JPH0324293B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ＜技術分野＞ この発明は中子付消失型による鋳造方法に関
し、発泡ポリスチレン等からなる消失型を使用す
る、いわゆるロストフオーム法、あるいはフルモ
ールド法等と称される鋳造方法であつて、そのう
ち、消失型の一部に、中空部等を構成する為の中
子を使用して、この中子に対応した中空部等を有
する、鋳物製品を製造するための、鋳造方法に関
している。

＜従来技術＞ 上記したような、消失型を使用する鋳造方法
は、木型等を使用して形成された、空胴状の型空
間に溶湯を注湯する、通常の鋳造方法に比べ、複
雑な細部形状や正確な鋳造製品を製造できる方法
として普及している。

そして、消失型を使用する鋳造方法において
は、通常の型形状であれば、中子を使用しなくて
も、鋳造は可能であり、従来は中子の使用につい
ては考慮されていなかつた。

しかし、より複雑な形状の鋳物製品を鋳造する
場合、あるいは中空状の鋳物製品を製造する場合
等には、中子付の消失型を使用すれば、極めて容
易に能率良く鋳造できることが予想される。

なお、一般的な消失型を使用する鋳造方法とし
ては、熱によつて溶融消失する、熱可塑性樹脂の
発泡体等から形成された消失型を、鋳型砂の中に
埋設し、この鋳型砂の内部の消失型に溶湯を注湯
して、消失型を溶融消失させ、消失型の形状に対
応する鋳物製品を鋳造するものである。従つて、
消失型が溶融消失する際には、消失型が気化し
て、CO₂、CO等の気化ガスが発生する。この気
化ガスは通常、消失型の周囲から、鋳型砂の隙間
を通過して、外部に発散させるようになつてい
る。

ところが、消失型の一部に中子を取付けた状態
で鋳造を行うと、消失型のうち中子に接触した部
分では、上記気化ガスの発散が行われず、消失型
の内部に気化ガスが溜つたままになつて、鋳物の
表面にガス溜りによる鋳物巣や鋳肌の荒れ等の欠
陥が発生し、鋳物製品の品質を著しく損う問題が
あつた。そのため、従来は消失型と中子とを同時
に使用した鋳造方法は、実用化が極めて困難であ
るとされていた。

なお、上記した中子は、溶湯を注湯し、一定の
時間を経過して、溶湯が固化した段階で、熱によ
つて徐々に、中子を構成していた粘結材の結合が
解除され、鋳物製品を鋳型砂から取出した状態で
は、中子はバラバラの粒子状の砂に崩壊し、鋳物
製品の中空部等から中子を構成していた砂を、容
易に取出せるようになつている。そして、このよ
うに中子がバラバラの粒子状に結合解除された状
態であれば、気化ガスを通過させることもできる
が、従来の鋳造方法では、中子が解体した段階で
は、溶湯の固化が終了しており、ガス溜りによる
欠陥が形成されてしまつているので、その後に気
化ガスを通過させても、鋳物欠陥の防止には効果
がなく、無駄である。

＜目的＞ そこで、この発明の目的としては上記従来技術
の問題点を解消し、消失型から発生する気化ガス
の発散を確実に行え、鋳物製品にガス溜りによる
欠陥を生じさせず、仕上り品質を向上させて、中
子と消失型とを同時に使用することを、可能にで
きる鋳造方法を開発することにある。

＜構成＞ そして、上記目的を達成するための方法として
は、鋳型砂を粘結材で結合して形成されていると
共に、肉厚部分に空胴部を形成して肉厚を一定値
以下に制限し、上記空胴部に鋳型砂を充填した中
子と、熱可塑性樹脂の発泡体にて形成され熱によ
つて消失する消失型とからなる、中子付消失型を
使用して、消失型の形状に対応す鋳造製品を製造
する方法において、上記鋳型砂を結合する粘結材
として、その結合解除温度が、注湯温度より低い
粘結材を使用することを特徴としている。

＜実施例＞ 次いで、この発明の実施例について、図を参照
しながら以下に説明する。

第１図には、この発明方法に使用する中子付消
失型を示しており、図示した実施例では、第６図
に示すような中空筒状の鋳造製品Ｃを製造するた
めの消失型について説明する。

１は消失型であり、発泡ポリスチレン等の熱可
塑性樹脂の発泡体から成形製造されたものであ
る。また、２は中子であり、鋳型砂に適宜粘結材
を配合して、結合一体化させて、所定の中子形状
を構成したものである。そして、消失型１と中子
２とは、一体に連結された状態になつている。

具体的な中子２との形状としては、図の場合、
中空筒状をなす消失型１の中心部に、中子２の軸
部２０が挿通され、消失型１の両端には、中子２
の円板状をなすフランジ部２１が当接している。
従つて、消失型１としては、筒状の外周面を除い
た、側端面および内面を、中子２と接触している
ことになる。なお、中子２のうち、一端のフラン
ジ部２１から軸部２０の中心を通つて途中まで、
空洞部２２が形成してあり、中子２の軸部２０に
おける肉厚が、一定の制限値以上に厚くなり過ぎ
ないようにしている。さらに、中子２のフランジ
部２１の外周には、段部２３が形成してあるが、
これは後述する消失型１の成形製造時に使用され
るものである。

以上のような、中子２付消失型１を使用して鋳
造を行うが、まず第２図に示すように、消失型１
と同様の発泡体からなる湯道部材３を、消失型１
と別個に成形製造して、消失型１の一部に取付け
ておく。

次に、第３図および第４図に示すように、湯道
部材３を取付けた消失型１および中子２を、鋳型
砂４の中に埋め込む。そして、湯道部材３の上端
は鋳型砂４の表面に露出させ、ここに湯口５を設
けておく。なお、中子２のうち、軸部２０の中心
を通る空洞部２２にも、鋳型砂４を充填してお
く。

次に、鋳型砂４の表面の湯口５から、溶融金
属、即ち溶湯を注ぎ込むと、発泡体からなる湯道
部材３が溶融消失して、湯道が形成され、消失型
１に溶湯が注湯される。そして、第５図に示すよ
うに、消失型１が溶融消失して、溶湯に置き換え
られることによつて、所定の鋳物製品Ｃが鋳造さ
れる。

なお、溶湯を注湯することによつて、消失型１
が溶融消失すると同時に、CO₂ガスやCOガス等
の気化ガスが発生するのて、気化ガスを鋳型砂４
の外部に発散させなければならない。そして、図
示した実施例の場合には、消失型１のうち、筒状
の外周面は直接鋳型砂４に接触しているので、気
化ガスの発散は可能であるが、消失型２の両側端
および内面については、中子２と接触しているの
で、そのままでは気化ガスの発散は不可能であ
る。

そこで、この発明の場合には、中子２が溶湯に
よつて加熱されることによつて、中子２を形成結
合していた粘結材の結合が急速に解除され、中子
２をバラバラの粒子状態の砂に戻す。そして、結
合が解除された中子２には、砂の粒子間に通気空
間が形成されるので、前記した気化ガスは容易に
通過できることになり、消失型１から発生した気
化ガスを、中子２に接触する部分からも、鋳型砂
４の外部へと、迅速かつ有効に発散させることが
できる。

なお、中子２の結合が解除された状態では、中
子２の形状維持性が低下し、中子２のうち肉厚が
分厚い個所では、中子２の形状、即ち消失型１の
形状維持が果せなくなる。そして、この段階では
溶湯は完全には固化されていないので、鋳物製品
Ｃの形状が崩れてしまう心配がある。そこで、本
発明では、中子２のうち、肉厚の分厚い軸部２０
に空洞部２２を形成して、肉厚を減じ、中子２全
体の肉厚が一定値以上にならないように制限して
おり、この空洞部２２には鋳型砂４を充填して、
中子２を補強して、中子２の形状保持を果し、中
子２の形状が崩れて、鋳物製品Ｃの仕上りが悪化
するのを防いでいる。

以上のようにして、鋳造作業が終れば、鋳型砂
４から鋳物製品Ｃを取出し、湯道に残つた不要な
鋳物部分を除去すれば、第６図に示すような、中
空筒状の鋳物製品Ｃが完成する。なお、鋳物製品
Ｃの中空部に存在した中子２は、完全に崩壊して
いるので、容易に取出し除去することができる。

以上に説明した、この発明の鋳造方法のうち、
消失型１としては、発泡ポリスチンのほか、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、その他、注湯時の加
熱によつて消失可能な、従来のロストフオーム
法、フルモールド法に使用されていた、各種合成
樹脂からなる発泡体が使用できる。

また、中子２としては、通常の鋳造方法に使用
されている、鋳型砂と粘結材とから形成されたも
のが使用できるが、特に鋳造作業で、溶湯を注湯
したときに、溶湯が固化する前に中子２の結合が
解除する、崩壊性の良好な材料から製造されたも
のを使用する。

即ち、使用する溶湯の注湯温度よりも低い温度
で、容易かつ迅速に、中子２の結合を解除させる
には、粘結材の結合解除温度が、注湯温度に比べ
て低く、また崩壊性を示す圧縮残留強さが小さな
ものが好適である。

具体的な中子２を構成する鋳型砂および粘結材
としては、鋳造に使用する鋳物金属の材質、注湯
温度によつて、適宜材質のものを選択して使用す
る。

次に、上記した消失型１と中子２とを、一体化
して鋳造に使用するには、消失型２と中子２を別
個に成形した後、接着等の手段で接合一体化する
方法のほか、第７図に示すように、消失型１を発
泡成形するのと同時に、予め製造された中子２と
一体化させる方法がある。

即ち、発泡成形用の成形型６に、予め製造した
中子２をセツトし、中子２のフランジ部２１と成
形型の型面とで構成される型窩７内に、発泡性熱
可塑性樹脂粒子を充填し、通常の発泡成形を行つ
て、発泡体製の消失型１を成形すると同時に、消
失型１と中子２とを一体接合するのである。この
方法によれば、別個に製造した消失型１と中子２
とを接着接合するのに比べて、手間がかからず、
非常に能率的に製造できると同時に、消失型１と
中子２との組合せ位置も正確で、両者の一体性も
優れたものになり、極めて好適な方法である。な
お、上記製造方法の詳細については、本件出願人
が先に特許出願した、特願昭60−263116号に、詳
しく説明している。

そして、前記した実施例で説明した中子２およ
び消失型１の構造は、上記方法によつて製造する
のに好適な形状に形成されてあり、即ち中子２の
両端のフランジ部２１が、消失型１を成形するた
めの型窩の一部を構成し、フランジ部２１の外周
の段部２３が、中子２を成形型に配置するとき
の、位置決め用に使用される。但し、フランジ部
２１は、上記した消失型１の成形の為だけでな
く、中子２と一体に製造された消失型１を輸送保
管する際に、消失型１の側面を保護するためにも
有効である。

但し、消失型１および中子２の形状や構造は、
鋳造する鋳物製品Ｃの形状によつて自由に変更で
き、図示した中空筒状の鋳物製品Ｃのほか、適宜
凹凸あるいは中空形状を有する鋳物製品にも適用
でき、凹凸や中空部の形状によつて、消失型１に
組合せる中子２の形状を適当に設定すればよい。

なお、中子２については、前記した崩壊後の形
状維持のために、中子２全体の肉厚を、一定の値
以下に形成しておくことが必要である。従つて、
肉厚が分厚くなる個所では、図示した実施例のよ
うな空洞部２２や適宜凹陥部等を形成して、中子
２の肉厚を制限しておく。そして、上記空洞部２
２等は、鋳型砂４に埋め込んだときに、空洞部２
２等の内部に鋳型砂４が充填されて、鋳型砂４で
中子２を補強できるように、空洞部２２等が中子
２の外面に通じている必要がある。なお、上記し
た中子２の肉厚の制限値としては、中子２の構造
によつても違うが、通常３〜５mm程度以下に設定
しておけばよい。

次に、中子２と一体化された消失型１を、鋳型
砂４に埋設して行う鋳造作業については、通常の
消失型を使用する鋳造方法と全く同様に行え、細
部については、前記した実施例の作業工程以外に
も、適宜変更可能である。

そして、鋳造に使用する鋳物金属としては、通
常の鋳物と同様に、鋳鉄、アルミ、その他の鋳物
金属が使用でき、この鋳物金属の材質によつて、
鋳物湯の注湯温度が変るので、中子２を構成する
鋳型砂や粘結材の材質を、適宜選択する必要があ
る。

＜効果＞ 以上のごとく構成された、この発明の鋳造方法
によれば、消失型１と一体化して、鋳型砂４に埋
設する中子２として、粘結材の結合解除温度が低
く崩壊性の良好なものを使用し、注湯後に鋳物湯
が固化する前に、溶湯の熱によつて中子２が、バ
ラバラの粒子状に解体して、気化ガスの逃げ道と
なる空間を形成し、消失型１の消失によつて発生
した気化ガスを、迅速に通過させることができる
のであり、気化ガスを鋳型砂４の外部に、能率良
く発散させることができることになる。

従つて、従来の中子付消失型１の問題点であつ
た、気化ガスの発散不良で生じた、ガス溜りによ
る、鋳物巣のや鋳肌の荒れ等の欠陥の発生を完全
に解消でき、中子付消失型１を使用する鋳造方法
の仕上り品質を極めて向上させることができ、鋳
物製品Ｃの品質安定および商品価値の向上に、極
めて大きな貢献をできるものである。

しかも、鋳造作業自体は、従来の鋳造方法と全
く同様の工程で行えるので、作業能率が低下した
り、作業時間や作業工程が増加する心配もなく、
製造コストも変らず、経済性にも優れた方法であ
る。

【図面の簡単な説明】

図はこの発明の実施例を示すものであり、第１
図は中子付消失型の断面図、第２図は湯道部材を
取付けた状態の斜視図、第３図は鋳型砂に配置し
た状態の断面図、第４図は前図と直交する方向の
断面図、第５図は鋳造状態の断面図、第６図は製
造された鋳物製品の一部切欠正面図、第７図は中
子付消失型の製造方法の一例を示す断面図であ
る。 １……消失型、２……中子、２２……空洞部、
４……鋳型砂、Ｃ……鋳物製品。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 鋳型砂を粘結材で結合して形成されていると
   共に、肉厚部分に空胴部を形成して肉厚を一定値
   以下に制限し、上記空胴部に鋳型砂を充填した中
   子と、熱可塑性樹脂の発泡体にて形成され熱によ
   つて消失する消失型とからなる、中子付消失型を
   使用して、消失型の形状に対応する鋳造製品を製
   造する方法において、上記鋳型砂を結合する粘結
   材として、その結合解除温度が、注湯温度より低
   い粘結材を使用することを特徴とする中子付消失
   型による鋳造方法。