JPH0240448B2 - Itazaisendansochi - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は板材の両端のトリミングや中央部に連
続的にスリツトを入れて細長い板材とする場合に
好適なせん断装置の改良に関する。

従来から板材の加工にせん断が利用されること
も多く、例えば第１図ａに示すような広幅の板材
１の中央部に多数のスリツト２を形成して細長い
板材３を得る場合や同図ｂに示すように板材１の
両端部４をサイドトリミングする場合がある。

このような板材１のせん断に用いられる装置と
して、例えば第２図ａ，ｂ，ｃに示すような上下
一対の円板状の切断刃５，６を具え、これら切断
刃５，６の回転軸が平行かつ切断刃５，６の内側
面がほぼ一直線上になるよう配置されて互いに逆
方向に回転駆動される構造のものがあり、これら
切断刃５，６間に板材１を送給してせん断する。

このようなせん断装置では比較的厚い板材のせ
ん断には適しているが、薄くて硬い板材のせん断
は困難であつた。その理由は、上下一対の切断刃
５，６のせん断位置での距離、すなわちクリアラ
ンスＣによるものであり、このクリアランスＣが
適当でないとうまくせん断できず、通常、最適値
は板厚ｔの0.1〜0.3倍位とされている。

したがつて、板厚ｔが厚い場合、例えばｔ＝５
mmの場合のクリアランスＣは0.5〜1.5mmが最適値
であり、薄い場合、例えばｔ＝0.1mmの場合のク
リアランスＣの最適値は0.01〜0.03mmと非常に小
さくなつてしまい、実際のせん断装置ではこのよ
うな微小なクリアランス調整ができないのが現状
である。

また、せん断中に切断刃５，６に作用する力に
ついてみると、第３図ａに示すように、せん断力
Ｐや側圧力Ｆが作用するが、特に板材１がせん断
される時、板材１が切断刃５，６で圧縮されるた
めに発生する切断刃５，６の軸方向に働く側圧力
ＦによりクリアランスＣが変化し、第３図ｂに示
すように上下の切断刃５，６が平行のまません断
中にクリアランスＣが増加する傾向にある。この
クリアランスＣが大きくなると、せん断が困難と
なつたり、せん断できてもせん断面がきれいでな
くなつたり、あるいは所定の寸法精度でせん断で
きない等の問題がある。

この問題を解決する方法として、せん断前に予
めクリアランスＣが負の状態、すなわち上下の切
断刃５，６が重つた状態としておき、せん断中に
クリアランスＣが増加しても適正な値となるよう
にすることも考えられる。

しかし、従来の切断刃５，６ではクリアランス
Ｃを負にしようとすると両切断刃が当つてしま
う。また、第３図ａに示すように、通常、上下の
切断刃５，６には板厚ｔに応じて、ある程度のラ
ツプ量Ｒ（切断刃先端のせん断方向の重なり量）
があるためクリアランスＣを負にすることは不可
能である。

本発明はかかる現状に鑑みてなされたもので、
非常に薄い板材であつても適正なクリアランスを
保持しながらせん断できる板材せん断装置の提供
を目的とする。かかる目的を達成する本発明の構
成は、一対の回転駆動される円板状の切断刃間に
板材を送給してせん断するせん断装置において、
前記一対の切断刃の回転軸を送給される前記板材
と平行な面内で板材送給入側での互いの回転軸の
なす角が出側より小さくなるよう交叉させたこと
を特徴とする。

以下、本発明の一実施例を図面に基づき詳細に
説明する。

第４図ａ，ｂ，ｃは本発明の板材せん断装置の
一実施例の概略構造を表わす正面図、側面図、平
面図である。

上下一対の円板状の切断刃１０，１１は、その
回転軸１０ａ，１１ａが板材１の送給面（板材
面）と平行な面内、すなわち水平面内でそれぞれ
逆方向に、ある角度θだけ交叉して取付けてあ
り、第４図ｃに平面状態を示すように、板材１の
送給方向Ａの入側で両切断刃１０，１１のクリア
ランスＣが負となり回転軸１０ａ，１１ａのなす
角度が小さく、出側でクリアランスＣが正となり
回転軸１０ａ，１１ａのなす角度が大きくなるよ
うにしてある。

この切断刃１０，１１の回転軸１０ａ，１１ａ
を交叉させる機構は、例えば、それぞれの回転軸
１０ａ，１１ａの端部を回転可能に支持する軸受
箱をせん断装置のフレームに対し水平方向に摺動
可能とし、各軸受箱を送りねじ機構等により駆動
するようにする。また、各回転軸の駆動のための
変速機とこれら回転軸１０ａ，１１ａとの連結は
交叉させても駆動力を伝達できるよう自在継手を
介して連結しておく。尚、他の構成は従来のせん
断装置と同様で良いので説明は省略する。

このように上下の切断刃１０，１１の回転軸１
０ａ，１１ａを交叉することで、せん断前はクリ
アランスＣが負となり、せん断後はクリアランス
Ｃが正となるが、これらクリアランスＣの値は回
転軸１０ａ，１１ａを交叉させる角度によつて順
次変更することができる。また、本装置では、板
材１の送給入側でクリアランスＣが負となるよう
にしているが、上下の切断刃１０，１１は円板状
であり、切断刃１０，１１同士の干渉はなく、せ
ん断工程は、第５図ａに拡大して示すように、板
材１は入側では上下の切断刃１０，１１の中間に
位置し、その後徐々にせん断されて行く。この場
合のクリアランスＣの変化を板材１の送給方向Ａ
に沿つて表わしたのが第５図ｂであり、従来のク
リアランスＣを表わした第３図ｂの場合と大きく
異なることがわかる。

このようにクリアランスＣを切断刃１０，１１
の入側と出側とで変化させた場合には、せん断が
徐々に行なわれることからせん断中に切断刃１
０，１１に作用する力も若干異なり、せん断面積
が小さいので、それに見合うだけ力も若干小さく
なる。

これを第４図ｃに示すような板材１の送給方向
Ａと直角な方向を基準とした回転軸１０ａ，１１
ａの角度、すなわちクロス角θに対してせん断抵
抗σおよび側圧比σ_Fについて実験により求めた結
果を第６図に示した。ここで、せん断抵抗σはせ
ん断力Ｐを面積で割つた値であり、側圧比σ_Fは側
圧力Ｆとせん断力Ｐとの比である。また、図中
○、△印は板材としてSUS304を用い、板厚ｔ＝
１mm、耐力が120Kg／mm²のものを用いた場合であ
り、●、▲印は板材としてSPCCを用い、板厚ｔ
＝2.1mm、耐力が28Kg／mm²のものを用いた場合で
ある。尚、クロス角θ＝０度の場合は従来装置で
のせん断に相当する。

同図から明らかなように、クロス角θを変える
ことにより側圧比σ_Fは減少し、クロス角θ＝２度
以上ではほぼ一定となり、従来装置に比べ側圧比
σ_Fが約50％減少している。また、せん断抵抗σに
ついても従来装置に比べ約５％小さくなつている
ことがわかる。特に、側圧比σ_Fが減少することに
より切断刃１０，１１のクリアランスＣを変化し
ようとする作用も少なくなり、板幅に対する寸法
精度を大幅に向上できる。また、せん断面につい
ても本発明装置によれば、非常にきれいに仕上る
のに対し、従来装置ではいずれの板材についても
ぎざぎざ状となり、そのまま製品とするのには適
していなかつた。

第７図は本発明装置による板幅精度について実
測した結果であり、板材として板厚ｔ＝１mmの
SUS304を用い、設定板幅を400mmとした場合で
ある。図中、○印は本発明装置でクロス角θを２
度とした場合であり、●印は従来装置（θ＝０、
Ｃ＝0.2t、ラツプＲ＝0.5mm）の場合である。

同図から明らかなように、従来装置では基準値
に対し、0.5mm程度板幅が広くなるのに対し、本
発明装置では、ほぼ基準値に等しい誤差のない板
幅とできることがわかる。

尚、上記実施例では上下一対の切断刃を具えた
せん断装置によるサイドトリミングを中心に説明
したが、複数列の切断刃を設け、板材を多条の細
長い板材とするせん断装置とすることもできる。

以上、一実施例とともに具体的に説明したよう
に本発明によれば、一対の円板状の切断刃の回転
軸を互いに交叉させ、板材の入側でクリアランス
が負となり出側で正となるようにしたので、従
来、せん断が困難とされた薄く硬い板材であつて
も簡単にせん断でき、せん断面もきれいに仕上
る。また、せん断中に切断刃に作用する側圧力が
大幅に減少するので寸法精度も向上する。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ，ｂはそれぞれ本発明装置によるせん
断対象の説明図、第２図ａ，ｂ，ｃは従来のせん
断装置の概略構造を示す正面図、側面図、平面
図、第３図ａ，ｂは従来装置のせん断中に作用す
る力の説明図およびクリアランスの説明図、第４
図ａ，ｂ，ｃは本発明の板材せん断装置の一実施
例の概略構造を示す正面図、側面図、平面図、第
５図ａ，ｂは本発明装置のせん断工程の説明図お
よびクリアランスの説明図、第６図および第７図
はそれぞれせん断結果を示す説明図である。 図面中、１は板材、１０，１１は切断刃、１０
ａ，１１ａは回転軸、Ａは送給方向、Ｃはクリア
ランス、θはクロス角である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 一対の回転駆動される円板状の切断刃間に板
   材を送給してせん断するせん断装置において、前
   記一対の切断刃の回転軸を送給される前記板材と
   平行な面内で板材送給入側での互いの回転軸のな
   す角が出側より小さくなるよう交叉させたことを
   特徴とする板材せん断装置。