JP4647826B2 - トラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップ、より詳しくは、固体酸を有効成分とする固形タイプのスケール防止剤を保持することができるトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップに関する。
【0002】
【従来の技術】
トイレ排水管、特に、男子用トイレの排水管には、尿の分解により生成するカルシウム系化合物や有機物の混合物が固着した尿石と称されているスケールが生成し、尿及び洗浄水の流れを悪化させ、はなはだしい場合には排水管を閉塞し、トイレは使用不能の状態となる。また、尿石中の有機物は、細菌により腐敗し悪臭を発生する。男子用トイレの悪臭は、有機物の腐敗による悪臭と尿の分解により発生するアンモニアの混合臭である。
【0003】
従来、トイレ排水管のスケール防止方法として、薬剤を洗浄水配管の途中に注入する方法及び球状に成形した薬剤を男子用トイレの便器内に投入する方法などが実用化されている。これらの方法において使用する薬剤として、界面活性剤、殺菌剤及び香料を含有するものが種々提案されている。例えば、特公昭45−30706号公報には、界面活性剤、イオン封鎖剤、香料等をポリエチレングリコール又はポリプロピレングリコールと芳香物質と共に溶融混合し、注入成形してなる水洗式トイレの消臭洗浄剤が記載され、また特開昭57−168668号公報には、常温で固体のポリエチレングリコール、難水溶性の芳香物質、非イオン系界面活性剤及び香料等の添加剤からなる混合溶融物を冷却固化して成形した洗浄防汚芳香剤が記載されている。
【0004】
また、仏国特許第1501248号明細書及び英国特許第897733号公報には、スルファミン酸とパラジクロルベンゼン等からなる清掃薬剤が記載されているが、これらの薬剤はいずれも、トイレ排水管へのスケールの固着を防止するものであるが、トイレ排水管に固着したスケールをも除去するものであり、スケール防除剤である。さらに、トイレ排水管に一旦固着してしまったスケールの防除方法として、塩酸等の無機強酸を使用しスケールを溶解する方法、便器を取りはずし機械的にスケールを除去する方法が採用されている。
【0005】
トイレ排水管の腐食や浄化槽の浄化能力の低下がない、トイレ排水管に固着したスケールを除去することなく、トイレ排水管へのスケールの固着のみを防止するトイレ排水管のスケール固着防止方法やスケール防止剤が数多く提案されている。例えば、尿および/または洗浄水に、鉱酸類、有機酸類、水溶性酸性塩類、強酸と弱塩基との水溶性塩類およびスルファミン酸から選ばれる1種又は2種以上の酸性物質を含有する水溶液を添加して、尿または尿と洗浄水との混合排水のpHを5〜7.5に保持するトイレ排水管のスケール固着防止方法(特許第2931255号公報)や、固体酸を有効成分とし、所望により添加される基材及び/又は他の添加剤を含有する成形体からなるトイレ排水管のスケール防止剤(特許第2135584号公報)や、カルシウムイオンと反応してpH5〜8.5の範囲の水に対する溶解度が0.001g/100g(水)以下の塩を生成しない固体酸を有効成分とし、尿または尿と洗浄水との混合排水のpHを5〜8.5に保持しうるように、昇華性基材を20重量%以上含有せしめた成形体からなるトイレ排水管のスケール固着防止剤(特許第2784904号公報)や、カルシウムイオンと反応してpH5〜8.5の範囲の水に対する溶解度が0.001g/100g(水)以下の塩を生成しない固体酸を有効成分とし、20℃の水に対する溶解度が0.001〜20g/100gである固体酸及び/又は非昇華性基材を20重量%以上含有する成形体を使用し、尿又は尿と洗浄水との混合排水のpHを5〜8.5に保持することを特徴とするトイレ排水管のスケール固着防止方法(特許第2928772号公報)や、20℃の水に対する飽和溶解度が1g/100g水以下の固体酸を70重量%以上含有する成形体からなる浸漬型尿石防止剤(特開平2−147697号公報)などが提案されている。
【0006】
また、固化性及び難崩壊性に優れ、かつ尿石防止作用・洗浄作用に優れたパラジクロロベンゼンを含有しないスケール防止剤についても提案されている。例えば、特開平11−116996号公報には、トリアルキルトリオキサンと、該トリアルキルトリオキサンと相溶性を有しかつ該トリアルキルトリオキサンとの相溶物が室温において固化能を有する界面活性剤と、固体酸とを含有する固形成型体からなる尿石防止剤が記載され、特開平11−80800号公報には、トイレ用清浄剤等の基剤として有用な、界面活性剤と、芳香族ケトン、芳香族脂肪酸エステル、ナフチル基含有化合物、炭素数7〜18である環状及び/又は鎖状カルボン酸、炭素数10〜18である環状及び/又は鎖状アルコール、炭素数6〜12である環状及び/又は鎖状アミン、キノン類、及びヒドロキシベンズアルデヒド類から選ばれ、該界面活性剤と相溶性を有しかつ該界面活性剤との相溶物が室温において固化能を有する物質とを含有する難水溶性固形組成物が記載され、特開2000−204397号公報には、DL−カンフル、ナフタレン、ボルネオール、アダマンタン、シクロドデカン、トリイソプロピルトリオキサン、ジメトキシベンゼン、クマリン等の非ハロゲン系昇華性物質と該非ハロゲン系昇華性物質と融解混合物を形成することができる有機酸とを加温混合し、融解状態の混合物に固体酸を混合した後、成型することにより得られる尿石防止剤が記載されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前記特許第2928772号公報等には、尿石生成や尿石固着防止について次のように記載されている。尿中には、通常水溶性のカルシウムイオンが200〜300ppm、リン酸イオンが2000〜2500ppm含まれている。また、炭酸イオンは洗浄水中に含まれ、また、大気中の炭酸ガスが溶解して補給される。体内から排出された尿のpHは5.5〜6.5程度であるが、大気中に放置するとpHは徐々に上昇し、最終的には9〜9.5に達する。pHが7.5以上になると濁りを生じ、pHの上昇に伴い濁度が上がり、pHが8.5以上になるとカルシウムアパタイトの白色沈殿が析出し、かつ、大気との接触面に炭酸カルシウムの結晶が膜状に生成する。このカルシウムアパタイトと炭酸カルシウムの結晶が、細菌や酵素の作用で生成した水不溶性のタンパク質等の有効物と共にトイレの排水管に固着し、成長して一般に尿石と呼ばれているスケールとなる。該スケールが、カルシウムアパタイト〔Ca5 (PO4)3 OH〕40〜60wt%、炭酸カルシウム〔CaCO3 〕20〜40wt%及び水に不溶の有機物10〜30wt%の混合物であり、カルシウム系のスケールはpHが7.5以下の水では析出せず、pHが7.5〜8.5の範囲の水では析出しても極めて少なく、また、析出に長時間を要することや、尿又は尿と洗浄水との混合排水は、尿の分解酵素や細菌等の作用により、アンモニアを生成し短時間にpHが上昇することや、尿又は尿と洗浄水との混合排水のpHを8.5以下、好ましくは7.5以下に保持することにより、トイレ排水管へのスケールの固着を防止できることや、尿又は尿と洗浄水との混合排水のpHがトイレ排水管に固着したスケールを除去し得るほど低すぎると、排水管の腐食が問題となるので、尿又は尿と洗浄水との混合排水のpHの好ましい下限は5であり、好ましくは5.5であるとされている。
【0008】
尿又は尿と洗浄水との混合排水のpHを5〜8.5に保持し、トイレ排水管の腐食や浄化槽の浄化能力の低下がない、トイレ排水管に固着したスケールを除去することなく、トイレ排水管へのスケールの固着のみを防止するトイレ排水管の前記スケール固着防止方法やスケール固着防止剤は、既に実用化されており、きわめて完成度の高いものといえるが、トラップ着脱式トイレにおいては、トラップ溜水のpHを5〜8.5に保持した場合、流入してきた尿及び洗浄水によりトラップ溜水が希釈され、実際にはトイレ排水管へのスケールの固着防止が不充分となり、少量のスケールの固着が認められる場合が新たに発生することを見い出した。本発明の課題は、トラップ着脱式トイレにおけるスケールの固着を簡便かつ効率よく、また長期にわたり確実に防止する上で、有利に用いることができる着脱式トラップを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究し、殆どのトラップ着脱式トイレにおけるトラップ溜水部は陶器製あるいはプラスティック製であり、腐食の心配がないことにヒントを得て、トラップ溜水のpHを3.5〜4.5に維持したところ、流入してきた尿及び洗浄水によりトラップ溜水が希釈され、トイレ排水管にはpH5.0〜6.0の混合水が接触し、トラップ溜水部やトイレ排水管へのスケールの固着が防止できるとの知見を得た。かかる知見に基づき、トラップ溜水のpHを3.5〜4.5に長期にわたり簡便に維持する方法について検討し、固体酸を有効成分とする固形タイプのスケール防止剤を不織布からなる袋体に収納し、該袋体の所定部分をトラップ溜水に浸漬した状態で掛止・保持すると、袋体内の固形タイプのスケール防止剤の所定の体積部分がトラップ溜水に浸漬し、浸漬部分が溶解しても、非浸漬部分が下方に移動して新たにトラップ溜水に浸漬し、常時トラップ溜水に浸漬している体積部分がほぼ一定に保たれ、長期にわたる有効成分の溶出速度の制御が容易となることを見い出し、次いでトラップ着脱式トイレの着脱式トラップに掛止手段を設け、前記固形タイプのスケール防止剤が収納された袋体を所定の一定高さに保持したところ、トラップ溜水のpHを3.5〜4.5に維持しうることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、(1)固形タイプのスケール防止剤の保持機構を有することを特徴とするトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップや、(2)固形タイプのスケール防止剤の保持機構が、固形タイプのスケール防止剤の所定の体積部分をトラップ滞留水に浸漬することができる保持機構であることを特徴とする上記(1)記載のトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップや、(3)固形タイプのスケール防止剤の保持機構が、着脱式トラップに設けられた脱着自在な掛止手段であることを特徴とする上記(1)又は(2)記載のトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップや、(4)所定形状の傾斜した平板部と、該平板部に固着された筒状胴部とを有するトラップ着脱式トイレに用いられる着脱式トラップであって、前記平板部には保持蓋を脱着自在に装着することができる開口部が設けられ、該開口部に脱着自在に装着される前記保持蓋の下面には、固形タイプのスケール防止剤を保持するためのフックが固着されており、該フックが前記筒状胴部の外側に位置するように前記保持蓋が前記開口部に装着されていることを特徴とするトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップに関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップとしては、固形タイプのスケール防止剤の保持機構を有するものであれば特に制限されるものではなく、ここでトラップ着脱式トイレとは、便器に内蔵された着脱式トラップを有し、排水管中にトラップが設けられていない男子用小便器をいう。以下、本発明の着脱式トラップについて図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の着脱式トラップ1の概略斜視図であり、図2は、本発明の着脱式トラップ1と男子用小便器2の一部の概略斜視図であり、図3は、図1に示される着脱式トラップ1がセットされた男子用小便器2の使用状態を示す縦断面図であり、図4は、図1に示される着脱式トラップ1に用いられる、固形タイプのスケール防止剤が不織布の袋体に収容された、掛止部を有するトイレ用スケール防止具の斜視図であり、図5は、他の態様の本発明の着脱式トラップ10の概略縦断面図であり、図6は、さらに他の態様の本発明の着脱式トラップ20の概略斜視図であり、図7は、図6に示される着脱式トラップ20に用いられる、固形タイプのスケール防止剤が不織布の袋体に収容されたトイレ用スケール防止具の斜視図である。
【0012】
図1〜図3に示される本発明の着脱式トラップ1は、所定形状の傾斜した平板部2と、該平板部2に固着された筒状胴部3とを有し、前記平板部2には保持蓋4を脱着自在に装着することができる開口部5が設けられ、該開口部5に脱着自在に装着される前記保持蓋4の下面には、固形タイプのスケール防止剤Sを保持するためのフック6(掛止手段)が固着されており、該フック6が前記筒状胴部3の外側に位置するように前記保持蓋4が前記開口部5に装着されるようになっている。また図3に示すように、スケール防止剤Sを保持蓋4のフック6に掛止した状態で着脱式トラップ1を便器8にセットしたとき、スケール防止剤Sの一部(所定の体積部分)がトラップ溜水に浸漬するように、スケール防止剤Sの掛止部Rを調節しておくことが、長期にわたり有効成分の溶出速度を制御する上で好ましい。さらに、フック6を備えた保持蓋4を開口部5に脱着自在に装着することができるようにしておくと、スケール防止剤Sが開口部5を通過しうる大きさである場合、着脱式トラップ1を便器8から取り外すことなく、保持蓋4のみを取り外してスケール防止剤Sを交換することができる。なお、図示されていないが、着脱式トラップ1の上面には、取手部や通水孔を設けることもできる。
【0013】
図5に示される本発明の着脱式トラップ10は、前記平板部2に固着された筒状胴部3に直接フック6が立設されているタイプのトラップで、この場合も、スケール防止剤Sを筒状胴部3のフック6に掛止した状態で着脱式トラップ10を便器8にセットしたとき、スケール防止剤Sの一部(所定の体積部分)がトラップ溜水に浸漬するように、スケール防止剤Sの掛止部Rを調節しておくことが、長期にわたり有効成分の溶出速度を制御する上で好ましい。また、図6に示される本発明の着脱式トラップ20は、前記平板部2に固着された筒状胴部3に直接孔あきポケット7が固着されているタイプのトラップで、この場合、スケール防止剤Sを孔あきポケット7に投入した状態で着脱式トラップ20を便器にセットしたとき、スケール防止剤Sの一部(所定の体積部分)がトラップ溜水に浸漬するように、筒状胴部3に対する孔あきポケット7の固着位置を設定しておくことが、長期にわたり有効成分の溶出速度を制御する上で好ましい。なお、着脱式トラップ20の上面には、取手部21や通水孔22が設けられている。
【0014】
本発明の着脱式トラップに保持される固形タイプのスケール防止剤としては、公知の固形タイプのトイレ用スケール防止剤を含めて、スケールの固着防止作用を有するものであれば特に制限されないが、固体酸を有効成分とするものが好ましく、ここで固体酸とは、常温で固体の酸性物質をいい、かかる固体酸としては、カルシウムイオンと反応してpH5〜8.5の範囲の水に対する溶解度が0.001g/100g(水)以下の塩を生成しないものが好ましく、例えば、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、マレイン酸、イソフタル酸、酒石酸、蓚酸、没食子酸、ヒドロキシ酢酸、P−トルエンスルホン酸、フマル酸、アジピン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、プラシジル酸、ヒドロケイ皮酸、無水マレイン酸、安息香酸、ソルビン酸、アスコルビン酸等の常温固体の有機酸類や、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素アンモニウム等の水溶性酸性塩類、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム等の強酸と弱塩基との水溶性塩類及びホウ酸、スルファミン酸などを挙げることができ、これら酸性物質は、1種単独又は2種以上の混合物として使用できる。
【0015】
上記固体酸の中でも、20℃の水に対する飽和溶解度が20g/100gを超える塩化アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、スルファミン酸などの易溶性の固体酸を主成分として用いる場合は、遅溶性の固体酸、遅溶性の基材、難溶性の固体酸、難溶性の基材からなる群から選ばれる1種又は2種以上の固体酸や基材を併用することが好ましく、ここで遅溶性の固体酸又は基材とは、20℃の水に対する飽和溶解度が0.2〜20g/100gのものをいい、遅溶性の固体酸としては、コハク酸、ホウ酸、アジピン酸、サリチル酸、プラシジル酸、ヒドロケイ皮酸、無水マレイン酸等の加圧成形性が良好であるか、加熱溶解が容易なものが好ましく、また難溶性の固体酸又は基材とは、20℃の水に対する飽和溶解度が0.001〜0.2g/100gのものをいい、難溶性の固体酸としては、イソフタル酸、スベリン酸、クミン酸、テレフタル酸等を好適に例示することができる。
【0016】
例えば、易溶性の固体酸を主成分とする場合、遅溶性の固体酸、遅溶性の基材、難溶性の固体酸、難溶性の基材の含有量が20重量%以上であると、成形体は尿及び/又は洗浄水、あるいはトラップ溜水に接触している間に形状がくずれ難くなり、溶解速度のコントロールが容易となる。また、上記易溶性の固体酸が微粉末の場合には、その粒径は0.1〜1mm程度であることが好ましい。また、上記固体酸の中でも、遅溶性や難溶性の固体酸を主成分として用いる場合、それらが弱酸性の固体酸のときは20℃の水に対する飽和溶解度が20g/100gを超える易溶性の固体酸や基材を20重量%以上併用することが好ましいが、それらが強酸性の固体酸であるときは易溶性の固体酸や基材を配合することもできるがしなくともよい。
【0017】
上記基材としては、固体酸の成形性を良好なものとし、使用に際して成形体を尿及び/又は洗浄水、あるいはトラップ溜水に適当な速度で、かつ、形崩れを起こさずに溶解させることができるものであれば特に制限されないが、パラジクロルベンゼン、ナフタレン等の昇華性基材よりも環境面で非昇華性基材が好ましい。ここで非昇華性基材とは、昇華性物質(水に難溶性で、かつ、常温での蒸気圧が0.05〜5mmHg程度の昇華性を有する物質)を除く物質をいう。かかる非昇華性基材のうち、易溶性基材としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の常温で固体の水溶性高分子、水溶性の各種界面活性剤を例示することができ、遅溶性基材としては、テトラクロロビフェニル、テトロナールシュウ酸メチル、HLBが10〜14の固体非イオン系界面活性剤等を例示することができ、難溶性基材としては、サントニン、L−メントール、サリチル酸フェニル、レゾルシン、ベンズヒドロール、HLBが6〜10の固体非イオン系界面活性剤等を例示することができる。これら非昇華性基材は1種単独又は2種以上の混合物として使用することができる。
【0018】
また、固形タイプのスケール防止剤として、前記特開平11−116996号公報、特開平11−80800号公報、特開2000−204397号公報等に記載されている、固化性及び難崩壊性に優れ、かつ尿石防止作用・洗浄作用に優れたパラジクロロベンゼンを含有しないスケール防止剤も有利に用いることができる。すなわち、トリアルキルトリオキサンと、該トリアルキルトリオキサンと相溶性を有しかつ該トリアルキルトリオキサンとの相溶物が室温において固化能を有する界面活性剤と、固体酸とを含有する固形成型体からなり、その固形成型体を40℃に加温しても溶融しないスケール防止剤や、トイレ用清浄剤等の基剤として有用な、界面活性剤と、芳香族ケトン、芳香族脂肪酸エステル、ナフチル基含有化合物、炭素数7〜18である環状及び/又は鎖状カルボン酸、炭素数10〜18である環状及び/又は鎖状アルコール、炭素数6〜12である環状及び/又は鎖状アミン、キノン類、及びヒドロキシベンズアルデヒド類から選ばれ、該界面活性剤と相溶性を有しかつ該界面活性剤との相溶物が室温において固化能を有する物質とを含有し、その固形成型体を40℃に加温しても溶融しない難水溶性固形組成物を基剤とするスケール防止剤や、DL−カンフル、ナフタレン、ボルネオール、アダマンタン、シクロドデカン、トリイソプロピルトリオキサン、ジメトキシベンゼン、クマリン等の非ハロゲン系昇華性物質と該非ハロゲン系昇華性物質と融解混合物を形成することができる有機酸とを加温混合し、融解状態の混合物に固体酸を混合した後、成型することにより得られるスケール防止剤を有利に用いることができる。
【0019】
上記固形タイプのスケール防止剤は、前記固体酸を有効成分とし、任意の形状、例えば、球状、円柱状、孔空き円柱状、円板状、立方体状、直方体状、円錐状、角錐状、動植物形状等を有する成形体として用いられ、かかる成形体には、固体酸の他に、基材や、所望により、溶解速度調整剤、界面活性剤、消臭剤、香料、着色料、腐食防止剤、殺菌剤、イオン封鎖剤、発泡剤、ウレアーゼ等を添加することができる。そして、これら成形体は、各成分を混合、打錠する方法、各成分の混合物を加熱、溶解した溶融スラリーを成形型に注入して冷却、固化する方法などの公知の成形方法により製造することができる。
【0020】
成形体の水への溶解速度を調整する目的で、成形体に溶解速度調整剤を添加することができる。かかる溶解速度調整剤としては、固体酸や基材との混合物を加熱して均一な溶融混合物の得られる脂肪酸類、高級アルコール類等の難水溶性物質や、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等の撥水性物質の微粉末を好適に例示することができる。トイレ排水管の腐食防止を目的として、腐食防止剤を添加することができる。かかる腐食防止剤としては、アルキルチオ尿素等の耐酸性のカチオン系界面活性剤を好適に例示することができる。悪臭をマスクし芳香を漂わせることを目的として、各種消臭剤、ウレアーゼ、香料を添加することができ、また、成形体の尿等による着色の防止、成形体の残量の検知、洗浄水の着色等を目的として、非水溶性又は水溶性の着色料を添加することができる。また、浄化槽のミクロフローラに影響を与えない種類、又はその影響が無視し得る量の殺菌剤や、酸性物質によるスケールの溶解を補助する目的で、ニトリロ三酢酸等のイオン封鎖剤を添加することができる。
【0021】
また、スケール中に酸性物質を浸透させ、かつスケール中の酸不溶性有機物を洗浄水中に分散させる目的で、界面活性剤を添加することができる。かかる界面活性剤としては、酸性物質と反応しない非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤を好適に例示することができる。スケール除去や排水管の閉塞を防止する目的で、発泡剤を成形体に添加することができる。かかる発泡剤としては、アルカリ金属やアルカリ土類金属の炭酸塩又は炭酸水素塩を好適に例示することができる。固体酸の成形性の向上を目的として、各種結合剤を添加することができる。かかる結合剤として、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースのNa塩等を好適に例示することができる。その他、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等の抗菌剤とテトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類等の多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物などのトイレ用便器清浄剤を添加することもできる。
【0022】
上記固体酸を有効成分とする固形タイプのスケール防止剤は、そのまま着脱式トラップに保持した状態でトラップ溜水部に浸漬することもできるが、不織布等の透水性素材からなる袋体に収納した状態で着脱式トラップに保持してトラップ溜水部に浸漬することが好ましい。上記透水性素材としては、収納されている固形タイプのスケール防止剤の崩壊が防止でき、かつ長期にわたる有効成分の袋体からの溶出速度を制御しうる透水性の素材であれば特に制限されず、例えば、不織布、合成樹脂製網、通水孔を有する合成樹脂シート若しくはフィルム又はフェルトを挙げることができるが、熱融着による袋体作製の容易さ、溶出速度の制御のし易さ、作製コスト、耐崩壊性付与機能等の点で不織布が好ましく、中でも、原料樹脂を直接溶融紡糸して形成した不織布であるスパンボンド不織布が特に好ましい。かかるスパンボンド不織布としては、公知のものや市販されているものを使用することができ、例えば、芯がポリエステルで鞘がポリエチレンの二重構造になっている二成分複合型オレフィン系スパンボンド不織布等を好適に例示することができる。
【0023】
また、前記のように、固体酸を有効成分とする固形タイプのスケール防止剤を不織布からなる袋体に収納し、該袋体の所定部分をトラップ溜水に浸漬した状態で掛止・保持することにより、有効成分の溶出速度を制御することができるが、その他、不織布等の透水性素材の厚みや密度を調整することによっても、透水性素材からなる袋体に収納されている固形タイプのスケール防止剤の袋体からの溶出速度を容易に制御することが可能となる。透水性素材が不織布の場合、特にスパンボンド不織布の場合、使用する固形タイプのスケール防止剤の配合組成や成形条件等にもよるが、その密度としては20〜70g/m3、好ましくは30〜50g/m3、その厚みとしては0.15〜0.40mm、好ましくは0.20〜0.30mmのものが通常好適に使用される。不織布等の透水性素材の厚みや密度を調整することにより、薬剤成分の配合組成や成形方法に幅をもたせることができるが、固形タイプのスケール防止剤の溶解速度をあらかじめ調整しておくことがより好ましい。
【0024】
本発明においては、固体酸を有効成分とする固形タイプのスケール防止剤は、着脱式トラップに保持して用いられる。特に、着脱式トラップに設けられたフック等を利用して保持する場合は、例えば、前記透水性素材からなる袋体に掛止部を設け、かかる掛止部を利用して固形タイプのスケール防止剤を収納している袋体を所定の位置に保持することが好ましい。袋体に設けられた掛止部としては、袋体の周縁ヒートシール部に挿通した可撓性のリングや、袋体の周縁ヒートシール部の一部に設けられ、その中央部に孔を有する突出片などを具体的に例示することができる。そしてまた、前記袋体の形状としては特に制限されないが、固形タイプのスケール防止剤の形状に合ったものが好ましい。
【0025】
透水性素材からなる袋体に封入された、固体酸等を有効成分とする固形タイプのスケール防止剤を保持した着脱式トラップは、トラップ溜水に浸漬され、固形薬剤がトラップ溜水に溶解して袋体外へ溶出し、トラップ溜水のpHを3.5〜4.5に維持することが可能となり、その結果トラップ溜水部や排水管へのスケールの固着を防止することができる。また、トラップ溜水のpHは、スケール防止剤の溶解速度、形状、透水性素材の種類や密度・厚さ等を調整することにより総合的に調節することが好ましい。スケール防止剤の溶解速度は、使用する酸性物質、基材等の種類及び量比などを選択することにより、また、溶解速度調整剤を用いることにより調節することができる。そして、本発明の好ましい態様においては、固形タイプのスケール防止剤が透水性素材からなる袋体に収納されているので、尿及び/又は洗浄水との接触による崩壊や膨潤等の著しい変形を防止することができ、その結果、長期にわたり安定的にpHを3.5〜4.5に維持することができる。
【0026】
以下、本発明のトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップの使用例を説明する。
(固形タイプのスケール防止剤の作製)
[その1] 固体酸としてアジピン酸90重量部、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース10重量部、滑沢剤としてショ糖脂肪酸エステル0.5重量部、界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸0.5重量部、腐食防止剤として1,2,3−ベンゾトリアゾール1.0重量部、防カビ剤として2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール0.5重量部からなる混合物を加圧成形し、4.5×4.5×1.5mm3の成形体を作製した。
[その2] 固体酸としてアジピン酸20重量部と安息香酸70重量部、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース10重量部、滑沢剤としてショ糖脂肪酸エステル1重量部、界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸1重量部、腐食防止剤として1,2,3−ベンゾトリアゾール1.0重量部、着色剤としてクロモフタルブルー微量からなる混合物を加圧成形し、4.5×4.5×1.5mm3の成形体を作製した。
[その3] 固体酸としてアジピン酸45重量部とコハク酸45重量部、結合剤としてヒドロキシプロピルセルロース10重量部、滑沢剤としてショ糖脂肪酸エステル1重量部、界面活性剤としてジアルキルスルホコハク酸0.5重量部、腐食防止剤として1,2,3−ベンゾトリアゾール1.5重量部、防カビ剤として2−メトキシカルボニルアミノベンズイミダゾール0.5重量部からなる混合物を加圧成形し、4.5×4.5×1.5mm3の成形体を作製した。
【0027】
(トイレ用スケール防止具の製造)
透水性素材として、オレフィン系スパンボンド不織布(ユニチカ社製「エルベスS0403WDO」、目付;40g/m3、厚さ0.25mm)を用いた。かかる不織布を所定サイズ(縦80mm、横60mm、背張りシール部分8mm)になるように切断し、3辺をヒートシールし、上記作製した成形体をパッケージングし、残りの1辺をヒートシールし、図7に示されるように、該成形体Sを収納した袋体からなるトイレ用スケール防止具を製造した。次に、図4に示されるように、このトイレ用スケール防止具に掛止部、すなわち、袋体の周縁ヒートシール部に設けられた孔に可撓性の紐状物を挿通した後、両端部を結合させたリングRを設け、掛止部を有するトイレ用スケール防止具を製造した。
【0028】
(トイレ用スケール防止具の着脱式トラップでの使用)
図3には、本発明の着脱式トラップ1に保持された上記トイレ用スケール防止具をトラップ着脱式トイレのトラップ部に使用した状態が示されている。図3に示される男子用トイレは、排水管9中にトラップが設けられていない、いわゆるトラップ着脱式のトイレであり、着脱式トラップ1が便器8の底部に着脱自在に内蔵されている。着脱式トラップ1は、前記のように、その下面にフック6が固着された保持蓋4を有し、このフック6に前記トイレ用スケール防止具のリングRが掛止され、成形体Sを収納した袋体の一部が溜水に浸漬するように構成されている。
【0029】
尿及び/又は洗浄水が着脱式トラップ1と便器8との隙間からトラップ溜水部に流入すると、袋体に収納された成形体Sが浸漬されている溜水と混合される。このとき、トラップ溜水のpHが3.5〜4.5、好ましくはpH4.0前後になるように、成型体Sの位置、成形体の溶解速度、透水性素材の種類や厚み・密度等が調整されているので、不織布を介しての固体有機酸の溶出によりトラップ溜水のpHが3.5〜4.5に維持される結果、尿石の付着が認められず、また、薬剤寿命がレンタル期間(約1ヶ月)にほぼ一致することがわかった。トラップ溜水のpHが3.5〜4.5に保持されていると、流入してきた尿及び洗浄水によりトラップ溜水が希釈され、トイレ排水管にはpH5.0〜6.0の混合水が流入し、トイレ排水管へのスケールの固着が防止できる。
【0030】
【発明の効果】
本発明のトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップを用いると、トラップ溜水部やトイレ排水管へのスケールの固着を簡便かつ長期にわたり防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の着脱式トラップの概略斜視図である。
【図2】本発明の着脱式トラップと男子用小便器一部の概略斜視図である。
【図3】図1に示される着脱式トラップがセットされた男子用小便器の使用状態を示す縦断面図である。
【図4】図1に示される着脱式トラップに用いられる、固形タイプのスケール防止剤が不織布の袋体に収容された、掛止部を有するトイレ用スケール防止具の斜視図である。
【図5】他の態様の本発明の着脱式トラップの概略縦断面図である。
【図6】さらに他の態様の本発明の着脱式トラップの概略斜視図である。
【図7】図6に示される着脱式トラップに用いられる、固形タイプのスケール防止剤が不織布の袋体に収容されたトイレ用スケール防止具の斜視図である。
【符号の説明】
S スケール防止剤
R 掛止部
1,10,20 着脱式トラップ
2 平板部
3 筒状胴部
4 保持蓋
5 開口部
6 フック6(掛止手段)
7 孔あきポケット
8 便器
21 取手部
22 通水孔
Claims (1)
- 所定形状の傾斜した平板部と、該平板部に固着された筒状胴部とを有するトラップ着脱式トイレに用いられる着脱式トラップであって、前記平板部には保持蓋を脱着自在に装着することができる開口部が設けられ、該開口部に脱着自在に装着される前記保持蓋の下面には、固形タイプのスケール防止剤を保持するためのフックが固着されており、該フックが前記筒状胴部の外側に位置するように前記保持蓋が前記開口部に装着されていることを特徴とするトラップ着脱式トイレにおける着脱式トラップ。
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