JPH0237547Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は射出成形機の型締機構における可動盤
とタイバーとの直線摺動部の潤滑装置に関するも
のである。

〔従来の技術〕

射出成形機の型締機構において、可動金型を取
付ける可動盤はタイバーにガイドされ、高速の直
線往復運動を間歇的に繰り返している。

可動盤は可動金型を正確に移動させる必要上、
通常はタイバーとの直線摺動部に軸受が設けら
れ、潤滑油またはグリースにより潤滑されてい
る。潤滑油による潤滑方式は給油及び排油の配管
が比較的容易であるが、潤滑油の流れ易さゆえに
給油部から漏出した油が機械の表面を広くぬら
し、また狭い隙間を通過して思わぬ所まで流出
し、成形品等を汚損し易い。

また潤滑油は給油部に長期間残存して潤滑機能
を果たすことが困難なため、機械の稼動中に給油
ポンプや給油配管が故障ないし破損して潤滑油の
補給が絶たれた場合には、その潤滑対象である軸
受は短時間のうちに損傷してその機能を失い、機
械の正常な運転を阻害する危険性がある。

上記の問題点を解決するためにグリース潤滑方
式が採用され、グリースの定期的な補給によつて
良好な潤滑状態が維持されている。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかしながら上記グリース潤滑方式にあつて
は、グリースが一般的に粘度が高く、また可動盤
とタイバーとの直線摺動は長いストロークを高速
で行われるので、パツキンやフエルトなどのシー
ル材によつてグリースの漏出を完全に阻止するこ
とは困難である。このため、軸受部から漏出した
グリースが長時間のうちにタイバーの表面に付
着、堆積し、やがてその自重によつて落下し、飛
散して金型や成形品を汚損するという問題点があ
る。

勿論、グリースが落下する前に清掃すれば問題
ないが、成形作業中に清掃することは非常に危険
であるし、大部分の射出成形機は運転中に清掃で
きない構造になつている。従つて昨今の如く、成
形作業が１日24時間運転や無人運転などにより連
続的に行われる場合には、上記のようなまれにか
つ不定期的に発生するグリース汚損の問題を解決
することが大きな課題になつている。

〔問題点を解決するための手段〕

本考案装置は上記可動盤とタイバーの直線摺動
部におけるグリース潤滑上の問題点を解決するた
め、図示のようにタイバー２に直線摺動自在に設
けられた可動盤１の直線摺動部に円筒形の可動盤
軸受３を設け、この可動盤軸受３の内面にグリー
ス供給穴５を有する環状のグリース保持溝４を設
け、可動盤１の金型取付面２２のタイバー２直下
にはグリース受皿２３を設け、このグリース受皿
２３の中央部には当該グリース受皿２３の縁板２
５よりも高く、かつタイバー２との間に隙間を有
するグリースかき板２４を設けてなる構成とした
ものである。

〔作用〕

グリースをグリース供給穴５よりグリース保持
溝４に供給すると、供給されたグリースはタイバ
ー２と可動盤軸受３との摺動面に介在して潤滑の
役目を果たす。この潤滑の役目を果たしたグリー
スは可動盤１の前後動によつてタイバー２の表面
に付着残留し、この残留グリースは新たに供給さ
れたグリースによつて徐々に増加してタイバー２
の下側に垂れ下がる。この垂れ下がつた残留グリ
ースの量がある程度増加すると、可動盤１が前後
動する度にグリースかき板２４によつてかき取ら
れる。このかき取られたグリースはグリースかき
板２４を伝わつてグリース受皿２３の中に落下
し、これにより回収することができる。

〔実施例〕

第１図は本考案装置の一実施例を示す正面図、
第２図は第１図の−線断面図、第３図は第２
図の−線断面図である。

まずその構成を説明する。

タイバー２に直線摺動自在に設けられた可動盤
１の直線摺動部には円筒形の可動盤軸受３が設け
られ、この可動盤軸受３の内面中央部には円環状
のグリース保持溝４が設けられている。可動盤軸
受３及び可動盤１の上部にはそれぞれグリース保
持溝４に連通するグリース供給穴５及び可動盤グ
リース穴６が設けられ、この可動盤グリース穴６
にはグリース分岐配管７が直結されている。この
グリース分岐配管７はグリース分配器２７、グリ
ース配管ホース８及びグリース給油配管９を経て
グリース給油ポンプ１１に接続され、このグリー
ス給油ポンプ１１はエンドハウジング１０に固定
されている。

また可動盤軸受３及び可動盤１の側部にはそれ
ぞれグリース保持溝４に連通するグリース排出穴
１２及び可動盤グリース抜き穴１３が設けられ、
この可動盤グリース抜き穴１３にはグリース排出
配管１４が連結されている。このグリース排出配
管１４はオイルパン１５に接続され、このオイル
パン１５は可動盤１の下面に取り付けられてい
る。

このオイルパン１５の樋１６の下方に位置する
ベツド１７の上面には廃油受け１８が設けられて
おり、この廃油受け１８は廃油配管１９を経て廃
油タンク２０に接続されている。

可動盤軸受３の両端近くの内面にはパツキン２
１が設けられ、グリースの漏出と外部からの塵埃
の侵入を防止している。可動盤１の金型取付面２
２のタイバー直下にはグリース受皿２３が取り付
けられ、このグリース受皿２３の中央部にはグリ
ース受皿２３の縁板２５よりも高く、かつタイバ
ー２との間にわずかな隙間を有するグリースかき
板２４が設けられている。

グリース受皿２３の底面にはグリース排出管２
６が連結され、このグリース排出管２６はオイル
パン１５に接続されている。

なおグリース受皿２３の底面と接するグリース
かき板２４の部分には切り欠き２９が設けられ、
グリース受皿２３内のグリースの流動を容易にし
ている。

次にその作用を説明する。

グリース給油ポンプ１１から吐出されたグリー
スはグリース給油配管９、及びグリース配管ホー
ス８を経てグリース分配器２７に達し、ここから
更にグリース分岐配管７、可動盤グリース穴６及
びグリース供給穴５を経て、可動盤軸受３内面の
グリース保持溝４に流入する。

このグリース保持溝４に流入したグリースはタ
イバー２と可動盤軸受３との摺動面に介在して潤
滑の役目を果たし、劣化したグリースは新しい補
給グリースの流入圧に押されて、グリース排出穴
１２から流出し、可動盤グリース抜き穴１３及び
グリース排出配管１４を経てオイルパン１５に流
入する。その後オイルパン１５の樋１６からベツ
ド１７上面の廃油受け１８上に流下し、廃油配管
１９を経て廃油タンク２０に集められる。

一方、可動盤軸受３とタイバー２との摺動面に
介在するグリースの一部は型閉じ工程において可
動盤１が固定盤２８の方向に最も前進した時点で
タイバー２の表面に付着する。続く型開き工程に
おいて可動盤１の後退に伴うパツキン２１のかき
戻し力に抗してタイバー２の表面に残留したグリ
ース（以下、残留グリースと称する。）は、次の
型閉し工程においてパツキン２１によつて更に前
方へ押し進められる。そして続く型開き工程にお
いて新たな残留グリースが追加されていく。

この残留グリースの量が長時間にわたる射出成
形作業により次第に増加してタイバー２の下側に
垂れ下がり、やがて自重によつて落下するという
のが従来の現象であるが、本考案の場合は、タイ
バー２の下側に垂れ下がつた残留グリースの量が
ある程度多くなると、可動盤１が前後動する度に
グリースかき板２４によつてかき取られる。かき
取られたグリースはグリースかき板２４を伝つて
グリース受皿２３の中に落下し、その後、グリー
ス排出管２６を経てオイルパン１５に至り、更に
オイルパン１５の樋１６から廃油受け１８上に落
下したのち、廃油配管１９を経て廃油タンク２０
に回収される。

また、タイバー２の下側に垂れ下がつた残留グ
リースのうち、タイバー２とグリースかき板２４
との隙間を通過したものは、グリースかき板２４
にかき取られることなく薄い層としてタイバー２
の表面に残留するが、やがてその量が増してグリ
ースかき板２４に触れるようになると、グリース
かき板２４の前面または後面に付着ないしかき取
られてグリース受皿２３の中に落下する。

ここで、グリースかき板２４がなく、単にグリ
ース受皿２３だけが設けられている場合には、残
留グリースはグリース受皿２３の縁板２５により
直接かき取られることになり、縁板２５の内外に
付着した残留グリースのうち、外側のグリースが
やがて落下する不具合を生ずるが、本考案ではタ
イバー２の表面に付着したグリースの除去に関す
る機能は全てグリースかき板２４が果たすので、
グリース受皿２３の縁板２５の先端にグリースが
付着してグリース受皿２３の外周を汚したり、そ
こから落下したりすることはない。

なお、上記実施例においては、グリース受皿２
３にたまつたグリースをグリース排出管２６を経
て最終的に廃油タンク２０に回収するようになつ
ているが、グリース排出管２６を設けずにグリー
スを単にグリース受皿２３に貯め、随時ないし定
期的に人手により回収するようにしてもよい。こ
れは例えば成形材料にパウダーを用いる場合など
のように成形雰囲気が悪く、残留グリースに塵埃
が混入して流動性が失われ易い場合に有効であ
る。なおその場合には、磁石や錠などを用いてグ
リース受皿２３を可動盤１に取付け、清掃時に容
易に取外せるようにしておけば便利である。

また、タイバー２の表面に付着したグリースの
回収をより厳密に行うためにはグリース受皿２３
を可動盤１の後部にも設ければよい。

更に、上記実施例では機械稼動中のグリース補
給を可能にするため成形中には可動しないエンド
ハウジング１０に取付けたグリース給油ポンプ１
１から、グリース分岐配管７に至る給油系統を設
けているが、機械の大きさや用途によつては、グ
リース給油ポンプ１１からグリース分岐配管７に
至る給油系統を廃止して、可動盤１の各可動盤グ
リース穴６にグリースニツプル等のグリース給油
金具を直接設けてもよいし、パツキン２１の代わ
りにフエルトのような含油性のよい材料を用いた
り、あるいはパツキン２１そのものをなくしても
よい。

また、廃油配管１９や廃油タンク２０は保全作
業の軽減を意図したものであり、場合によつては
設置しなくてもよい。

また、上記実施例では上下のタイバーに同様に
グリース受皿２３を設けているが、オイルパン１
５を大きくしてその中にグリースかき板２４を設
けることにより下側のグリース受皿２３およびグ
リース排出管２６を省略してもよい。

〔考案の効果〕

上記のごとく本考案の可動盤潤滑装置によれ
ば、射出成形作業を円滑に行わせしめるに十分な
量のグリースを、タイバー２の直線摺動自在に設
けられた可動盤１の直線摺動部に供給し続けて
も、劣化グリースや残留グリースをグリースかき
板２４によりかき取り、グリース受皿２３に確実
かつ容易に回収できるので、機械の保全作業が軽
減され、かつ汚損のない形成環境を長期間維持す
ることができる。

なお、本実施例では潤滑剤としてグリースを用
いる場合を記したが、グリースの代わりに粘度の
高い潤滑油を潤滑剤として用いる場合にも同様の
効果が得られることは自明である。

【図面の簡単な説明】

第１図は本装置の一実施例を示す正面図、第２
図は第１図の−線断面図、第３図は第２図の
−線断面図である。 １……可動盤、２……タイバー、３……可動盤
軸受、４……グリース保持溝、５……グリース供
給穴、２２……金型取付面、２３……グリース受
皿、２４……グリースかき板、２５……縁板。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. タイバー２に直線摺動自在に設けられた可動盤
   １の直線摺動部に円筒形の可動盤軸受３を設け、
   この可動盤軸受３の内面にグリース供給穴５を有
   する環状のグリース保持溝４を設け、可動盤１の
   金型取付面２２のタイバー２直下にはグリース受
   皿２３を設け、このグリース受皿２３の中央部に
   は当該グリース受皿２３の縁板２５よりも高く、
   かつタイバー２との間に隙間を有するグリースか
   き板２４を設けてなることを特徴とする射出成形
   機の可動盤潤滑装置。