JPH0339825Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、アツプライトピアノ、電子オルガ
ン等の鍵盤楽器に係り、更に詳しくは楽器本体の
上面部を被う開閉自在な蓋構造に関するものであ
る。

〔従来の技術〕

従来から電子オルガン等の鍵盤楽器に配設され
鍵盤部等を保護する蓋としては、大別すると後端
を回動自在に枢着され前後（上下）方向に開閉操
作されるものと、前後方向にスライド自在で開蓋
時に楽器本体内に収納されるものの２種類が知ら
れている。前後方向に回動自在な蓋は竪型ピアノ
において広く採用されており、開蓋時には上前板
に立て掛けられて内側面が前方（演奏者側）を向
き、この内側面に楽譜が立てかけられることによ
り譜面台（板）として使用される。一方、前後方
向にスライド自在な蓋は電子オルガンに広く採用
されているもので、前後方向に並置され相互に屈
曲自在に連結された複数個の蓋構成部材から成
り、腕木（側板）内側面に設けたガイドに沿つて
前後方向に直線的もしくは曲線的にスライドされ
るように構成されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

ところで、前後方向に回動自在な蓋は、一部材
からなるため、構造が簡単で、製造および組立作
業が容易である上、開蓋時には譜面台を兼用する
という大きな利点を有するものの、開蓋時に裏面
が前方を向くため、裏面も表面側と同様に仕上加
工する必要があり、そのため工数がかかり製造コ
ストが嵩むという不都合があつた。また、この種
タイプの蓋はかなりの重量を有するため、開閉操
作時に手を誤つて離したりすると、急激な落下に
より手を蓋の前端部と下口棒との間に挟め、思わ
ぬ怪我をすることがあつた。

一方、スライドタイプの蓋は、部品点数が多
く、製造組立作業が面倒である上、開蓋時には楽
器本体内に収納されるため、譜面台を別個に配設
する必要があつた。

〔問題点を解決するための手段〕

この考案に係る鍵盤楽器の蓋は上述したような
点に鑑みてなされたもので、分割形成され折畳み
自在に連結された複数個の蓋体からなり、最後部
の蓋体が楽器本体の上面後端部に回動自在に枢着
され、閉蓋時に前記複数の蓋体によつて前記楽器
本体の上面を覆う鍵盤楽器用蓋において、開蓋時
に楽器本体上に前方を向いて起立される蓋体のう
ちの表面を前方に向けて起立される最前部の蓋体
の表面全体が譜面立て部を構成するようにしたも
のである。

〔作用〕

この考案においては開蓋時に楽器本体上に前方
を向いて起立される蓋体のうちの表面を前方に向
けて起立される最前部の蓋体はその表面全体が譜
面立て部を構成し、譜面の腹部を安定に支持す
る。

〔実施例〕

以下、この考案を図面に示す実施例に基づいて
詳細に説明する。

第１図はこの考案を電子オルガンに適用した場
合の第１実施例を示す閉蓋状態の要部の一部破断
側面図、第２図は同オルガンの外観斜視図であ
る。これらの図において、全体を符号１で示す電
子オルガンは、前板２、背面板３、左右一対の側
板４，５、底板（図示せず）等によつて上面が開
放する左右方向に長い箱形に形成された本体キヤ
ビネツト６と、この本体キヤビネツト６上に前端
部を前方（演奏者側）に突出させて載置固定され
た楽器本体７とを備え、前記本体キヤビネツト６
の内部には各種スピーカ（図示せず）が配置さ
れ、また前面下部にはエクスプレツシヨンペダル
８および多数の足鍵盤９が配設されている。

前記楽器本体７は、左右一対の腕木１１，１
２、棚板１３、下口棒１４、背面板１５、上板１
６、前下がりに傾斜した表面パネル１７、各腕木
１１，１２の上端面に嵌着固定された一対の上面
カバー１８，１９等によつて略箱形に形成され、
表面パネル１７の表面には多数の鍵盤２０、２１
が上下２段に配設されると共に各種制御用操作子
２３、スイツチ２４等の電気部品が配設されるこ
とにより鍵盤部２５を構成しており、この鍵盤部
２５を折畳自在な鍵盤蓋２８で被い保護してい
る。

前記鍵盤蓋２８は、後端が前記一対の腕木１
１，１２の後端部内側面上方位置において前後
（上下）方向に回動自在に枢着される第１の蓋体
３０と、後端が第１の蓋体３０の前端に蝶番３３
を介して回動自在に連結され、裏面側に折畳まれ
る第２の蓋体３１とを有し、閉蓋時には前記上板
１６および表面パネル１７の上方に所定の間隔を
保つて鍵盤部２５を被い、開蓋時には第２図鎖線
３５で示すように折畳まれて楽器本体７の上面後
端部に後方側に適宜角度傾斜した状態で立設保持
され、第２の蓋体３１の表面が前方（演奏者側）
に向き、譜面３９が立て掛けられることにより、
譜面立て部を形成する。

前記第１の蓋体３０は、不透明なプラスチツク
もしくは金属によつて形成され前端面に嵌合溝４
０を有する第１蓋構成部材３０Ａと、アクリル樹
脂等の透明なプラスチツク板によつて形成され後
端が前記嵌合溝４０に差込まれかつねじ止め固定
された第２蓋構成部材３０Ｂと、アルミニウムの
押出加工によつて略コ字状に形成され第２蓋構成
部材３０Ｂの前端に嵌着ねじ止め固定される補強
部材４１とで構成され、前記第１蓋構成部材３０
Ａの後端が前記一対の腕木１１，１２間に回動自
在に枢着されている。また、第１蓋構成部材３０
Ａの前端部は、閉蓋時において第２蓋構成部材３
０が表面パネル１７と平行に対向するよう、下方
に該パネル１７の傾斜角度とほぼ同一角で下方に
屈曲されている。一方、前記第２の蓋体３１は、
アクリル樹脂等の透明なプラスチツク板からな
り、その前後端にそれぞれアルミニウム等の押出
加工によつて略コ字状に形成された補強部材４
３，４４が嵌着固定されている。前方側の補強部
材４３の下面両端部にはそれぞれ下端が後方に向
つて折曲された略鉤形の係合部４５が一体に垂設
されており、この係合部４５に対応して前記各腕
木１１，１２の上端面後端寄りに係止部４６がそ
れぞれ形成されている。前記係止部４６は開蓋時
に前記係合部４５を係止することにより、前記補
強部材４３がそれ以上後方に移動するのを規制防
止するためのもので、略々Ｖ字状の溝からなり、
その後端側開口部には溝を被う如く前方に延在す
る突部４７が形成され、この突部４７に前記係合
部４５が下方より係合するようになつている。

前記各腕木１１，１２の上端面に嵌着固定され
た一対の上面カバー１８，１９の内側面には、閉
蓋時に鍵盤蓋２８の両側縁部を支持し、開閉操作
時に前記補強部材４３を案内する突条からなるガ
イド５０が全長（但し前記係止部４６に対応する
部分を除く）に亘つて一体に突設されている。ガ
イド５０の表面パネル１７と対応する前端部側は
該パネル１７の傾斜角度とほぼ同一の角度で前下
りに傾斜し、後端部側はほぼ水平に形成されてい
る。鍵盤蓋２８の閉蓋時において、前記補強部材
４３の係合部４５はガイド５０の前端面と対向
し、開蓋時に鍵盤蓋２８の前端を持ち上げて前記
係合部４５をガイド５０の前端部上面に載せ、該
ガイド５０に沿つて後方に移動させると、第１の
蓋体３０がその後端を支点として第１図時計方向
に回動するため、第１および第２の蓋体３０，３
１の連結部が蝶番３３の働きにより徐々に折れ曲
がつて上昇し、係合部４５が係止部４６に係入さ
れると、前述した通り鎖線３５で示す如く折畳ま
れた状態で立設保持される。したがつて、第２の
蓋体３１はその前端を下にして立設され、表面が
前方を向くことで、譜面台（譜面立て部）として
使用される。また、上板１６の上面前端部は後下
りに傾斜し譜面３９の受面受として使用される。
開蓋時において鍵盤蓋２８の前端、すなわち補強
部材４３と上板１６との間には指を差込むに十分
な〓間が設定保持されている。したがつて閉蓋操
作時にこの〓間に手を差込み補強部材４３を保持
して前方に引き寄せ、上述した開蓋操作とは逆の
操作を行えば、簡単に閉蓋することができる。ま
た、閉蓋状態において、補強部材４３と下口棒１
４との間にも十分な〓間が設定保持されているた
め、閉蓋操作の終了時に手をこれら両部材間に挟
めることはない。

ここで、本実施例は開蓋時において鍵盤蓋２８
を所定角度で設定保持し、後方への転倒を防止す
る構造として、上述した係合部４５と係止部４６
ほ用いて係止すると前記係止部４６に対応してガ
イド５０に形成された切欠部５２の後端面５２ａ
で補強部材４３を受け止めるようにしたが、これ
以外にも適宜なストツパ部材を設けて第１の蓋体
３０の後方への回動を規制したりあるいはまた第
３図に示すように第１の蓋体３０の後端部に設け
られている軸５３の回動を軸受５４で規制しても
よい。すなわち、軸受５４の軸孔５５内周面に軸
線方向に長い突条体５６を一体に突設し、該軸孔
５５に挿入される軸５３の断面形状を円弧状に形
成して２つの再５７ａ，５７ｂを設けると共にこ
れら両面５７ａ，５７ｂの間に前記突条体５６の
前端面と線接触する軸方向に長い突条体５８を一
体に突設し、鍵盤蓋の閉蓋時に前記面５７ａを突
条体５６の一方の側面５６ａに当接させ、開蓋時
に面５７ｂを他方の側面５６ｂに当接させ、これ
により軸５３の回動角度を規制するようにしたも
のである。このような構成からなる軸受構造によ
れば軸５３および軸受５４をプラスチツク材料で
製作しても捩りモーメントに対して十分耐え得、
しかも前述した係合部４５、係止部４６および切
欠部５２の後端面５２ａとの共働により鍵盤蓋２
８を安定に保持することが可能である。

一方、閉蓋時の鍵盤蓋２８を係止する構造とし
ては、前記ガイド５０の前端面に係合突起を突設
し、この係合突起に前記補強部材４３の係合部４
５を弾性的に係合させたりあるいはまた第４図お
よび第５図に示すように、上面カバー１８，１９
の前端部内側面に前後方向に移動自在な係止片６
０を配設すると共にこの係止片６０をばね６１で
前方に付勢し、鍵盤蓋の閉蓋時に前記係止片６０
の前端を係合部４５に後方から係合させるように
してもよい。この場合、係止片６０はその一部が
前記上面カバー１８内に挿入位置され前方への抜
けを防止されているものとする。

かくして、このような構成からなる鍵盤蓋２８
によれば、開蓋時に第２の蓋体３１が楽器本体７
上にその表面側を前方に向けて立設されるので、
該蓋体３１の裏面が視認されず、したがつて体裁
を損うことがなく、また木材で製作した場合には
裏面処理が表面側の処理に比べて簡単で安価に製
作できる。また、第２の蓋体３１は譜面台を兼用
するため、蓋体とは別個独立に譜面台を配設する
必要がなく、楽器自体をより一層簡素化すること
ができる。また、鍵盤蓋２８の開閉操作をガイド
５０に沿つて行うようにしているため、大きな操
作力を必要とせず、しかも手を挟んだりすること
がないため、子供でも安心して操作することがで
きる。

第６図はこの考案の第２実施例を示す開蓋状態
の側面図である。この実施例は鍵盤蓋８０を折畳
み自在に連結された第１，第２および第３の蓋体
８１，８２，８３で構成し、開蓋時に第１および
第２の蓋体８１，８２を折畳んでその裏面を互い
に密接させると共に後方側に所定角度傾斜した状
態で立設保持し、第３の蓋体８３をほぼ水平に設
定保持するように構成したものである。この場
合、第１および第２の蓋体８１，８２が上記第１
実施例中の第１および第２の蓋体３０，３１に相
当することは云うまでもない。

〔考案の効果〕

以上述べたようにこの考案に係る鍵盤楽器の蓋
は、折畳み自在な複数個の蓋体からなり、開蓋時
に楽器本体上に前方を向いて起立される蓋体のう
ちの表面を前方に向けて起立される最前部の蓋体
の表面全体が譜面立て部を構成するようにしたの
で、別個に譜面台を配置することなく譜面の腹部
を安定に支持することができ、また前記最前部の
蓋体の裏面側が視認されることがないので、裏面
処理が簡単で蓋体の製造を容易にし、安価な鍵盤
楽器を提供することができる。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案を電子オルガンに適用した場
合の第１実施例を示す一部破断側面図、第２図は
同オルガンの外観斜視図、第３図は鍵盤蓋の軸受
構造を示す側面図、第４図および第５図は鍵盤蓋
の閉蓋時のロツク機構を示す側断面図および平面
図、第６図はこの考案の第２実施例を示す側面図
である。 １……電子オルガン、７……楽器本体、２５…
…鍵盤部、２８……鍵盤蓋、３０，７１，８１，
９１……第１の蓋体、３１，７４，８２，９２…
…第２の蓋体。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 分割形成され折畳み自在に連結された複数個の
   蓋体からなり、最後部の蓋板が楽器本体の上面後
   端部に回動自在に枢着され、閉蓋時に前記複数の
   蓋体によつて前記楽器本体の上面を覆う鍵盤楽器
   用蓋において、開蓋時に楽器本体上に前方を向い
   て起立される蓋体のうちの表面を前方に向けて起
   立される最前部の蓋体の表面全体が譜面立て部を
   構成することを特徴とする鍵盤楽器用蓋。