JPH032744B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 金属を材料とした缶の内面に、一般に缶用塗料
或は内面塗料と呼ばれている合成樹脂の塗料で、
塗装した缶が内面塗装缶或は内面缶として、広く
用いられている。上記塗装は缶の材料である金属
を内容物による腐食から保護するために施される
ものであるが、この内面缶を用いても、なお缶の
材料である金属を腐食する内容物にはポリエチレ
ンを主材料として、ブロー成形法によつて成形さ
れた、一般にアトロン或はポリロンと呼ばれてい
る、軟質容器を金属製の缶内に装入した一般にア
トロン缶と呼ばれている缶が用いられて来た。こ
のアトロン缶は一般内面缶より内容物に対して良
好な耐食性を有する反面、ブロー成形製品のコス
トが高価である上に製缶工程に於ける作業性が劣
り、また成形方法の性質上ストレスクラツクが発
生したり、或は軟質容器の性質上発生するたわみ
から内容物の充填時にオーバーブローを起す等の
欠点がある。このため、経済的で、なおかつ高耐
食性を有する缶の製造が要望されている。

従来よりラミネート鋼板を用いた高耐食性の缶
を製造する試みは活発になされて来たが、例えば
高耐食性のフイルム等をラミネートした鋼板を用
いて通常のロツクシームでサイドシーム部分を接
着した場合、該フイルムのシーム部鋼板との接着
強度やフイルム自体の抗張力が低い為に、缶体に
大きな衝撃力が働いた場合にはフイルムが破断し
て、鋼板が露出する。このために高耐食性を保持
し得ない難点があり、またロツクシームのかわり
に缶胴をシーム溶接によつて接合した後、通常の
補修方法（例えば溶液型塗料の塗布）でシーム溶
接部を被覆する方法では補修部に高耐食性を得る
ことは困難とされて来た。高耐食性のフイルムを
ラミネートした鋼板をロツクシーム法でサイドシ
ームし更に加熱によりラミネートフイルムどうし
を融着させることにより得られる従来のフイルム
ラミネート缶では、大きい衝撃力が作用したとき
融着ラミネートフイルムに最も大きい衝撃力が集
中する部分（以下単にＡ部と略称し、第１図に示
す。）のフイルムが破断し、缶胴基材が露出し、
耐食性が低下するものと考えられる。したがつ
て、前記Ａ部のフイルムが破断する如き大きな衝
撃力が集中しても缶胴基材の露出が起らず、防食
性の改善されたフイルムラミネート缶用缶胴の開
発が強く望まれている。

本発明は、従来のフイルムラミネート缶の上記
欠点を解消し、耐食性および耐衝撃性の改善され
たフイルムラミネート缶用缶胴を提供することを
目的とするものである。

すなわち、本発明は、缶胴内面にプラスチツク
フイルムをラミネートし、ロツクシーム法でサイ
ドシームし、該サイドシーム部を熱融着せしめて
なるフイルムラミネート缶用缶胴において、該缶
胴の内面が、少くとも缶胴基材に直接接触する内
層と、内層上にラミネートされた中間層と、中間
層の上にラミネートされ、缶内容物に直接接触す
る外層とよりなる多層複合フイルムでラミネート
されており、該内層がカルボキシル基またはエポ
キン基を含有する変性ポリオレフインあるいはポ
リアミド樹脂のフイルムであり、該中間層がポリ
エチレン共重合体のフイルムてあり、該外層がポ
リオレフイン、ポリオレフイン共重合体またはポ
リアミド樹脂のフイルムであり、該中間層と内層
または外層との接着強度が0.1〜３Kg／cmの範囲
にあることを特徴とする耐食性、耐衝撃性フイル
ムラミネート缶用缶胴を提供するものである。

本発明に使用する缶胴基材に直接接触する内層
のプラスチツクフイルムとしては、缶胴基材、例
えば、ブリキ、テインフリースチール等に対して
高度の接着強度を有し、かつ、缶内容物に対して
耐食性を有するものであれば、特に制限はない
が、カルボキシル基またはエポキシ基を含有する
変性ポリオレフイン、ポリアミド樹脂などのフイ
ルムが好適であり、例えば、アドマー（三井石油
化学工業株式会社製、変性ポリオレフイン、登録
商標）、ボンドフアースト（住友化学工業株式会
社製、ポリオレフイン、登録商標）などをあげら
れることができる。

内層の厚みは、充分な機械的強度を有する限り
特に制限はないが、中間層および外層の厚みとも
関連し、通常５〜100μの範囲で適宜選択するこ
とができる。

本発明に使用する内層上にラミネートされた中
間層のプラスチツクフイルムとしては、通常の製
缶加工に耐え、ある程度以上の大きな衝撃力によ
り内層または外層間で剥離して内層の破断を回避
しうる如き適度の接着強度を有し、かつ、缶内容
物に対して耐食性を有するものであれば特に制限
はないが、ポリエチレン共重合体、例えば、ポリ
プロピレン・ポリエチレン系ブロツク共重合体、
ケン化もしくは未ケン化エチレン酢ビ系共重合
体、エチレン・アクリル酸エステル系共重合体等
のフイルムが好適である。

中間層と内層または外層との接着強度は、使用
条件にもよるが、例えば、５ガロン缶の場合通常
は0.1〜３Kg／cm程度の範囲にあり、好ましくは
0.2〜１Kg／cmの範囲にある。

中間層の厚みは、薄い方が好ましいが、通常５
〜50μの範囲が適当である。

中間層の上にラミネートされ、缶内容物に直接
接触する外層のプラスチツクフイルムとしては、
缶内容物に対して高度の耐食性を有するものであ
れば、特に制限はないが、ポリオレフイン、ポリ
オレフイン共重合体、ポリアミド樹脂、等のフイ
ルムが好適であり、厚みは通常10〜50μが適当で
ある。

本発明の多層複合フイルムは、前記三層複合フ
イルムの基本構造を保持しつつ、使用目的に応
じ、適宜４層以上の複合フイルムとすることがで
きる。例えば４層の場合、内層の上に内層と強力
に融着しうる第４の層を使用し、内層の厚みを薄
くして所望の目的を達成せしめることもできる。
複合フイルムの厚みは、例えば、５ガロン缶の場
合、通常40〜200μの範囲で使用される。

本発明の缶胴ならびに該缶胴を有するフイルム
ラミネート缶の製造にあたつては、例えば、少く
とも上記の内層、中間層および外層よりなる多層
プラスチツク複合フイルムを缶胴用鋼板の内面に
ラミネートし、通常のロツクシーム法でサイドシ
ームを実施し、サイドシーム部のラミネートフイ
ルムを加熱融着させることにより、サイドシーム
の気密を完成して缶胴を形成する。かくして得ら
れた缶胴を用いたフイルムラミネート缶では、大
きな衝撃力が作用した場合にも、中間層と外層ま
たは内層との間で層間剥離が起きるため、内層の
破断を回避することができ、缶胴基材の露出を生
ずることなく、耐食性および耐衝撃性が著しく改
善される。

以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明
する。

実施例 板厚0.32mmの缶胴用テインフリースチール板
（920×354mm）の内面に、熱圧着法により、融点
約120℃のカルボキシル基含有ポリエチレン共重
合体（アドマー：三井石油化学工業株式会社製、
登録商標）のフイルムを内外層とし、市販のポリ
プロピレン・ポリエチレンブロツク共重合体を中
間層とする三層複合フイルム（厚さ80μ）をラミ
ネートした。

別に、板厚0.32mmの缶蓋用テインフリースチー
ル板（250×250mm）２枚の内面にそれぞれ、内層
がアドマーで、外層がポリエチレンである二層複
合フイルム（厚さ80μ）をラミネートした。

次に、常法により、缶胴サイドシーム部および
缶胴と缶蓋との接合部を通常の巻締方法で接合
し、さらに、その巻締部を約140〜150℃に局部加
熱して、上記三層複合ラミネートフイルムを熱溶
融し、缶胴内面に融着させると共に、三層複合ラ
ミネートフイルムの相互に接触する部分を融着さ
せた後冷却固化させて、巻締部の接着と気密を完
成させた。

かくして得られた５ガロン缶に水を充填し、２
ｍの高さよりの落下衝撃試験を実施したところ、
水洩れおよび缶胴基材の露出がなく良好な耐衝撃
性を示した。また、通常のアトロン缶用酸性、ア
ルカリ性および有機溶剤性の缶内容物について、
それぞれ長期（２年以上）耐食試験を行なつたと
ころ錆の発生がなく充分な耐食性を示した。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明による缶胴のサイドシーム部
の説明図である。 １……缶胴基材、２……プラスチツクフイルム
内層、３……プラスチツクフイルム中間層、４…
…プラスチツクフイルム外層、５……缶胴の外
側、６……缶胴の内側、Ａ……衝撃力の集中する
部分、Ｂ……ラミネート複合フイルム同志の融着
部分。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 缶胴内面にプラスチツクフイルムをラミネー
   トし、ロツクシーム法でサイドシームし、該サイ
   ドシーム部を熱融着せしめてなるフイルムラミネ
   ート缶用缶胴において、該缶胴の内面が、少くと
   も缶胴基材に直接接触する内層と、内層上にラミ
   ネートされた中間層と、中間層の上にラミネート
   され、缶内容物に直接接触する外層とよりなる多
   層複合フイルムでラミネートされており、該内層
   がカルボキシル基またはエポキシ基を含有する変
   性ポリオレフインあるいはポリアミド樹脂のフイ
   ルムであり、該中間層がポリエチレン共重合体の
   フイルムであり、該外層はポリオレフイン、ポリ
   オレフイン共重合体またはポリアミド樹脂のフイ
   ルムであり、該中間層と内層または外層との接着
   強度が0.1〜３Kg／cmの範囲にあることを特徴と
   する耐食性、耐衝撃性フイルムラミネート缶用缶
   胴。