JPH0341177Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、電磁弁に関する。

（従来の技術） 周知のように分配型燃料噴射ポンプでは、ポン
プハウジングにフユーエルポンプ機構が内蔵され
ており、このフユーエルポンプ機構に隣接して、
フユーエルポンプ機構からの加圧燃料を充満させ
たポンプ室が形成されている。さらにポンプハウ
ジングには、このポンプ室に連なる１つのプラン
ジヤ室が設けられており、プランジヤの進退動に
より、高圧の燃料を、プランジヤ室から複数の送
出弁を介してデイーゼルエンジンの各気筒の噴射
ノズルへ圧送するようになつている。

上記分配型燃料噴射ポンプとして、電磁弁制御
式のものが開発され公知となつている。詳述する
と、電磁弁がポンプハウジングに配置されてい
る。この電磁弁は、特開昭61−123273号公報に示
すように、流体通路を有する弁本体を備えてい
る。流体通路は、流入側ポートと、流出側ポート
と、弁座を有している。弁本体には針状の弁エレ
メントが貫通しており、この弁エレメントが弁座
に接離して、流体通路を開閉するようになつてい
る。一方、弁本体にはハウジングが付設されてい
る。ハウジングにはアーマチヤーが収納され、こ
のアーマチヤーには上記弁エレメントが固定され
ている。さらに、ハウジングには、上記弁エレメ
ントを付勢するばねと、このばねに抗する磁力を
生じさせてアーマチヤーを移動させることにより
弁エレメントの開閉動作を行なう電磁コイルとが
設けられている。電磁弁の流入側ポートは、燃料
噴射ポンプのプランジヤ室に連なつており、流出
側ポートはポンプ室に連なつている。

そして、プランジヤによる燃料圧送行程の途中
で、電磁弁を開いてプランジヤ室の高圧の燃料を
ポンプ室へ逃がし、この逃がしタイミングを変え
ることにより、噴射ノズルからの燃料噴射量を制
御するものである。

（考案が解決しようとする問題点） 上述した電磁弁では弁エレメントが回動しない
ため、次の欠点があつた。各部品の仕上げ寸法や
精度に偏りやバラツキがある場合、電磁コイルに
よるアーマチヤーの引き付け力が不均一である場
合等には、上記弁エレメントと弁本体の接触面の
特定部位が常に他の部位より強い力で接触するこ
とになる。このため、強く接触する部位が偏摩耗
し、これに伴ない弁エレメントが僅かではあるが
弁本体の軸に対して傾き、弁座に偏つた力で当た
ることになり、閉じ動作が不確実になることがあ
つた。

また、弁エレメントが回動しないため、この弁
エレメントと弁本体の接触面に潤滑油が満遍無く
行き渡らず、弁エレメントの往復スライドが円滑
でなくなり、電磁弁の応答性が悪かつた。しか
も、上記のように強く接触している部位への潤滑
油の供給は特に乏しくなる傾向があるので、この
部位での摩擦抵抗が大きく、この点からも電磁弁
の応答性が著しく悪化することがあつた。

なお、実願昭61−96694号では、本考案と目的
がほぼ等しく構成の異なる電磁弁が示されてい
る。

また、本出願人は、オーバーフローの機能を設
けた電磁弁を開発している。ただし、公知ではな
い。この電磁弁の弁エレメントには、その中心軸
方向に延びる軸孔と、一端がこの軸孔に連なり他
端が弁エレメントの周面に開口する一対の直線状
のオリフイスとが形成されている。なお、このオ
リフイスは弁エレメントの中心軸を通る直線上に
配置されている。この電磁弁を上記分配型燃料噴
射ポンプの制御に用いた場合、ポンプ室の燃料が
流出側ポート、弁エレメントの軸孔およびオリフ
イスを経て、ハウジングに形成されたオーバーフ
ローポートからタンク室に戻される。したがつ
て、従来この種の燃料噴射ポンプに必要とされて
いたオリフイス付きオーバーフロー装置を電磁弁
で兼用できる。

本考案は、このオーバーフロー付き電磁弁を改
良したものである。

（問題点を解決するための手段） 本考案は上記問題点を解消するためになされた
もので、その要旨は、弁エレメントにその中心軸
方向に延びる軸孔とこの軸孔から外周面に延びる
オリフイスとが形成され、弁エレメントの軸孔お
よびオリフイスを経てハウジングのオーバーフロ
ーポートから流体がオーバーフローされるように
なつており、上記弁エレメントのオリフイスの少
なくとも出口部は、その延長線が弁エレメントの
中心軸から外れるように配置されていることを特
徴とする電磁弁にある。

（作用） 弁エレメントのオリフイスの延長線が、弁エレ
メントの中心軸から外れているので、流体がオー
バーフローの過程で軸孔からオリフイスを経て弁
エレメントの外へ吐出する際に、弁エレメントに
回動モーメントが付与される。

弁エレメントが回動するため、弁エレメントと
弁本体との間の接触面の特定部位が他の部位に比
べて強く接触した場合でも、この部位での偏摩耗
を少なくすることができる。したがつて、弁エレ
メントの傾きを防止して、弁エレメントの弁座へ
の当たりを均等にすることができ、閉弁動作を確
実に行なうことができる。

また、弁エレメントの回動により、弁エレメン
トと弁体の接触面間へ潤滑油を満遍無く供給で
き、弁エレメントを常に円滑にスライドさせるこ
とができ、電磁弁の応答性を向上できる。

（実施例） 以下、本考案の一実施例を第１図、第２図に基
づいて説明する。図示の電磁弁は、たとえばデイ
ーゼルエンジン用の分配燃料噴射ポンプに設置さ
れるものである。この電磁弁は弁本体１０を有し
ている。

弁本体１０の中心軸上には貫通孔１１が形成さ
れており、この貫通孔１１より下部には、高圧の
燃料（流体）が流通する流体通路１２が形成され
ている。この流体通路１２は、２つの流入側ポー
ト１３と、１つの流出側ポート１４と、これらポ
ート１３，１４を連通させる室１５とを有してい
る。

これらポート１３，１４の他端は弁本体１０の
下端面に開口している。室１５と流出側ポート１
４との境には、テーパをなす弁座１６が形成され
ている。

弁本体１０の貫通孔１１には、針状の弁エレメ
ント２０が貫通している。弁エレメント２０の先
端部には、テーパをなす着座部２１が形成されて
おり、この着座部２１が弁本体１０の弁座１６に
接離するようになつている。

上記弁エレメント２０には、その中心軸Ｏに沿
つて形成され弁エレメント２０の下端面に開口す
る軸孔２２と、この軸孔２２の上端部と外周面と
を連ねる一対の直線状のオリフイス２３，２３と
が形成されている。これらオリフイス２３，２３
は本考案の特徴部をなし、第２図に示すように軸
孔２２の内周面の接線方向に延び、弁エレメント
２０の中心軸Ｏに対して点対称で互いに平行をな
しており、さらに、オリフイス２３，２３の延長
線がこの中心軸Ｏから外れている。

一方、弁本体１０にはハウジング３０が付設さ
れており、このハウジング３０は、ステータ３１
と、このステータ３１の周囲に螺合されたカバー
３２とを有している。

上記ステータ３１は、円盤部３１ａと、この円
盤部３１ａの中央から下方に延びる筒部３１ｂと
からなる。なお、円盤部３１ａの中央には筒部３
１ｂに連なる貫通孔３１ｃが形成されている。そ
して、筒部３１ｂおよび貫通孔３１ｃに上記弁本
体１０を挿入した状態で、筒部３１ｂを燃料噴射
ポンプのポンプハウジングにねじ込むことによ
り、電磁弁をポンプハウジングに取り付けるよう
になつている。

電磁弁のポンプハウジングへの取付状態におい
て、流入側ポート１３は燃料噴射ポンプのプラン
ジヤ室に連なり、流出側ポート１４はポンプ室に
連なつている。

上記ステータ３１とカバー３２との間には収納
空間３３が形成され、この収納空間３３にアーマ
チヤー３４が収納されている。

ステータ３１の円盤部３１ａの上面すなわちア
ーマチヤー３４への対向面には、複数例えば４つ
の収納溝３１ｄが同心に形成されており、これら
収納溝３１ｄにはそれぞれ隣同士で電流の流れる
方向が逆になるような電磁コイル３５が収納され
ている。

弁エレメント２０は上記アーマチヤー３４に固
定されている。すなわち、弁エレメント２０の中
途部が、アーマチヤー３４の中央を貫通してい
る。弁エレメント２０には、張り出し部２４が形
成されており、この張り出し部２４に座板２５を
介してアーマチヤー３４が載せられている。な
た、弁エレメント２０には、アーマチヤー３４に
対応する部位より上でナツト２６が螺合し、この
ナツト２６で座板２７を介してアーマチヤー３４
を締め付けることにより、アーマチヤー３４への
弁エレメント２０の固定がなされている。

カバー３２の中央にはストツパ３６がねじ込ま
れている。このストツパ３６は、筒部３６ａと、
この筒部３６ａの下端から径方向に外に延びる係
止鍔部３６ｂと、係止鍔部３６ｂの内周に形成さ
れた環状のばね受け部３６ｃとを有している。筒
部３６ａはカバー３２から上方に突出しており、
この筒部３６ａには、リング状のオーバーフロー
部材３７がはめ込まれるとともに、キヤツプ３８
が螺合されている。キヤツプ３８はオーバーフロ
ー部材３７の押さえと筒部３６ａの閉塞を兼ねて
いる。オーバーフロー部材３７にはオーバーフロ
ーポート３７ａが形成されており、筒部３６ａに
は、このオーバーフローポート３７ａと筒部３６
ａの内部とを連ねるための連通孔３６ｄが形成さ
れている。上記オーバーフローポート３７ａはパ
イプを介して燃料タンクに接続されている。

上記弁エレメント２０の上端部近傍の周囲に
は、圧縮コイルばね４０が配されている。詳述す
ると、ストツパ３６のばね受部３６ｃにはばね座
４１と焼結金属にオイルを含浸させてなるオイル
レスメタル４２が載せられており、弁エレメント
２０の上端部にはスナツプリング４３によりばね
座４４およびオイルレスメタル４５が係止されて
いる。そして、上記コイルばね４０はオイルレス
メタル４２，４５間に介在され、上記アーマチヤ
ー３４および弁エレメント２０を上方へ付勢する
ようになつている。

次に、上述構成の電磁弁の作用について説明す
る。燃料噴射ポンプのプランジヤの圧送行程にお
いて、プランジヤ室から送られてきた燃料の圧力
は流入側ポート１３に付与される。電磁コイル３
５が通電されている間は、その磁力によりコイル
ばね４０に抗してアーマチヤー３４がステータ３
１方向すなわち下方に引き付けられ、弁エレメン
ト２０の着座部２１が弁座１６に当たつて流体通
路１２が遮断されるため、燃料は電磁弁から逃げ
ずに送出弁を介して噴射ノズルに送られる。この
時、アーマチヤー３４はステータ３１の上面とわ
ずかな隙間を介して離れている。

上記プランジヤの圧送行程において、電磁コイ
ル３５への通電が停止した時には、コイルばね４
０の弾性力で、座板２７がストツパ３６の係止鍔
部３６ｂに当たるまでアーマチヤー３４が引き上
げられ（第１図の状態）、弁エレメント２０の着
座部２１が弁座１６から離れる。この結果、燃料
は流入側ポート１３、室１５、流出側ポート１４
を経て、燃料噴射ポンプのポンプ室へ逃げ、送出
弁から噴射ノズルへの燃料の供給が停止する。

上記電磁弁の開き動作のタイミングを変えるこ
とにより、送出弁から噴射ノズルへ圧送される燃
料の供給量を制御することができる。

電磁弁では、常時燃料のオーバーフローを行な
う。詳述すると、燃料噴射ポンプのポンプ室に
は、フユーエルポンプ機構からの加圧燃料（プラ
ンジヤ室からの燃料ほど高圧ではない）が充満し
ており、この燃料が流出側ポート１４、弁エレメ
ント２０の軸孔２２、オリフイス２３、ステータ
３１の貫通孔３１ｃを順に通つて、収納空間３３
に充満しており、さらに、ストツパ３６、オーバ
ーフロー部材３７のオーバーフローポート３７ａ
を経、パイプを通つて燃料タンクに戻される。な
お、上記オリフイス２３で燃料の流通が制限され
ているため、燃料噴射ポンプのポンプ室は燃料の
加圧状態が保持されている。

ところで、弁エレメント２０の点対称をなす一
対のオリフイス２３の延長線が、弁エレメント２
０の中心軸Ｏから外れているので、加圧燃料がオ
リフイス２３を経て弁エレメント２０の外へ吐出
する際に、弁エレメント２０に回動モーメントが
付与される。なお、一対のオリフイス２３が平行
をなしていて、各オリフイス２３から流体が吐出
される際に生じる力が相殺されるため、弁エレメ
ント２０を横移動させる力は生じない。

上述したように弁エレメント２０に常時回動モ
ーメントが付与されているため、弁エレメント２
０が弁座１６に当たつている時または座板２７が
ストツパ３６に当たつている時を除き、弁エレメ
ント２０の上昇および下降行程において、弁エレ
メント２０は少量ずつ回動する。したがつて、弁
エレメント２０と弁本体１０の接触面（弁エレメ
ント２０の外周面と貫通孔３１ｃの内周面）の特
定部位が他の部位に比べて強く接触している場合
でも、この特定部位での偏摩耗を少なくすること
ができ、弁エレメント２０が傾くことなく弁座１
６に均等な力で着座でき、確実な閉じ動作を行な
うことができる。

また、上記弁エレメント２０の回動により、弁
エレメント２０と弁本体１０の接触面間へ潤滑油
となる高圧燃料を満遍無く供給できるため、弁エ
レメント２０は常に円滑にスライドでき、電磁弁
の応答性を向上できる。

なお、上記弁エレメント２０の回動に伴ない、
アーマチヤー３４が回動するとともに、ばね座４
４が連れ回動する。この際、ばね座４４とコイル
ばね４０との間に摩擦係数の小さいオイルレスメ
タル４５が介在されており、ばね座４１とコイル
ばね４０との間にもオイルレスメタル４２が介在
されていることにより、弁エレメント２０の回動
を妨げる摩擦力を小さくでき、弁エレメント２０
の回動を確実に行なうことができる。

本考案は上記実施例に制約されず種々の態様が
可能である。例えば、ハウジングの一部を弁本体
と一体に形成してもよい。

オリフイスは軸孔と直交していなくてもよく、
外周面側すなわち出口側がアーマチヤー側に向く
ように傾斜してもよく、アーマチヤーとは反対側
を向くように傾斜してもよい。

（考案の効果） 以上説明したように、本考案では、オリフイス
から吐出される流体の力で弁エレメントを回すこ
とにより、弁エレメントの弁座への当たりを均等
にして閉じ動作を確実に行なえるとともに、弁エ
レメントと弁体の接触面間の潤滑を確実に行な
え、電磁弁の応答性を向上できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例をなす電磁弁の縦断
面図、第２図は第１図中−矢視の拡大横断面
図である。 １０……弁本体、１２……流体通路、１６……
弁座、２０……弁エレメント、２１……着座部、
２２……軸孔、２３……オリフイス、３０……ハ
ウジング、３４……アーマチヤー、３５……電磁
コイル、３７ａ……オーバーフローポート、４０
コイルばね、Ｏ……弁エレメントの中心軸。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 流体通路を有する弁本体と、この弁本体に付設
   されたハウジングとを備え、弁本体には、上記流
   体通路を開閉するための針状の弁エレメントが貫
   通し、ハウジングには上記弁エレメントに連通さ
   れたアーマチヤーが収納され、さらにハウジング
   には、上記弁エレメントを付勢するばねと、この
   ばねに抗する磁力を生じさせてアーマチヤーを移
   動させることにより弁エレメントの開閉動作を行
   なう電磁コイルとが設けられている電磁弁におい
   て、上記弁エレメントにはその中心軸方向に延び
   る軸孔とこの軸孔から外周面に延びるオリフイス
   とが形成され、弁エレメントの軸孔およびオリフ
   イスを経てハウジングのオーバーフローポートか
   ら流体がオーバーフローされるようになつてお
   り、上記弁エレメントのオリフイスの少なくとも
   出口部は、その延長線が弁エレメントの中心軸か
   ら外れるように配置されていることを特徴とする
   電磁弁。