JPH032751Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案はトーシヨナルダンパに関するものであ
る。

（従来の技術） 内燃機関のクランク軸には捩り弾性によつて捩
り振動が発生するため、一般にはクランク軸プー
リにトーシヨナルダンパを設けて、クランク軸の
捩り振動を減衰させるようにしている。

例えば、第３図に示す従来のトーシヨナルダン
パは、ボス５１と、その外周のハブ５２と、その
外縁のリブ５３とを鋳鉄を用いて一体的に鋳造
し、該リブ５３に加硫ゴム等よりなる弾性体５４
を介してプーリ５５に取着したものである。

ところが、このトーシヨナルダンパは慣性モー
メントが大きいため、これをクランク軸に取付け
ると、第４図に鎖線で示すようにクランク軸の固
有振動回転数が常用回転域にまで低下してしま
い、クランク軸等の耐久性に影響を及ぼすという
問題がある。

そこで、常用回転域におけるクランク軸の捩り
振動レベルを下げるために、ハブを普通鋼板で形
成する等してトーシヨナルダンパを軽量化するこ
とが考えられている。

（考案が解決しようとする問題点） しかし、ハブを普通鋼板によつて形成すると、
クランク軸の高回転時にハブの普通鋼板が大きく
共振して音を面放射するため、騒音が発生すると
いう不具合があつた。

考案の構成 本考案は前記問題点を解決するため、少なくと
もハブプレートとリブとを、拘束型ダンピング構
造の制振鋼板により形成し、鋳鉄製のボスにボル
トにより締付固定したという技術手段を採つた。

（作用） 少なくともハブプレートとリブとが拘束型ダン
ピング構造の制振鋼板により形成されているの
で、トーシヨナルダンパ全体が軽量化され、特に
慣性モーメントが低減される。

従つて、クランク軸の先端部が軽くすることが
できるため、クランク軸の第１ジヤーナルにおけ
る首振り振動が押えられ、騒音の低減やクランク
軸の耐久性の向上に寄与する。

また、クランク軸の固有振動回転数を高く維持
することができるので、常用回転域におけるクラ
ンク軸の捩り振動レベルが低減され、クランク軸
の耐久性が向上する。

また、占有面積の大きいハブプレートとリブは
前記した構成からなる制振鋼板により形成されて
いるので、クランク軸の高回転時においても共振
が抑制され、音を面放射することがほとんどな
い。従つて、トーシヨナルダンパにおける騒音の
発生を防止することができる。以上に加えて本願
は、ハブプレートとリブとが鋳鉄制のボスにボル
ト締されているが、前記の如く構成された制振鋼
板内部の高分子材のスプリング効果によりボルト
が緩みにくく締付が確実となる。

（第一実施例） 以下、本考案を具体化した第一実施例を第１，
４図に従つて説明する。

内燃機関のクランク軸１１に外嵌される円筒状
のボス１と、その外周に突出する取付用フランジ
２とは鋳鉄を用いて一体的に鋳造されている。

取付用フランジ２には、制振鋼板によつて一体
的に折曲形成されたハブプレート３及びリブ４が
配設され、該ハブプレート３においてボルト５に
より固定されている。

ここで使用された制振鋼板は、２枚の普通鋼板
の間に高分子製のダンピング用中間材が挟まれて
なる拘束型ダンピング構造の制振鋼板であつて、
単なる普通鋼板に比べて10²〜10³倍の振動減衰力
を有するものである。具体的には、２枚の冷間圧
延鋼板の間に200℃以下では熱分解しない高分子
材料が積層されてなるLSD１（JIS規格）が使用
されている。

前記リブ４の外周面には加硫ゴム等よりなる弾
性体６を介してプーリ７が接合されている。

また、前記ボス１の外周には内燃機関の本体８
に取着されたオイルシール９が摺動可能に当接さ
れている。

次に、以上のように構成されたトーシヨナルダ
ンパの第一実施例について、その作用効果を説明
する。

クランク軸１１が回動すると、該クランク軸１
１には捩り弾性によつて捩り振動が発生し、その
捩り振動レベルは特に固有振動回転数において高
くなる。

ここで、本実施例ではハブプレート３とリブ４
が前記の構成よりなる拘束型ダンピング構造の制
振鋼板により形成されているので、トーシヨナル
ダンパ全体が軽量化される。また、特に外周部が
軽量化されるので、慣性モーメントは効果的に低
減される。

従つて、クランク軸１１の先端部を軽くするこ
とができ、クランク軸１１の第１ジヤーナル（図
示略）における首振り振動が押えられ、騒音の低
減やクランク軸の耐久性の向上に寄与する。

また、第４図に実線で示すように、クランク軸
１１の固有振動回転数を高く維持することができ
るので、常用回転域（一般に500〜6000回転程度）
におけるクランク軸１１の捩り振動レベルが低減
し、クランク軸１１の耐久性が向上する。

また、占有面積の大きいハブプレート３とリブ
４が前記のように構成した制振鋼板により形成さ
れているので、クランク軸１１の高速回転時にお
いても制振鋼板の内部損失により共振が抑制さ
れ、音を面放射することがほとんどない、従つ
て、騒音の発生を防止することができる。

さらに本実施例においてハブプレート３とリブ
４は、鋳鉄制のボス１にボルト５締されている
が、制振鋼板内部の高分子材によつてスプリング
効果がありボルトが緩みにくく締付が確実とな
る。これに加え、鋳鉄を用いた鋳造品であるか
ら、その外周面を平滑に研磨する事ができるの
で、オイルシール９をボス１の外周面に対してス
ムーズに摺動させることができる。

また、ボス１は鋳鉄製であるから重量増加の原
因とはなるが、内周部に当るため、トーシヨナル
ダンパ全体の貫性モーメントはさほど増加しな
い。

（第二実施例） 次に、本考案の第二実施例を第２図に従つて説
明すると、本実施例はボス１を有しておらず、ハ
ブプレート３がクランク軸１１に直接ボルト５に
より固定される点においてのみ、前記第一実施例
と相違している。

本実施例も前記第一実施例と同様の作用効果を
奏する。

なお、本考案は前記実施例の構成に限定される
ものではなく、例えば以下のように考案の趣旨か
ら逸脱しない範囲で任意に変更して具体化するこ
ともできる。

(1) ハブプレート３とリブ４は別体として形成し
た後に、互いに接合してもよい。

(2) ハブプレート３又はリブ４の寸法、形成等も
変更することができる。

(3) ハブプレート３及びリブ４以外の部位、例え
ば前記取付用フランジ２等、を制振鋼板で形成
してもよい。

考案の効果 以上詳述したように、本考案によればトーシヨ
ナルダンパの軽量化及び慣性モーメントの低減が
可能となり、クランク軸の耐久性の向上に寄与す
るばかりでなく、トーシヨナルダンパにおける騒
音の発生を防止することもできるという優れた効
果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案を具体化した第一実施例を一部
破断して示す側面図、第２図は第二実施例の要部
断面、第３図は従来例の要部断面図、第４図はク
ランク軸の捩り振動レベルと回転数との関係を示
す線図である。 ３……ハブプレート、４……リブ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 少なくともハブプレート３とリブ４とを、拘束
   型ダンピング構造の制振鋼板により形成し、鋳鉄
   製のボス１にボルト５により締付固定したことを
   特徴とするトーシヨナルダンパ。