JPH0241564B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、鋼材（鋼板、丸鋼、鋼管、形鋼等）
の熱処理作業（焼入、焼戻、焼ならし等）、熱処
理時（例えば圧延前後又は焼入直後）において温
度むらや温度低下があるけれども十分な温度を有
する保熱鋼材を温度状態に応じ急速に加熱して目
的処理温度まで昇温せしめて温度補償を行い、省
エネルギー化、製品品質の向上及び省力化を図り
得られ、更に上記熱処理分野だけでなく連続鋳造
設備の後面でスラブやビレツトの温度補償を行う
こと、加熱炉出口に設けてスラブやビレツトのス
キツドマーク等の焼むらを低減すること等ができ
て汎用性に富む、鋼材の温度補償装置に関するも
のである。 従来、鋼材を熱処理する場合、鋼材を一度室温
まで冷却した後に再加熱炉で熱処理温度まで再加
熱して熱処理を行つていた。 詳述するに、焼入の場合には焼入工程に鋼材を
入れる前に一度冷却してからオフラインの熱処理
炉で再加熱しているので別個に熱処理炉を必要と
し冷却された鋼材の再加熱に多大の熱エネルギー
を要するのみならず一旦鋼材を熱処理炉へ入れる
ために圧延ライン上で焼入を行うことができず、
又焼戻の場合には焼戻温度まで加熱するための長
大な加熱炉を必要とししかも室温から焼戻温度ま
での昇熱に多大の熱エネルギーを要し従つて焼入
後の鋼材の保熱が難しくマルテンサイト化必要温
度以下まで過冷却しているのが現状であり、更に
焼ならしの場合には焼戻と同様に焼ならし温度ま
で加熱するための長大な加熱炉を必要とししかも
室温から焼ならし温度までの昇熱に多大の熱エネ
ルギーを要していた。 本発明は、斯る実情に鑑み、鋼材の熱処理作
業、熱処理時（例えば圧延前後又は焼入直後）で
温度むらや温度低下があるけれどもまだ十分な温
度を有する保熱鋼材を温度状態に応じ急速に加熱
して目的熱処理温度まで昇温せしめて温度補償を
行うもので、鋼材を連続的に搬送するための複数
の下部ローラを下部固定フレームに取付けて形成
した鋼材搬送路の下側に上記下部ローラより下方
に引込めて設けた複数の下部バーナと、前記下部
ローラ上側に昇降機により昇降可能に配設した昇
降フレームと、該昇降フレームに前記下部ローラ
と対峙するように取付けた複数の上部ローラと、
該上部ローラより上方に引込めて昇降フレームに
設けた複数の上部バーナと、鋼材の温度分布検出
器と、該温度分布検出器からの検出温度と設定鋼
材温度とを比較演算する演算器と、前記上部バー
ナと下部バーナを前記演算器の出力信号に基づき
作動させるためのバーナ制御器とからなることを
特徴とする鋼材の温度補償装置である。 本発明の実施例を鋼板焼入処理に用いる場合を
例にとり説明する。 複数の円板付下部ローラ１を下部固定フレーム
２に、鋼材３の進行方向に対し直角に交差する如
く平行に所要間隔をあけて回転可能に配設して鋼
材３の搬送路を形成し、所要の下部ローラ１を駆
動装置４に連結して回転駆動し得るようにすると
共に、適宜配設せる門型の本体フレーム５に昇降
フレーム６を昇降機７を介し取付けて該昇降機７
により昇降フレーム６を昇降し得るようにし、該
昇降フレーム６に複数の円板付上部ローラ８を前
記円板付下部ローラ１に対峙せしめて回転可能に
取付け、前記円板付上部ローラ８間に複数の上部
バーナ９を適宜引込めた状態で配しこれら上部バ
ーナ９を昇降フレーム６に取付けて前記円板付上
部ローラ８と共に昇降し得るようにし、前記円板
付下部ローラ１により形成せる鋼材３の搬送路よ
り下側に複数の下部バーナ１０を設置し更に鋼材
３の両側に複数の側部バーナ１１を設置して鋼材
３を上下左右方向より加熱し得るようにし、複数
の円板付上部ローラ８及び上部バーナ９の上側部
を覆う如く昇降フレーム６に上部保熱カバー１２
を又複数の円板付下部ローラ１及び下部バーナ１
０の下側部を覆う如く下部固定フレーム２に下部
保熱カバー１３を夫々取付けてバーナ９，１０，
１１の燃焼ガスの有効使用及び鋼材３の効果的な
保温を行い得るようにする。前記鋼材３の両側に
配する側部バーナ１１を鋼材３の側端に対し適宜
近接・離隔し得るようにしてもよく、又上部及び
下部保熱カバー１２及び１３をセラミツクフアイ
バー等の断熱材を張り付けて形成してもよく、更
に上部及び下部円板付ローラ１，８を軸方向に中
空にして内部水冷し得るようにしてもよい。 又鋼材３の位置、厚さ及び速度を検出する鋼材
検出器１４を昇降フレーム６の前端面に突出して
適数配設すると共に、鋼材検出器１４より前方に
配設せるローラテーブルにおいてそのローラ１５
間に赤外線カメラや光温度計等の温度分布検出器
１６を鋼材３を上下左右方向から挾むよう複数設
置し、複数の温度分布検出器１６と適数の鋼材検
出器１４とをマイクロコンピユーターの如き演算
器１７に接続すると共に、該演算器１７を、前記
諸バーナ９，１０，１１を個々に又はグループ毎
に制御するバーナ制御器１８に接続して基準とな
る熱処理の鋼材温度、即ち設定鋼材温度との温度
差、鋼材３の寸法、圧延後の時間、鋼材３の速度
等を基に燃焼すべきバーナの位置、数、燃焼時間
を演算器１７で演算しバーナ制御器１８に燃焼指
示を与え得るようにする。 更に前述の如く構成した本発明の鋼材の温度補
償装置を入口側に配設する焼入装置について説明
する。 前記昇降フレーム６の出口側に複数の上部ロー
ラ１９を所要間隔毎に回転可能に取付けると共
に、これら上部ローラ１９間に上部水スプレイパ
イプ２０を配し該上部水スプレイパイプ２０を昇
降フレーム６に取付けて上部ローラ１９と共に昇
降し得るようにし、下部固定フレーム２の出口側
に前記上部ローラ１９と対峙する如く複数の下部
ローラ２１を回転可能に取付けると共に、これら
下部ローラ２１間に下部水スプレイパイプ２２を
配し該下部水スプレイパイプ２２を下部固定フレ
ーム２に取付けて鋼材３の温度補償装置と一体に
焼入装置を構成する。この焼入装置を鋼材３の温
度補償装置と一体でなく別個にし夫々同期して鋼
材３の厚さに合せ調整するようにしてもよい。 搬送された鋼材３は、温度分布検出器１６で上
下面及び左右面の温度分布が検出されこの検出温
度が演算器１７にインプツトされ、該演算器１７
で基準となる熱処理の鋼材温度（設定鋼材温度）
との温度差、鋼材３の寸法、前工程（例えば圧
延）後の時間及び速度を基にして燃焼すべきバー
ナ（鋼材３の温度低下部に相対するバーナ）の位
置、数及び燃焼時間が演算され、この演算値がバ
ーナ制御器１８にインプツトされて燃焼指示が与
えられる。この場合、演算器１７に温度分布以外
の信号が前工程よりインプツトされている。 次いで鋼材３の先端、速度及び厚みが鋼材検出
器１４で検出されこの検出値が演算器１７にイン
プツトされ演算値に加えられ、鋼材３の厚みの変
化に応じ適宜昇降機７が作動しこの作動により円
板付上部ローラ８及び上部バーナ９が所要高さ位
置にセツトされる。 前述のようにして鋼材３は燃焼条件が定めら
れ、円板付上部ローラ８及び円板付下部ローラ１
でガイドされながらバーナ９，１０，１１の位置
に至り、この位置においてバーナ制御器１８の指
示によりバーナ９，１０，１１が各々独立して或
いはグループ毎に点火され鋼材３の所要個所（低
温度部分）が目的処理温度に急速加熱されて鋼材
３が温度補償される。この際に鋼材３の上下面は
円板付上部ローラ８及び円板付下部ローラ１に挾
まれ保持された状態で送られることになるので、
鋼材３とバーナ９，１０，１１との距離を一定値
に且つできるだけ小さくでき、従つて燃焼ガスの
鋼材３に当る速度が大きくなつて加熱率の向上及
び効率の向上を図り得られ、更に円板付上部ロー
ラ８及び円板付下部ローラ１により鋼材３の変形
等による上部バーナ８及び下部バーナ９の損傷を
防止し得る。 前記のようにして焼入のためのオーステナイト
化温度以上に昇温され温度補償された鋼材３は、
ローラ形焼入装置に入り水焼入される。即ち鋼材
３の上下面は、上部ローラ１９と下部ローラ２１
で挾まれて連続的に搬送され上部及び下部水スプ
レイパイプ２０，２２の噴射冷却水で水焼入され
る。この際、上部及び下部水スプレイパイプ２
０，２２は上部及び下部ローラ１９，２１の間に
あり引込んだ状態にあるので変形した鋼材３によ
り損傷を受けることがなく、焼入のための熱処理
炉を不要にできて設備費を安くできる。 次に本発明の鋼材の温度補償装置を使用する熱
処理設備のレイアウトについて第３図Ａ，Ｂ，Ｃ
に基づき説明する。 第３図Ａは焼入処理を示すものであり、圧延機
ａに鋼材は圧延処理に適した温度（1100℃〜1200
℃）で入り所要形状に圧延され、この圧延後にテ
ーブルｂを経て矯正機ｃで矯正されテーブルｂに
出される。この時でも鋼材は少なくとも700℃以
上の温度を通常有する。圧延され矯正された鋼材
は、本発明の鋼材の温度補償装置ｄによりオース
テナイト化温度（800℃〜1000℃）まで急速に加
熱され、その後に焼入装置ｅにより急速冷却され
焼入を行われテーブルｂを経て次の工程へ送られ
る。この場合、別個の熱処理炉を必要とせずしか
も圧延ライン上で焼入を行うことができる。 第３図Ｂは焼戻処理を示すものであり、焼入装
置ｅで急冷されてマルテンサイト化温度（200℃
〜400℃）になつた鋼材は、本発明の鋼材の温度
補償装置ｄで急速加熱されテーブルｂを経て焼戻
均熱炉ｆに入り該焼戻均熱炉ｆで必要な均熱時間
保持された後にテーブルｂに送られる。この場
合、本発明の鋼材の温度補償装置ｄで鋼材が急速
加熱されるので、焼戻均熱炉ｆを焼戻温度に保持
して均熱のみを行うだけでよく、従つて焼戻均熱
炉ｆは加熱のための熱量が不要となつて小形化及
び省エネルギー化を図り得られ、しかも焼戻均熱
炉ｆとしてローラハース炉やウオーキングビーム
炉等を使用できる。 第３図Ｃは焼ならし処理を示すものであり、前
述の焼入処理と同様に圧延機ａ、テーブルｂ、矯
正機ｃ及びテーブルｂを順次通つた鋼材は、トラ
ンスフアーテーブルｇでサイドラインに移され、
その後に本発明の鋼材の温度補償装置ｄでオース
テナイト化温度まで急速加熱されて昇温し、焼な
らし用保熱炉ｈで必要時間保熱処理される。この
場合、焼ならし用保熱炉ｈは保熱処理だけでよ
く、従つて焼ならし用保熱炉ｈは加熱のための熱
量が不要となつて小形化及び省エネルギー化を図
り得られ、しかも焼ならし用保熱炉ｈとしてロー
ラハース炉やウオーキング炉等を使用できる。 前記せる第３図Ａ，Ｂ，Ｃに示す熱処理設備の
レイアウトの如く本発明の鋼材の温度補償装置を
採用して加熱する場合と、従来の熱処理（焼入、
焼戻、焼ならし）における加熱とを、板厚25mmの
鋼板の場合を例にとり比較すると次表のようにな
る。

【表】 上記表によれば焼入、焼戻、焼ならしの全てに
おいて、本発明の鋼材の温度補償装置により温度
補償すると加熱時間の大幅な短縮と熱量の低減を
図り得ることがわかる。 本発明の鋼材の温度補償装置に使用するバーナ
は、鋼材を急速に且つ均一に加熱する必要があ
り、第４図乃至第６図に示す如き構造のバーナを
用いるとよい。 ２３は二重殻構造にして第４図に示す如く一側
に空隙部２４と連通するガス入口２５を設け又他
側に第４図及び第５図に示す如く空隙部２４と連
通するガスノズル２６を放射状に設けたバーナ本
体、２７は該バーナ本体２３の軸芯部に配設した
点火用パイロツトバーナ（又は電気点火栓）、２
８はバーナ本体２３の外側に取付けられた旋回羽
根、２９は耐火材張りであり前記バーナ本体２３
を覆いその先端より突出し内部に燃焼室３０を又
先端に燃焼ガス噴出口３１を有する外筒体、３２
は該外筒体２９の後端に設けられた空気入口、３
３は外筒体２９の内壁にあり第４図及び第６図に
示す如く複数放射状に複数列にしかも軸方向から
見て重ならないように配設された柱状体であつて
前記外筒体２９内を複数に区分するものである。 空気入口３２からの空気は、旋回羽根２８によ
り旋回流となり、ガス入口２５からガスノズル２
６を経て噴出した燃料ガスと均一に混合し、旋回
しながら燃焼室３０の前部で火炎が非常に安定し
た状態で一次燃焼する。この一次燃焼したガス
は、柱状体３３に衝突して乱れ燃焼が促進される
と同時に旋回力が減衰され、次いで燃焼室３０の
後部で完全燃焼して高温の燃焼ガスとなり燃焼ガ
ス噴出口３１より高速（50〜300m/s）噴出され
る。このように高温高速のガスとなり鋼材に衝突
して急速加熱することになる。又前記した如く柱
状体３３により燃焼が促進され且つ安定化される
ので、燃焼室３０を小形化できると共に高負荷燃
焼（10⁶Kcal/m³Hr以上）も行うことができ、又
燃焼室３０が柱状体３３により小分割されている
ので実質の燃焼室長さが短くなつて振動燃焼（大
きい断続音を発生し燃焼器自体も振動を生ずる現
象）を防止でき、更に柱状体３３を第４図に示す
如く複数列にし且つ燃焼ガス噴出口３１側を短く
すると該燃焼ガス噴出口３１に向つて広がる火炎
の高温部に外筒体２９の内壁が晒されることを防
止でき、更に又空気と燃焼ガスとの旋回を効果的
に減衰できて好都合である。 尚本発明は、図示し説明せる実施例にのみ限定
されることなく、例えば熱処理分野だけでなく、
連続鋳造設備の後面でスラブやビレツトの温度補
償を行うこと、加熱炉出口に設けてスラブやビレ
ツトのスキツドマーク等の焼むらの低減に使用す
ること、又小容量（50000〜300000Kcal/Hr）の
バーナを多数配置して必要最小限の部分のみを点
火するようにしてできるだけ省エネルギー化を図
ること、厚さを前工程より昇降機の作動機構にイ
ンプツトし鋼板検出器で鋼材の先端及び速度のみ
を検出するようにすること、等は任意であり、そ
の他本発明の要旨を逸脱しない限り種々の変更を
加え得ることは勿論である。 以上述べたように本発明の鋼材の熱処理装置に
よれば、 (i) 温度分布検出器と演算器により鋼材の局部温
度低下部を適格に把握できてバーナで最適加熱
を行うことができ、即ち最小熱エネルギーで適
正加熱を行うことができ、そのために温度むら
をなくして熱処理を行い得られて製品品質の向
上を図り得る。 (ii) 熱処理等に際し従来は室温状態にある鋼材を
加熱していたのに比し、保熱鋼材を追加加熱す
るだけであるので50〜75％の省エネルギー化が
可能である。 (iii) 焼入処理の場合にはオンライン上で焼入作業
が可能になつて大規模な熱処理炉が不要になり
経済的であり、省エネルギー化も図り得る。 (iv) 構造が簡単であり、既設の熱処理設備に付設
でき、占有面積が小さくスペースの有効利用を
図り得る。 (v) 上部バーナを昇降フレームにより昇降し得る
ようにしたので、鋼材の厚さに合せて上部バー
ナと鋼材との距離を常に一定にすることがで
き、従つて安定した温度補償を行い得られ、し
かも保守が容易である。 (vi) 各バーナを図示の如くローラ間に引込めた状
態で配設するので、鋼材の変形によるバーナ機
器の損傷を防止できる。 (vii) 第４図乃至第６図に示す如き構造のバーナを
用いると、従来の1/10〜1/100の短時間で高速
加熱を行うことができると共に、設置面積が小
さくて済む。 (viii) 熱処理炉として均熱帯のみの均熱用炉で済
み、加熱のための熱量が不要になつて熱処理炉
の小形化及び省エネルギー化を図り得る。 (ix) 熱処理分野のみならず連続鋳造設備の後面で
スラブやビレツトの温度補償を行うこと、加熱
炉出口に設けてフラブやスキツドマーク等の焼
むらを低減すること、等にも使用できて汎用性
に富む。 等の優れた効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の鋼材の温度補償装置の機構を
示す説明用側面図、第２図は第１図の方向矢視
図、第３図Ａ，Ｂ，Ｃは本発明の鋼材の温度補償
装置を用いた熱処理設備のレイアウトを示すブロ
ツク図にして第３図Ａは焼入処理を、第３図Ｂは
焼戻処理を及び第３図Ｃは焼ならし処理を夫々示
す図、第４図は本発明の鋼材の温度補償装置に用
いるバーナの構造を示す縦断面図、第５図及び第
６図は第４図の及び方向矢視図である。 １…円板付下部ローラ、２…下部固定フレー
ム、３…鋼材、６…昇降フレーム、７…昇降機、
８…円板付上部ローラ、９…上部バーナ、１０…
下部バーナ、１１…側部バーナ、１２…上部保熱
カバー、１３…下部保熱カバー、１４…鋼材検出
器、１６…温度分布検出器、１７…演算器、１８
…バーナ制御器。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 鋼材を連続的に搬送するための複数の下部ロ
   ーラを下部固定フレームに取付けて形成した鋼材
   搬送路の下側に上記下部ローラより下方に引込め
   て設けた複数の下部バーナと、前記下部ローラ上
   側に昇降機により昇降可能に配設した昇降フレー
   ムと、該昇降フレームに前記下部ローラと対峙す
   るように取付けた複数の上部ローラと、該上部ロ
   ーラより上方に引込めて昇降フレームに設けた複
   数の上部バーナと、鋼材の温度分布検出器と、該
   温度分布検出器からの検出温度と設定鋼材温度と
   を比較演算する演算器と、前記上部バーナと下部
   バーナを前記演算器の出力信号に基づき作動させ
   るためのバーナ制御器とからなることを特徴とす
   る鋼材の温度補償装置。