JPH0350037B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、抄紙機に用いられる成形布に関す
る。

〔従来の技術〕

抄紙機は、当業者間でに公知である。近代的な
抄紙機は、本質的には紙組成物から水を除去する
装置である。水は、抄紙機の３つの段階もしくは
区間で順次に除去される。第１の、すなわち成形
部では、紙組成物は、移動する成形用の布（一般
に「成形ワイヤー」と呼ばれる）上で沈積され、
ついで水が成形布を通して排水され、固体分含量
約18〜25重量％をもつ紙シートもしくはウエブを
残す。成形されたウエブは、ウエツトプレスフエ
ルト部へ運ばれたのち、移動するプレスフエルト
上の１つあるいはそれ以上のニツプロールプレス
を通過し、十分に水が除去されてシートを成形す
る。このシートは、抄紙機の乾燥部へ移送され
る。

抄紙機には、シートまたはウエブを運ぶために
種々の区間でエンドレスベルトが用いられる。抄
紙機の成形部で成形布として広く用いられている
ベルトの１つの形状は、合成重合体樹脂のモノフ
イラメントからなる、開口部を有する多層織りに
より織られたものである。このような織物は一般
に、成形部において良好に機能するが、しかしあ
る限界が存在する。たとえば多層織では、抄紙機
の真空作動域の最終点を過ぎてシートが抄紙機の
ウエツト・プレス部に移動する直前で、成形紙の
乾燥成分比率が減少する傾向がある。この乾燥成
分比率の減少は「リウエツト（再湿潤）」と称さ
れる。これは、多層の成形布が水分をその織組織
の中に受け入れ、また成形される紙シートが成形
布に載つて真空作動域の最終点を通過するため、
水分が成形布からシートに逆流する現象であると
理論付けられている。

この発明に係る成形布は、「リウエツト」現象
を最少にし、または完全になくし、したがつて抄
紙機の成形部における総体的な乾燥効率を上昇さ
せる利点がある。

〔発明の概要〕

この発明は、成形される紙シートと接触する上
層と、この上層を支持する下層とからなり、これ
らの層は、それぞれ織り合わされた経糸および緯
糸からなる多層の抄紙機成形布において、上層は
疎水性であり、下層は親水性であることを特徴と
する。

〔発明の好ましい実施例の説明〕

当業者は、添付の図面第１〜４図を参照する下
記の説明から本発明の好ましい実施例をよく理解
できるであろう。

この発明に係る改良されたフオードリニア
（Fourdriner）成形布のより好ましい実施例は、
第１図に符号１０で示され、外層もしくは表面層
１１および内層もしくは裏面層１２により構成さ
れる。そしてそれらの層は互いに重ねられた関係
となつており、またいずれの層もエンドレスの形
態であることが好ましい。外層１１および内層１
２はまた、織物のそれぞれ上層および下層と称さ
れることもある。使用時に懸濁液の流れの中に置
かれたとき、各層１１，１２はそのような位置を
占めるからである。

少なくとも上層すなわち外層１１は、比較的目
の細かいメツシユ織りであるべきであり、いずれ
にしても、層１１，１２のいずれも、懸濁液から
液体分が容易に排出できるように、少なくとも９
％の開口面積を持つメツシユ織りであるべきであ
る。外層１１は主経糸１３および緯糸１４で織ら
れており、また内層１２は主経糸１５および緯糸
１６で織られている。層１１，１２はいずれも平
織りの形状として示されているけれども、これら
は他と適当な織り構造であつてもよいことが理解
されるべきである。

成形布１０の外層および内層１１，１２は互い
に分離している。しかしながら、層１１，１２
は、主経糸１３，１５と平行に延び、成形布１０
（第１図）を横断して延びている多数の織り合わ
せさせた連結経糸１７によつて連結されている。
成形布の１０のそれぞれの層において、主経糸１
３，１５の数は少なくとも連結経糸１７の２倍で
あることが好ましい。成形布１０の使用時、成形
布の連続する部分が抄紙機の支持ロールの円筒表
面と係合して動いている時、外層および内層１
１，１２は相対的にシフトし、またはたわみ、こ
れによつて支持ロールの円筒表面との摩擦係合に
より内層または下層１２が受ける摩滅作用を減じ
ることができるように、連結経糸１７は、たとえ
ば第３図および第４図に示されているように、緯
糸方向に互いに離れていることが好ましい。

あるいはこの発明の成形布１０は、連結糸を設
けない単層または多層構造であつてもよい。糸１
３，１４は、上層の経糸１３によつてベース糸１
５，１６と一体とされ、経糸１３は基礎となる下
層の緯糸１６と織り合わせるために沈み、これに
よつて当該技術分野において通常「ステツチ点」
と称されるものをつくる。成形布１０の全体構造
は、滑らかな表面を持つ多層織りとして特徴付け
られてもよい。成形布１０は単一操作で伝統的な
織機により織られてもよい。上側の糸１３，１４
が基礎の糸１５，１６のすぐ上で織られる間に、
基礎の糸１５，１６が織られる。ステツチ点を提
供するために、糸１３の１つを沈ませ、基層の糸
１６の１つと組み合わせることによつて、織り操
作の間中、２つの糸系の連結が行なわれる。上層
の糸表面または下層の糸の形を崩さないように、
２つの系の連結は、好ましくは、たとえば一つお
きに糸１６と組み合わせるように、予め定められ
た順序とされる。

この発明によつて、当該技術分野において知ら
れている他の多層成形布構造を改良することがで
きる。

第２図および第３図に示すように、層１１，１
２は、明示の目的のために分離されている。しか
しながらこの２つの層は、実際には結合経糸１７
によつて、互いに接触状態に維持されていること
が理解されるべきである。上述のように、フオー
ドリニア成形布における連結経糸１７の数は、そ
れぞれの層１１，１２における経糸の数より少な
いことが好ましい。第３図および第４図に示すよ
うに、たとえば各層の７本の主経糸ごとに１本の
連結経糸が存在する。また所望であれば、連結経
糸１７は、少なくとも外層もしくは表面の層１１
の経糸および緯糸１３，１４よりもやや細くても
よい。好ましくは、連結経糸１７は、外層１１に
おいて緯糸１４の上に１つおきに巻かれ、そして
成形布１０の内層１２において緯糸１４の中間の
位置に対応する緯糸１６の下を通つて折返され
る。

第１図に示されるように、フオードリニア・ベ
ルト成形布１０がエンドレスの形状で織られると
き、２つの層１１，１２の緯糸１４，１６は連続
的であり、そして長さ方向にフオードリニア成形
ベルト織物の上方および下方に幅全体にわたつて
延び、またベルト成形布１０は漸進的な方法で織
られるので、緯糸１４，１６は成形布の一端から
他端へ進行するらせん形をなして延びている。も
ちろんエンドレスフオードリニア成形ベルト織物
の経糸１３，１５，１７はベルト織物の横断方向
すなわち横切る方向に延びる。

糸１３，１４，１５，１６および１７は、後で
より詳しく述べる疎水性／親水性に対する要求に
したがつて、既知のそして伝統的に用いられてい
る広範なさまざまな糸の中から選ばれてもよい。
すなわち糸１３，１４，１５，１６および１７
は、たとえばマルチフイラメント糸、モノフイラ
メント糸または合成物質で被覆された金属糸から
選ばれてもよい。

もし合成樹脂で被覆された糸が成形布１０を織
る際に用いられるならば、形成される成形布の幅
方向にのみ延びるように用いられ、そしてベルト
の長さ方向にはよりしなやかな合成および／また
は天然の織地材料が延びていることが好ましい。
合成樹脂で被覆された金属糸をこのように用いる
ことによつて、それらがロールを回つて成形機の
吸引ボツクスの頂部を通るときに、比較的に少な
く曲げられ、または全く曲げられることがない。

さらに、もし合成糸が用いられるならば、伸び
を防ぐのに役立つように、成形布は熱硬化させる
のが好ましい。またそれらの糸は、連続的なフイ
ラメント（長繊維）タイプのものであることが好
ましい。このような糸は通常、短繊維の合成糸に
比較して大きな張力を有するからである。一般に
熱硬化は約150〓〜400〓の温度で15〜60分間の間
行なつてもよい。成形布の望ましい構造を達成す
るために要求される熱硬化の程度は、もちろん、
糸のポリマー特性にしたがつて変わるであろう。
しかしながら、熱硬化の間に成形布が受ける最適
な時間、温度、張力は、異なつた糸材料に対する
試行錯誤技術を用いて、当業者が決定することが
できる。ベルト成形布の製造に用いうる典型的な
合成糸は、ナイロン、ポリエステル、アクリル樹
脂、ポリプロピレンまたは他の合成の糸材料から
形成されてもよい。図示されているように、主経
糸１３，１５および緯糸１４，１６の全ては略同
一の太さである。しかしながら、この発明にした
がつて成形布１０を形成する際に、多くの異なつ
た太さおよびタイプの糸が用いることができる。

この発明の改良された成形布１０において、上
層１１は疎水性の性質を有し、一方、下層１２は
親水性の性質を有する。換言すれば、上層１１は
水に反発するのに対し、下層１２は水に対する親
和力を有する。より明確には上層１１は、それら
の基礎的な重合体の性質により、またはフツ素化
学処理による撥水処理のような水に対する反発性
を高める処理により疎水性の性質を持たせた糸お
よび繊維から構成されてもよい。このような処理
はよく知られており、たとえばカーク・オスマー
化学百科事典（Kirk−Othmer Encyclopedia of
Chemistry）の第22巻、146ページを参照された
い。

下層１２を構成する繊維および糸は、糸の親水
性により、またはたとえば表面活性剤処理の結果
として親水性であつてもよい。層１２の表面活性
剤処理はまた親水力を高めるであろう。ここで用
いている「表面活性剤」という用語は、一般に、
(1)少なくとも系の一つの相に溶け、(2)両親媒性構
造を持ち、(3)相境界面において順応した分子膜を
形成する分子からなり、(4)相境界面における溶質
として溶液の大部分におけるその濃度より大きい
平衡濃度を示し、(5)溶液における溶質として濃度
が特徴的な限界量を超えたときミセルを形成し、
(6)洗浄力、泡立ち、濡れ、乳状化、溶解および分
散の機能的特徴のある種の結合を示すような化学
合成物を表現するために用いられる用語である。
表面活性剤は一般に陰イオン性、陽イオン性、ま
たは非イオン性に分類される。この発明の方法に
おける表面活性剤としてより好ましいのは、非イ
オン性タイプのものである。非イオン性表面活性
剤は、それらの製造方法とともによく知られてい
る。平均８〜15単位の長さのポリオキシエチレン
残基を有するオクチルフエノキシポリ（エチレン
オキシ）エタノールおよびノニールフエノキシポ
リ（エチレンオキシ）エタノールのようなアルキ
ルフエノキシポリ（エチレンオキシ）エタノール
が代表的である。用いられる他の非イオン性の表
面活性剤は、ポリエチレンオキサイド、ポリプロ
ピレンオキサイド、長鎖アルキルフオスフインオ
キサイド、長鎖アルキルアミンオキサイドおよび
他の同様のものが代表的である。

他の化学物質が、疎水性または親水性の性質を
強めることができ、抄紙に用いられる成形布の水
をはじく性質を改良する助けとするために用いる
ことができる。

使用の際、成形布１０の上層１２は、その上に
形成される湿つた紙のウエブを受け取る。真空作
動域の最終点において、水はシートから多層の成
形布へ引き出される。織物り構造による疎水性／
親水性の性質のために、水は優先して下層側に引
き寄せられ、それによつて上層の水保有量を最少
にする。紙ウエブのリウエツトは最少にされ、ま
たは回避される。

成形布１０の一部分の上面図である第４図に示
されるように、二重織りは比較的に開いている。
すなわち少なくとも約９パーセントの開口面積を
有している。ベルト成形布１０が有する９％の開
口面積は、通常、紙等のシートをその上に形成す
る間、比較的短くて細い繊維を維持しながらパル
プと水の懸濁液を保持するのに適当である。懸濁
液の繊維がかなり長い場合には、開きのより大き
い編目の織りが用いられてもよいことは当然であ
る。いずれにしても、各層の開口面積は、フオー
ドリニア成形ベルト織物の外表面上に、望ましい
品質の紙のシートの形成を容易にしながら、液体
の排出を一定割合で許すようなものでなければな
らない。

ベルト織物が使用状態にあるとき、この複合布
の摩耗の大きい部分を内層１２が受け、これによ
つて表面層の経糸および緯系１３，１４は摩耗か
ら保護される。なぜならば、フオードリニア成形
ベルト織物の外表面側で起きる割合よりも実質上
大きな割合が内面側で起きるため、内層は、種々
のロールとの摩擦係合でクリープし、そして抄紙
機のホイルや吸引ボツクスの頂きや他の支持表面
に対して滑るからである。また内層１２は、上層
すなわち外層１１を補強するばかりでなく、成形
布の寸法の安定性をも向上させることが明らかで
ある。成形布１０の安定性は、所望ならば、適当
に離れた領域で２つの層１１，１２を結合するこ
とによつてさらに高められる。このような結合
は、適当な接着剤の使用、および／または上記の
ような離れた領域で層を熱溶融することによつて
行なわれてもよい。

成形布１０は、ここに示されているようなエン
ドレスの形状に織られ、それより形成されるベル
トに沿つて緯糸が長さ方向に延びるのが好まし
い。しかしながら、所定の緯糸方向の幅と、限定
しない経糸方向の長さで成形布が織られ、その後
成形布が所定の経糸方向の長さで切断され、それ
からその反対側の端同士がエンドレスベルトを形
成するように適当に継ぎ合わされてもよいことは
当然である。

次に述べる具体例は、この発明の成形布を製造
し、使用する方法を示しており、意図された最良
の形を示したものであるが、この発明を限定する
ものではない。

〔実施例〕

１インチ当り総計56エンドを有する直径0.020
インチのポリプロピレンのモノフイラメント経糸
と、１インチ当たり総計40ピツク（２層織りにお
ける20トツプおよび20ボトム）を有する直径
0.020インチのポリエステルのモノフイラメント
緯糸とを織り合わせることによつて成形布が準備
される。熱硬化後、外表面と接触する滑らかな表
面を持つた成形布が得られる。その上面は、パー
フルオロカルボニル酸のクロム錯体で処理され
る。

この成形布は、織物の両端を一方から他方の中
へ織り合わせるという、よく知られた結合手順を
用いることによつて、またはピン・シームを用い
ることによつて、エンドレスに作られてもよい。
この織物は、リウエツトを減少させた優れたシー
トの支持体を提供し、その結果、より高い機械効
率を提供する。

この発明の成形布は、また何らかの伝統的な方
法、すなわち、たとえば走行能力の特殊な特性お
よび化学的および機械的劣下に対する抵抗を提供
するような化学的処理によつて仕上げられてもよ
い。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの発明に係る改良されたエンドレス
のフオードリニア成形布の部分分解斜視図、第２
図は第１図の２−２線に沿つた、改良フオードリ
ニア成形布の一部分の横方向すなわち経糸方向の
断面図、第３図は第２図の３−３線に沿つた部分
的な緯糸方向の断面図、第４図は第１図のベルト
を形成する織物の一部分の拡大平面図である。 １０……成形布、１１……上層、１２……下
層、１３，１５……経糸、１４，１６……緯糸、
１７……連結経糸。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 成形する紙シートと接触する上層と、この上
   層を支持する下層とからなり、前記層の各々は織
   り合わされた経糸および緯糸からなつている抄紙
   機成形布において、前記上層が疎水性であり、前
   記下層が親水性であることを特徴とする抄紙機成
   形布。 ２ 少なくとも緯糸および経糸の組からなる２つ
   の織られた層、およびこの２つの層を接続する織
   られた連結経糸からなり、前記層の上側の層は疎
   水性の材料で織られ、前記層の下側の層は親水性
   の材料で織られている抄紙機成形布。 ３ 上層および下層からなり、 前記上層および下層はそれぞれ織られた経糸お
   よび緯糸からなり、 前記上層の糸は疎水性であり、 前記下層の糸は親水性である 多層布からなる抄紙機成形布。 ４ 前記糸の疎水性が化学的処理によるものであ
   る請求項３記載の抄紙機成形布。 ５ 前記糸の親水性が化学的処理によるものであ
   る請求項３記載の抄紙機成形布。 ６ 前記糸が全てモノフイラメント糸である請求
   項３記載の抄紙機成形布。