JPH0228277Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は等速ジヨイントのブーツに関し、ブー
ツ内の負圧発生防止構造に関する。

［従来の技術］ FF車の独立懸架駆動軸等の連結には、連結角
度が大きく変化しても伝達される回転速度に偏り
が生じることのない等速ジヨイントが使用され
る。この等速ジヨイントの連結部は、通常、可撓
性のある筒状のブーツで液密的に覆つて、連結部
内のグリースを保持するとともに泥水等の侵入を
防止している。

上記ブーツは可撓性に加えて、耐久性、耐グリ
ース性、及び耐熱性に優れたゴム材で成形される
が、現在一般的に使用されているゴム材では比較
的圧力の高い気体はこれを透過するため、密封す
るのは困難である。一方、ブーツ内には、回転時
の過度の膨大変形を防止する為に、その容積の６
割程度しかグリースは封入されておらず、残りは
空気である。

［考案が解決しようとする問題点］ 上記ブーツにおいて、駆動軸回転時の摩擦熱や
エンジンの輻射熱でブーツの温度が上昇すると、
ブーツ内の空気が膨脹して気圧が増大し、上記ゴ
ム材よりなるブーツ壁から空気が漏出することが
ある。エンジン停止後はブーツ温度が低下してブ
ーツ内空気が収縮し、かつ漏出した空気は戻りに
くいからブーツ内は負圧となり、ブーツ周壁が内
方へ湾曲する。

そこで、従来は、ブーツ周壁がある程度内方へ
湾曲しても、これが駆動軸と干渉して振動損傷す
ることがないようにブーツを大型とする必要があ
つた。

本考案はこの問題点を解決するもので、ブーツ
内の負圧の発生を防止してコンパクトな形状とな
すことが可能な等速ジヨイントのブーツを提供す
ることを目的とする。

［問題点を解決する為の手段］ 本考案の構成を第１図及び第２図で説明する
と、一対の駆動軸３，４を連結する等速ジヨイン
ト２の連結部はブーツ１で覆つてあり、該ブーツ
１は伸縮自在の筒体の両端開口１１，１２が上記
駆動軸３，４の接続端部外周にそれぞれ嵌着して
ある。

上記ブーツ１の少なくとも一方の開口１１内周
及びこれが密接する駆動軸３外周のいずれかには
ブーツ１内部を外気に連通せしめる空気導入路１
３が設けてある。上記駆動軸３外周には、上記空
気導入路１３内へ突出して、突出端と上記ブーツ
１の開口内周間に上記空気導入路１３に連通する
空気流通間隙１６を形成する突壁３１が設けてあ
る。

上記開口内周には上記突壁３１の内外の側面に
沿つて第１のリツプ１４と第２のリツプ１５が延
出せしめて、上記第１のリツプ１４を上記突壁３
１の内側面３１ａに沿いこれと間隙を成して配設
するとともに、上記第２のリツプ１５を上記突壁
３１の外側面３１ｂに密接せしめて配設してあ
る。

［作用、効果］ 上記ブーツにおいて、駆動軸の回転が停止して
ブーツ温度が低下すると、ブーツ内空気が収縮し
て負圧が発生する。この負圧によりブーツが収縮
すると上記第２のリツプが上記突壁の外側面より
離れて上記空気流通間隙が開放される。これによ
り、該流通間隙及び空気導入路を経て外気がブー
ツ内に導入され、ブーツ内の負圧が解消される。

駆動軸回転時にはブーツもこれと一体に回転し
内封グリースの作用により上記第１のリツプが上
記突壁の内側面に当接して上記空気流通間隙を閉
鎖する。これにより、グリースの散逸は防止され
る。この時、空気導入路には泥水等が侵入するこ
とがあるが、突壁の外側面に密接する上記第２の
リツプにより空気流通間隙への侵入は阻止され
る。

これにより、上記空気導入時に泥水等は突壁に
より遮られ、外気とともにブーツ内に侵入するこ
とはない。

このようにして負圧の発生が防止される結果、
ブーツ周壁の内方への湾曲が避けられ、ブーツを
小型化することができる。

［実施例］ 第２図には等速ジヨイント２で連結された一対
の駆動軸３，４を示す。等速ジヨイント２は駆動
軸３にセレーシヨン嵌合されたインナリング２１
と、駆動軸４に一体に形成されたアウタリング２
２とを有し、これらリング２１，２２の周方向複
数個所に設けた溝内に配したボール２３により、
上記駆動軸３，４は連結角度可変に連結されて等
速回転する。なお、図中、２４はリテーナであ
る。

等速ジヨイント２の連結部はブーツ１で覆つて
ある。ブーツ１は薄肉ゴム材を蛇腹状異径筒体に
成形してなり、大径開口１２を上記アウタリング
２２の外周に嵌着し、小径開口１１は駆動軸３外
周の平行突条３１，３２間にリングクランプ５に
より嵌着してある。

上記小径開口１１には、第１図に示す如く、軸
外周に密接する内周面の周方向複数個所に空気導
入路１３が形成してある。

上記空気導入路１３は一端が外気に通じ、他端
は上記突条３１の外側面３１ｂに密接するリツプ
１５により遮断されている。上記リツプ１５はブ
ーツ１の内周面より上記外側面３１ｂ上に延出し
ている。

上記突条３１の外周面に対向するブーツ開口１
１の内周面には、上記空気導入路１３と対応する
位置に凹所を形成して空気流通間隙１６としてあ
る。該流通間隙１６を設けた内周面の内端からは
リツプ１４が上記突条３１の内側面３１ａに沿つ
てこれと間隙をなして延出せしめてある。

駆動軸３，４が回転している場合には、内封グ
リースの作用で上記リツプ１４は突条３１の内側
面３１ａに押付けられ、上記空気流通間隙１６を
閉鎖する。これにより、グリースの散逸は防止さ
れる。この時、上記空気導入路１３に侵入する泥
水等は、突条３１に密接した上記リツプ１５によ
り空気流通間隙１６への侵入を阻止される。

駆動軸３，４停止時には上記リツプ１４は突条
の内側面３１ａより離れて空気流通間隙１６を開
放する。この状態で、温度低下によりブーツ内空
気が収縮して負圧を生じるとブーツ１は収縮す
る。すなわち、ブーツ１内の大径開口１２に近い
側は気体の収縮容積が大きいため、ブーツ１は全
体として第２図の鎖線で示す如く大径側かつ内方
へ移動し（図の矢印イ，ロ）、この結果、ブーツ
の小径開口１１部は第２図および第１図の矢印ハ
で示す如く斜め外方へ変形移動し、リツプ１５が
突条３１の外側面３１ｂより離れる（図中鎖線）。
かくして、空気導入路１３及び空気流通間隙１６
を経て外気がブーツ１内に導入され、負圧の発生
が防止される。この時、上記空気導入路１３中に
侵入している泥水等は突条３１により内方のブー
ツ内への侵入を防止される。

なお、上記空気導入路１３は駆動軸３の外周に
形成しても良く、さらにこれをブーツ１の大径開
口１２側に設けることもできる。

【図面の簡単な説明】

第１図はブーツの要部断面図で、第２図のＡ部
拡大図、第２図はブーツを設けた等速ジヨイント
の全体断面図である。 １……ブーツ、１１，１２……開口、１３……
空気導入路、１４……第１のリツプ、１５……第
２のリツプ、１６……空気流通間隙、２……等速
ジヨイント、２１……インナリング、２２……ア
ウタリング、２３……ボール、３，４……駆動
軸、３１……突条（突壁）。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 一対の駆動軸を連結する等速ジヨイントの連結
   部を覆い、伸縮自在の筒体の両端開口を上記各駆
   動軸の接続端部外周にそれぞれ嵌着した等速ジヨ
   イントのブーツにおいて、上記ブーツの少なくと
   も一方の開口内周及びこれが密接する駆動軸外周
   のいずれかに、ブーツ内部を外気に連通せしめる
   空気導入路を設けるとともに、上記駆動軸外周に
   は、上記空気導入路内へ突出して突出端と上記ブ
   ーツの開口内周間に上記空気導入路と連通する空
   気流通間隙を形成する突壁を設け、一方、上記開
   口内周には上記突壁の内外の側面に沿つて第１の
   リツプと第２のリツプを延出せしめて、上記第１
   のリツプを上記突壁の内側面に沿いこれと間隙を
   成して配設するとともに、上記第２のリツプを上
   記突壁の外側面に密接せしめて配設し、上記第１
   のリツプを、ブーツ回転時に内封グリスの作用に
   より上記突壁の内側面に当接せしめて上記空気流
   通間隙を閉鎖するようになすとともに、上記第２
   のリツプを、ブーツ回転停止時の負圧発生による
   ブーツ収縮に伴ない上記突壁の外側面より離間せ
   しめて上記空気流通間隙を開放するようになした
   ことを特徴とする等速ジヨイントのブーツ。