JPH0325455Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、エンジンのクランクシヤフトからベ
ルトを経由して各種の補機にトルクを伝達する際
にクランクシヤフト側に生起されるトルク変動を
ベルト側へ伝えず、ベルトや補機をスムーズに回
転駆動させるトルク変動吸収ダンパに関する。

〔従来の技術〕

従来からこの種ダンパの一例として、第２図に
示すように、クランクシヤフトの先端に嵌合され
るハブ１の外周にベアリング３を介して同心的に
プーリ２を配置し、該ハブ１とプーリ２をゴムカ
ツプリング４によつて連結するとともに、ハブ１
とプーリ２のそれぞれに嵌合したストツパ６，７
を第３図に示すように凹凸係合したストツパ機構
５を備えたものが知られている。

このダンパは、プーリ２と補機の間に無端ベル
トを架け渡しクランクシヤフトから補機へトルク
を伝達すると同時に、ゴムカツプリング４の弾性
を利用してクランクシヤフト側に生起されるトル
ク変動を吸収抑制し、ベルトやこれに連なる補機
の回転駆動をスムーズにする機能を営むもので、
前記トルク変動はエンジンの始動からアイドル状
態を経てある程度加速が進むまでの回転領域にお
いて顕著である。

〔考案が解決しようとする問題点〕

当該ダンパが前記トルク変動を吸収する場合、
ハブ１とプーリ２はゴムカツプリング４の弾性に
伴なう捩り変形により角度的に回転変動する。し
たがつてこの両部材１，２が回転変動すること自
体は、当該ダンパの機能上、積極的に容認される
ものであるが、プーリ２側を慣性質量とする当該
ダンパのダイナミツクダンパ的な構造から固有振
動数があり、始動からアイドル回転までに共振点
を通過するため、この共振時にハブ１とプーリ２
の回転変動が一挙に増大する状態を生じる。上記
ダンパは、この点を考慮し、過大なトルクが入力
されたときにストツパ機構５を作動してハブ１と
プーリ２を直接的に接続し、両部材１，２の回転
変動レベル（捩れ角）を一定量までに抑えてゴム
カツプリング４の過大な捩れによる破損を防止す
るように構成されているが、ストツパ機構５の作
動が急激なトルク上昇に伴なつて行なわれるため
ストツパ６，７同士が強く衝接し作動ごとに異音
を発生し、さらにトルクが大きい場合に各部材の
嵌合部に滑りを生じる問題を有している。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案は以上の点に鑑み、上記ストツパ機構５
の作動に伴なう異音の発生や部材相互の滑りを防
止することを目的とするもので、この目的を達成
するため、ストツパ機構５をなくすとともに、過
大なトルクの入力時に該ストツパ機構５に代わつ
てゴムカツプリング４の破損を防止できるように
所要の回転数域に達するまでハブ１とプーリ２の
回転変動を抑えるクラツチ機構を設ける構成と
し、すなわち、エンジンのクランクシヤフトに固
定されるハブと、前記ハブの外周側にベアリング
を介して回転自在に配置されたプーリと、前記ベ
アリングの軸方向一端側に配置され、前記ハブと
前記プーリとを連結したゴムカツプリングと、前
記ベアリングの軸方向他端側に配置され、前記プ
ーリに設けられた一方のリングギヤと、前記ハブ
の軸方向他端側に配置され、前記クランクシヤフ
トの外周にスプライン嵌合され、前記クランクシ
ヤフトに対して従動回転するとともに軸方向にス
ライド自在になるクラツチハブと、前記クラツチ
ハブに従動し、前記一方のリングギヤと解除自在
に噛合する他方のリングギヤと、を有することを
特徴とする。

〔作用〕

本考案のトルク変動吸収ダンパは過大なトルク
が入力する低速回転時にクラツチハブをスライド
操作して１対のリングギヤを互いに噛合させ、ト
ルクをクランクシヤフトからクラツチハブおよび
リングギヤを介してプーリに直接伝達し、トルク
がハブおよびゴムカツプリングを経由しないよう
にする。回転数が増加して所定域に達した時点で
前記リングギヤの噛合を解除し、トルクをクラン
クシヤフトからハブおよびゴムカツプリングを介
してプーリに伝達し、ゴムカツプリングの弾性に
よつてトルクの変動を吸収する。本考案のダンパ
は、このリングギヤの噛合の解除作動時を前記共
振点の通過後として過大トルクの入力によるゴム
カツプリング４の破損を防止するものである。

〔実施例〕

つぎに本考案を図面にしたがつて更に詳細に説
明する。

第１図に示すように、ハブ１の外周にベアリン
グ３を介してプーリ２が同心的に配置され、この
ハブ１とプーリ２はゴムカツプリング４を介して
連結されている。ハブ１とプーリ２の間には上記
従来例のようなストツパ５は設けられていない。

クランクシヤフト８の外周に、クラツチハブ１
０がスプライン嵌合ｓされ、クランクシヤフト８
に対して従動回転するとともに軸方向にスライド
可能に構成されている。クラツチハブ１０の外周
に嵌合したスリーブ１１の軸方向一端には、その
外周縁に雄側のリングギヤ１２が形成され、ハブ
１の一端内周縁に該リングギヤ１２と対をなす雌
側のギヤ１３が形成されている。クラツチハブ１
０とスリーブ１１は図示しないマグネツト、モー
タ等の駆動源の制御によるロツド１４の進退によ
つてスライドする。このためロツド１４に外挿し
た筒部材１５の係合片１６がスリーブ１１の外周
面に形成した環状溝１７に摺接自在に係合してい
る。筒部材１５は、ロツド１４に直接固定されず
にスライド可能になり、かつロツド１４に対して
該ロツド１４の先端に嵌合した取付環１８とスプ
リング１９を介して連結されており、該スプリン
グ１９の弾性を利用して前記両ギヤ１２，１３を
柔らかく噛合させる緩衝機構２０が構成されてい
る。前記駆動源を電気的に制御する場合はイグニ
ツシヨンによる信号、回転パルス、スタータモー
タのホールデイングコイルによる信号（タイマー
回路付）、点火パルス等をインプツト入力する。
ダンパ本体に戻つて符号２１，２２はベアリング
３抜け止め用のスナツプリング、２３はハブ１の
外周に設けられたトーシヨナルダンパ部を示して
いる。

上記構成になるダンパは、エンジンの始動から
アイドル状態にかけてクランクシヤフト８とプー
リ２を全体を符号９で示すクラツチ機構を介して
直接に接続し、過大トルクの入力に伴なうハブ１
とプーリ２の大きな回転変動によつてゴムカツプ
リング４が破損するのを防止する。クラツチ機構
９は１対のリングギヤ１２，１３の機械的な噛合
によつてクランクシヤフト８とプーリ２とを接続
するものであつて、壊れにくく、スリツプしない
特徴を備えている。回転数が増加して所定域に達
した時点でクラツチ機構９を切ると同時にトルク
はゴムカツプリング４を経由して伝達され、当該
ダンパ本来のトルク変動吸収作用を奏する。また
上記ダンパによると、クラツチ機構９がハブ１、
ベアリング３およびプーリ２よりなるダンパ本体
に対してその軸方向他端側（図上右側）に配置さ
れ、一方、ゴムカツプリング４がダンパ本体に対
してその軸方向一端側（図上左側）に配置されて
いるため、経時的な疲労などによりゴムカツプリ
ング４を新品と交換する場合に、ゴムカツプリン
グ４をハブ１およびプーリ２から取り外すだけ
で、またはゴムカツプリング４を含むダンパ本体
をクランクシヤフト８から取り外すだけで、クラ
ツチ機構９を分解取り外ししなくてもゴムカツプ
リング４を新品と交換することができる。

〔考案の効果〕

本考案のトルク変動吸収ダンパは以上の構成と
作用によつて次の効果を奏する。

Ａ 従来技術におけるクラツチ機構に代えてクラ
ツチハブと１対のリングギヤとの組み合わせよ
りなるクラツチ機構を設け、回転数が所定域に
達するまでクランクシヤフトとプーリとを直接
接続するようにしたため、従来のクラツチ機構
の作動に伴う異音の発生および部材相互の滑り
の発生を防止した上でゴムカツプリングの破損
を防止することができ、また過大トルクの入力
によるベルトのスリツプを防止して該ベルトの
寿命を延ばすことができる。

Ｂ 本考案のクラツチ機構は１対のリングギヤの
機械的な噛合によりクランクシヤフトとプーリ
とを接続するものであつて、他のクラツチ機構
と比較して構造が単純で強度が高く、よつて壊
れにくく、かつスリツプしない特徴を備えてい
る。

Ｃ クラツチハブと１対のリングギヤとの組み合
わせよりなるクラツチ機構がハブ、ベアリング
およびプーリよりなるダンパ本体に対してその
軸方向他端側に配置され、一方、ゴムカツプリ
ングがダンパ本体に対してその軸方向一端側に
配置されているため、経時的な疲労などにより
ゴムカツプリングを新品と交換する場合に、ゴ
ムカツプリングをハブおよびプーリから取り外
すだけで、またはゴムカツプリングを含むダン
パ本体をクランクシヤフトから取り外すだけ
で、クラツチ機構を分解取り外ししなくてもゴ
ムカツプリングを新品と交換することができ、
ゴムカツプリングの交換作業が簡単である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例に係るトルク変動吸収
ダンパの半裁断面図、第２図は従来例に係るトル
ク変動吸収ダンパの半裁断面図、第３図はストツ
パ機構の説明図である。 １……ハブ、２……プーリ、３……ベアリン
グ、４……ゴムカツプリング、５……ストツパ機
構、６，７……ストツパ、８……クランクシヤフ
ト、９……クラツチ機構、１０……クラツチハ
ブ、１１……スリーブ、１２……リングギヤ、１
３……ギヤ、１４……ロツド、１５……筒部材、
１６……係合片、１７……環状溝、１８……取付
環、１９……スプリング、２０……緩衝機構、２
１，２２……スナツプリング、２３……トーシヨ
ナルダンパ部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. エンジンのクランクシヤフト８に固定されるハ
   ブ１と、前記ハブ１の外周側にベアリング３を介
   して回転自在に配置されたプーリ２と、前記ベア
   リング３の軸方向一端側に配置され、前記ハブ１
   と前記プーリ２とを連結したゴムカツプリング４
   と、前記ベアリング３の軸方向他端側に配置さ
   れ、前記プーリ２に設けられた一方のリングギヤ
   １３と、前記ハブ１の軸方向他端側に配置され、
   前記クランクシヤフト８の外周にスプライン嵌合
   され、前記クランクシヤフト８に対して従動回転
   するとともに軸方向にスライド自在になるクラツ
   チハブ１０と、前記クラツチハブ１０に従動し、
   前記一方のリングギヤ１３と解除自在に噛合する
   他方のリングギヤ１２と、を有することを特徴と
   するトルク変動吸収ダンパ。