JPH028123B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本発明は、車両用エンジンの排気管構造に関す
る。

（従来の技術） 車両用エンジンの排気管構造において、一方の
排気管の端部に環状シール部材を保持し、他方の
排気管の端部を上記シール部材に球面接触させる
とともに、両排気管の各々に径方向に張出したフ
ランジを設けて上記環状シール部材をこの両フラ
ンジ間に位置せしめ、この両フランジを互いに近
接する方向に付勢するスプリングを介して締結部
材で締結することにより、両排気管を摺動自在に
接続した所謂フレキシブルジヨイント構造は公知
である（例えば、実開昭57−148014号公報参照）。
このジヨイント構造では、エンジンから伝わる振
動や路面から車体を介して伝わる振動を緩衝し、
排気管の損傷を防止することができる。また、上
記シール部材としては、耐熱性という観点から、
例えば黒鉛で成形した本体の表面にフツ素樹脂を
コーテイングしたものを使用し、このフツ素樹脂
によつてシール部材とこれに球面接触した排気管
との間の潤滑性を高め、排気ガスの洩れを防ぐこ
ともなされている。

（発明が解決しようとする課題） しかし、上記ジヨイント構造では、シール部材
は、車両走行時に排気ガスの熱の影響を受け、さ
らにはシール部材と排気管との球面接触部におけ
る摩擦熱の影響を受けて、最高で420℃程度まで
昇温することがある。これは、上記フレキシブル
ジヨイント構造においては、排気管同士を接続す
るフランジの一方が環状シール部材の球面接触部
の前方にあつて走行風を遮り、この走行風による
このシール部材の冷却があまり期待できないこと
が一因となつている。

このため、上記球面接触部において、シール部
材のフツ素樹脂（耐熱温度は350℃程度）が分解
して剥離し、潤滑性及びシール性が損なわれると
ともに、シール部材本体の黒鉛と排気管とが直に
接触し、この金属同士の接触によつて異音を発
し、さらにはシール部材本体の早期破損を招く不
具合がある。そして、かかる不具合は、上記排気
管同士のジヨイント部だけでなく、排気管と触媒
コンバータとのジヨイント部に上記ジヨイント構
造を採用した場合にも同様にみられる。

また、上記排気ガスの熱の影響は上記フランジ
同士を締結する締結部材にも現われるものであ
り、この締結部材が過熱されて焼き付くという不
具合がある。

（課題を解決するための手段） 本発明は、上述の環状シール部材の熱による劣
化ないしは破損、及び締結部材の過熱の問題を解
決するために、この問題がフランジによる走行風
の遮断というフレキシブルジヨイント構造独特の
ものによることに着目し、逆に上記フランジをう
まく利用する、つまり走行風による風圧が作用す
るフランジ前面と、この前面に対しフランジ後面
が負圧気味となることを利用して、フランジ外周
縁部から比較的冷たい走行風を、締結部材を介し
て環状シール部材の外周部に導入することによ
り、この環状シール部材及び締結部材の強制冷却
を行なうようにするものである。

すなわち、その具体的な手段は、 互いに接続される管体部材の一方に外周面が球
面状の環状シール部材を保持する一方、他方の管
体部材に内周面が球面状の接触部を一体的に設
け、上記両管体部材の各々に管体部材の径方向に
張出したフランジを設けて上記環状シール部材を
この両フランジ間に位置せしめるとともに、この
両フランジを互いに近接させる方向に付勢するス
プリングを介して締結部材で締結することによ
り、上記環状シール部材の外周面と接触部とを圧
接させて上記両管体部材が相対的に動き得るよう
にした車両用エンジンの排気管構造において、 上記両フランジのうち車両前方側に位置する後
方側フランジの外周縁が車両前方側に位置する前
方側フランジの外周縁よりも外側に突出するよう
に設けられ、この突出部を走行風の受けとして前
方側フランジの外周縁の外側より走行風を上記両
フランジ間に導入せしめる走行風導入部と、 上記後方側フランジ内部に貫通して形成され、
一端が上記締結部材よりも内側においてこの後方
側フランジの前面に開口して上記環状シール部材
の外周部に臨み、他端がこの後方側フランジの後
面に開口した貫通孔よりなる走行風導出部と、 を備えていることを特徴とするものである。

（作用） 上記排気管構造においては、後方側フランジの
外周縁を前方側フランジの外周縁よりも外側に突
出せしめて走行風導入部を構成しているから、こ
の走行風導入部では、後方側フランジの外側への
突出部によつて走行風が受けられることになる。
一方、走行風導出部を構成する貫通孔は後方側フ
ランジの後面に開口しているから、上記走行風導
入部に対し負圧気味となり、これにより、上記走
行風導入部から走行風導出部に至る走行風の流れ
が生ずる。

そうして、上記走行風導入部は前方側フランジ
の外周縁外側、つまり排気管外壁面から離れた位
置にあるから、この走行風導入部からは比較的低
温の多量の走行風が上記両フランジ間に導入され
ることになる。一方、上記走行風導出部を構成す
る貫通孔は、締結部材よりも内側において環状シ
ール部材の外周部に臨むように後方側フランジの
前面に開口しているから、上記走行風は上記締結
部材を通過して環状シール部材の外周部を流れる
ことになる。

（発明の効果） 従つて、本発明によれば、走行風導入部を前方
側フランジの外周縁外側に設ける一方、走行風導
出部を後方側フランジの前面と後面とに開口した
貫通孔により構成し、この貫通孔の前面側開口を
締結部材よりも内側において環状シール部材の外
周部に臨ましめたから、走行風による風圧が作用
するフランジ前面側に対しフランジ後面側が負圧
気味となることを利用して、前方側フランジの外
周縁外側の比較的冷たい走行風を環状シール部材
の外周部に締結部材を介して多量に導くことがで
き、この比較的冷たい走行風によつて、締結部材
の過熱を防止しながら、環状シール部材を上記外
周部側から冷却してその耐久性の向上を図り、上
記外周部におけるシール性及び潤滑性を長期間維
持することができるとともに、このシール部材に
耐熱性の比較的低いものを使用することも可能と
なり、このシール部材の材質選定の幅が広くなる
という効果が得られる。

（実施例） 以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。

１は車両用エンジンにおける一方の管体部材と
して車両前方側に位置する前方側排気管、２は他
方の管体部材として車両後方側に位置する後方側
排気管である。上記前方側排気管１の後端部と後
方側排気管２の前端部との間に環状のシール部材
３が介設されている。

すなわち、前方側排気管１の後端部には、排気
管全周にわたつて外方へ張出した折曲部を設けて
保持部４が形成され、一方、後方側排気管２の前
端部には排気管開口部をその全周にわたつて外方
へ球面状に拡大して内周面が球面状の接触部５が
形成されている。そして、シール部材３は、前方
側排気管１の保持部４に保持されており、外周部
６は後方側排気管２の前記接触部５が摺動自在に
当接するよう球面状に形成されている。このシー
ル部材３は、ステンレス製金網の枠体に黒鉛を盛
り付けて成形した本体の表面にフツ素樹脂をコー
テイングしたものである。

また、前方側排気管１の保持部４の前側には、
径方向の外方へ張出した前方側フランジ２２が、
また、後方側排気管２の接触部の背面には、同じ
く外方へ張出した後方側フランジ２３がそれぞれ
所定間隔をおいて固定されている。そして、この
前方側と後方側の両フランジ２２，２３の間に前
記シール部材３がその外周面を一部露出した状態
で位置している。

そうして、上記前方側フランジ２２に開設した
貫通孔９を貫通せしめたボルト１０が後方側フラ
ンジ２３にナツト１１で固定され、このボルト１
０の頭部と前方側フランジ２２との間に円錐コイ
ルスプリング１２が介装されている。これによ
り、前方側と後方側のフランジ２２，２３を互い
に近接する方向に付勢して上記環状シール部材３
の外周部６と接触部５とを圧接させ、上記両排気
管１，２が相対的に動き得るようになされてい
る。

しかして、上記前方側と後方側の両フランジ２
２，２３の〓間全体で、上記環状シール部材３及
びボルト１０を冷却するための冷却風通路２１が
構成されている。

すなわち、前方側フランジ２２の外周縁部２２
ａはその全周にわたつて前方へＬ字状に屈曲し、
また、後方側フランジ２３の外周縁部２３ａは前
方側フランジ２２の外周縁部２２ａよりも外側に
突出して前方へ屈曲している。そして、この両外
周縁部２２ａ，２３ａにより、前方へ向けて開口
し、後方側フランジ２３の上記外側への突出部を
走行風の受けとして、前方側フランジ２２の外周
縁部２２ａの外側より走行風を上記両フランジ２
２，２３間に導入せしめる走行風導入路２４が形
成されている。

また、後方側フランジ２３には、上記ボルト１
０よりも内側において、一端がこの後方側フラン
ジ２３の前面に開口して上記環状シール部材３の
外周部６に臨み、他端がこの後方側フランジ２３
の後面に開口した貫通孔よりなる走行風導出部２
５が形成されている。

この場合、上記円錐コイルスプリング１２の軸
心方向から見て、前方側フランジ２２に当接した
このコイルスプリング１２の大径部の範囲内に、
上記走行風導出部２５を構成する貫通孔の一部を
ラツプせしめている。

本例の場合、車両は矢符Ａの方向へ走行し、前
方側フランジ２２の前面側は走行風による風圧が
作用し、つまり圧力が高くなり、一方、後方側フ
ランジ２３の後面側は逆に上記前面側に対し圧力
は低く負圧になる。すなわち、上記冷却風通路２
１の上流端に相当する走行風導出部２４と、下流
端に相当する走行風導出部２５とは、それぞれ走
行風によつて圧力差を生ずる位置に開口している
ことになる。なお、車両用エンジンの排気ガスは
前方側排気管１から後方側排気管２へ流れる。

従つて、上記構造においては、前方側排気管１
に保持したシール部材３と後方側排気管２とが摺
動自在に球面接触しているため、両排気管１，２
の接合部は屈曲自在、換言すればフレキシブルで
ある。よつて、エンジンの振動あるいは走行時の
車体の振動によつて接合部の破損を招くことが防
止される。

しかして、上記シール部材３の外周部６には、
排気ガスの熱が両排気管１，２を介して伝わり、
また、後方側排気管２との摺動による摩擦熱が発
生し、さらに上記ボルト１０も排気ガスの熱の影
響を受ける。これに対し、走行風導入部２４が前
方側フランジ２２の外周縁外側にあり、走行風導
出部２５がボルト１０よりも内側のシール部材３
の外周部６の位置にあるから、車両走行に伴つて
白抜き矢符で示す如く走行風導入部２４より流入
した走行風がボルト１０のまわりを通り、シール
部材３の外周部６をかすめて走行風導出部２５よ
り流出し、上記ボルト１０及びシール部材３を冷
却する。

この場合、上記走行風導入部２４は前方側フラ
ンジ２２の外周縁外側、つまり前方側排気管１の
外壁面から離れた位置にあるから、この走行風導
入部２４からは比較的低温の多量の走行風が導入
されることになる。よつて、上記ボルト１０及び
シール部材３の外周部６は、上記比較的低温の多
量の走行風の供給を受けて冷却され、過度に昇温
することがなく、このボルト１０の焼き付きや外
周部６の早期劣化が防止される。また、上記外周
部６が冷却されることにより、シール部材３の全
体が冷却される結果となる。

また、上述の如く、走行風導入部２４を前方側
フランジ２２の外周縁外側に設けているから、円
錐コイルスプリング１２をフランジ内周側に近付
けて配設することができるものである。そして、
このことと、このコイルスプリング１２の大径部
の範囲内に、上記走行風導出部２５を構成する貫
通孔の一部をラツプせしめたこととにより、前方
側と後方側の両フランジ２２，２３のコンパクト
化（コイルスプリング間ピツチの縮小）を図るこ
とができるものである。

【図面の簡単な説明】

図面は本発明の実施例に係る排気管構造を示す
縦断面図である。 １，２……排気管、３……シール部材、４……
保持部、５……接触部、６……外周部、１０……
ボルト（締結部材）、１２……スプリング、２２
……前方側フランジ、２３……後方側フランジ、
２２ａ，２３ａ……外周縁部、２４……走行風導
入部、２５……走行風導出部、２１……冷却風通
路。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 互いに接続される管体部材の一方に外周面が
   球面状の環状シール部材を保持する一方、他方の
   管体部材に内周面が球面状の接触部を一体的に設
   け、上記両管体部材の各々に管体部材の径方向に
   張出したフランジを設けて上記環状シール部材を
   この両フランジ間に位置せしめるとともに、この
   両フランジを互いに近接させる方向に付勢するス
   プリングを介して締結部材で締結することによ
   り、上記環状シール部材の外周面と接触部とを圧
   接させて上記両管体部材が相対的に動き得るよう
   にした車両用エンジンの排気管構造において、 上記両フランジのうち車両後方側に位置する後
   方側フランジの外周縁が車両前方側に位置する前
   方側フランジの外周縁よりも外側に突出するよう
   に設けられ、この突出部を走行風の受けとして前
   方側フランジの外周縁の外側より走行風を上記両
   フランジ間に導入せしめる走行風導入部と、 上記後方側フランジ内部に貫通して形成され、
   一端が上記締結部材よりも内側においてこの後方
   側フランジの前面に開口して上記環状シール部材
   の外周部に臨み、他端がこの後方側フランジの後
   面に開口した貫通孔よりなる走行風導出部と、 を備えていることを特徴とする車両用エンジンの
   排気管構造。