JPH0312237B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〈産業上の利用分野〉 本発明は回転圧縮機のセンターハウジングに回
転自在に嵌合されてベーンと共に回転する回転ス
リーブの流体支持装置の改良に関するものであ
り、さらに詳言すると、センターハウジングと回
転スリーブの間に形成された薄層の空気軸受室で
回転スリーブを流体的に支持する装置に係わるも
のである。回転スリーブが流体支持装置により支
持された回転圧縮機は内燃機関、特に自動車用エ
ンジンの過給機に適している。

〈従来技術〉 回転スリーブを空気等の圧縮性流体で支持する
ベーン形回転圧縮機は、回転スリーブがベーンと
共に回転してベーン先端の摺動により発熱と摩耗
を未然に防止するので、低速から高速までの広い
範囲の回転数で運転される自動車エンジン等の過
給機として最適なものといえる。しかし、内部の
吐出側の高圧のため回転スリーブが吐出側に寄つ
てセンターハウジングと直に接触すると、接触個
所にスカツフイングを生じ、回転スリーブの回転
が不良になるおそれがあつた。

回転スリーブが吐出側に寄つてセンターハウジ
ングに接触する場合、回転スリーブはセンターハ
ウジング内周面の一個所で接触するのではなく、
幅のある領域で接触することが明らかになつたの
で、本願の発明者は、その接触領域の空気流を増
加させて空気軸受室の軸受負荷力を増大させるた
め、接触領域の始端に流入口を設け、その流入口
を大気又は吐出室若しくは最大圧の作動室と連通
させる提案（特願昭58−28608号（特開昭59−
155589号））をした。さらに、ロータを駆動する
内燃機関の回転数が急激に変動すると、回転スリ
ーブが異常な動きを示し、センターハウジングの
吸入側内周面に接触して回転が不円滑になること
があつたので、センターハウジングの吸入側内周
面にバランス溝を刻設して空気軸受室の吸入側の
軸受負荷力を増加させる提案（特開昭58−47258
号（特開昭59−173591号））もした。しかし、バ
ランス溝を設けると空気軸受室の吸入側の軸受負
荷力が強くなりすぎて回転スリーブの支持が不安
定になり、回転スリーブの回転が不円滑になると
いう欠点が現れた。

〈発明の課題〉 本発明の課題はバランス溝の上記欠点を解消し
長所のみを生かすようにした回転スリーブの流体
支持装置を提供することにある。

〈課題達成の技術的手段〉 前記課題を達成するための技術的手段として、
本発明の装置は外向きに開く逆止弁を介してバラ
ンス溝を吸入孔又は大気に連通させる。したがつ
て、バランス溝の軸受負荷力すなわち圧力が限度
を越えると、逆止弁が開いてバランス溝の軸受負
荷力の異常な上昇を未然に防止する。複数個のバ
ランス溝を設けた場合、各バランス溝を流通路で
相互に連通させて全バランス溝の軸受負荷力を均
等にすることが望ましい。

〈実施例〉 本発明の装置を図面に示す実施例に基づいて説
明する。第１図に示すように、回転圧縮機のロー
タ１０は回転軸１２に一体に固定され、回転スリ
ーブ３０の偏心位置において矢印方向に回転す
る。ロータ１０のベーン溝１５にベーン１６が出
入自在に嵌装され、ベーン１６の先端は回転スリ
ーブ３０の内周面に接する。回転スリーブ３０は
センターハウジング２２に回動自在に嵌装され、
両者の間には空気軸受室４０が形成される。図は
空気軸受室４０の厚さを誇張して示しているが、
実際の厚さは0.1mm以下で非常に薄いものである。
隣合う二枚のベーン１６は作動室４３を形成し、
その作動室は吸入側から吐出側に回わるにつれて
圧力が上がり、その圧力は作動室４３が吐出孔４
２を介して吐出室４１と連通する直前に最大にな
る。この最大圧力の作動室４３に抽気口４４を設
ける。センターハウジング２２の吐出側内周面の
回転スリーブ３０が接触しようとする接触領域の
始端と空気軸受室４０が最大の圧力を受けるＰ点
とその中間の三箇所に流入口７１を設ける。抽気
口４４から各流入口７１に至る流入路４５を並列
に設け、各流入路４５に逆止弁７６を介在させ
る。センターハウジング２２の吸入側内周面に三
個のバランス溝７３を刻設し、各バランス溝７３
から吸入孔５２に至る流出路５５を設け、各流出
路５５に逆止弁７６を取付ける。流入路４５と流
出路５５はハウジングの内部を通るが、図は見や
すくするため、想像線で外側を通るように示して
いる。

第２図に示すように、ロータ１０の回転軸１２
はフロント及びリヤサイドハウジング２１，２３
のベアリング１８，１９に軸受けされ、フロント
側の軸端にはエンジンの回転駆動を受けるプーリ
１４が取付けられる。リヤサイドハウジング２３
の背面にリヤカバー２４がガスケツトを介して固
定され、そのリヤカバーに吐出室と吸入室５１が
設けられる。吸入室５１は吸入孔５２を介して吸
入側の作動室５３に通ずる。吸入側のバランス溝
７３は流出路５５を介して吸入孔５２に通じ、吐
出側の流入路４５は流入口７１を経てセンタハウ
ジング２２と回転スリーブ３０の間の空気軸受室
４０と連通する。

第３図に示すように、逆止弁７６は吸入側のバ
ランス溝７３から吸入孔５２に至る流出路５５に
のみ設け、抽気口４４から流入口７１に至る流入
路４５の逆止弁は省略してもよい。センターハウ
ジング２２の吸入側内周面に刻設されるバランス
溝７３は、第４図ないし第７図に示すように、左
右対称で流出路５５と連通して軸方向に展開する
溝であれば、どのような形状でもよい。例えば、
第４図の左右に分割された矩形溝でも、第５図の
左右に延びる単一な矩形溝でも、第６図のヘリン
グボーン溝でも、第７図の細長い筋状溝の集合で
もよい。

図示した回転圧縮機が回転すると、最大圧の作
動室４３又は吐出室４１の高圧空気が接触領域の
流入口７１から空気軸受室４０に流入し接触領域
の軸受負荷力を増大させる。ついで、接触領域を
流れた空気はセンターハウジング２２の吸入側に
流れ込み、バランス溝７３を通じて空気軸受室４
０の吸入側の軸受負荷力を増大させる。バランス
溝７３の軸受負荷力すなわち圧力が大きくなりす
ぎると、回転スリーブ３０の支持が不安定になる
が、バランス溝７３の軸受負荷力すなわち圧力が
所定の限度を越えると、逆止弁７６が開くからバ
ランス溝７３の軸受負荷力は常に適正な範囲に維
持される。複数個のバランス溝７３は流出路５５
を介して相互に連通するから、各バランス溝７３
の軸受負荷力すなわち圧力は均等になり、空気軸
受室４０の吸入側の軸受負荷力は安定する。

〈発明の効果〉 上記の通り、本発明の装置はバランス溝が逆止
弁を介して吸入口に接続されているので、バラン
ス溝の軸受負荷力が異常に増大するおそれはな
い。したがつて、回転スリーブのセンターハウジ
ング吐出側内周面に対する接触は流入口から流入
する高圧空気により阻止され、他方、センターハ
ウジング吸入側内周面に対する接触はバランス溝
により防止されるから、流出路のないバランス溝
を備えた従来の装置に比べると、回転スリーブは
センターハウジングのいずれの側にも接触するこ
となく円滑に回転するという優れた効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例の装置を備えた回転
圧縮機のリヤサイドハウジングを外した端面を示
す図、第２図は第１図の−線に沿う断面をや
や縮小して示す図、第３図は他の実施例の第１図
に相当する図、第４図はバランス溝の展開図、第
５図ないし第７図はそれぞれ別の実施例の第４図
に相当する図である。 １０：ロータ、１６：ベーン、２２：センター
ハウジング、３０：回転スリーブ、４０：空気軸
受室、４１：吐出室、４３：作動室、４５：流入
路、５２：吸入口、５５：流出路、７１：流入
口、７３：バランス溝、７６：逆止弁。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ センターハウジングに回転自在に嵌合された
   回転スリーブと、前記回転スリーブの偏心位置に
   おいて回転するロータと、前記ロータに出入自在
   に嵌装されたベーンとを備えた回転圧縮機におい
   て、前記センターハウジングと前記回転スリーブ
   の間に形成された薄層の空気軸受室と、前記回転
   スリーブが内部の高圧のために接触しようとする
   前記センターハウジング吐出側内周面上の接触領
   域に開口する流入口と、大気又は吐出室若しくは
   前記吐出室通気直前の隣合う二枚の前記ベーンに
   より仕切られた作動室から前記流入口に至る流入
   路と、前記センターハウジング吸入側内周面上に
   設けられたバランス溝とからなる流体支持装置で
   あつて、前記バランス溝は外向きに開く逆止弁を
   介して流出路に連結されたことを特徴とする回転
   圧縮機の回転スリーブの流体支持装置。 ２ 流出路は吸入孔又は大気に接続されたことを
   特徴とする特許請求の範囲第１項記載の回転スリ
   ーブの流体支持装置。