JPH0240259Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は、セラミツク部材で形成された副室の
外周に円筒状の金属スリーブを嵌挿して構成した
副室構造体を有するエンジンの副室構造に関し、
特に金属スリーブの熱膨張に起因するセラミツク
部材のクラツク発生防止対策に関する。

（従来の技術） 従来、エンジンの副室構造として、例えば実開
昭58−175118号公報には、第３図に示すように、
副室を形成するセラミツク部材ａの外周に円筒状
の金属スリーブｂを嵌挿して構成した副室構成体
ｃをシリンダヘツドｄの凹部ｅに、該凹部ｅ内面
と、金属スリーブｂ外周面との間に隙間ｆを有し
て嵌挿するとともに、金属スリーブ端部ｇ，ｇの
外周面g₁，g₁を、シリンダヘツドｄに圧入嵌合し
て、セラミツク部材ａの耐熱性と上記隙間ｆの空
気層による断熱性によつて副室内で燃焼を良好に
かつ安定して行い得るようにしたものが開示され
ている。

（考案が解決しようとする問題点） ところが、上記従来のものでは、セラミツク部
材ａの外周に嵌挿された金属スリーブｂの端部外
周面g₁，g₁がシリンダヘツドｄに圧入嵌合してい
るので、副室からの熱負荷を受けて金属スリーブ
ｂが熱膨張し、その端部ｇ（圧入部）が外周面g₁
でシリンダヘツドｄに強く嵌合しながら内周面g₂
でセラミツク部材ａを押圧しかつ軸方向（第３図
の上下方向）に変形すると、圧縮力には強いが引
張り力には弱いというセラミツク材の特性からセ
ラミツク部材ａの上記金属スリーブ端部内周面g₂
に接する部分に金属スリーブ端部ｇの変形に伴い
クラツクが発生するという問題がある。そして、
この問題は、金属スリーブｂの下方への変形がシ
リンダヘツドｄの下側に配置されたシリンダブロ
ツクによつて規制されるため、金属スリーブｂの
上端部に起こりやすい。

本考案はかかる点に鑑みてなされたもので、そ
の目的とするところは、シリンダヘツドに圧入嵌
合された金属スリーブが熱膨張しても、金属スリ
ーブ上端の圧入部とセラミツク部材とが干渉しな
いようにすることにより、セラミツク部材にクラ
ツクが発生しないようにすることにある。

（問題点を解決するための手段） 上記目的を達成するため、本考案の解決手段
は、副室を構成するセラミツク部材の外周に円筒
状の金属スリーブを嵌挿して構成した副室構成体
がシリンダヘツドの凹部に、該凹部内面と金属ス
リーブ外周面との間に断熱のための空気層が形成
される隙間を有して嵌挿され、金属スリーブ上端
部外周面が、シリンダヘツドに圧入嵌合される構
成としたエンジンの副室構造において、上記金属
スリーブ上端部の内周面とセラミツク部材外周面
との間に、金属スリーブの変形を許容する間隙を
形成する構成としたものである。

（作用） 上記構成により、本考案では、金属スリーブが
熱膨張しても、該金属スリーブ上端部の内周面と
セラミツク部材外周面との間に設けた間隙によつ
て金属スリーブ上端部の内周面とセラミツク部材
とは干渉せず、セラミツク部材は金属スリーブの
変形の影響を受けることがなく、このことにより
該セラミツク部材に、クラツクの発生が防止され
ることになる。

（実施例） 以下、本考案の実施例を図面に基づいて詳細に
説明する。

第１図は、本考案の実施例に係る副室構造を備
えたエンジンを示す。同図において１はエンジン
のシリンダ２を形成するシリンダブロツク、３は
シリンダブロツク１の上面にガスケツト４を介し
て接合されたシリンダヘツド、５はシリンダ２内
を往復動するピストンであつて、上記シリンダ
２、ピストン５およびシリンダヘツド３で囲まれ
た空間により主燃焼室６が構成されている。

上記シリンダヘツド３の下面には、シリンダブ
ロツク１上面と対向する部分から主燃焼室６に臨
む部分までの範囲に亘つて有底円形状の凹部７が
形成され、該凹部７には内部に副室８を有する円
筒状の副室構成体９がその下面がシリンダヘツド
３の下面と面一になるように嵌挿されている。該
副室構成体９は、上下に２分割され内部に副室８
が形成されたセラミツク部材１０と、該セラミツ
ク部材１０の外周に嵌挿された円筒状の金属スリ
ーブ１１とからなり、該金属スリーブ１１は、そ
の上端部１１ａが若干小径に形成されているとと
もに下端部１１ｂが大径に形成されており、上記
凹部７の内面と金属スリーブ１１の外周面との間
に略一定幅の隙間１２が形成されるように上記小
径上端部１１ａの外周面と大径下端部１１ｂの外
周面において凹部７に圧入嵌合されている。尚、
上記セラミツク部材１０には、副室８と主燃焼室
６とを連通する噴口１３、および副室８と凹部７
の上側に取付けられた燃料噴射弁１４の噴口とを
連通する燃料導入孔１５が設けられている。

そして、本考案の特徴として、上記セラミツク
部材１０の上部外周面は上に向うほど径が小さく
なる略半球状に形成されていて、金属スリーブ１
１上端部の内周面とセラミツク部材１０の外周面
との間に、金属スリーブ１１の変形を許容する間
隙１６が形成されている。そして、該間隙１６に
は断面が略円形シール部材１７が凹部７の内面と
金属スリーブ１１上端部１１の内周面とセラミツ
ク部材１０の外周面とに内接するように嵌着され
ている。尚、１８はグロープラグである。

次に、上記実施例の作用について説明するに、
エンジン運転時、燃料噴射弁１４から副室８内に
噴射された燃料の燃料熱により副室構成体９に熱
負荷が加わるが、セラミツク部材１０の有する優
れた耐熱性によつて副室構成体９の変形、破損等
が防止できるとともに、凹部７と金属スリーブ１
１との間の間隙１２による空気層の断熱性によつ
て副室内の温度が高められて燃焼効率が向上す
る。

そして、上記熱負荷を受けて金属スリーブ１１
を熱膨張するが、その下端部１１ｂでは外周面で
シリンダヘツド３に強く嵌合しながら内周面でセ
ラミツク部材１０を押圧するものの、金属スリー
ブ１１の下方への変形がシリンダブロツク１によ
つて規制されているため、セラミツク部材１０に
は圧縮力が作用するだけで、圧縮力に強いセラミ
ツク部材１０にはクラツクが発生しない。一方、
金属スリーブ１１の上端部１１ａでは金属スリー
ブ１１が半径方向に変形しても（第２図の仮想線
の状態）、該金属スリーブ上端部１１ａ内周面と
セラミツク部材１０外周面との間に設けた間隙１
６によりセラミツク部材１０と干渉することがな
く、また上記下方への変形が規制される関係上金
属スリーブ１１が上方に変形しても、セラミツク
部材１０はその影響を受けることがなく、よつて
セラミツク部材１０にクラツクの発生が確実に防
止される。したがつて、燃焼を良好にかつ安定し
て行いながらエンジンの耐久性を向上させること
ができる。

また、上記間隙１６にはシール部材１７が装着
されているので、金属スリーブ１１の熱膨張によ
つて金属スリーブ上端部１１ａとシリンダヘツド
３との間の気密性が低下しても、上記シール部材
１７により燃焼ガスが凹部７内面と金属スリーブ
１１外周面との間の隙間１２に入るのが阻止さ
れ、空気層による断熱効果を良好に維持すること
ができる。

（考案の効果） 以上説明したように、本考案のエンジンの副室
構造によれば、金属スリーブが熱膨張しても、金
属スリーブ上端部の内周面とセラミツク部材外周
部とは干渉せず、セラミツク部材は金属スリーブ
の変形の影響を受けることがないので、セラミツ
ク部材のクラツクの発生を防止してエンジンの耐
久性向上を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示し、第１図はエンジ
ンの要部縦断面図、第２図は金属スリーブの上端
部周辺の拡大断面図、第３図は従来例を示す第１
図相当図である。 ３……シリンダヘツド、７……凹部、８……副
室、９……副室構成体、１０……セラミツク部
材、１１……金属スリーブ、１１ａ……上端部、
１２……隙間、１６……間隙。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 副室を形成するセラミツク部材の外周に円筒状
   の金属スリーブを嵌挿して構成した副室構成体が
   シリンダヘツドの凹部に、該凹部内面を金属スリ
   ーブ外周面との間に隙間を有して嵌挿され、金属
   スリーブ上端部外周面が、シリンダヘツドに圧入
   嵌合される構成としたエンジンの副室構造におい
   て、上記金属スリーブ上端部の内周面とセラミツ
   ク部材外周面との間に、金属スリーブの変形を許
   容する間隙を形成したことを特徴とするエンジン
   の副室構造。