JPH0333944B2 - - Google Patents

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JPH0333944B2
JPH0333944B2 JP59131878A JP13187884A JPH0333944B2 JP H0333944 B2 JPH0333944 B2 JP H0333944B2 JP 59131878 A JP59131878 A JP 59131878A JP 13187884 A JP13187884 A JP 13187884A JP H0333944 B2 JPH0333944 B2 JP H0333944B2
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JP
Japan
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titanium nitride
nitriding
piston ring
hardness
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JP59131878A
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Masahiro Oguchi
Yoichi Shimizu
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TPR Co Ltd
Original Assignee
Teikoku Piston Ring Co Ltd
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Publication date
Application filed by Teikoku Piston Ring Co Ltd filed Critical Teikoku Piston Ring Co Ltd
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Publication of JPS6113064A publication Critical patent/JPS6113064A/ja
Publication of JPH0333944B2 publication Critical patent/JPH0333944B2/ja
Granted legal-status Critical Current

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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16JPISTONS; CYLINDERS; SEALINGS
    • F16J9/00Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction
    • F16J9/26Piston-rings, e.g. non-metallic piston-rings, seats therefor; Ring sealings of similar construction characterised by the use of particular materials

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Solid-Phase Diffusion Into Metallic Material Surfaces (AREA)
  • Physical Vapour Deposition (AREA)
  • Other Surface Treatments For Metallic Materials (AREA)
  • Pistons, Piston Rings, And Cylinders (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
産業上の利用分野 本発明は、耐摩耗性及び耐焼付性(以下、総称
する場合は「耐久性」という)に優れた皮膜を被
覆した内燃機構用ピストンリングに関するもので
ある。 従来の技術 従来、ピストンリングの摺動外周面の表面処理
としては、硬質クロムメツキが主体に使われてい
る。硬質クロムメツキを被覆したピストンリング
は自身の耐摩耗性に優れ、相手シリンダの摩耗も
少ないことから長い間ピストンリングの表面処理
の主流をなしてきた。しかしながら、近年エンジ
ンの高出力化、高性能化に伴い、ピストンリング
が晒される条件は、益々苛酷になつており、一層
強力な耐久性がピストンリングに要求されるよう
になつてきた。このような要求にもはや従来の硬
質クロムメツキのみでは対処しきれなくなりつつ
ある。斯かる状況に対処する為、先に、本出願人
は、特開昭57−65837においてピストンリングの
摺動外周面にイオンプレーテイングにより、所定
硬さ、所定厚さの窒化チタン皮膜を被覆し、さら
に摺動外周面あらさを所定値以下する技術を開示
し、また特願昭58−145096においてピストンリン
グの摺動外周面に所定硬さ、所定厚さを有する硬
質クロムメツキ下地層を被覆し、その上にイオン
プレーテイングにより所定厚さを有する窒化チタ
ン皮膜を被覆し、さらに摺動外周面あらさを所定
値以下にする技術を出願した。これらの技術によ
れば耐久性の点で従来技術に係る硬質クロムメツ
キに比し、はるかに改善されたが、次の様な不都
合がその後見出された。すなわち、前者はイオン
プレーテイングされた窒化チタンは、それ自身耐
久性に優れているが、皮膜厚さに限界があるた
め、窒化チタン皮膜が相手材との摩擦により磨滅
し、ピストンリング母材が局部的に露出した場
合、窒化チタンの摩耗が急速に進み、又、皮膜の
耐焼付性も劣化する等耐久性の面で必ずしも満足
のいくものではないということである。一方後者
は前者の点を解消するため硬質クロムメツキを下
地として被覆しその上にイオンプレーテイングに
よる窒化チタン皮膜を被覆し、たとえ窒化チタン
が一部磨滅しても、その化地層である硬質クロム
メツキがあるため充分な耐久性を維持できること
を特徴としたが、イオンプレーテイング処理時、
硬質クロムメツキ皮膜が熱負荷を受けた時硬質ク
ロムメツキ皮膜に粗大クラツクが発生し、窒化チ
タン皮膜にも粗大クラツクが誘発し、この粗大ク
ラツクは、クラツクのエツヂによるエツデローデ
イングを起こし、また皮膜のカケを誘発する等エ
ンジンにとつて悪影響を及ぼす原因となることが
わかつた。またイオンプレーテイングの熱負荷に
より硬質クロムメツキ層からH2などのアウトガ
スが発生する為窒化チタンの密着度に満足するも
のが得られないことと、前記熱負荷により硬質ク
ロムメツキの硬さが低下するために、窒化チタン
皮膜を被覆しても皮膜全体としての充分満足のい
く耐摩耗性を得ることができないという欠点があ
ることがわかつた。 発明が解決しようとする問題点 本発明の目的は、上記の欠点を解消する為にイ
オンプレーテイングによる窒化チタンの優れた耐
摩耗特性はそのまま維持しつつ、かつピストンリ
ング皮膜の耐久性の向上を可能にすることであ
る。 問題点を解決するための手段及び作用 上記の目的を達成するために、本発明によれば
イオンプレーテイングによる窒化チタンの下地処
理として窒化または軟窒化処理を施すことを特徴
とするものであり、それによりたとえ窒化チタン
がピストンリング使用中に一部磨滅した場合であ
つてもその下地層として窒化層がピストンリング
全体としては充分な耐久性、すなわち耐摩耗性と
耐焼付性を維持可能とするものである。本発明に
係るピストンリングは、その少なくとも摺動外周
面に窒化又は軟窒化処理を施し、表面酸化層及び
白色層を含まない窒化層の上に、さらにイオンプ
レーテイングによる窒化チタン皮膜を被覆せしめ
たことを特徴とする。 先ず、本発明に係るピストンリング構成要件の
用語は通常の技術用語に基いて使用されているが
若干説明を行う。 いわゆる広義の窒化法は、プロセス的観点から
は、ガス窒化、イオン窒化、及び塩浴窒化に大別
され、一方侵入拡散せしめられる元素の種類の観
点からは、窒素のみを侵入拡散させる純然たる窒
化法、窒素と炭素を侵入させる炭窒化法、及び炭
窒化を意図するが窒化媒体から酸素も混入する方
法(タフトライド法、日本金属学会報第14巻、第
2号、第101頁、第7図参照)に大別され、さら
に窒化表面の硬度の観点から軟質窒化層を得るこ
とを目的とするものと硬質窒化層を得ることを目
的とするものに分けられるべきものである。但
し、上述のタフトライド法は塩浴軟窒化法とも通
称されているが、窒素のみを鋼材表面に侵入拡散
させるのではなく、低硬度のみを意図するもので
はないため、上述のような分類が一般に使用され
ているのではない。本発明における窒化及び軟窒
化とは上述の説明の広義の窒化法の中で、ピスト
ンリングの窒化にはコストの面で不適切であるイ
オン窒化を除くものである。 また、窒化層とは上述の窒化又は軟窒化処理に
より窒化等が侵入したピストンリング母材の表面
層を意味する。 表面酸化物層とは、窒化又は軟窒化後鋼材表面
に残つていることがある酸化物層又は窒化ガス又
は塩浴中の酸化成分により窒化又は軟窒化中に鋼
材表面に形成されることがある酸化物層である。 さらに、白色層とは、窒化層の表面又は表面近
傍に形成され、顕微鏡下で白く見える脆弱な層で
ある。白色層の構造についてはε−Fe2N飽和相
であるとの解説(鋳鍛造1969年第3巻)、あるい
は白色層は、窒化温度によつてFe2N又はFe2-3
(CN)の何れかの相をとるとの解説(機械設計
第25巻、第15号、第64頁)、及び白色層はFe2N−
Fe3N相、Fe2N−Fe3NとFe4Nの混合相、及び
Fe4N相からなるとの解説もある(機械設計第24
巻第3号第45頁)。このように白色層の構造につ
いては種々の解説があるが、白色層は窒化表面処
理の目的上不所望の脆弱性を有することは通常に
認められている。 イオンプレーテイングとは一方の電極に接続さ
れた蒸発源から生じたイオンを他方の電極に接続
された基板に蒸着させる方法である。 続いて、特許請求の範囲において特定した構成
要件について述べる。 下地層として窒化又は軟窒化処理を施した後酸
化物層及び白色層を取り除く意味は表面酸化物層
上にはイオンプレーテイングによる窒化チタンが
うまく着かず、白色層は硬くてもろい為、窒化チ
タンが磨滅した場合相手シリンダの損傷を著しく
増大させる為である。 次に、下地処理を窒化又は軟窒化処理により行
う理由は、イオンプレーテイング処理時に下地層
が晒される温度履歴を受けても、耐摩耗性に必要
な高い硬度水準をあ維持でき、耐焼付性に優れた
表面層が窒化又は軟窒化処理により得られるから
である。 第1図は窒化処理層の加熱(各温度1時間保
持)による硬さの変化を示す特性曲線図である。
第1図より500℃以下の加熱では硬さの低下は殆
んどないため、窒化処理層は上述の熱履歴に対し
安定であることが分かる。 窒化処理層の上に被覆する皮膜をイオンプレー
テイングによる窒化チタンに限定した理由は、イ
オンプレーテイングはピストンリング母材の機械
的性質をそこなわない比較的低温で密着度の良好
な皮膜を形成でき、又窒化チタンは、耐久性の必
要条件である高硬度、高融点の要件を満たすセラ
ミツクス質材料の中で、特に靭性に富むためピス
トンリングの様に応力負荷状態で使用されても剥
離、粗大クラツク発生がないからである。 次に、酸化物層及び白色層を取り除いた上に下
地層として窒化又は軟窒化処理を施し、イオンプ
レーテイングにより窒化チタンを被覆する意味を
実験結果に基いて説明する。 第2図は実験に用いた往復動摩擦試験機の概略
を示す。第2図において、ピストンリングに相当
する上試片11は上試片固定ブロツク17により
保持され上方から油圧シリンダ19により下向き
の荷重が加えられる。一方シリンダに相当する相
手部材たる下試片13は可動ブロツク21により
保持され、かつ例えば図示の如きクラング機構2
3により矢印方向に往復動せしめられる。また1
5はロードセルである。第2図に示す摩擦試験機
は公知であり、またその構成自体は本発明とは直
接関係ないので詳しい説明は省略する。 摩耗量は第3図に示す如く上試片に残る摩耗痕
径a,bの各3回の試験の測定の平均により行つ
た。 試験条件は次の通りであつた。 1 供試試料 A 下試片13:シリンダライナ用鋳鉄製
(FC25相当材)平板(寸法長さ70mm×幅17mm
×厚さ7mm)の試験面バフ研磨仕上げし、面
あらさ0.5μmにしたもの。なお硬さはHRB95
であつた。 B 上試片11:ピストンリング用鋼棒(寸法
直径8mm、長さ23mm)の端面を18mmRの球面
仕上したもの。但し、この鋼棒を母材として
以下の表面処理を施した試料を調整した。 試料1(従来技術)−硬質クロムメツキを母材
(直径8mm×長さ23mm)端面に厚さ80μmつけ
て試料面粗さを0.5μmに調整した。なおメツキ
硬さはHv900、母材硬さはHv450であつた。 試料2(従来技術)−試料1と同じ母材の上に
直接イオンプレーテイングによる窒化チタンを
厚さ5μmつけて試料面粗さを0.5μmに調整し
た。なお、窒化チタン硬さはHv1730、母材の
硬さはHv430であつた。 試料3(従来技術)−硬質クロムメツキを試料
1と同じ母材上に厚さ60μmつけた上にイオン
プレーテイングによる窒化チタンを厚さ5μm
つけて試料面粗さを0.5μmに調整した。なお、
メツキ硬さはHv750、窒化チタン硬さは
Hv1750、母材硬さはHv430であつた。 試料4(本発明)−13Crマルテンサイト型ス
テンレス鋼製母材上に窒化処理を90μm施し、
表面酸化物相および白色相を取り除いた上にイ
オンプレーテイングによる窒化チタンを厚さ
5μmつけて試料面粗さを0.5μmに調整した。な
お窒化層硬さはHv1080、窒化チタン硬さ
Hv1790であつた。 2 イオンプレーテイング条件 使用装置:蒸発源に電子ビームを照射し、蒸
発源近傍にイオン化電極を設けた高真空型のイ
オンプレーテイング装置。 処理条件:窒化分圧6×10-4Torr、基板温
度480℃処理時間35分。 3 摩耗試験条件 試験機:往復動摩擦試験機(第2図に概略図
示)試験条件:ストローク50mmならし2Kgf×
100cpm×5分、本試験20Kgf×600cpm×30
分、潤滑油SAE#10 エンジンオイル(ミスト
状吹きつけ)。 なお、試料1は通常の硬質クロムメツキピス
トンリングに相当し、試料2はピストンリング
の母材に直接イオンプレーテイングで窒化チタ
ンを被覆した特開昭57−65837のピストンリン
グに相当し、また試料3は下地層としてピスト
ンリングの母材に硬質クロムメツキを被覆した
上に窒化チタンを被覆した特願昭58−145096の
ピストンリングに相当する。摩耗試験結果を示
す第4図に見られる様に、試料2及び3は試料
1よりは摩耗量が少ないものの本発明の試料4
より摩耗量が多い。 さらに、試料2、3を観察して次の知見を得
た。試料2の場合は、イオンプレーテイングさ
れた窒化チタンが下試片13により摩滅して母
材が露出した時、母材部のミクロスカツフが顕
著に発生することによつてさらに摩耗に促進す
る。このような試料2は、母材露出によつて特
に耐焼付性に問題が生じる。また、試料3で
は、母材の露出は起こらないものの、イオンプ
レーテイング処理時の熱負荷により硬質クロム
メツキの硬さが低下するため、窒化チタンの一
部磨滅して硬質クロムメツキが露出した場合硬
質クロムメツキは充分な耐摩耗性を与えない。 第4図より明らかなように、本発明に係る試
料4は従来ピストンリングの表面処理として使
われている硬質クロムメツキ処理の場合(試料
1)、リング母材に直接窒化チタンを被覆した
場合(試料2)、硬質クロムメツキの上に窒化
チタンを被覆した場合(試料3)よりきわめて
少ない摩耗量を示す。すなわち、試料4では窒
化チタンの一部が摩滅し窒化層又は軟窒化層が
局部的に露出されても、窒化層又は軟窒化層は
良好な摩擦面を呈するとともに、窒化層又は軟
窒化層はイオンプレーテイング中にほとんど硬
度低下を示さないので硬質クロムメツキのよう
な欠点を伴わない。これは窒化チタンの一部が
磨滅しても、下地に耐久性に優れた窒化又は軟
窒化層が存在するために、ミクロスカツフの発
生もなく、摩耗自体を耐摩耗性に優れた窒化チ
タンで受ける為、部分的に下地が露出したにも
かかわらず、きわめて少ない摩耗を示したもの
と考えられる。 上述の実験結果及びその考察に基いて、本発明
において下地層は窒化又は軟窒化処理により形成
した。すなわちその理由は、ピストンリング使用
中に下地層が露出された場合に下地層が良好な摩
擦面を呈する様にする為である。 発明の具体的構成 本発明に係るピストンリングの好ましい具体例
は、下記条件(イ)−(ハ):(イ)窒化層厚が10μm〜150
μ
m、硬さがHv800以上、(ロ)該窒化層の上に被覆す
るイオンプレーテイングによる窒化チタン皮膜の
厚さが2〜10μm及び(ハ)該摺動外周面ち面粗度を
1.5μm以下の少なくとも一つを充足することが好
ましい。 以下本項におけるピストンリングの好ましい具
体例の説明において、特記しない限り窒化層とは
表面酸化物層及び白色層を含まない窒化層及び軟
窒化層の両者を意味する。 本発明のピストンリングとしては、イオンプレ
ーテイングによる窒化チタンの下地処理として、
充分な窒化層の硬さはHv800以上である。窒化層
の硬さは、第1図のごとく高温加熱により若干低
下するから、イオンプレーテイング処理時に熱負
荷を受けると若干の硬さ低下をきたすことがあ
る。そこでこの硬さ低下と窒化層の硬さの関係を
測定するため、窒化層の硬さを種々変えて往復動
摩擦試験を実施した結果を第5図に示す。 往復動摩擦試験条件は次のとおりである。 A シリンダ相当(下試片):シリンダライナ用
鋳鉄製平板(寸法70mm長×17mm幅×7mm厚)の
試験面バブ研磨仕上した。 B ピストンリング相当(上試片):13Crマルテ
ンサイト型ステンレス鋼棒(直径8mm×長さ23
mm)の端面を18mmRの球面加工し、この端面に
厚さ90μmの窒化処理を施し表面酸化物層及び
白色層を取り除き、下記第1表に示す熱処理を
施した後、イオンプレーテイングによる窒化チ
タンを厚さ5μmつけて表面粗度を0.5μmに調整
した。
【表】 C イオンプレーテイング条件:窒化分圧6×
10-4Torr、基板温度480℃、処理時間35分。 往復動摩擦結果を示す第5図からもわかる通
り、窒化処理層の硬さがHv800未満になると摩耗
量が増大する。従つて、下地窒化処理層の硬さは
Hv800以上が好ましい。Hv800以上の硬さを得る
ためにはイオンプレーテイング時のピストンリン
グの温度を約600℃以下にすることが必要である
ことが第1表より分かる。この温度はピストンリ
ング母材の変形、軟化等防止の面からも望ましい
温度である。 次に窒化層の厚さは10〜150μmが好ましい。
窒化層の厚さが10μm未満の場合はその耐久性が
充分でなく、150μmをこえると鋼材よりは脆い
窒化層のためにピストンリングの全体の強度が低
下するからである。より好ましい窒化層の厚さは
50〜90μmである。 ピストンリング母材は窒化に適する鋼材であれ
ば特に制限はないが、厚い窒化層を確保できるこ
とから少なくとも5%以上のCrを含有した合金
鋼、特に10〜20%Cr含有するステンレス鋼が望
ましい。Cr含有鋼、特にステンレス鋼を窒化処
理する場合、その表面に自然発生している不働態
物質が非常に強固で緻密な酸化膜を構成し、これ
が障壁となつて、窒素、炭素等の侵入を阻害する
ことから、従来より、窒素等の侵入拡散の障害と
なる酸化膜を除去する次の方法が提案されてい
る。 (1) 酸洗浄により酸化膜を化学的に除去する方
法。 (2) ブラスト処理等により物理的に酸化膜を除去
する方法。 (3) ハロゲン化物をステンレス鋼に塗布するか又
は表面処理炉中にハロゲン化物を混入する方
法。 本発明において、これらの方法により酸化膜を
除去して窒化を行うことができる。 さらに、本出願人の別出願に係る窒化方法すな
わち、脱脂洗浄したステンレス鋼を炉に挿入し、
窒化を妨げる雰囲気を炉内から排除し、NH3
スを前記炉内に流入させ、炉の温度を窒化温度に
昇温させ、窒化温度においてNH3ガスとステン
レス鋼を接触させ、炉の温度が窒化温度に昇温す
る以前に、炉内に水を事前決定期間に亘つて添加
し、窒化開始温度近傍にて、水及びNH3ガスの
存在下でステンレス鋼を加熱し、この加熱中にお
ける水のNH3ガスに対する流量比を3×10-3
積%以上に制御する窒化方法を行うこともでき
る。この窒化方法の一例によると、ピストンリン
グ状に加工したSUS440B、及びSUS420J2相当材
の圧延線をパークロルエチレン蒸気洗浄した後、
内径950mm、深さ1600mmのSUS304鋼管製ポツト
を有するピツト型電気炉に、圧延線を挿入し、ポ
ツト内の空気を窒素により置換後NH3ガスを150
/min供給し、次の室温から570℃まで昇温し、
570℃で180分及び300分以上保持して、圧延線に
窒化すると50μm以上の窒化層を得ることができ
る。なお、この方法は窒素のみを母材に侵入させ
るガス窒化法である。 さらに、短時間塩浴窒化法(タフトライド処
理)を行つてからガス窒化又はガス軟窒化処理を
行うことにより厚い窒化層を形成することもでき
る。 次に窒化チタンの厚さは2〜10μmの範囲が好
ましい。窒化チタンの厚さが2μm未満では窒化
チタンの耐久性の面で充分ではなく、10μmを越
えるとピストンリング使用中に窒化チタンにクラ
ツクが発生し、さらにクラツクから派生するカケ
等が起こりやすくなりピストンリングが相手シリ
ンダを損傷させるなど悪影響がで易い。イオンプ
レーテイングによる皮膜は一般に薄い為、コーテ
イング後の面粗度は下地面粗度にほぼならう。そ
こで、最終面粗度は下地窒化処理の面粗度でほぼ
きまることになり、下地の加工状態が重要とな
る。 上述の窒化チタン皮膜厚さ2〜10μmを有する
ピストンリングを作製する場合、窒化チタン皮膜
をつける前段階の窒化段階でほぼ完成品の表面粗
度状態にしておき、窒化チタン皮膜をつけた後
は、当りラツピングを施す程度だけにする必要が
ある。従つて、窒化チタン皮膜をつけた後の後加
工で最終仕上げ面粗度を調整するのは難しい。 続いて窒化チタン皮膜の仕上げ面粗度について
説明する。窒化チタン皮膜の仕上げ面粗度と相手
シリンダ相当材(FC25相当、硬さHKB95、表面
粗さ0.5μm)の摩耗との関係を調査するため以下
の試験条件により試験を行なつた。 A シリンダ相当(下試片):シリンダライナ用
鋳鉄製平板(寸法70mm長×17mm幅×7mm厚)の
試験面をバフ研磨仕上げした試片。 B ピストンリング相当(上試片):13Crマルテ
ンサイト型ステンレス鋼丸棒(直径8mm×長さ
23mm)の端面を18mmRの球面に加工し、この端
面に厚さ90μmの窒化処理(窒素のみのガス拡
散法)を施しそして表面酸化層及び白色層を取
り除いた後、面粗度を第2表に示す如く変えて
研磨した後イオンプレーテイングによる窒化チ
タンを厚さ5μmつけて摩耗試験に供試した。
【表】 なお、下地窒化処理層硬さはHv1100、窒化
チタン硬さはHv1750であつた。 C イオンプレーテイング条件 処理条件:質素分圧6×10-4Torr、基板温
度480℃、処理時間35分。摩耗量の測定:第7
図の様に下試片(ライナ相当)の摩耗痕を3ケ
所アラサ計で測定し、その摩耗深さの平均をと
つた。試験結果を示す第6図から明らかなよう
に、窒化チタン皮膜の仕上げ面粗度が1.5μmを
越えると、相手シリンダ材の摩耗が急激に増大
してくる。これは窒化チタン皮膜が非常に硬い
為面粗度が粗くなると、相手材を削りとる作用
が働く為と考えられる。従つて相手シリンダを
損傷させない面粗度として1.5μm以下にするの
が好ましい。なおより好ましい面粗度は1.0μm
以下である。 続いて、本発明に係る下地窒化又は軟窒化処理
及び窒化チタンのイオンプレーテイングを施すピ
ストンリングの部位を第8図A〜E及び第9図A
及びBにより説明する。 第8図A〜Eは圧縮リングの数例を示し、Aは
摺動外周面20が垂直なプレーンタイプ、Bは摺
動外周面20を球面に仕上げたバレルタイプ、C
はインナーステツプ21を形成したバレルタイ
プ、Dはテーパタイプ、Eはアンダカツト22を
形成したテーパタイプである。本発明に係る窒化
層23及び窒化チタン皮膜24はピストンリング
摺動外周面20のみに選択的に形成されている場
合を例示したが、ピストンリングの摺動外周面2
0以外の表面に本発明に係る処理を施してもよ
い。 第9図A及びBはそれぞれ3ピース型及び2ピ
ース型オイルリングの例であり、25はサイドレ
ール、26はエキスパンダである。本発明に係る
窒化層23及び窒化チタン皮膜24はサイドレー
ル25の端面である摺動外周面に形成される 続いて、本発明に係る窒化層及び窒化チタン皮
膜の微視的構造を第10図を参照として説明す
る。 第10図において30はピストンリング母材で
あり、その上に形成された窒化層23は顕微鏡に
よると二相23A,23Bに分かれて同定され
る。窒化層23Aはピストンリング母材に拡散し
た窒素と窒化物とより基本的に構成され、一方窒
化層23Bはピストンリング母材に拡散した窒素
により基本的に構成されると考えられる。27及
び28はそれぞれ除去された表面酸化物層と白色
層であり、窒化層23との位置関係を第10に示
した。窒化チタン皮膜24は窒化層23上に被着
形成されている。 発明の効果 以上のようにイオンプレーテイングによる窒化
チタン皮膜の下地処理を窒化及び軟窒化処理に特
定した本発明のピストンリングは、従来の窒化チ
タン皮膜のみをつけたピストンリングおよび硬質
クロムメツキの上に窒化チタン皮膜をつけたピス
トンリングの欠点であつた耐久性不足に大幅に改
善するとともに、耐焼付性も改善でき、高負荷エ
ンジン用のピストンリングとして安定した性能を
維持することができ、その工業的価値は大であ
る。
【図面の簡単な説明】
第1図は窒化処理層の熱履歴による硬さの低下
を示すグラフ、第2図は本発明の摩耗試験に使用
した公知の往復動摩擦試験機の概要図、第3図は
摩耗量の評価方法を示す摩耗痕径の寸法を示す
図、第4図は従来技術との比較において本発明の
ピストンリングについての摩耗試験結果を示すグ
ラフ、第5図は下地窒化処理の硬さと摩耗量との
関係についての摩耗試験結果を示すグラフ、第6
図はイオンプレーテイングによる窒化チタンの表
面粗度と相手材の摩耗深さとの関係についての摩
耗試験結果を示すグラフ、第7図は第6図に示す
試験におけるシリンダ相当材(下試片)の摩耗量
の評価方法を示す試料片の測定個所を示す図、第
8図A〜E及び第9図A及びBは本発明に係る窒
化及びイオンプレーテイングを施したピストンリ
ングの具体例を示す図面、第10図は本発明に係
るピストンリングの摺動外周面を示す概念図であ
る。 20……ピストンリングの摺動外周面、23…
…窒化層、24……窒化チタン、27……表面酸
化物層、28……白色層。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 ピストンリングの少なくとも摺動外周面に窒
    化又は軟窒化処理を施し、表面酸化層及び白色層
    を含まない窒化層の上に、さらにイオンプレーテ
    イングによる窒化チタン皮膜を被覆せしめたこと
    を特徴とする内燃機関用ピストンリング。 2 下記条件(イ)−(ハ):(イ)窒化層厚が10μm〜150
    μ
    m、硬さがHv800以上、(ロ)該窒化層の上に被覆す
    るイオンプレーテイングによる窒化チタン皮膜の
    厚さが2〜10μm及び(ハ)該摺動外周面の面粗度を
    1.5μm以下、の少なくとも一つを充足することを
    特徴とする特許請求の範囲第1項記載のピストン
    リング。
JP13187884A 1984-06-28 1984-06-28 内燃機関用ピストンリング Granted JPS6113064A (ja)

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