以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と同一又は類似する構成については、既に説明した実施形態の構成に付した符号と同一の符号を付し、また、説明を省略することがある。また、第2実施形態以降において、既に説明した実施形態の構成と対応(類似)する構成について、既に説明した実施形態の構成に付した符号と異なる符号を付した場合において、特に断りがない事項については、既に説明した実施形態の構成と同様である。
<第1実施形態>
(ダイカストマシンの構成)
図1〜図3は、いずれも本発明の第1実施形態に係るダイカストマシン1の、一部に断面図を含む側面図である。図1は、ダイカストマシン1の型開状態を示している。図2は、ダイカストマシン1の型閉状態を示している。図3は、ダイカストマシン1のタイバー引抜状態を示している。
ダイカストマシン1は、固定金型103及び移動金型105を含む金型101の内部に溶湯(溶融状態の金属、成形材料の一例)を射出し、溶湯を固化させてダイカスト品(成形品の一例)を製造するための装置である。
ダイカストマシン1は、例えば、金型101の型開閉及び型締めを行う型締装置3と、金型101内に溶湯を射出する射出装置5と、ダイカスト品を固定金型103又は移動金型105から押し出す不図示の押出装置と、これらの各装置を制御する制御装置7(図1)とを有している。
型締装置3は、例えば、ベース9と、ベース9上に設けられ、固定金型103を保持する固定プラテン11と、ベース9上に設けられ、移動金型105を保持する移動プラテン13と、固定プラテン11及び移動プラテン13に架け渡される上部タイバー15U及び下部タイバー15D(以下、単に「タイバー15」といい、両者を区別しないことがある。)とを有している。
ベース9は、例えば、工場の床面等に載置されている。固定プラテン11及び移動プラテン13は、ベース9上に互いに対向して配置されている。固定プラテン11は、移動プラテン13に対向する金型取付面に固定金型103を保持しており、ベース9に対して固定されている。一方、移動プラテン13は、固定プラテン11に対向する金型取付面に移動金型105を保持し、ベース9に対して、型開閉方向(固定プラテン11に対して近接・離反する方向)に移動可能に設けられている。
移動プラテン13の固定プラテン11に近接する方向(型閉方向)への移動により、金型101の型閉じが行われる(図2)。また、移動プラテン13の固定プラテン11から離反する方向(型開方向)への移動により、金型101の型開きが行われる(図1)。
タイバー15は、例えば、金属からなる断面円形の棒状部材であり、金型101の周囲に複数本設けられている。具体的には、例えば、金型101に対して上方側となる位置に上部タイバー15Uが2本設けられ、金型101に対して下方側となる位置に下部タイバー15Dが2本設けられ、合計4本設けられている。4本のタイバー15は、例えば、金型101を中心に、上下対称及び左右対称に配置されている。タイバー15は、少なくとも型閉状態において固定プラテン11及び移動プラテン13に架け渡されることが可能な長さを有している。
図2の型閉状態において、タイバー15の固定プラテン11側の端部を固定プラテン11に対して固定し、タイバー15の移動プラテン13側の端部を移動プラテン13に対してその背後(固定プラテン11とは反対側、図の紙面右側)に引っ張ることにより、タイバー15を伸長させ、その伸長量に応じた型締力を発生させることができる。
型締装置3は、例えば、いわゆる複合型の型締装置により構成されており、型開閉を行うための駆動手段と型締めを行うための駆動手段とを別個に有している。例えば、型締装置3は、型開閉を行うための不図示の型開閉駆動装置と、型締めを行うための型締シリンダ17とを有している。
不図示の型開閉駆動装置は、例えば、ベース9内に設けられている。型開閉駆動装置は、液圧式のものであってもよいし、電動式のものであってもよい。液圧式の型開閉駆動装置は、例えば、型開閉方向を駆動方向として配置された液圧シリンダを含む。液圧シリンダは、例えば、シリンダ部がベース9に固定され、ピストンロッドが移動プラテン13に固定される。また、電動式の型開閉駆動装置は、例えば、型開閉方向を駆動方向として配置されたボールねじ機構と、ボールねじ機構を駆動する回転式の電動機とを含む。ボールねじ機構は、例えば、ねじ軸がベース9に支持され、ナットが移動プラテン13に固定される。そして、電動機によってねじ軸が軸回りに回転されることによってナットが型開閉方向に移動する。
型締シリンダ17は、例えば、移動プラテン13に内蔵されたシリンダ部19と、シリンダ部19内を型開閉方向に摺動可能な型締ピストン21とを有している。なお、内臓に代えて、プラテンの背後側への連結とするなども可能である。
型締シリンダ17は、例えば、複数のタイバー15に対応して、タイバー15と同数設けられている。そして、型締ピストン21には、タイバー15が挿通されている。型締ピストン21は、例えば、特に符号を付さないが、シリンダ部19内を2つのシリンダ室に区画するピストン本体と、ピストン本体から移動プラテン13の背後側へ突出してシリンダ部19の外部に露出する小径部分とを有している。
図2に示す型閉状態において、タイバー15の固定プラテン11側の端部を固定プラテン11に対して固定し、タイバー15と型締ピストン21とを係合させ、型締ピストン21を固定プラテン11とは反対側へ移動させることにより、タイバー15を引っ張ることができる。ひいては、タイバー15を伸長させ、その伸長量に応じた型締力を発生させることができる。
タイバー15は、固定側係合装置23によって、固定プラテン11に対して、型開閉方向において係合可能とされ、また、その係合を解除可能とされている。同様に、タイバー15は、移動側係合装置25によって、型締ピストン21に対して、型開閉方向において係合可能とされ、また、その係合を解除可能とされている。
タイバー15と、固定プラテン11及び型締ピストン21とを係合可能であることにより、上述のように、タイバー15を引っ張って型締めを行うことができる。また、タイバー15と型締ピストン21との係合を解除可能であることにより、図1及び図2に示すように、移動プラテン13を固定プラテン11及びタイバー15に対して移動させ、型開閉を行うことができる。また、タイバー15と、固定プラテン11及び型締ピストン21との係合を解除可能であることにより、図3に示すように、タイバー15の引き抜きを行うことができる。
なお、本実施形態においては、下部タイバー15Dは移動プラテン13から引き抜かれない。このような場合においては、下部タイバー15Dは、固定プラテン11に対して型開閉方向における係合を解除可能でなくてもよく、例えば、固定側係合装置23に代えて、ボルト等によって固定プラテン11に対して固定されていてもよい。
固定側係合装置23は、例えば、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動不可能に支持されたハーフナット(符号省略)と、ハーフナットをその開閉方向に駆動する不図示の駆動部(例えば液圧シリンダ)とを有している。一方、タイバー15の固定プラテン11側の端部には、外周面に複数の溝が形成されることにより固定側被係合部15aが形成されている。そして、固定側係合装置23のハーフナットがタイバー15の固定側被係合部15aに噛み合うことにより、タイバー15と固定プラテン11とは型開閉方向において係合され、噛み合いが解除されることにより係合が解除される。
移動側係合装置25は、例えば、型締ピストン21に対して型開閉方向に移動不可能に(型締ピストン21と共に型開閉方向に移動可能に)設けられたハーフナット(符号省略)と、ハーフナットをその開閉方向に駆動可能な駆動部(例えば液圧シリンダ)とを有している。一方、タイバー15の移動プラテン13側の端部には、外周面に複数の溝が形成されることにより移動側被係合部15bが形成されている。そして、移動側係合装置25のハーフナットが移動側被係合部15bに噛み合うことにより、タイバー15と型締ピストン21とは型開閉方向において係合され、噛み合いが解除されることにより係合が解除される。
なお、固定側係合装置23と固定側被係合部15aとが噛み合うときの両者の型開閉方向の相対位置は、例えば、金型101の厚さ(型厚)によらず一定とされる。従って、固定側被係合部15aの型開閉方向における大きさは、例えば、固定側係合装置23のハーフナットの型開閉方向における大きさと概ね同等とされている。
一方、移動側係合装置25と移動側被係合部15bとが噛み合うときの両者の型開閉方向の相対位置は、図2から理解されるように、金型交換に伴う型厚の変化によって変化する。従って、移動側被係合部15bの型開閉方向における大きさは、例えば、移動側係合装置25のハーフナットの型開閉方向における大きさよりも、想定される型厚の変化量以上の量で大きくされている。また、移動側被係合部15bは、固定側被係合部15aよりも型開閉方向において大きい。
型締装置3は、例えば、上部タイバー15Uを固定プラテン11の背後側へ引き抜くために、引き抜きのための駆動力を上部タイバー15Uに付与する引抜駆動装置27と、引き抜かれていく上部タイバー15Uの荷重を支持するための支持機構29とを有している。本実施形態は、支持機構29を備えていることを特徴の一つとしている。
引抜駆動装置27は、例えば、電動式のものである。具体的には、例えば、引抜駆動装置27は、回転式の電動機(駆動部)31と、電動機31の回転を並進運動に変換して上部タイバー15Uに伝達するねじ機構33とを有している。
電動機31は、直流モータでも交流モータでもよい。また、電動機31は、誘導モータ又は同期モータ等の適宜なモータにより構成されてよい。電動機31は、不図示のエンコーダ及びサーボドライバとともにサーボ機構を構成するサーボモータであってもよいし、開ループにおいて制御されるものであってもよい。電動機31は、例えば、支持機構29によって支持されており、固定プラテン11の背後側へ固定プラテン11から離れて配置されている。
ねじ機構33は、例えば、ボールねじ機構によって構成されている。ねじ機構33は、例えば、型開閉方向に延びるねじ軸35と、ねじ軸35に不図示のボールを介して螺合する雌ねじ部53a(図4(a)及び図4(b)参照)を有する可動部37とを有している。
ねじ軸35は、例えば、型開閉方向に平行に延びており、また、概ね全体が固定プラテン11の背後側に位置し、且つ、上部タイバー15Uよりも上方に位置している。ねじ軸35は、例えば、直接又は間接に固定プラテン11に支持されている。具体的には、例えば、ねじ軸35の固定プラテン11側の一端は、固定プラテン11の上部に設けられた軸支部材(符号省略)によって支持されている。また、例えば、ねじ軸35の固定プラテン11からその背後へ離れた一端は、固定プラテン11の上部に設けられた支持機構29、及び、支持機構29に設けられた軸支部材(符号省略)によって支持されている。ねじ軸35は、軸方向に移動不可能、且つ、軸回りに回転可能とされている。
可動部37は、固定プラテン11の背後に位置しており、ねじ軸35の軸回りに回転不可能とされ、また、タイバー15に連結されている。従って、電動機31によってねじ軸35が軸回りに回転されると、可動部37はねじ軸35に対してその軸方向(型開閉方向)に移動し、ひいては、タイバー15が固定プラテン11に対して型開閉方向に移動する。
支持機構29は、例えば、上部タイバー15Uよりも上方にて、固定プラテン11からその背後側へ延びる吊りビーム39と、吊りビーム39に吊り下げられるとともに上部タイバー15Uを吊り下げる、既述の可動部37とを有している。なお、吊りビーム39は、基本的に引抜駆動装置27とは別に設けられている(引抜駆動装置27に共用されていない)が、可動部37は、支持機構29と引抜駆動装置27とに共用されている。
吊りビーム39は、例えば、ねじ軸35よりも上方に位置している。換言すれば、ねじ軸35は、上下方向において、上部タイバー15Uと吊りビーム39との間に位置している。吊りビーム39は、例えば、固定プラテン11に支持されている。より具体的には、例えば、吊りビーム39は、その一端が固定プラテン11の上部に固定されており、概ね片持ち梁のように固定プラテン11に支持されている。ただし、吊りビーム39は、射出フレーム41及び射出フレーム41に支持された支持材43を介して、中途部分等も固定プラテン11に支持されてよい。
吊りビーム39は、上部タイバー15Uが引き抜かれる過程及び引き抜き完了時において上部タイバー15Uを好適に吊り下げる(別の観点では上部タイバー15Uの荷重を支持する)ことが可能に、その曲げ剛性等が適宜に設定されてよい。例えば、吊りビーム39は、その自重による撓み量が、上部タイバー15Uの引き抜きが完了したときにおける、(吊りビーム39によって吊られていないと仮定したときの)上部タイバー15Uのその自重による撓みと、上部タイバー15Uと固定プラテン11との間のガタとに起因する、上部タイバー15Uの先端の変位量よりも小さいことが好ましい。また、例えば、吊りビーム39の曲げ剛性は、ねじ軸35の曲げ剛性よりも高いことが好ましい。
可動部37は、吊りビーム39に対して型開閉方向に移動可能に吊りビーム39に吊るされている。従って、上部タイバー15Uは、可動部37を介して吊りビーム39に吊られた状態で、型開閉方向に移動可能である。なお、上部タイバー15Uから可動部37に加えられる荷重は、その全部又は大部分が可動部37から吊りビーム39に伝えられることが好ましいが、一部が可動部37からねじ軸35に伝えられてもよい。
射出装置5の構成は、公知のものと同様でよい。例えば、射出装置5は、固定プラテン11の背後側から金型101内に通じる不図示の射出スリーブと、射出スリーブに背後側(図1〜図3の紙面左側)から挿入され、射出スリーブ内を前後方向に摺動可能な不図示の射出プランジャと、射出プランジャを前後方向に駆動可能な射出シリンダ45とを有している。射出シリンダ45のシリンダ部(符号省略)は、例えば、射出フレーム41に固定されている。射出シリンダ45のピストンロッド(不図示)は、射出プランジャの後端に不図示のカップリングを介して連結されている。
制御装置7は、例えば、特に図示しないが、CPU、ROM、RAM、外部記憶装置等を有するコンピュータを含んで構成されている。制御装置7は、型締装置3、射出装置5及び不図示の押出装置等の動作を制御する。例えば、制御装置7は、予め設定された情報及び不図示のセンサ(位置センサ又は圧力センサ)等の信号に基づいて、各装置の駆動装置のドライバ及び/又は液圧回路に制御信号を出力する。
制御装置7は、作業者の操作を受け付ける入力装置47(図1)と、画像を表示する表示装置49(図1)とを有している。入力装置47及び表示装置49は、タッチパネル式の液晶表示装置のように一体的に構成されていてもよい。
図4(a)は、図1のIVa−IVa線における断面図である。また、図4(b)は、図4(a)のIVb−IVb線における断面図である。
図4(a)に示すように、本実施形態では、引抜駆動装置27及び支持機構29は、2本の上部タイバー15Uのそれぞれに対して設けられており、合計で2組設けられている。2組の引抜駆動装置27及び支持機構29は、例えば、互いに同一の構成とされている。
各上部タイバー15Uにおいて、上部タイバー15U、引抜駆動装置27のねじ軸35及び支持機構29の吊りビーム39は、例えば、鉛直方向に1列に配置されている(左右方向の位置は互いに同一である。)。吊りビーム39の断面形状は、適宜な形状とされてよいが、例えば、H型である、
可動部37は、例えば、上部タイバー15Uに連結される連結部材51と、ねじ軸35に螺合されるナット53と、これらを吊りビーム39に対して吊り下げる垂下部材55と、垂下部材55と吊りビーム39との間に介在する回転部材57とを有している。
連結部材51は、例えば、型開閉方向に貫通する孔部51h(切り欠き部であってもよい)を有する部材である。孔部51hの径は、上部タイバー15Uの(本体部分の)径よりも小さくされている。一方、上部タイバー15Uの固定プラテン11側の端部には、例えば、一部が小径に形成されることにより、被連結部15cが形成されている。そして、被連結部15cの小径部分が孔部51hに挿入されることによって、連結部材51と上部タイバー15Uとは連結されている。
具体的には、連結部材51の孔部51hの内周面は、鉛直方向を含む半径方向において被連結部15cの小径部分に当接している。これにより、連結部材51は、上部タイバー15Uの荷重を支持可能である。また、被連結部15cの型開閉方向に面する両面は、被連結部15cの凹部壁面に対して型開閉方向に係合している。これにより、連結部材51は、型開閉方向の駆動力を上部タイバー15Uに付与可能である。孔部51hの形状は、例えば、円形である。被連結部15cの小径部分の断面形状は、例えば、円形である。
なお、特に図示しないが、上記のような連結が可能に、連結部材51は、例えば、孔部51hを分割するように分割された2以上の部材からなり、これらの部材が被連結部15cを挟むようにねじ等により互いに連結されて構成されてよい。又は、上部タイバー15Uのうち、被連結部15cの小径部分よりも端部側の部分、若しくは、被連結部15cの小径部分から端部側の部分は、上部タイバー15Uの他の部分とは別に形成されており、孔部51hに被連結部15cの小径部分が挿通された後、ねじ等により上部タイバー15Uの他の部分に固定されてよい。
ナット53は、ねじ軸35が螺合する雌ねじ部53aを有している。ナット53の形状及び大きさは適宜なものとされてよく、また、2以上の部材から構成されていてもよい。
垂下部材55は、例えば、板状の部材であり、各可動部37において2枚設けられている。2枚の垂下部材55は、型開閉方向の側方両側から連結部材51及びナット53を挟むようにして対向配置され、これらの部材に固定されている。また、2枚の垂下部材55は、型開閉方向の側方両側から吊りビーム39を挟んでいる。これにより、上部タイバー15U、ねじ軸35及び吊りビーム39は鉛直方向に1列に配置される。また、可動部37の吊りビーム39に対する側方への移動は規制される。
なお、ナット53は、型開閉方向の力を連結部材51に対して付与可能であればよい。従って、例えば、ナット53は、上下方向においては連結部材51及び垂下部材55に対して浮遊するように設けられていてもよい。例えば、ナット53及び連結部材51(又は垂下部材55)は、型開閉方向において互いに係合する係合部及び被係合部を有し、互いに固定されない構成とされてもよい。このようにすることにより、連結部材51に加えられた上部タイバー15Uの荷重は、連結部材51からナット53及びねじ軸35へ伝わりにくくなる。
回転部材57は、例えば、金属からなる車輪(円盤状)である。その外周面には、弾性部材が設けられてもよい。回転部材57は、吊りビーム39の表面を転がることが可能に垂下部材55に軸支されている。より具体的には、例えば、吊りビーム39の上面の側方両側及び下面の側方両側を転がる4つの回転部材57が設けられている。吊りビーム39の上面を転がる回転部材57によって、垂下部材55は型開閉方向に移動可能に吊りビーム39に吊り下げられる。また、吊りビーム39の下面を転がる回転部材57によって、垂下部材55の浮き上がりが抑制される。
なお、可動部37のうち、連結部材51、ナット53及び垂下部材55(又は、連結部材51及び垂下部材55)は、回転部材57を軸支し、上部タイバー15Uに連結される本体部材59を構成している。本体部材59は、適宜に一体的に形成されたり、分割して形成されたりしてよい。例えば、連結部材51及びナット53は、一体的に形成されてもよい。
また、図1〜図3に示した支持材43は、例えば、上方から2枚の垂下部材55の間にて吊りビーム39に連結され、吊りビーム39を吊り下げる。
図5は、可動部37の連結部材51及び上部タイバー15Uの被連結部15cを拡大して示す断面図である。
連結部材51は、矢印y1で示す上部タイバー15Uの連結部材51に対する傾斜(水平方向に対する傾斜)を許容可能に上部タイバー15Uに対して連結されている。
具体的には、例えば、連結部材51の孔部51hの径は、被連結部15cの小径部分の径よりも大きく、連結部材51と上部タイバー15Uとの間には、上部タイバー15Uの径方向の遊びa1が生じている。また、例えば、被連結部15cの凹部の型開閉方向の大きさは、連結部材51の厚さよりも大きく、連結部材51と上部タイバー15Uとの間には、型開閉方向の遊びa2が生じている。また、被連結部15cと上部タイバー15Uとは、ねじ等によって互いに移動不可能に固定されることはなされていない。このような構成によって、上部タイバー15Uの連結部材51に対する傾斜が許容されている。遊びa1及びa2の寸法は、後述する作用が好適に奏されるように、上部タイバー15Uが引き抜かれる過程における上部タイバー15Uの先端の傾斜角等を考慮して、適宜に設定されてよい。
また、連結部材51は、矢印y2で示す上部タイバー15Uの連結部材51に対する軸回りの回転を許容可能に上部タイバー15Uに対して連結されている。
具体的には、例えば、上部タイバー15Uの被連結部15cの小径部分の断面形状は円形であり、被連結部15cは孔部51hの内周面に対する軸回りの摺動によって回転位置を変化させることが可能である。また、既に述べたように、被連結部15cと上部タイバー15Uとは、ねじ等によって互いに移動不可能に固定されることはなされていない。このような構成によって、上部タイバー15Uの連結部材51に対する軸回りの回転が許容されている。
図6(a)は、固定プラテン11の上部タイバー15Uが挿入される孔部付近の断面図である。図6(b)は、移動プラテン13の上部タイバー15Uが挿入される孔部付近の断面図である。
型締装置3は、例えば、固定プラテン11の前面側及び背後側、並びに、移動プラテン13の前面側及び背後側のそれぞれにおいて、上部タイバー15Uに当接する第1スクレイパー61A〜第4スクレイパー61D(以下、単に「スクレイパー61」といい、各々を区別しないことがある。)と、上部タイバー15Uに向けて気体(例えば空気)を噴射可能な第1ノズル63A〜第4ノズル63D(以下、単に「ノズル63」といい、各々を区別しないことがある。)とを有している。
スクレイパー61は、例えば、弾性部材からなるヘラ、又は、金属からなるブラシによって構成されている。スクレイパー61は、上部タイバー15Uに当接しており、ひいては、上部タイバー15Uの引き抜きの過程等において、移動側被係合部15bに対して当接し、移動側被係合部15bの溝内の異物を除去可能である。なお、固定プラテン11の背後側に設けられた第1スクレイパー61Aは、固定側被係合部15aの異物除去にも寄与可能である。
スクレイパー61は、例えば、上部タイバー15Uの軸回りに複数配列されてもよいし、環状に形成されて上部タイバー15Uが挿通されてもよい。固定プラテン11の前後に位置する第1スクレイパー61A及び第2スクレイパー61Bは、例えば、不図示の適宜な支持部材を介して固定プラテン11に支持されている。移動プラテン13の前後に位置する第3スクレイパー61C及び第4スクレイパー61Dは、例えば、不図示の適宜な支持部材を介して移動プラテン13に支持されている。
ノズル63は、例えば、気体送出部65(図6(a))と接続されている。気体送出部65は、特に図示しないが、例えば、ポンプ、アキュムレータ、及び/又は、圧縮気体を貯留したボンベ等の気圧源と、当該気圧源からの気体の送出を制御するバルブとを含んで構成されている。ノズル63は、気体送出部65から供給された気体を上部タイバー15Uに送出可能である。これにより、上部タイバー15Uの引き抜きの過程等において、移動側被係合部15bに気体を吹き付け、移動側被係合部15bの溝内の異物を除去できる。なお、固定プラテン11の背後側に設けられた第1ノズル63Aは、固定側被係合部15aの異物除去にも寄与可能である。
ノズル63は、上部タイバー15Uの軸回りに複数配列されてもよいし、環状に形成されたパイプに複数の孔が形成されることによって構成され、上部タイバー15Uが挿通されてもよい。固定プラテン11の前後に位置する第1ノズル63A及び第2ノズル63Bは、例えば、不図示の適宜な支持部材を介して固定プラテン11に支持されている。移動プラテン13の前後に位置する第3ノズル63C及び第4ノズル63Dは、例えば、不図示の適宜な支持部材を介して移動プラテン13に支持されている。
なお、図6(a)及び図6(b)では、ノズル63がスクレイパー61よりもプラテン側に設けられている。従って、例えば、移動側被係合部15bは、大きな異物がスクレイパー61によって除去され、次に、残った異物がノズル63から噴出された気体によって除去された後、プラテンに挿入される。ただし、ノズル63及びスクレイパー61のプラテンに対する位置関係は逆であってもよい。
また、引き抜きがなされるタイバー(上部タイバー15U)についてのみ、スクレイパー61及びノズル63を示したが、引き抜きがなされないタイバー(下部タイバー15D)についても、スクレイパー61及びノズル63が設けられてもよい。
(ダイカストマシンの動作)
以上の構成を有するダイカストマシン1の動作を説明する。
(成形サイクルにおける動作)
まず、ダイカストマシン1の成形サイクルにおける動作を説明する。
成形サイクルにおいては、固定側係合装置23によってタイバー15と固定プラテン11とは係合されている。この状態は、複数の成形サイクルに亘って維持される。
成形サイクル開始時においては、例えば、図1に示すように、ダイカストマシン1は型開状態とされている。すなわち、移動プラテン13は、型開位置に位置しており、固定金型103と移動金型105とは離反している。移動側係合装置25のハーフナットは開かれており、型締ピストン21とタイバー15とは互いに係合されていない。
図1の型開状態から、制御装置7は、移動プラテン13を型閉方向へ移動させるように、不図示の型開閉駆動装置へ制御信号を出力する。移動プラテン13が型閉方向へ移動すると、図2に示すように、移動金型105が固定金型103に接し(又は近接し)、型閉状態とされる。
次に、制御装置7は、移動側係合装置25のハーフナットを閉じるように、移動側係合装置25に制御信号を出力する。これにより、型締ピストン21とタイバー15とは互いに係合される。
なお、移動側係合装置25のハーフナット及び移動側被係合部15bは、これらが噛み合うように(一方の突条が他方の溝に嵌るように)、これらの溝の1ピッチ未満の範囲で、型開閉方向における位置調整(噛み合い調整)がなされる。噛み合い調整は、例えば、移動金型105が固定金型103に接したときに噛み合い可能となるように、成形サイクル前にタイバー15の位置を調整することによりなされてもよいし、型閉じのときに移動プラテン13の位置を調整することによりなされてもよいし、型閉じのときに型締ピストン21の位置(ひいては移動側係合装置25のハーフナットの位置)を調整することによりなされてもよい。
型締ピストン21とタイバー15とが係合されると、制御装置7は、型締ピストン21が固定プラテン11とは反対側へ移動するように、型締シリンダ17に対する作動液の給排を制御する不図示の液圧回路に制御信号を出力する。これにより、タイバー15が引っ張られて伸長し、その伸長量に応じた型締力が生じる。
型締力が所定値に達して型締めが完了すると、制御装置7は、金型101内に溶湯を供給するように射出装置5を制御する。金型101内に射出された溶湯は、凝固してダイカスト品になる。
溶湯が凝固してダイカスト品が形成されると、制御装置7は、タイバー15に加えていた張力を解除して型締力を無くすように、型締シリンダ17の圧抜きを行う。次に、制御装置7は、移動側係合装置25のハーフナットを開き、型締ピストン21とタイバー15との係合を解除する。次に、制御装置7は、移動プラテン13を図1に示す型開位置へ移動させる。その後、金型101の洗浄や離型剤の塗布等の次のサイクルの準備が行われる。
(金型交換時における動作)
次に、ダイカストマシン1の金型交換時における動作について説明する。
金型交換の開始時においては、例えば、ダイカストマシン1は、成形サイクルが終了した状態、すなわち、図1の型開状態とされている。そして、制御装置7は、例えば、作業者の入力操作等に応じて、上記の成形サイクルにおける型閉じ(図2)と同様に型接触するまで型閉じを行う。
型接触後は、例えば、作業者等により、固定金型103と移動金型105とを互いに組み合わせた状態で搬送する準備がなされる。例えば、固定金型103と移動金型105とを共にクレーンで吊るとともに、固定金型103と固定プラテン11との固定及び移動金型105と移動プラテン13との固定が解除される。なお、この時点では、固定金型103は、固定プラテン11に取り付けられたままでもよい。
固定金型103及び移動金型105をクレーンで吊る等の作業が終了すると、制御装置7は、作業者の入力操作等に応じて、移動プラテン13を型開位置まで移動させる。
次に、制御装置7は、自動的に又は作業者の入力操作等に応じて、上部タイバー15Uと固定プラテン11との係合を解除するように固定側係合装置23を制御する。
次に、制御装置7は、自動的に又は作業者の入力操作等に応じて、上部タイバー15Uを固定プラテン11の背後側へ移動させるように引抜駆動装置27の電動機31を制御する。これにより、図3に示すように、上部タイバー15Uが引き抜かれる。
この際、図3に示すように、下部タイバー15Dは、固定側係合装置23によって固定プラテン11に係合され、移動側係合装置25によって移動プラテン13に係合されていてもよい。この場合、上部タイバー15Uの引き抜きに際して移動プラテン13の移動が確実に規制される。ただし、下部タイバー15Dは、固定プラテン11及び/又は移動プラテン13に係合されていない状態であってもよい。
その後、金型101は、クレーンなどにより上方や側方へ搬出される。そして、新たな金型101がクレーンなどにより固定プラテン11と移動プラテン13との間に搬入される。
新たな金型101の搬入後、制御装置7は、例えば、タイバー引き抜き時とは逆の動作を行う。例えば、制御装置7は、作業者の入力操作等に応じて、上部タイバー15Uを固定プラテン11の前面側へ移動させるように(上部タイバー15Uの挿入を行うように)引抜駆動装置27を制御する。次に、制御装置7は、自動的に又は作業者の入力操作等に応じて、上部タイバー15Uと固定プラテン11とを係合させるように固定側係合装置23を制御する。次に、作業者により固定金型103の固定プラテン11への固定及び移動金型105の移動プラテン13への固定がなされる。その後、制御装置7は、作業者の入力操作等に応じて、移動プラテン13を型開位置へ移動させる。
上部タイバー15Uの引き抜き及び/又は挿入の際には、制御装置7は、上部タイバー15Uの引き抜き及び/又は挿入に係る異常の有無を判定し、異常があると判定したときは、所定の警告表示を表示装置49に表示させる。
具体的には、例えば、制御装置7は、電動機31の消費電力(すなわち負荷)を監視して、消費電力が所定の閾値を超えたときは、異常が生じたと判定する。また、例えば、制御装置7は、所定の時間内に引き抜き又は挿入が完了したか否か判定し、予め定められた時間内に引き抜き又は挿入が完了していない場合は、異常が生じたと判定する。
なお、引き抜き又は挿入が完了したか否かは、例えば、電動機31の不図示のエンコーダの検出値、又は、可動部37の位置を検出する不図示の位置センサの検出値に基づいて判断されてよい。所定の閾値及び所定の時間は、ダイカストマシン1の製造者によって設定されてもよいし、作業者によって入力装置47を介して設定されてもよい。
表示装置49に表示される警告表示は、適宜な画像(文字含む)とされてよい。また、表示装置49における警告表示に加えて又は代えて、所定の音響の出力、及び/又は、所定のランプの点灯状態の変更がなされてもよい。
以上のとおり、本実施形態では、型締装置3は、固定プラテン11と、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動可能な移動プラテン13と、固定プラテン11及び移動プラテン13に架け渡されるタイバー15と、固定プラテン11及び移動プラテン13の一方のプラテン(本実施形態では固定プラテン11)の背後側へ上部タイバー15Uを移動させる駆動力を上部タイバー15Uに付与する引抜駆動装置27と、引抜駆動装置27とは別に設けられ、上部タイバー15Uよりも上方にて一方のプラテン(固定プラテン11)の背後側へ延びる吊りビーム39と、型開閉方向に移動可能に吊りビーム39に吊り下げられるとともに、一方のプラテン(固定プラテン11)の背後側にて上部タイバー15Uを吊り下げる可動部37と、を有している。
従って、吊りビーム39によって、上部タイバー15Uの引き抜き方向側の荷重が支持される。その結果、例えば、上部タイバー15Uのその自重による撓み、上部タイバー15Uと固定プラテン11とのガタに起因する上部タイバー15Uの傾斜、上部タイバー15Uから固定プラテン11に作用するモーメント、及び/又は、上部タイバー15Uと固定プラテン11との間の摩擦力等が低減される。ひいては、上部タイバー15Uの引き抜き及び挿入が円滑に行われる。さらに、吊りビーム39は、引抜駆動装置27とは別に設けられていることから、吊りビーム39が上部タイバー15Uの荷重を支持することにより、引抜駆動装置27に加えられる上部タイバー15Uの荷重は低減され又は無くなる。その結果、例えば、引抜駆動装置27の動作が円滑化される。また、例えば、引抜駆動装置27を小型化する、及び/又は、その強度を下げることができる。具体的には、ねじ軸35及びナット53の強度を下げることができる。
また、上部タイバー15Uは、固定プラテン11の背後に引き抜かれ、吊りビーム39は、固定プラテン11に固定されている。
従って、例えば、吊りビーム39は、簡便に固定的に設けられる。また、例えば、固定プラテン11に設けられることから、移動プラテン13に設けられる態様(この態様も本願発明に含まれる)のように、成形サイクルにおける型開閉において吊りビーム39が移動プラテン13の慣性力を増加させることもない。また、例えば、固定プラテン11に設けた吊りビーム39を移動プラテン13の背後に延ばし、上部タイバー15Uを移動プラテン13の背後に引き抜く態様(この態様も本願発明に含まれる)に比較して、吊りビーム39は短くてよい。さらに、例えば、固定プラテン11の背後は、射出シリンダ45等が配置される領域であり、射出シリンダ45等の上方に吊りビーム39を配置できることから、ダイカストマシン1全体の小型化が図られる。
また、本実施形態では、引抜駆動装置27は、可動部37の、上下方向において吊りビーム39と上部タイバー15Uとの間となる位置に対して、型開閉方向の駆動力を付与する。
従って、例えば、引抜駆動装置27からの駆動力に対して、慣性力乃至は摩擦力等に起因する上部タイバー15U及び吊りビーム39からの抵抗が上下方向の両側に生じる。その結果、例えば、不要なモーメントが生じることが抑制される。ひいては、上部タイバー15Uの引き抜き及び/又は挿入が円滑に行われる。さらに、引抜駆動装置27の構成によっては、吊りビーム39は、引抜駆動装置27の部材の荷重(例えばナット53)を支持することにも寄与し、引抜駆動装置27の負担が軽減される。
また、本実施形態では、引抜駆動装置27は、吊りビーム39と平行なねじ軸35と、ねじ軸35に螺合された雌ねじ部53aを有する可動部37と、ねじ軸35を軸回りに回転させる駆動力を生じる電動機31と、を有している。
従って、例えば、引抜駆動装置が液圧シリンダを含んで構成される態様(この態様も本願発明に含まれる)に比較して、上部タイバー15Uの速度制御(加減速)を適宜に行うことができる。例えば、上部タイバー15Uの駆動開始後、所定の速度まで徐々に加速し、その後、上部タイバー15Uが所定の位置に到達したら、前記所定の速度から減速することによって、引き抜き及び/又は挿入に係る時間を短縮しつつ、上部タイバー15Uに衝撃が加えられることなどを抑制することができる。また、例えば、既に述べたように、吊りビーム39によってねじ軸35の負担が軽減される。
また、本実施形態では、可動部37は、上部タイバー15Uに連結された本体部材59と、吊りビーム39の上面を型開閉方向へ転がり可能に本体部材59に軸支された回転部材57と、を有している。
従って、例えば、吊りビーム39の上面に対して可動部37の下面を摺動させる態様(この態様も本願発明に含まれる)に比較して、可動部37を吊りビーム39に対して型開閉方向へ移動させるときの抵抗が小さくなる。その結果、例えば、円滑に上部タイバー15Uの引き抜き及び/又は挿入を行うことができ、また、引抜駆動装置27の負担も軽減される。
また、本実施形態では、可動部37は、上部タイバー15Uの水平方向に対する傾斜を許容可能に上部タイバー15Uに連結されている。
従って、例えば、可動部37の破損のおそれが低減される。具体的には、以下のとおりである。上部タイバー15Uは、引き抜かれていくと、固定プラテン11(及び移動プラテン13)に支持される位置が変化する。これに伴い、上部タイバー15Uの撓みの状態等は変化する。上部タイバー15Uの先端が吊りビーム39によって吊られていないと仮定した場合においては、撓みの状態等の変化に伴って、上部タイバー15Uの先端の水平方向に対する傾斜も変化する。仮に、可動部37と吊りビーム39とがねじ等により堅固に固定されていると(この態様も本願発明に含まれる)、前記の傾斜の変化を可動部37によって規制することになるから、可動部37に局部的に(例えば前記のねじ等に)大きな力が加わるおそれがある。しかし、上部タイバー15Uの水平方向に対する傾斜をある程度許容可能に可動部37と上部タイバー15Uとが連結されていることにより、局部的に作用する大きな力が緩和される。ひいては、可動部37の破損のおそれが低減される。
また、本実施形態では、可動部37は、上部タイバー15Uの軸回りの回転を許容可能に上部タイバー15Uに連結されている。
従って、例えば、可動部37の破損のおそれが低減される。具体的には、以下のとおりである。型締シリンダ17によってタイバー15を引っ張り、型締力を生じさせる際には、タイバー15に軸回りのモーメントが加えられる。この原因は、必ずしも明らかではないが、比較的大きな力が加えられることもある。従って、仮に、可動部37と吊りビーム39とがねじ等により堅固に固定されていると(この態様も本願発明に含まれる)、前記のモーメントが可動部37に加えられることになり、可動部37に局部的に(例えば前記のねじ等に)大きな力が加わるおそれがある。しかし、上部タイバー15Uの軸回りの回転をある程度許容可能に可動部37と上部タイバー15Uとが連結されていることにより、局部的に作用する大きな力が緩和される。ひいては、可動部37の破損のおそれが低減される。
また、本実施形態では、型締装置3は、他方のプラテン(移動プラテン13)に設けられ、上部タイバー15Uの移動側被係合部15bに噛み合い可能な分割ナット装置(移動側係合装置25)と、移動側被係合部15bに当接可能なスクレイパー61とを有している。
従って、既に述べたように、移動側被係合部15bの溝から異物を除去することができる。その結果、例えば、移動側被係合部15bと移動側係合装置25との噛み合いが好適になされる。異物は、プラテンに挿入するときなどに付着する。従って、移動側被係合部15bに対する異物の付着を抑制する観点からは、上部タイバー15Uを固定プラテン11の背後側へ引き抜くとき、移動側被係合部15bは、固定プラテン11に挿入されない(この態様も本願発明に含まれる)ことが好ましい。その一方で、引き抜き完了状態で移動側被係合部15bが固定プラテン11の前面側に位置していると、金型交換等の作業の妨げとなる。しかし、本実施形態では、スクレイパー61によって移動側被係合部15bの異物が除去されることから、移動側被係合部15bが固定プラテン11に挿入されるまで上部タイバー15Uを引き抜いても、移動側被係合部15bと移動側係合装置25との噛み合いが好適になされる。当該効果は、特に、本実施形態にように、分割ナット装置(移動側被係合部15b)が、成形サイクルの型開閉において、プラテン(移動プラテン13)に対して移動する態様である場合に有効である。このような場合、既に述べたように、移動側被係合部15bは、型厚によって移動側係合装置25との噛み合い位置が変化することから、型開閉方向において比較的長く形成されているからである。
また、本実施形態では、型締装置3は、他方のプラテン(移動プラテン13)に設けられ、上部タイバー15Uの移動側被係合部15bに噛み合い可能な分割ナット装置(移動側係合装置25)と、移動側被係合部15bに向けて気体を噴射可能なノズル63とを有している。
従って、既に述べたように、移動側被係合部15bの溝から異物を除去することができる。その結果、例えば、スクレイパー61と同様の理由により、上部タイバー15Uの引き抜き、及び、移動側被係合部15bの噛み合いが好適になされる。
また、本実施形態では、型締装置3は、表示装置49と、引抜駆動装置27及び表示装置49を制御する制御装置7と、を有している。制御装置7は、所定時間内に上部タイバー15Uの引き抜き若しくは挿入が終了しないとき、及び、上部タイバー15Uの引き抜き若しくは挿入時に引抜駆動装置27の負荷が所定の閾値を超えたときの少なくとも一方において、所定の異常表示を行うように表示装置49を制御する。
従って、例えば、上部タイバー15Uと固定プラテン11との摺動部においてかじりが生じるなどの異常を作業者に知らせることができる。これにより、例えば、上部タイバー15U及び/又は固定プラテン11の摺動部の異常を成形サイクル開始前に検知し、成形サイクルの動作向上に役立てることができる。
<第2実施形態>
図7は、本発明の第2実施形態に係る引抜駆動装置227及び支持機構227の構成を示す、図4(a)に相当する断面図である。
第1実施形態では、2本の上部タイバー15Uのそれぞれについて、引抜駆動装置27及び支持機構29が設けられた。これに対して、第2実施形態では、2本の上部タイバー15Uに対して、一の引抜駆動装置227及び支持機構227が設けられている。具体的には、以下のとおりである。
引抜駆動装置227は、例えば、第1実施形態の引抜駆動装置27と同様に、電動機31(図7では不図示)と、電動機31によって軸回りに回転されるねじ軸35と、ねじ軸35に螺合するナット53(可動部237)とを有している。ただし、引抜駆動装置227は、既に述べたように、2本の上部タイバー15Uに対して共通に設けられている。ねじ軸35は、例えば、左右方向において、例えば、2本の上部タイバー15Uの中間位置に位置している。
支持機構229は、例えば、第1実施形態の支持機構29と同様に、吊りビーム39と、吊りビーム39に吊り下げられるとともに上部タイバー15Uを吊り下げる可動部237とを有している。ただし、支持機構227は、既に述べたように、2本の上部タイバー15Uに対して共通に設けられている。吊りビーム39は、例えば、型開閉方向に対する左右方向において、例えば、2本の上部タイバー15Uの中間位置に位置している。
可動部237は、例えば、第1実施形態の可動部37と同様に、上部タイバー15Uに連結される連結部材251と、ねじ軸35に螺合されるナット53と、これらを吊りビーム39に対して吊り下げる垂下部材255と、垂下部材255と吊りビーム39との間に介在する回転部材57とを有している。
ただし、可動部237は、2本の上部タイバー15Uに対して連結可能となっている。具体的には、例えば、可動部237は、2本の上部タイバー15Uに連結可能な2つの連結部材251と、この2つの連結部材251と垂下部材255とを連結する横架部材256とを有している。可動部237が2本の上部タイバー15Uに対して連結可能であることにより、1本の吊りビーム39によって2本の上部タイバー15Uを吊り下げ可能であるとともに、1つの引抜駆動装置227によって2本の上部タイバー15Uを型開閉方向に移動可能となっている。
また、可動部237は、2本の上部タイバー15Uを同時に引き抜き及び/又は挿入可能なだけでなく、各上部タイバー15Uを選択的に引き抜き及び/又は挿入可能に構成されている。具体的には、以下のとおりである。
連結部材251は、例えば、上部タイバー15Uの被連結部15cの小径部分を挿入可能な切り欠き部251hを有する部材とされている。従って、図7において、左右の連結部材251の状態を互いに異ならせて示しているように、連結部材251は、被連結部15cの小径部分を切り欠き部251hに出し入れ可能である。すなわち、連結部材251は、被連結部15cに連結する位置と、連結が解除された位置との間で移動可能である。
切り欠き部251hは、例えば、水平方向に開放されている。連結部材251は、例えば、横架部材256に設けられた不図示のレールに吊り下げられることにより、左右方向に移動可能に支持されている。連結部材251は、被連結部15cと連結された位置では、被連結部15cに対して型開閉方向に係合するとともに、被連結部15cの荷重を支持する。
従って、2つの連結部材251のうち、いずれか一方を選択的に上部タイバー15Uに連結させることにより、2本の上部タイバー15Uの一方を選択的に引き抜き及び/又は挿入することができる。また、2つの連結部材251の双方を上部タイバー15Uに連結させることにより、2本の上部タイバー15Uを同時に引き抜き及び/又は挿入することができる。
2つの連結部材251の連結位置と連結が解除される位置との間の移動は、適宜な駆動手段によって実現されてよく、また、人力で行われてもよい。図7では、連結用液圧シリンダ252によって連結部材251が駆動される場合を例示している。
なお、2つの連結部材251及び2つの連結用液圧シリンダ252は、2本の上部タイバー15Uの一方、他方及び双方に対して選択的に連結可能な連結装置250を構成している。
以上のとおり、本実施形態の型締装置は、第1実施形態の型締装置と同様に、引抜駆動装置227とは別に設けられ、上部タイバー15Uよりも上方にて一方のプラテン(固定プラテン11)の背後側へ延びる吊りビーム39と、型開閉方向に移動可能に吊りビーム39に吊り下げられるとともに、一方のプラテン(固定プラテン11)の背後側にて上部タイバー15Uを吊り下げる可動部237と、を有している。
従って、第1実施形態と同様の効果が奏される。例えば、吊りビーム39によって上部タイバー15Uの荷重が支持されることにより、上部タイバー15Uの撓み、上部タイバー15Uの傾斜、上部タイバー15Uから固定プラテン11に作用するモーメント、及び/又は、上部タイバー15Uと固定プラテン11との間の摩擦力等が低減され、上部タイバー15Uの引き抜き及び挿入が円滑に行われる。また、例えば、引抜駆動装置27の動作が円滑化され、荷重支持の負担も低減される。
また、本実施形態では、型締装置は、並列な2本の上部タイバー15Uを有し、引抜駆動装置227は、1本のみのねじ軸35に螺合された1つのみの可動部237は、2本の上部タイバー15Uの一方、他方及び双方に対して選択的に連結可能な連結装置250を有している。
従って、引抜駆動装置27の小型化を図ることができる。また、ダイカストマシン1の作業者によっては、上部タイバー15Uを1本ずつ引き抜く作業手順を行う場合があり、このような場合にも対応することができる。
なお、本実施形態とは異なり、1本のみのねじ軸35に螺合された1つのみの可動部は、2本の上部タイバー15Uに対して常に連結された状態であってもよい。すなわち、1つのみの引抜駆動装置及び支持機構は、2つの上部タイバー15Uを同時にのみ引き抜き及び/又は挿入可能であってもよい。
<第3実施形態>
図8は、第3実施形態に係るダイカストマシン301(型締装置303)の要部構成を型開状態で示す模式図である。
型締装置303は、型締シリンダ17が移動プラテン313ではなく固定プラテン311に設けられている点が第1実施形態と相違する。また、当該相違に伴って、移動側係合装置25は、移動プラテン313に対して型開閉方向に係合しており、固定側係合装置23は、型締ピストン21に対して型開閉方向に係合している。その他は、型締装置303の構成は、第1実施形態の型締装置3の構成と同様であり、また、その動作も、概略、型締装置3の動作と同様である。
なお、以上の実施形態において、ダイカストマシン1及び301は成形装置の一例であり、固定プラテン11は一方のプラテンの一例であり、移動プラテン13は他方のプラテンの一例である。また、吊りビーム39は吊り梁の一例であり、吊り部材の一例である。
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
成形機(成形装置)は、ダイカストマシンに限定されない。例えば、成形機は、他の金属成形機であってもよいし、射出成形機であってもよいし、木粉に熱可塑性樹脂等を混合させた材料を成形する成形機であってもよい。また、成形機は、横射出のものに限定されず、例えば、縦射出のものであってもよい。
型締装置(開閉装置)の基本構造は、実施形態に例示したものに限定されない。例えば、型開閉、型締め及び射出のいずれか又は全ては適宜に電動化されてよい。また、例えば、成形サイクルにおいて、タイバーは、移動プラテンに対して固定的とされ、型開閉において固定プラテンに対して相対移動してもよい。また、例えば、複数の成形サイクルに亘ってタイバーが固定されるプラテンと、タイバー引き抜きにおいてタイバーが背後に移動されるプラテンとは互いに別のプラテンであってもよい。これらのようなタイバーとプラテンとの関係、及び、型締シリンダとプラテンとの関係の組み合わせも適宜に変更されてよい。また、例えば、成形サイクルの型開状態において、タイバーは、他方のプラテン(実施形態では移動プラテン13)から引き抜かれていてもよい。
第1実施形態では、タイバー毎に引抜駆動装置及び吊りビームが設けられ、第2実施形態では、複数(2本)のタイバーに対して一の引抜駆動装置及び一の吊りビームが設けられた。しかし、タイバー毎に吊りビームが設けられ、複数のタイバーに対して一の引抜駆動装置が設けられたり、複数のタイバーに対して一の吊りビームが設けられ、タイバー毎に引抜駆動装置が設けられたりしてもよい。また、引き抜かれるタイバーの数は、上部の2本に限定されず、例えば、全てのタイバーが引き抜かれてもよい。実施形態では、引抜駆動装置と支持機構とで可動部を共用したが、共用されないようにしてもよい。
引抜駆動装置は、電動式のものに限定されず、例えば、液圧式のものであってもよい。例えば、引抜駆動装置は、型開閉方向に平行に配置された引抜シリンダを含んで構成されていてもよい。また、引抜駆動装置が電動式である場合、引抜駆動装置は、ねじ機構を含んで構成されるものに限定されない。例えば、引抜駆動装置は、チェーン等の巻き掛け機構を含んで構成されるものであってもよいし、ラック・ピニオン機構を含んで構成されるものであってもよいし、リニアモータを含んで構成されるものであってもよい。
第2実施形態に示されているように、引抜駆動装置及び/又は支持機構は、常にタイバーに連結されていなくてもよい。引き抜きの必要が生じたときだけ、タイバーに連結されてもよい。連結及びその解除は、第2実施形態の説明でも述べたように、駆動手段によってなされてもよいし、人力によってなされてもよい。また、連結は、切り欠き部が形成された連結部材の移動によってなされるものに限定されず、例えば、分割ナット装置によりなされたり、ねじによりなされたり、磁力による吸着によりなされたりするものであってもよい。
本願の記載からは、吊りビーム及び引抜駆動装置(タイバー引き抜き)を要件としない、以下の発明を抽出可能である。
(別発明1)
固定プラテンと、
前記固定プラテンに対して型開閉方向に移動可能な移動プラテンと、
前記固定プラテン及び前記移動プラテンに架け渡されるタイバーと、
前記固定プラテン及び前記移動プラテンの一方のプラテンに設けられ、前記タイバーに設けられた被係合部に噛み合い可能な分割ナット装置と、
前記被係合部に当接可能なスクレイパーと、
を有する型締装置。
(別発明2)
固定プラテンと、
前記固定プラテンに対して型開閉方向に移動可能な移動プラテンと、
前記固定プラテン及び前記移動プラテンに架け渡されるタイバーと、
前記固定プラテン及び前記移動プラテンの一方のプラテンに設けられ、前記タイバーに設けられた被係合部に噛み合い可能な分割ナット装置と、
前記被係合部に向けて気体を噴射可能なノズルと、
を有する型締装置。
なお、上記の別発明において、タイバーが引き抜かれる場合、「一方のプラテン」は、タイバーが背後に引き抜かれるプラテンであってもよいし、タイバーが前方に引き抜かれるプラテンであってもよい。