JPH0323055Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は土手、畦、溝等の雑草、山林の下刈り
や笹刈りを行う刈払機に用いる刈刃であつて、円
板状の刃板の周縁部にタングステンカーバイトチ
ツプ、その他のチツプを接合したチツプソーに関
する考案である。

〔従来の技術〕

公知のチツプソーは、第５図に示すように、刃
板Ａの周縁部に形成した歯形Ｂの立ち上り前端縁
に段部Ｃを形成し、ここにチツプＤの一側面をろ
う付け接合するのが普通であつた。

〔考案が解決しようとする課題〕

従来のチツプソーでは、チツプの接合面と母材
である刃板の接合面との押圧力を維持し、大きな
接合強度が得られるろう付け作業が困難であつ
た。また、刈り払いの作業中、チツプに加えられ
る力、特に衝撃的な力によつてチツプが脱落した
り、点線で示すように大きく欠けてしまう欠点が
あつた。

なお、チツプが脱落したり、大きく欠けてしま
うと、従来のチツプソーでは研磨、その他の手段
によつても修復することができなかつた。

本考案は、上記従来技術の欠点に鑑み、チツプ
の接合作業が容易であるとともに、接合されたチ
ツプが丈夫であり、従来のチツプソーのように、
チツプが損傷しにくい刈払機用チツプソーを得る
ことを目的とするものである。

〔課題を解決するための手段〕

本考案が対象とするものは、円板状の刃板１の
周縁部に多数の歯形２を形成し、これら歯形にそ
れぞれチツプ３を接合する刈払機用チツプソーで
ある。

刃板１の歯形２には、回転方向に対し先端とな
る頂部から略40度斜め後方に向けて凹所４を穿設
する。この凹所４は対向側面が外方に向けて広が
るテーパー状とする。一方、チツプ３の両側面
は、凹所４と同じ角度のテーパー状とし、凹所４
の側面とチツプ３の側面とをろう付け接合する。

さらに、チツプ３の先端は、巾方向のほゞ中心
位置を切れ刃６とし、一方をほゞ刃板の中心方向
に、他方をほゞ刃板の接続方向に切断した形状と
したものである。

〔作用〕

本考案に係るチツプソーで刈り払い作業を行う
場合、第３図に示すように刃板の回転力によつて
接線方向の力P₁が作用する。ところが、チツプ
の刃先での切削作用に注目すると、すくい面方向
に作用する力F₁と被切削物の剪断のために作用
する力F₂が存在し、その合成力としてＲの力が
作用するものとなる。つまり、チツプ３に加えら
れる外力は、チツプ３を凹所４の内方へ押し付け
る方向として作用する。

刈り払い作業時の外力の作用を、チツプ３自体
の先端形状との関連において説明する。

本考案に係るチツプソーのチツプは、切れ刃６
がチツプの巾方向のほゞ中心に位置し、前面を
ほゞ中心方向に、外周面をほゞ接線方向に切断し
た形状としている。従つて、チツプの先端部は比
較的大きな角度の刃先形状となり、しかも、前述
した外力の作用方向は、いずれも刃先を剪断する
ような方向には作用しないことになる。

刈り払い機のチツプソーは、これを回転させ、
地表面に沿つて移動させる。ところが、地表面に
は凹凸や大小の石、拾てられた罐やびんなどがあ
り、これらがチツプに衝突することを避けること
はできない。そして、これら切断することができ
ないような異物は、チツプの前面、すなわち、す
くい面に直接衝突することになるが、本考案では
このような衝撃力の作用方向は、チツプ自体の斜
め後方に相当し、衝撃力はチツプ全体で受けられ
ることになる。従つて、このような衝撃力さえも
チツプの先端を剪断、つまり折損する大きな力と
して作用しないことになる。

チツプの刃先に作用する外力によつて、チツプ
３の先端は第３図点線のように摩耗して行く。ま
た、仮に石などに当つて欠けることがあるとして
も、これは摩耗方向と同じように点線で示す方向
に小さなものとなる。従つて、刃板１の歯形部分
及びチツプ３を、第３図２点鎖線で示す方向に研
磨すれば、チツプの刃先は元の状態と同じ条件に
再生されることになる。

次に、チツプのろう付け作業について説明す
る。

ろう付け接合では、一般にろう材の厚みが薄い
程接合強度が高く、また、経済的であることは公
知の事実である。本考案者らの経験によれば、刈
払機用のチツプソーの場合、100分の３〜５mm程
度が望ましく、これ以上になると十分な接合強度
を得ることができない。

ところが、平行な側面を有する凹所にチツプを
ろう付けする場合や、特殊な変形チツプをろう付
けする場合、チツプおよび凹所をこのような寸法
精度に加工し、しかもその寸法精度を維持するこ
と、および、このような微妙な隙間にろう材を介
在させて接合作業をなうことは、事実上できな
い。

ところが、本考案では凹所４の両側面および、
チツプの側面を同じ角度のテーパー状としている
ため、寸法精度にかかわらず凹所４の開放端から
チツプを差し込んで行けば、チツプの側面と凹所
の側面とが完全に密着し、微少なろう材の厚みで
接合が可能となる。

〔実施例〕

以下、本考案刈払機用チツプソーの実施例を、
添付の図面に基づいて説明する。

第１図、刈払機用チツプソー全体の正面図であ
り、刃板１の周縁部に多数の歯形２を突設し、各
歯形２にチツプ３の基端部が埋め込まれた状態で
ろう付け接合し、突出しているチツプ３の先端
部、つまり切れ刃６で潅木などを切断するもので
ある。

多数の歯形２，２には、刃板１の回転方向に対
し、先端である頂部から角度αの斜め後方に向け
て凹所４を穿設し、この凹所４に一般に超硬チツ
プと呼ばれるタングステンカーバイトなどのチツ
プ３の基端部を差し込み、ろう付けしている。チ
ツプ３の後方への傾斜角度αは、略40度とし、少
なくとも30〜50度程度とする。

また、刃板１の凹所４は、対向する両側面が外
方に向けて広がるテーパー状とするとともに、チ
ツプ３の両側面を凹所４と同じ角度のテーパー状
としている。このテーパー角度βは、特に限定さ
れるものではないが、図示実施例ではテーパー角
βを略６度と比較的小さなものとしている。

凹所４にチツプ３を挿入し、両側面を密着させ
た場合、完全な密着状態が得られる面、すなわ
ち、強力な強度が得られる接合面はチツプの両側
面である。これに対し、凹所４の下端（奥端）
は、チツプとの隙間がチツプおよび凹所の寸法誤
差によつて一定しないものとなる。従つて、この
部分での接合強度を期待することはできない。

そこで、第４図に示す実施例では、凹所４の下
端（奥端）を延長し、円弧状の凹所拡張部４′を
形成し、チツプ３の基端部と刃板との間に、比較
的大きな空隙５が形成されるようにしている。

チツプ３の基端部に空隙５が形成されるもので
は、凹所の巾に比較してチツプの巾が狭い場合
に、チツプ３が凹所拡張部４′にまで押し込まれ
ることになる。換言すれば、凹所４とチツプ３の
寸法誤差の許容範囲が大きくなる。また、凹所拡
張部４′が円弧状であるため、チツプを介して刃
板にかかる外力が、集中応力として作用せず、刃
板にクラツクが生じることを防止する効果もあ
る。

なお、チツプ３の先端の刃先形状は、巾方向の
ほゞ中心位置を切れ刃６とし、刃板の回転方向に
対し前面はほゞ刃板の中心方向に、回転方向に対
し外周面はほゞ刃板の接線方向に切断した形状と
している。しかしながら、上記チツプの前面が、
多少刃板の中心方向へ向くように微小なすくい角
を、また、外周面が多少後下がりとなるように小
さな逃げ角を、あるいはチツプの前面が多少下向
きとなるように副逃げ角を設けることができるこ
とは言うまでもない。たゞ、一般の土木用の切削
工具では、すくい角を比較的大きな角度に設定す
るのが普通であるが、本考案の刈払機用チツプソ
ーでは、すくい角０〜15度程度の小さなものとす
るのが望ましい。

刃板の回転によつて、チツプの切れ刃、前端面
に作用する切削抵抗などの外力は、平面的に見る
とチツプを斜め後方へ押し付ける力として作用す
ることになる。ところが、これを垂直方向に見る
と、チツプの前端面に副すくい角を設けたもので
は、その角度だけチツプの前面を上方へ押し上げ
る力、すなわち、チツプ自体の捩り力として作用
することになる。さらに、刈払機用チツプソーの
特性とし、小石など地上の異物にチツプが衝突す
ることを避けることができない。ところが、この
衝撃力はチツプを下から上に突き上げる力、すな
わち、衝撃的な捩り力となつて作用し、チツプの
ろう付け面を剥離し、あるいはチツプを破断して
しまう傾向があるが、本考案のチツプソーでは、
これらの捩り力が、凹所の両側面で受け止められ
ることになる。

〔考案の効果〕

本考案刈払機用チツプソーによれば、各々のチ
ツプが刃板の一部である歯形部分に斜め後方に向
けて埋め込まれ、しかもテーパー面でろう付けさ
れていることと、切れ刃がチツプの巾方向の中心
部にあつて、チツプの一部に負荷が集中しない形
状としていることによつて、チツプに作用する切
削抵抗、異物との衝突による衝撃力といつた外力
が、チツプを凹所内へ押し込む方向に作用する。
つまり、上記外力はテーパー状である凹所の両側
面によつてて支受され、必ずしもろう付けの接合
強度のみに頼ることがないため、より大きな力に
耐えることができ、チツプが脱落したり大きく割
れる虞れがなく、極めて安全性の高いものとする
ことができる。

また、チツプのろう付け作業は、テーパー状の
チツプをテーパー状の凹所に差し込むことによつ
て、ろう付け面を密接させることができ、薄いろ
う材層による強力なろう付け状態を得ることがで
きる。この際、凹所およびチツプの寸法にバラ付
きがあつても常に良好なろう付け状態を得ること
ができる。

さらに、本考案刈払機用チツプソーでは、チツ
プの先端、つまり切れ刃をチツプの巾方向の中心
に位置させ、請求の範囲記載の形状としているた
め、切れ刃の摩耗、あるいは石などの異物との衝
突によつて欠けることがあつても、これが刃先の
みにとどまるため、研磨によつて再使用が可能と
なる。

【図面の簡単な説明】

添付図面の第１図ないし第４図は、本考案刈払
機用チツプソーの実施例を示すもので、第１図は
全体の正面図、第２図はチツプ取り付け部分を示
す拡大図、第３図はチツプに対する外力の作用方
向、摩耗方向を示すチツプ部分のみの拡大図、第
４図は変形実施例を示すチツプ取り付け部分のみ
の拡大図、第５図は従来のチツプソーのチツプ取
り付け部分のみの拡大図、である。 １……刃板、２……歯形、３……チツプ、４…
…凹所、４′……凹所拡張部、５……空隙、６…
…切れ刃。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 円板状の刃板１の周縁部に多数の歯形２を形成
   し、該歯形部分にそれぞれチツプ３を接合する刈
   払機用チツプソーにおいて、、刃板１の回転方向
   に対し先端である歯形２の頂部より略40度斜め後
   方に向けて凹所４を穿設し、この凹所４の対向側
   面を外方に向けて広がるテーパー状とするととも
   に、チツプ３の両側面を凹所４と同じ角度のテー
   パー状とし、刃板１の凹所４において凹所４の側
   面とチツプ３の側面とをろう付け接合し、さら
   に、チツプ３の先端は巾方向のほヾ中心位置を切
   れ刃６とし、刃板の回転方向に対し前面はほゞ刃
   板の中心方向に、回転方向に対し外周面はほゞ刃
   板の接線方向にそれぞれ切断した形状としたこと
   を特徴とする刈払機用チツプソー。