm長のチューブに性フェロモンを担持した製剤を直接土壌表面に配置することが考えられる(特許文献2)。直接土壌表面への配置であれば、少ないコストでフェロモン蒸散源を無数に確保することが可能である。
特開2003−267804号公報 特開2014−34541号公報
しかし、特許文献1の場合、10m×8本/ヘクタールという設置数であり、圃場中の性フェロモン濃度にムラが生じる場合があり、濃度の低い場所では害虫が交尾可能となるため、更なる改良の余地があった。特に狭い面積条件下では交信撹乱効果が不安定になる可能性があった。また、製剤の単位面積当たり設置長を増やすことは、フェロモン原体及びその担持体の素材量の増大によるコスト上昇が避けられず、フェロモン原体の安価な合成が困難な害虫や、経済的に防除コストをかけられない農家・作物には適用できない。更に、より内外径の細い製剤を用いて設置長を増やすことは、製造技術的限界から実施が困難である。
一方、特許文献2の場合、性フェロモン蒸気は地表面に滞留するため、高所で活動する害虫への効果が得られない場合がある。また、有効成分が土中へ吸着・流入することによる土壌や地下水への影響も考慮する必要がある。更に、25,000〜100,000個/ヘクタールのポイント数で処理された配置製剤を圃場から回収することは、作物内部への混入や土壌中への埋没によりほぼ不可能であり、環境負荷・生態系への影響についても考慮する必要がある。以上の理由から、配置製剤は適用される条件が限られ、実用化に向けて解決すべき課題が残っている。
そこで、単位面積当たりの製剤単価及び設置コストを上昇させること無く、対象害虫の活動領域にフェロモン蒸気をムラ無く漂わせることができ、且つ土壌や作物を汚染せず、圃場からの回収も容易なフェロモン製剤及び交信撹乱方法の開発が強く望まれていた。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、フェロモン原体及びその担持体の投与量及び設置コストは従来と同等で、多くの点源及び任意の高さからフェロモン蒸気を放出することが可能であり、且つ圃場から全量を確実に回収可能なフェロモン製剤を提供する。
本発明者らは、上記課題の解決のために鋭意研究を行った結果、フェロモン物質を含む担持体と、これを一定間隔で連結する支持体からなるロープ状フェロモン製剤を用いることにより、極めて高い交信撹乱効果が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の1つの態様によれば、フェロモン物質と、前記フェロモン物質を少なくとも含む複数の担持体と、前記担持体の各々を、間隔をおいて保持するロープ状の支持体とを備えるロープ状フェロモン製剤が提供される。本発明の別の態様によれば、このロープ状フェロモン製剤を圃場に設置するステップを少なくとも含む害虫の交信撹乱方法が提供される。
本発明によるロープ状フェロモン製剤を用いて防除を行えば、生態系や環境に対して負荷をかけず、広範囲の害虫の交尾を経済的且つ効率的に阻害し、これらの次世代発生を抑制することが可能となり、持続可能な環境保全型農業に貢献することができる。具体的には、対象害虫の活動領域に合せてロープ状フェロモン製剤を作物や土壌表面と接触しないように設置することにより、優れた交尾阻害効果が得られるとともに薬害や有効成分の土壌吸着を防ぐことが可能となり、且つロープ状であることにより、使用後に圃場から確実に回収可能となるため、収穫物や土壌に対する有効成分及び担持体の残留を防ぐことができる。
実施例1における処理区及び無処理区の圃場並びに処理区の製剤の設置状況を示す。 実施例1における処理区及び無処理区の圃場並びに処理区の製剤の設置状況を示す。
本発明に適用可能な害虫は特に限定されないが、例えばサキシマカンシャクシコメツキ(Melanotus sakishimensis)、カリフォルニアノコギリカミキリ(Prionus californicus)、ケブカアカチャコガネ(Dasylepida ishigakiensis)、ナガチャコガネ(Heptophylla picea)ドウガネブイブイ(Anomala cuprea)、アリモドキゾウムシ(Cylas formicarius)、ミグドルス フリアヌス(Migdolus fryanus)等の鞘翅目(Coleoptera)の害虫、アルゼンチンアリ(Linepithema humile)、ヒアリ(Solenopsis invicta)等の膜翅目(Hymenoptera)の害虫が挙げられる。
フェロモン物質は、特に限定されず、炭素数10〜20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコール、炭素数10〜25の脂肪族直鎖状ケトン、炭素数10〜30の脂肪族炭化水素、炭素数10〜20のカルボン酸等が挙げられ、特に、炭素数10〜20の脂肪族直鎖状アルデヒド、飽和又は二重結合を一つ又は二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテート、炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコールが好ましい。なお、上記の炭素数は、アセテート及びカルボン酸の官能基に含まれる炭素を含まない。
フェロモン物質の具体例として、ピンクボールワーム(ワタアカミムシ)の性フェロモン物質であるZ7Z11−ヘキサデカジエニルアセテート及びZ7E11−ヘキサデカジエニルアセテート、オリエンタルフルーツモス(ナシヒメシンクイ)の性フェロモン物質であるZ−8−ドデセニルアセテート、ピーチツイッグボーラー(モモキバガ)の性フェロモン物質であるE−5−デセニルアセテート、グレープベリーモス(ホソヒメハマキ)の性フェロモン物質であるZ−9−ドデセニルアセテート、ヨーロピアングレープヴァインモス(ブドウホソハマキ)の性フェロモン物質であるE7Z9−ドデカジエニルアセテート、ライトブラウンアップルモス(リンゴウスチャイロハマキ)の性フェロモン物質であるE−11−テトラデセニルアセテート、コドリングモス(コドリンガ)の性フェロモン物質であるE8E10−ドデカジエノール、リーフローラー(ハマキガ)の性フェロモン物質であるZ−11−テトラデセニルアセテート、ピーチツリーボーラー(コスカシバ)の性フェロモン物質であるZ3Z13−オクタデカジエニルアセテート及びE3Z13−オクタデカジエニルアセテート、アメリカンボールワーム(オオタバコガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセナール、オリエンタルタバコバッドワーム(タバコガ)の性フェロモン物質であるZ−9−ヘキサデセナール、ソイビーンポッドボーラー(マメシンクイガ)の性フェロモン物質であるE8E10−ドデカジエニルアセテート、ダイアモンドバックモス(コナガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセニルアセテート及びZ−11−ヘキサデセナール、キャベッジアーミーワーム(ヨトウガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセニルアセテート、Z−11−ヘキサデセノール及びn−ヘキサデシルアセテート、ビートアーミーワーム(シロイチモジヨトウ)の性フェロモン物質であるZ9E12−テトラデカジエニルアセテート及びZ−9−テトラデセノール、コモンカットワーム(ハスモンヨトウ)の性フェロモン物質であるZ9E11−テトラデカジエニルアセテート及びZ9E12−テトラデカジエニルアセテート、フォールアーミーワームの性フェロモン物質であるZ−9−テトラデセニルアセテート、トマトピンワームの性フェロモン物質であるE−4−トリデセニルアセテート、ライスステムボーラー(ニカメイガ)の性フェロモン物質であるZ−11−ヘキサデセナール及びZ−13−オクタデセナール、コーヒーリーフマイナーの性フェロモン物質である5,9−ジメチルペンタデカン及び5,9−ジメチルヘキサデカン、ピーチリーフマイナー(モモハモグリガ)の性フェロモン物質である14−メチル−1−オクタデセン、ピーチフルーツモス(モモシンクイガ)の性フェロモン物質であるZ−13−イコセン−10−オン、ジプシーモス(マイマイガ)の性フェロモン物質である7,8−エポキシ−2−メチルオクタデカン、パインプロセッショナリーモスの性フェロモン物質であるZ−13−ヘキサデセン−11−イニルアセテート、ケブカアカチャコガネの性フェロモン物質である2−ブタノール、イエローウィッシュエロンゲイトチェイファー(ナガチャコガネ)の性フェロモン物質であるZ−7,15−ヘキサデカジエン−4−オリド、シュガーケインワイヤーワーム(オキナワカンシャクシコメツキ)の性フェロモン物質であるn−ドデシルアセテート、シュガーケインワイヤーワーム(サキシマカンシャクシコメツキ)の性フェロモン物質であるE−9,11−ドデカジエニルブチレート及びE−9,11−ドデカジエニルヘキサネート、カプレアスチェイファー(ドウガネブイブイ)の性フェロモン物質である(R)−Z−5−(オクト−1−エニル)−オキサシクロペンタン−2−オン、ミグドルス フリアヌスの性フェロモン物質であるN−(2’S)−メチルブタノイル(2S)−メチルブチルアミン、スウィートポテトウィービル(アリモドキゾウムシ)の性フェロモン物質である(Z)−3−ドデセニル(E)−2−ブテノアート、アルゼンチンアント(アルゼンチンアリ)の道しるべフェロモンである(Z)−9−ヘキサデセナール、ファイアーアント(ヒアリ)の道しるべフェロモンである(Z,E)−α−ファルネセン、ライスリーフバグ(アカヒゲヒソミドリカスミカメ)の性フェロモン物質であるヘキシルヘキサノエート、E−2−ヘキセニルヘキサノエート及びオクチルブチレート、ソルガムプラントバグ(アカスジカスミカメ)の性フェロモン物質であるヘキシルブチレート、E−2−ヘキセニルブチレート及びE−4−オキソ−2−ヘキセナール、ホワイトピーチスケール(クワシロカイガラムシ)の性フェロモン物質である(6R)−Z−3,9−ジメチル−6−イソプロペニル−3,9−デカジエニルプロピオネート及び(6R)−Z−3,9−ジメチル−6−イソプロペニル−3,9−デカジエノール、バインミリーバグ(ブドウコナカイガラムシ)の性フェロモン物質である(S)−5−メチル−2−(1−プロペン−2−イル)−4−ヘキセニル3−メチル−2−ブテノエート、ハウスフライ(イエバエ)の性フェロモン物質であるZ−9−トリコセン、ジャーマンコックローチ(チャバネゴキブリ)の性フェロモン物質であるジェンティシルキノンイソバレレート等が挙げられる。
フェロモン物質である炭素数10〜20の脂肪族直鎖状アルデヒドの具体例としては、Z−5−デセナール、10−ウンデセナール、n−ドデカナール、Z−9−ドデセナール、E5Z10−ドデカジエナール、E8E10−ドデカジエナール、n−テトラデカナール、Z7−テトラデセナ−ル、Z9−テトラデセナール、Z11−テトラデセナール、Z9E11−テトラデカジエナール、Z9Z11−テトラデカジエナール、Z9E12−テトラデカジエナール、Z9E11,13−テトラデカトリエナール、Z10−ぺンタデセナール、E9Z11−ペンタデカジエナール、n−ヘキサデカナール、Z7−ヘキサデセナール、E6Z11−ヘキサデカジエナール、E4Z6−ヘキサデカジエナール、E4E6Z11−ヘキサデカトリエナール、E10E12E14−ヘキサデカトリエナール、n−オクタデカナール、Z9−オクタデセナール、E14−オクタデセナール、E2Z13−オクタデカジエナ−ル、Z3Z13−オクタデカジエナール、Z9Z12−オクタデカジエナ−ル、Z9Z12Z15−オクタデカトリエナール等が挙げられる。
フェロモン物質である飽和又は二重結合を一つ有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートの具体例としては、デシルアセテート、Z3−デセニルアセテート、Z4−デセニルアセテート、ウンデシルアセテート、Z7−ウンデセニルアセテート、Z8−ウンデセニルアセテート、E9−ウンデセニルアセテート、ドデシルアセテート、E7−ドデセニルアセテート、Z7−ドデセニルアセテート、E8−ドデセニルアセテート、E9−ドデセニルアセテート、11−ドデセニルアセテート、10−メチルドデセニルアセテート、トリデシルアセテート、Z4−トリデセニルアセテート、E6−トリデセニルアセテート、E8−トリデセニルアセテート、Z8−トリデセニルアセテート、テトラデシルアセテート、Z7−テトラデセニルアセテート、E8−テトラデセニルアセテート、Z8−テトラデセニルアセテート、E9−テトラデセニルアセテート、Z9−テトラデセニルアセテート、E10−テトラデセニルアセテート、Z10−テトラデセニルアセテート、E12−テトラデセニルアセテート、Z12−テトラデセニルアセテート、12−メチルテトラデセニルアセテート、ペンタデシルアセテート、Z8−ペンタデセニルアセテート、E9−ペンタデセニルアセテート、ヘキサデシルアセテート、Z3−ヘキサデセニルアセテート、Z5−ヘキサデセニルアセテート、E6−ヘキサデセニルアセテート、Z7−ヘキサデセニルアセテート、Z9−ヘキサデセニルアセテート、Z10−ヘキサデセニルアセテート、Z12−ヘキサデセニルアセテート、ヘプタデシルアセテート、Z11−ヘプタデセニルアセテート、オクタデシルアセテート、E2−オクタデセニルアセテート、Z11−オクタデセニルアセテート、E13−オクタデセニルアセテート等が挙げられる。
フェロモン物質である二重結合を二つ以上有する炭素数12〜20の脂肪族直鎖状アセテートの具体例としては、Z3E5−デカジエニルアセテート、Z3E5−ドデカジエニルアセテート、E3Z5−ドデカジエニルアセテート、E4Z10−ドデカジエニルアセテート、Z5E7−ドデカジエニルアセテート、E5Z7−ドデカジエニルアセテート、Z8Z10−ドデカジエニルアセテート、9,11−ドデカジエニルアセテート、E4Z7−トリデカジエニルアセテート、11−メチル−Z9,12−トリデカジニルアセテート、E3E5−テトラデカジエニルアセテート、E8E10−テトラデカジエニルアセテート、Z10Z12−テトラデカジエニルアセテート、Z10E12−テトラデカジエニルアセテート、E10Z12−テトラデカジエニルアセテート、E10E12−テトラデカジエニルアセテート、E11,13−テトラデカジエニルアセテート、Z8Z10−ペンタデカジエニルアセテート、Z8E10−ペンタデカジエニルアセテート、Z8Z10−ヘキサデカジエニルアセテート、Z10E12−ヘキサデカジエニルアセテート、Z11Z13−ヘキサデカジエニルアセテート、Z11E13−ヘキサデカジエニルアセテート、E11Z13−ヘキサデカジエニルアセテート及びZ11E14−ヘキサデカジエニルアセテート等の共役ジエン及び/又は1,4−ペンタジエン系のアセテート化合物が挙げられる。
フェロモン物質である炭素数7〜20の脂肪族直鎖状アルコールの具体例としては、n−ヘプタノール、Z4−ヘプテノール、Z6−ノネノール、Z6,8−ノナジエノール、E6,8−ノナジエノール、n−デカノール、Z5−デセノール、E5−デセノール、n−ウンデカノール、ウンデセノール、11−クロロ−E8E10−ウンデカジエノール、n−ドデカノール、Z5−ドデセノール、Z7−ドデセノール、E7−ドデセノール、Z8−ドデセノール、E8−ドデセノール、Z9−ドデセノール、E9−ドデセノール、E10−ドデセノール、11−ドデセノール、Z5E7−ドデカジエノール、E5Z7−ドデカジエノール、E5E7−ドデカジエノール、Z7Z9−ドデカジエノール、Z7E9−ドデカジエノール、E7Z9−ドデカジエノール、8,9−ジフロロ−E8E10−ドデカジエノール、10,11−ジフロロ−E8E10一ドデカジエノール、8,9,10,11−テトラフルオロ−E8E10−ドデカジエノール、Z9,11−ドデカジエノール、E9,11−ドデカジエノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、Z5−テトラデセノール、E5−テトラデセノール、Z7−テトラデセノール、Z8−テトラデセノール、Z11−テトラデセノール、E11−テトラデセノール、Z9Z11−テトラデカジエノール、Z9E11−テトラデカジエノール、Z9Z12−テトラデカジエノール、Z9E12−テトラデカジエノール、Z10Z12−テトラデカジエノール、E10E12−テトラデカジエノール、n−ペンタデカノール、6,10,14−トリメチル−2−ぺンタデカノール、n−ヘキサデカノール、Z9−ヘキサデセノール、Z11−ヘキサデセノール、E11−ヘキサデセノール、Z7Z11−ヘキサデカジエノール、Z7E11−ヘキサデカジエノール、E10Z12−ヘキサデカジエノール、E10E12−ヘキサデカジエノール、Z11Z13−ヘキサデカジエノール、Z11E13−ヘキサデカジエノール、E11Z13−ヘキサデカジエノール、E11Z13−ヘキサデカジエノール、E4Z6Z10−ヘキサデカトリエノール、E4E6Z10−ヘキサデカトリエノール、n−オクタデカノール、Z13−オクタデセノール、E2Z13−オクタデカジエノール、Z3Z13−オクタデカジエノール、E3Z13−オクタデカジエノール及びn−エイコサノール等の飽和脂肪族直鎖状アルコール又は二重結合を一つ又は二つ以上有する脂肪族直鎖状アルコールが挙げられる。
フェロモン物質である炭素数10〜25の脂肪族直鎖状ケトンの具体例としては、ヘプタデカン−2−オン、Z12−ノナデセン−9−オン、Z6Z9−ノナデカジエン−3−オン、Z13−イコセン−10−オン、Z6−ヘネイコセン−11−オン、Z6−ヘネイコセン−9−オン、Z6E8−ヘネイコサジエン−11−オン、Z6E9−ヘネイコサジエン−11−オン、Z6Z9−ヘネイコサジエン−11−オン、Z7−トリコセン−11−オン等が挙げられる。
フェロモン物質である炭素数10〜30の脂肪族炭化水素の具体例としては、1E11−ペンタデカジエン、1Z11−ペンタデカジエン、5,9−ジメチルペンタデカン、2−メチルヘキサデカン、3,13−ジメチルヘキサデカン、5,9−ジメチルヘキサデカン、n−ヘプタデカン、2−メチルヘプタデカン、2,5−ジメチルヘプタデカン、5−メチルヘプタデカン、5,11−ジメチルヘプタデカン、7−メチルヘプタデカン、7,11−ジメチルヘプタデカン、Z3Z6Z9−ヘプタデカトリエン、Z6Z9−ヘプタデカジエン、Z7−オクタデセン、10,14−ジメチル−1−オクタデセン、5,9−ジチルオクタデカン、2−メチルオクタデカン、14−メチルオクタデカン、Z3Z6Z9−オクタデカトリエン、n−ノナデカン、2−メチルノナデカン、9−メチルノナデカン、Z3Z6Z9Z11−ノナデカテトラエン、1E3Z6Z9−ノナデカテトラエン、Z3Z6Z9−ノナデカトリエン、Z6Z9−ノナデカジエン、Z9−ノナデセン、n−エイコサン、Z9−エイコセン、Z3Z6−エイコサジエン、Z3Z6Z9−エイコサトリエン、1Z3Z6Z9−エイコサテトラエン、1Z3Z6Z9−ヘネイコサテトラエン、n−ヘネイコサン、Z3Z6−ヘネイコサジエン、Z6Z9−ヘネイコサジエン、Z6Z9,20−ヘネイコサトリエン、Z3Z6Z9−ヘネイコサトリエン、Z6−13−メチルヘネイコセン、Z9−ヘネイコセン、n−ドコサエン、Z3Z6Z9−ドコサトリエン、Z6Z9−ドコサジエン、n−トリコサン、Z7−トリコセン、Z3Z6Z9−トリコサトリエン、Z6Z9−トリコサジエン、n−テトラコサン、n−ペンタコサン、Z3Z6Z9−ペンタコサトリエン、n−ヘキサコサン、n−ヘプタコサン、n−オクタコサン、n−ノナコサン等が挙げられる。
フェロモン物質である炭素数10〜20のカルボン酸の具体例としては、カルボキシル基を有する化合物であれば特に限定されないが、3,5−ジメチルドデカン酸、Z−5−ウンデセン酸、E−5−ウンデセン酸、(E,Z)−3,5−テトラデカジエン酸等の炭素骨格中に複数のメチル基を有するものや、二重結合を有するもの等が挙げられる。
多くのフェロモン物質は常温常圧下で液体として存在するが、液体のままでは担持することが困難な場合、これに油性ゲル化剤を添加して固体として用いても良い。本発明で用いられる油性ゲル化剤は、分子中にカルボキシル基、水酸基、エステル、アミド等の分子間水素結合を形成できる極性官能基の少なくとも1つを有しており、これらの極性官能基を介して分子間水素結合が働いている。加熱(好ましくは60〜150℃)により油性ゲル化剤をフェロモン物質中に均一に溶解させると、油性ゲル化剤の分子間水素結合は一旦切断されるが、冷却(放冷放置による冷却を含む)に伴い再形成されていく。その際、油性ゲル化剤分子の周囲にはフェロモン物質が大量に存在するため、油性ゲル化剤はフェロモン物質を取り込みながら分子間水素結合を再生する。フェロモン物質と油性ゲル化剤の分子間にはファンデルワールス力等の弱い相互作用が働いているのみなので、ゲル化後も揮発性物質の揮発性はゲル化前とほとんど変化しない。
油性ゲル化剤の具体例として、アミノ酸誘導体、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、長鎖脂肪酸の多価金属塩、糖誘導体、ワックス等が挙げられ、特にアミノ酸誘導体又は長鎖脂肪酸が好ましい。
油性ゲル化剤であるアミノ酸誘導体の具体例としては、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(コレステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/ベヘニル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジ(フィトステリル/オクチルドデシル)、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド等の好ましくは炭素数2〜15のアミノ酸のアミノ基のアシル化体並びにカルボキシル基のエステル化体又はアミド化体等が挙げられ、特に、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ジブチルアミド、N−エチルヘキサノイル−L−グルタミン酸ジブチルアミドが特に好適であるに例示できる。
油性ゲル化剤である長鎖脂肪酸の具体例としては、炭素数8〜24の飽和又は不飽和脂肪酸の他、長鎖脂肪酸の類縁体である12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。ここで、飽和脂肪酸の具体例としては、例えば、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等が挙げられる。また、不飽和脂肪酸の具体例としては、例えばパルミトレイン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、イコサジエン酸、エルシン酸等が挙げられる。
油性ゲル化剤である長鎖脂肪酸エステルの具体例としては、例えば、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、リノール酸メチル、アラキジン酸メチル、ベヘン酸メチル、リグノセリン酸メチル、パルミチン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、パルミチン酸オクチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル等が挙げられる。
油性ゲル化剤である長鎖脂肪酸の金属塩の具体例としては、上記長鎖脂肪酸と同様の長鎖脂肪酸の金属塩の他、例えば炭素鎖長18の飽和脂肪酸の場合、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸鉄、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛等が挙げられる。
油性ゲル化剤である糖類誘導体の具体例としては、ラウリン酸デキストリン、ミリスチン酸デキストリン、パルミチン酸デキストリン、マルガリン酸デキストリン、ステアリン酸デキストリン、アラキン酸デキストリン、リグノセリン酸デキストリン、及びセロチン酸デキストリン、2−エチルヘキサン酸パルミチン酸デキストリン、パルミチン酸ステアリン酸デキストリン等のデキストリン脂肪酸エステル、パルミチン酸スクロース、ステアリン酸スクロース、酢酸/ステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、フラクトオリゴ糖ステアリン酸エステル、フラクトオリゴ糖2−エチルヘキサン酸エステル等のフラクトオリゴ糖脂肪酸エステル、モノベンジリデンソルビトール、ジベンジリデンソルビトール等のソルビトールのベンジリデン誘導体等が挙げられる。
油性ゲル化剤であるワックスの具体例としては、ハゼ蝋(主成分はパルミチン酸のトリグリセリド)、ウルシ蝋(主成分はパルミチン酸グリセリド、カルナウバ蝋(セロチン酸ミリシル、ミリシルアルコール)、サトウキビロウ(パルミチン酸ミリシル、パーム蝋(パルミチン酸ミリシル)、蜜蝋(セロチン酸、パルミチン酸ミリシル)、鯨蝋(パルミチン酸セチル、羊毛蝋(セリルアルコール及び/又はミリスチン酸)、パラフィンワックス(直鎖状炭化水素)等が挙げられる。
油性ゲル化剤の極性官能基の構造、水素結合力及び非対称性構造によって、フェロモン物質がゲル化する臨界ゲル化濃度は異なる。フェロモン物質の官能基(極性基)と非極性基の配位により油性ゲル化剤の水素結合力が弱められる場合もあり、フェロモン物質の化学構造とゲル化剤の種類により、その臨界ゲル化濃度は異なる。放出性能、経済面を考慮すると担持体に充填されるゲル化されたフェロモン物質は、臨界ゲル化濃度に近い濃度で充填されることが望ましい。具体的には、徐放性の安定性の点において、ゲル化されたフェロモン物質は、フェロモン物質を好ましくは70.0〜99.0質量%、より好ましくは85.0〜99.0質量%、更に好ましくは90.0〜99.0質量%含有する。
従来のゲル化されたフェロモン物質は、表面が乾燥し、フェロモン物質の活性成分がゲル中に閉じこめられてしまう等の問題点から、溶媒等で希釈して流動性ゲルにするのが一般的である。しかし、溶媒等が含まれると、溶媒の揮発性によって徐放と共にゲル化されたフェロモン物質中のフェロモン物質の濃度が大きく変化するため、安定した徐放速度を得ることは困難である。更には、液漏れの対策及び体積の増加による無駄等の不具合が生じる。
ゲル化されたフェロモン物質は、フェロモン物質以外には油性ゲル化剤や、必要に応じて使用する後述の添加剤しか実質的に含まない非流動性のゲルであるため、液漏れ対策が不要で、溶媒等を含まないので不要な体積の増加もない。また、ゲル化されたフェロモン物質中のフェロモン物質が外部空間に放出され、徐放されたフェロモン物質のゲル化に寄与していた分のゲル化剤はゲル表面に粉状に残存するため、ゲル化されたフェロモン物質中のフェロモン物質の濃度は徐放期間を通じてほぼ一定となり、安定した徐放速度を得ることができる。また、ゲル化されたフェロモン物質は非流動性であり、長期間保存も可能であり、常温にて保存する限り流動化は起こらない。ゲル化されたフェロモン物質は、後述の開放型の担持体と組み合わせて放出を制御可能となる点において、好ましくはゲル化されたラクトン化合物(例えば、Z−7,15−ヘキサデカジエン−4−オリド、(R)−Z−5−(オクト−1−エニル)−オキサシクロペンタン−2−オン)である。
更に、フェロモン物質には、BHT(ブチルヒドロキシトルエン)、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)、プロトカテキュア酸エチル、没食子酸イソアミル、没食子酸プロピル等の合成酸化防止剤、NDGA(ノルジヒドログアヤレチン酸)、グアヤク脂等の天然酸化防止剤等の抗酸化剤や、パラジメチルアミノ安息香酸オクチル等のパラアミノ安息香酸系、オキシベンゾン(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、メトキシ桂皮酸誘導体、サリチル酸誘導体等の紫外線吸収剤等の添加剤を含有しても良い。各添加剤の含有量は、好ましくは0.01〜5質量%であり、その合計の含有量は、好ましくは0.02〜10質量%である。
フェロモン物質を少なくとも含み、必要に応じて油性ゲル化剤及び/又は添加剤を含む担持体の形状は、フェロモン物質等を保持できれば特に限定されないが、例えばチューブやボトル、アンプル等の形状が挙げられ、好ましくは、各担持体が、0.5〜5.0cmの最大長を有するチューブ、ボトル及びアンプルからなる群より選択される。特に形状がチューブの場合は放出均一性に優れ、その内径が0.5〜2.0mm、肉厚が0.2〜1.0mmの範囲が好ましい。また、それらはフェロモン物質等を保持することができれば、開口部を有さない密閉型であっても、その一部が開口部を有する開放型であっても構わない。担持体から膜透過し易く揮発性の高いフェロモン物質であれば、密閉型の担持体との組み合わせにより長期間の放出が得られる。また、膜透過し難く揮発性の低いフェロモン物質であれば、ゲル化した後に開放型の担持体と組み合わせることで、交信撹乱をするのに十分な放出を確保することが可能となる。各担持体は、好ましくは、両端のいずれか一方又は両方が開口部として開放されたチューブである。
担持体の材質としては、フェロモン物質が透過するものであれば特に限定されないが、例えば高分子材料が挙げられる。具体的にはポリエチレンやポリプロピレンに例示されるポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エステル共重合体に例示されるエチレンユニット(エチレンの繰り返し単位)を80質量%以上含む共重合体等及び生分解性のポリエステルや塩化ビニル等のポリオレフィン系重合体が挙げられる。担持体は、好ましくは、ポリエチレン、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である。
ロープ状支持体は、担持体を長尺状に配置できるロープ状であれば特に限定されず、例えば、丸形の断面を有するものに限らず、扁平な断面であるテープも含まれる。複数の担持体の各々を、間隔をおいて配置するために、表面に各担持体を挿入するためのポケットを設けたテープ、表面に各担持体を保持するための留め具を備えるテープ、内部に各担持体を保持できる筒状のロープ(以下、「筒状ロープ」とも言う。)が挙げられる。ロープ状支持体は、担持体が離脱しにくい点において、好ましくは、内部に担持体の各々を収納できる筒状のロープ又は中空のテープである。
ロープ状支持体の長さは、設置する圃場のサイズに合せれば良く、好ましくは25〜
100mである。
担持体と担持体の間隔は、害虫の発生密度によって如何様に変更しても良く、特に限定されないが、好ましくは1〜100cm、より好ましくは5〜50cm、更に好ましくは10〜25cmであり、各間隔は異なっても良いが、好ましくは等間隔である。また、筒状ロープ内部に担持体を封入する場合、担持体を固定できるようロープ内径を調節しても良く、特に限定されないが0.7〜3.0mmの範囲が好ましい。
ロープ状支持体は、表面に担持体を保持するときは対候性がある材質であれば特に限定されない。内部に担持体を収納するときは対候性を有し、フェロモン蒸気の拡散を阻害しない形状(例えば網目状)又は材質であれば特に限定されないが、麻や綿に例示される植物繊維、ウールや絹に例示される動物繊維、レーヨン、キュプラに例示されるセルロース系繊維、ポバールに例示されるポリビニルアルコール系合成繊維、ポリエチレンやポリプロピレンに例示されるポリオレフィン系合成繊維、エチレン−酢酸ビニル共重合体やエチレン−アクリル酸エステル共重合体に例示されるエチレンユニットを80質量%以上含む合成繊維等及び生分解性のポリエステルや塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン系合成繊維が挙げられる。
ロープ状フェロモン製剤を用いた害虫の交信撹乱方法は、前記のロープ状フェロモン製剤を圃場に設置するステップを少なくとも含む。設置する製剤の長さは、対象害虫の交尾を阻害するのに十分なフェロモン蒸気を圃場に拡散させることができれば、特に限定されないが、例えば500〜20,000m/ヘクタールである。使用後の製剤の回収・処分に関しては、各国の法令に従って行われれば特に限定されないが、環境負荷の観点からロープ状製剤を巻き取って回収することが好ましい。
以下、本発明の実施例を具体的に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例1及び比較例1
ナガチャコガネの性フェロモン物質(Z)−7,15−ヘキサデカジエン−4−オリドと、ゲル化剤であるステアリン酸を質量比で100:30で配合してゲル化した性フェロモン物質を用いた。
エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる内径0.60mm、肉厚0.30mmのチューブを押出成型により作製した。このチューブに、予めゲル化剤を添加したフェロモン物質を加温しながらチューブの一端から注入した後に放熱させた。そして、両末端をシールすることなく1cm長に切断することにより、両端の開口部から直接フェロモンが蒸散するチューブを作製した。このゲル化フェロモン物質を含むチューブを、コットンリンター製不織布からなる筒状のロープに15cm間隔にて封入することにより、ロープ状フェロモン製剤を作製した。他方、(Z)−7,15−ヘキサデカジエン−4−オリドをゲル化することなく、上記と同じ内径・肉厚を有するEVAからなるチューブの一端より注入し、20cm毎に高周波加熱により溶解封鎖することにより、比較例1のロープ製剤を作製した。
ナガチャコガネの発生が同程度確認された茶圃場を同一地域内より選定し、これら圃場の茶畝の摘栽面に上述のフェロモン製剤を表1に示す処理量にて、ナガチャコガネ成虫の発生前である6月初旬に設置した(図1及び図2)。図1は、実施例1で用いた処理区A(945m)、これに隣接する無処理区B(673m)を示し、処理区Aには、ロープ状フェロモン製剤1として、25mの製剤を37本、20mの製剤を1本、図1に示すように配置した。図2は、比較例1で用いた処理区C(754m)、これに隣接する無処理区D(994m)を示し、処理区Cには、比較例1のロープ製剤101として25mの製剤を2本、図2に示すように配置した。実施例1の処理区A及びこれ対応する無処理区B、比較例1の処理区C及びこれに対応する無処理区Dの茶圃場中央に、フェロモントラップを各々1個設置して誘引阻害率データを得た。また、ナガチャコガネの交尾期間中、上記実施例1の処理区Aとこれに対応する無処理区Bにてそれぞれ566頭と438頭、比較例1の処理区Cとこれに対応する無処理区Dにてそれぞれ222頭と229頭の野外雌成虫の採集を行い、交尾阻害率データを得た。
Figure 0006561021
交信撹乱効果の間接的な評価方法として、下式にて表される誘引阻害率を用いた。数値が高い程その効果は高い。尚、値がマイナスの場合は0と表記した。
誘引阻害率(%)=
{(無処理区の誘殺虫数−フェロモン処理区の誘殺虫数)/(無処理区の誘殺虫数)}×100
実施例1及び比較例1のフェロモン製剤を設置した圃場の誘引阻害率を表2に示す。
Figure 0006561021
交信撹乱効果の直接的な評価方法として、下式にて表される交尾阻害率を用いた。数値が高いほどその効果は高い。尚、値がマイナスの場合は0と表記した。
交尾阻害率(%)=
{(無処理区の交尾率−フェロモン処理区の交尾率)/(無処理区の交尾率)}×100
実施例1及び比較例1のフェロモン製剤を処理した圃場の交尾阻害率を表3に示す。
Figure 0006561021
実施例1のロープ状フェロモン製剤を処理した方が、比較例1のロープ製剤を用いるよりも誘引阻害率、交尾阻害率共に高い数値が得られた。両製剤共に、単位面積当たりのフェロモン投与量は16.5g/10アールと等量であるにも関わらず、交信撹乱効果は実施例1の方が格段に優れていた。これは、比較例1のロープ製剤では圃場中の濃度ムラが大きく、交信撹乱効果が安定しなかったことに対して、実施例1のロープ状製剤では圃場中の濃度ムラが小さく、交信撹乱効果が安定していたためと考えられる。
1 実施例1で用いたロープ状製剤
101 比較例1で用いた製剤
A、C 処理区
B、D 無処理区

Claims (7)

  1. フェロモン物質と、
    前記フェロモン物質を少なくとも含む複数の担持体と、
    前記担持体の各々を、間隔をおいて保持するロープ状支持体と
    を備えるロープ状フェロモン製剤。
  2. 前記担持体の各々が、0.5〜5.0cmの最大長を有するチューブ、ボトル及びアンプルからなる群より選択される請求項1に記載のロープ状フェロモン製剤。
  3. 前記担持体の各々が、ポリエチレン、又はエチレン−酢酸ビニル共重合体である請求項1又は請求項2に記載のロープ状フェロモン製剤。
  4. 前記担持体の各々が、両端のいずれか一方又は両方が開口部として開放されたチューブである請求項1〜3のいずれか1項に記載のロープ状フェロモン製剤。
  5. 前記ロープ状支持体が、内部に前記担持体の各々を収納できる筒状のロープ又は中空のテープである請求項1〜4のいずれか1項に記載のロープ状フェロモン製剤。
  6. 前記フェロモン物質が、ゲル化されたラクトン化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のロープ状フェロモン製剤。
  7. 請求項1〜6に記載のロープ状フェロモン製剤を圃場に設置するステップを少なくとも含む害虫の交信撹乱方法。
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