JPH032212B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 技術分野 １方向性けい素鋼板の冷間圧延工程、とくに最
終の冷間圧延に先立つ中間焼鈍の際における連続
焼鈍炉での加熱条件が、該鋼板の性能に及ぼす影
響に解明を加えることにより、製品鋼板の絶縁被
膜の性状改善と、磁気特性の向上をあわせ実現す
ることに関連してこの明細書に述べる技術内容
は、１方向性けい素鋼板の製造段階、とくに冷間
圧延工程における連続焼鈍の適用についての有用
な開発成果である。

技術的背景 通常、１方向性けい素鋼板は、以下に述べる一
連の工程処理により製造される。

まず連続鋳造又は造塊分塊されたけい素鋼スラ
ブを熱間圧延し、必要に応じて均熱化焼鈍を施
し、ついで冷間圧延と中間焼鈍を適宜繰返して得
られる最終成品厚の冷延鋼板に、脱炭を兼ねた１
次再結晶焼鈍（以下１次焼鈍と略す）を施す。

次にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を鋼板表
面に塗布したうえ、最終仕上げ２次再結晶焼鈍
（以下２次焼鈍と略す）を施して（110）＜001＞方
位の２次再結晶粒を発達させる一連の処理であ
る。

ここで焼鈍分離剤は、２次焼鈍の際単に鋼板が
密着することを防止するだけでなく、１次焼鈍中
に鋼板表面で生成したSiO₂酸化被膜と反応し、
フオルステライト（Mg₂SiO₄）系絶縁被膜（以
下単に絶縁被膜という）を形成させるという重要
な役割りを担う。

一般に電気機器の鉄芯は、板厚の薄いけい素鋼
板を積層して製作されるが、これは交流磁化時の
渦電流損失を小さくすることが目的であり、従つ
て積層される一枚一枚の鋼板は絶縁されなければ
ならない。ゆえに、２次焼鈍時に形成される絶縁
被膜は良好な絶縁性を有するように均一でしかも
加工時にはく離しないように密着性の優れている
ことが要求される。

このような絶縁被膜を生成させるためには、冷
間圧延段階におけるとくに最終板厚に至るべき冷
間圧延に先立つ中間焼鈍の際に、表面酸化を極力
防止することが重要であることがわかつた。

すなわちこの中間焼鈍において、鋼板表面が酸
化されると、中間焼鈍に引き続く冷間圧延におい
てーラスな酸化被膜が形成され、この酸化被膜が
１次焼鈍時に良好なSiO₂酸化被膜の形成に悪影
響を及ぼし、ひいては良好な絶縁被膜の生成を妨
げることである。

ここに最終冷間圧延の前か後で、酸洗、機械的
研硝などの手段にて酸化被膜を除去することはも
ちろん可能であるが、けい素鋼板の酸化被膜は強
固であるため完全に除去するためには多大の時間
を要して経済的でない。

また中間焼鈍時の雰囲気を還元性として酸化防
止をはかることも考えられるが、連続焼鈍炉加熱
帯部の入口で不可避に空気が巻込まれるため実効
はない。

とくに最近では数年前のエネルギー危機を境に
して、電力損失のきわめて少ないことの要請が著
しく強く、この点発明者らは先に上述した一連の
工程よりなる１方向性けい素鋼板の製造方法にお
いて、中間焼鈍の際に500℃から900℃までの加熱
速度を毎秒５℃以上より好ましくは、10℃以上に
て急熱することにより、磁束密度が高く、鉄損の
低い１方向性けい素鋼板が得られることを究明
し、特願昭57−142123号の発明を提案したがその
実効を挙げるためにも、該中間焼鈍過程に不可避
な表面酸化の防止は、とくに重要である。

発明の端緒 発明者らは、中間焼鈍における急速加熱促進を
目指して連続焼鈍炉に導入される鋼板表面に予め
熱吸収剤の塗布を試みたところ、表面酸化が有利
に軽減され、これによつて後続工程にて生成され
る絶縁被膜の著しい性状改善が、最終冷延前の焼
鈍過程における有利な急熱効果にあわせ実現され
得ることを知見した。

ちなみに特開昭55−104432号公報には、とくに
雰囲気を制御し得る直火式加熱炉による冷延鋼板
の連続焼鈍に関して専ら処理時間の短縮のため
に、加熱炉の入側における空燃比を出側に対し比
較的に大きくして、鋼板表面に薄い酸化被膜を形
成させこの酸化被膜の吸熱効果による急速加熱
に、言及されまた該効果を更に助長すべき吸熱塗
布剤の利用に触れられているが、何れにせよ冷間
圧延を完了したのちの処理であるので、１方向性
けい素鋼板のとくに最終冷間圧延のための中間焼
鈍過程とは工程段階が全く相異していて、該過程
における加熱履歴が、絶縁被膜の性状、さらには
磁気特性に及ぼす影響とは、全く無関係であつ
て、上掲のような開示が少くとも１方向性けい素
鋼板の製造上の指針とはなり得ないことは明らか
である。

発明の目的 １方向性けい素鋼板の表面に均一で密着性の良
好な絶縁被膜を形成させかつ該鋼板の磁気特性改
善にも有効な、冷間圧延過程における連続焼鈍炉
による中間焼鈍方法を確立することがこの発明の
目的である。

発明の構成 この発明は、１方向性けい素鋼板の冷間圧延段
階での連続焼鈍炉による中間焼鈍工程において、
該中間焼鈍前の鋼板表面にあらかじめ熱吸収剤を
塗布して連続焼鈍炉加熱帯部での表面酸化を回避
しつつ、500℃〜900℃温度域における吸熱の促進
下に鋼板の加熱速度毎秒10℃以上の急速加熱を成
就することからなる磁気特性の優れる１方向性け
い素鋼板の製造方法である。

この発明において熱吸収剤ととしては、タンニ
ン系の化合物や、黒色の有機染料や有機顔料など
鋼板表面を黒化する物質であつてとくに、中間焼
鈍時に鋼板の表面酸化を防止する機能を有するこ
とが必要であり、連続焼鈍炉の加熱帯で鋼板の急
速加熱に役立つたのちは均熱帯にて焼散するかあ
るいは焼鈍後容易に除去出来るものが好ましい。

熱吸収剤を鋼板表面に塗布するには、たとえば
タンニン系塗布剤水溶液中にて鋼板を陽極として
直流電圧を印加し、電解洗浄に併用するか、また
塗布前の鋼板表面が十分に清浄な場合にはタンニ
ン系塗布剤水溶液のロールコートまたは噴霧によ
る塗布や液中浸漬後適宜リンガーロールで絞ると
いうような方式も適合する。

ここに熱吸収剤の濃度は100ｇ／程度が適当
である。この塗布後は乾燥させてから連続焼鈍炉
に導入することが焼鈍雰囲気の保全の面で好まし
い。

一般に上記中間焼鈍では、加熱帯、均熱帯およ
び冷却帯よりなり、加熱帯と均熱帯に、電熱方式
又はラジアントチユーブ方式の間接加熱手段をそ
なえて中性又は還元性雰囲気とされる連続焼鈍炉
中にて通常900〜950℃の均熱温度に至る昇温を司
る加熱帯を経て該温度における３分間程度の保持
を均熱帯を通り抜ける間に行うわけであり、通常
８〜50m／分程度の通板速度の下で、均熱温度に
至る昇温には、ほぼ1.5分を要し、ここに50〜950
℃の範囲での加熱速度は毎秒７℃程度であつた
が、この発明に従う上記熱吸収剤の適用により、
容易に毎秒10℃以上に急加熱することができる。

中間焼鈍につき上記の配慮をするほかは、一般
的な１方向性けい素鋼板の製造工程を通例に従つ
て経た場合に、製品の絶縁被膜が均一でかつ密着
性に富みそして製品の磁気特性の顕著な改善が達
成され得た。

この発明によるべき中間焼鈍の急速加熱は毎秒
10℃に達しないとき、所期した磁気特性の向上に
実効を生ぜず、そしてこの急速加熱の温度領域は
500℃よりも低い領域ではより急勾配をなすが、
その勾配が鈍化する500℃以上均熱温度までの間
での急熱こそが磁気特性の改善に役立つことが、
これらの限定理由であつて、ここに一般的な熱吸
収剤の塗布量を０〜６ｇ／m²の範囲において増加
する程急速加熱に有利である。

この発明に適用される１方向性けい素鋼板素材
の成分組成としては、Si2.5〜4.0重量％、C0.020
〜0.10重量％およびMn0.030〜0.10重量％を含有
し、かつ次の〜の組成を含有することができ
る。

上記にＳあるいはSeを１種または２種を
0.005〜0.05％を含有する組成、 上記にＳあるいはSeの１種または２種を
0.005〜0.05％、Sb0.005〜0.25％、Mo0.005〜
0.05％を含有する組成、 上記にAl0.01〜0.05％、S0.005〜0.05％を含
有する組成、 上記にAl0.01〜0.05％、S0.005〜0.05％、
Cu0.01〜0.5％、Sn0.1〜1.0％を含有する組成 上記にS0.005〜0.05％、B0.0003〜0.0040％、
Cu0.01〜0.5％を含有する組成の如きにおいて
も適用可能である。

を含有することが好適である。

実施例 １ Si2.9％と3.4％を含む組成になるけい素鋼の熱
延板(A)および(B)を何れも第１回目の冷間圧延で
0.8mm厚みとし、これらを二分して鋼板表面にタ
ンニン酸が７ｇ／m²となる熱吸収剤の塗布処理を
したもの（条件○

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ １方向性けい素鋼板の冷間圧延段階での連続
   焼鈍炉による中間焼鈍工程において、該中間焼鈍
   前の鋼板表面にあらかじめ熱吸収剤を塗布して連
   続焼鈍炉加熱帯部での表面酸化を回避しつつ、
   500℃〜900℃温度域における吸熱の促進下に鋼板
   の加熱速度毎秒10℃以上の急速加熱を成就するこ
   とを特徴とする磁気特性の優れる１方向性けい素
   鋼板の製造方法。