JPH0360359B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本発明は、スケール防止剤に係り、さらに詳し
くは、給排水配管の水中にスケール防止有効成分
を徐々に溶解し、水中の溶解物や浮遊物質が配管
壁へ析出固着して生成するスケールを長期間に渉
り防止するスケール防止剤に関する。 本発明のスケール防止剤は、トイレの排水管や
トラツプ内に生成するスケールの防止剤として使
用し得るばかりでなく、台所、浴室等の排水管、
空調機の冷却水配管のスケール防止剤として使用
できる。 〔従来の技術〕 配管系へのスケールの生成は、給排水系に詰ま
りを生じ、その機能を低下させるかまたは停止に
至らせる。たとえば、トイレの排水系には、尿中
のカルシウム分や有機物が析出固着して尿石と呼
ばれるスケールが生成し、排水管が閉塞してトイ
レが使用できなくなり、また悪臭発生の原因とな
る。 給排水系内に生成したスケールの除去方法とし
て、無機強酸による溶解除去法や、機械器具を使
用して物理的に除去する方法が一般に採用されて
いるが何れの方法においても完全なスケールの除
去は極めて困難である。 スケールの生成を防止する方法として、スケー
ルの生成を防止するに有効な少量の化学物質を、
給排水中に溶解する方法がある。たとえば界面活
性剤を主体とする水易溶性固体または液体を適当
な容器に収納し、流水中に浸漬して該界面活性剤
を水中に溶出させる方法、配管途中に薬液注入装
置を設置し、水中にスケール防止に有効な薬液を
強制的に注入する方法があり、特開昭59−56499
号公報には、常温で固体の界面活性剤と、ステア
リン酸のアルカリ金属塩を主成分とする軟化防止
成分を溶融混合し、成形した成形体を男子用トイ
レ便器内や、水洗用貯水槽内に投入する方法が提
案されている。 〔発明が解決しようとする問題点〕 前記従来技術において、界面活性剤を使用する
ものにあつては、その水への溶解速度を制御する
ことが難かしく、また、薬液注入装置を使用する
ものにあつては、注入装置およびその設置工事を
必要とし、実用化は極めて困難である。さらに軟
化防止剤を使用するものにあつては、軟化防止剤
の使用量が過剰な場合、界面活性剤の溶出量が過
少となり、充分なスケール防止効果を生じること
が難かしく、また、軟化防止剤の使用量が過少な
場合には、形崩れを生じて、給排水管の入口を閉
塞する。すなわち、界面活性剤の種類、およびス
テアリン酸カルシウム等の軟化防止剤の種類およ
びその量比を制御することは極めて困難である。 本発明は、これらの従来技術の有する技術的課
題を解決した、長期間有効でかつ、有効期間内に
形崩れの生じないスケール防止剤およびその使用
方法を提供することを発明の目的とする。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は、スケール防止有効成分を、パラジク
ロルベンゼンを基材として成形してなるスケール
防止剤および該スケール防止剤を給排水系の流水
中もしくは、該系内に合流する水と大気とが交互
に接触する場所に設置するスケール防止方法であ
る。 本発明において、スケール防止有効成分は、水
中に存在するスケール生成成分の水への溶解度を
上昇させ、配管系へのスケールの析出固着を防止
し得る物質もしくは、配管壁の表面状態を変え、
スケールの析出固着を防止し得る物質であり、か
つ、パラジクロルベンゼンと混合して、成形し得
るものが用いられる。即ち、スケール防止有効成
分として、スルフアミン酸またはキレート剤のう
ち少なくとも一種が使用される。 このうち、キレート剤としては、カルシウムイ
オンと反応して水溶性キレート化合物を形成す
る、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウ
ム、ニトリロ三酢酸ナトリウム等を使用すること
ができる。 本発明において、基材として使用するパラジク
ロルベンゼンは、特に純粋なものである必要はな
く、他の昇華性物質または水溶性物質が混入して
いてもよい。ただし、昇華性のない水不溶物質の
混入は好ましくない。 本発明において、スケール防止剤はスケール防
止有効成分、パラジクロルベンゼン以外に溶解速
度遅延剤、消臭剤、着色剤、増粘剤、腐蝕防止剤
等を含有することができる。溶解速度遅延剤は、
スケール防止有効成分の溶解速度を調整するため
に添加されるものであり、たとえば、ステアリン
酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タル
ク等の撥水性の微粉末が好ましく用いられる。消
臭剤は、悪臭をマスクして芳香を漂わせるために
添加され、各種調整香料が使用される。パラジク
ロルベンゼン消臭作用を有するので、香料の添加
は極く少量でも大きな消臭効果を挙げることがで
きる。着色剤は、スケール防止剤が、尿等により
着色し、不快感を与えるのを防止する目的で添加
され、赤、黄、緑、青等の原色系の鮮やかな色調
の染料が好ましく使用される。増粘剤は、スケー
ル防止剤の製造法の一態様である溶融法におい
て、スケール防止有効成分が、溶融パラジクロル
ベンゼン中で沈降するのを防止するために、溶融
パラジクロルベンゼンに粘性を持たせることを目
的として添加されるものであり、パラジクロルベ
ンゼンとほぼ同等の融点を有し、パラジクロルベ
ンゼンと均一混合が可能な界面活性剤、ポリエチ
レングリコール等が使用される。腐蝕防止剤は、
スケール防止有効成分による配管系の腐蝕を防止
することを目的として添加され、たとえば、スケ
ール防止有効成分としてスルフアミン酸を使用す
る場合には、ポリアミン等の各種耐酸用腐蝕防止
剤が用いられる。 本発明において、スケール防止剤中のパラジク
ロルベンゼンの含有量は、10〜90重量％、好まし
くは、30〜70重量％であり、スケール防止有効成
分の含有量は、その種類によつても異るが90〜10
重量％、好ましくは70〜30重量％である。 本発明において、スケール防止剤は、スケール
防止剤、パラジクロルベンゼンおよび所望により
添加される添加剤からなる混合物の成形体であ
り、たとえば、球状、立方体状、円柱状、孔明き
円柱状、円板状、円錐状、角錐状、動植物形状等
の任意の形状の成形体である。特に球状成形体が
好ましく使用される。 本発明のスケール防止剤は、種々の成形方法に
よつて製造することができる。たとえば、42メツ
シユ以下、好ましくは60メツシユ以下に粉砕した
パラジクロルベンゼンと粉末状のスケール防止有
効成分および所望により添加される添加剤を混合
し、加圧成形する方法がある。該方法において、
粉砕したパラジクロルベンゼンの粉末は、短時間
の間に再凝固するので、粉砕後直ちに他の成分と
混合し、スプレー破砕等の方法により顆粒状の組
成物とし、該顆粒状組成物を加圧成形する等の対
策をとることが好ましい。また、パラジクロルベ
ンゼンを70〜80℃の温度に加熱溶融した、溶融パ
ラジクロルベンゼンに、スケール防止有効成分お
よび所望により添加される添加剤、好ましくはパ
ラジクロルベンゼンに対して10〜30重量％の前記
した増粘剤を添加して溶融スラリーとし、該溶融
スラリーを金型に注入して成形する方法を採用す
ることもできる。該方法において、パラジクロル
ベンゼンの加熱温度が80℃を越えると蒸発速度が
大きくなり過ぎ取扱いが困難となり、また、70℃
未満では凝固速度が早過ぎ金型への注入が困難と
なる。溶融パラジクロルベンゼンと混合すべき粉
末成分は、大粒径であると沈降し易くなるので、
60メツシユ以下、好ましくは100メツシユ以下の
粒度に粉砕して用いるのが望ましい。さらに、上
記方法で製造した溶融スラリーを、一端造粒し、
該造粒物を加圧成形する方法によつてもスケール
防止剤を製造することができる。該方法において
は、溶融スラリーをフレーカー等によりフレーク
状に固化させた後、粉砕して造粒する方法、冷気
中に溶融スラリーを滴下して造粒する方法等によ
り造粒することができる。香料、溶解速度遅延剤
等の少量添加成分は、溶融スラリーに添加するよ
りも、造粒物に添加混合する方がよりその効果が
有効に発揮される。 本発明のスケール防止剤は、それぞれ給排水系
の流水中たとえば貯水槽中に投入する方法、もし
くは、該系内に合流する水と大気とが交互に接触
する場所たとえば男子用トイレの便器、空調用冷
水塔の水受皿等に設置して使用する。 〔作用〕 本発明のスケール防止剤は、水可溶性のスケー
ル防止有効成分と、パラジクロルベンゼンとの混
合成形体であることによりパラジクロルベンゼン
の昇華に伴いスケール防止有効成分が表面に析出
し、この析出したスケール防止有効成分が水中に
溶解し、給排水配管系へのスケールの固着を防止
する。パラジクロルベンゼンを基材とする成形体
は、大気中および流水中においてその形状維持性
が極めて高く、一般にパラジクロルベンゼンが昇
華消失してしまうまで最初の形状が維持される。
すなわち、パラジクロルベンゼンを基材とするこ
とにより、パラジクロルベンゼンが昇華消失する
まで、スケール防止有効成分を長時間に渉り流水
中に徐放する。すなわち、流水が間けつ的に流れ
るたとえば男子用トイレ便器内に投入設置して使
用する場合を例にとると、不使用時にはパラジク
ロルベンゼンが昇華し、表面に多孔質のスケール
防止有効成分層が付着した状態になり、次に、尿
や、洗浄水が接触するとスケール防止有効成分
は、小量の尿や洗浄水に容易に溶解し、新たにパ
ラジクロルベンゼンが表面に現われる。パラジク
ロルベンゼンが表面に現われるとスケール防止有
効成分の溶出は止まり、再びパラジクロルベンゼ
ンの昇華が始まる。このようにパラジクロルベン
ゼンの昇華と、スケール防止有効成分の水中への
溶解が交互に行われることにより、長時間に渉る
スケール防止が可能となる。特に、スケール生成
成分の濃度が最高である尿に、スケール防止有効
成分を直接最高濃度に溶解させることができ、洗
浄水が流されない場合でもスケールの発生を防止
することができる。トイレ排管中のスケールは、
尿の成分が細菌の作用や空気との長時間の接触に
より分解、濃縮されて発生するため、短時間に多
人数が使用する場合よりも、少人数が間けつ的に
使用する場合の方が発生し易い。したがつて、ス
ケール防止有効成分をトイレの使用人数に比例さ
せて溶出させる必要はない。本発明のスケール防
止剤は、前記した如きスケール防止有効成分の溶
出機構であるため、短時間に多人数が使用するト
イレの場合には、低濃度のスケール防止有効成分
しか溶解せず、少人数が、かなりの時間を置いて
間けつ的に使用するトイレの場合には、高濃度の
スケール防止有効成分を溶解するため、効果的に
スケールの発生を防止し、かつ、使用人数による
スケール防止剤の有効期間の変動を少なくする。
パラジクロルベンゼンの含有量が10wt％未満で
は、水可溶性成分の流出速度が早過ぎるばかりで
なく、剤形の維持が困難となり好ましくない。ま
た、90wt％を越えると、含有させ得るスケール
防止有効成分量が少なくなるばかりでなく、その
溶出速度も遅くなり過ぎ、有効なスケール防止効
果を生じさせることができない。したがつて、パ
ラジクロルベンゼンの含有量は、30〜70wt％と
することが好ましい。 本発明のスケール防止剤は、前記した如く任意
の形状の成形体であるが、球形もしくはそれに類
似する形状たとえば卵形等とすることが好まし
い。球形のスケール防止剤を男子用トイレ便器内
等に投入設置する場合、器体との接触が点接触で
あるため目皿を閉塞し、尿および洗浄水の流出を
悪化させることもなく、また、尿や洗浄水がスケ
ール防止剤に直接当つても便器外への飛散を最小
限に止める。また、家庭用トイレ貯水槽の給水兼
用手洗い口、各種トイレ貯水槽の給水口に設置す
る場合も、水の飛散等を考慮すると球形であるこ
とが望ましい。 本発明のスケール防止剤は、前記詳述した如き
作用を有するので、それを流水中好ましくは、大
量の空気を含む流水中、たとえば、冷暖房装置用
の冷水塔の水受皿等に設置するか、もしくは、水
が間けつ的に流れる場所、たとえば、前記したト
イレ便器内、トイレ貯水槽の給水兼手洗い口、ト
イレ貯水層の給水口、台所の流し台の排水口、浴
室の排水口等に設置することにより、それらの給
排水管系のスケール生成を長期間にわたり防止す
る。 〔実施例〕 以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明
する。ただし、本発明の範囲は、下記実施例によ
り何等限定されるものではない。 実施例１〜３および比較例１〜３ スケール防止有効成分と、60メツシユ以下に粉
砕したパラジクロルベンゼンとの量比およびスケ
ール防止有効成分の種類を種々変化させた混合物
の100重量部にステアリン酸カルシウム１重量部
を添加した混合物を加圧成形し、直径40mmの球状
成形体を製造した。 使用したスケール防止有効成分の種類およびそ
のパラジクロルベンゼンとの量比を第１表中に示
す。 比較例 ４ 常温で固体のプロピレンオキシド・エチレンオ
キシド共重合体90重量部およびステアリン酸ナト
リウム10重量部からなる混合物を75℃に加熱して
溶融し、実施例４で用いたと同一の金型に注入
し、直径40mmの球状成形体を製造した。 比較例 ５ 常温で固体のプロピレンオキシド・エチレンオ
キシド共重合体40重量部、スルフアミン酸60重量
部およびステアリン酸カルシウム１重量部からな
る混合物を75℃に加熱溶融し、実施例４で用いた
と同一の金型に注入して直径40mmの球状成形体を
得た。 試験例 実施例１〜３および比較例１〜５で製造した成
形体を、排水管内及び便器内の汚れを除いた男子
用トイレ便器内に各々２個づつ投入し、通常のト
イレ使用を行い、投入成形体の形状の変化、消滅
までの所要日数、および30日後の排水管および便
器の汚れ状態を観察した。試験結果を第１表中に
ブランクの結果と共に示す。 第１表中、便器汚れは、成形体投入30日後の排
水管入口トラツプ部および排水管内の状態を下記
の３段階で表示する。 ○：汚れなし △：少し汚れ ×：汚れ また、成形体の変形も下記の３段階で表示す
る。 ○：変形なし △：変形 ×：著しく変形

〔発明の効果〕

本発明のスケール防止剤は、前記第１表中の試
験結果および実施例４に示す如く、形状保特性に
優れ、かつ、長期間に渉つてスケール防止有効成
分を溶出し、スケールの付着を防止する。 実施例においては、男子用トイレの便器に投入
設置した場合の例を示したが、男子用トイレと同
様に間けつ的に流水のある給排水系、および大気
にも接触する流水のある給排水系に使用しても同
様の効果を得ることができる。 本発明において、スケール防止有効成分を主剤
とするスケール防止剤を提供したが、本発明の手
法は、有効成分を代えることにより、浄化槽排水
の消毒等、多量の流水中に少量の薬剤を長期間に
渉つて安定に溶解させる分野への応用が期待でき
る。 本発明は、使用が容易で、かつ、長期間に渉つ
て給排水系の配管へのスケールの付着を防止し得
るスケール防止剤を提供するものであり、その産
業的意義および公衆衛生的意義は極めて大きい。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ スルフアミン酸またはキレート剤の少なくと
   も一種10〜90重量％、パラジクロルベンゼン90〜
   10重量％を含有する成形体であることを特徴とす
   るスケール防止剤。 ２ 他の添加剤を含有する特許請求の範囲第１項
   記載のスケール防止剤。 ３ スルフアミン酸またはキレート剤の少なくと
   も一種10〜90重量％、パラジクロルベンゼン90〜
   10重量％を含有する成形体であることを特徴とす
   るスケール防止剤を給排水系の流水中または該系
   に合流する水と大気とが交互に接触する場所に設
   置し、スケール防止剤中のスケール防止有効成分
   を徐々に流水中に溶解させることを特徴とする給
   排水系のスケール防止方法。 ４ スケール防止剤の設置場所が男子用トイレの
   便器内である特許請求の範囲第３項記載のスケー
   ル防止方法。