JPH0226716B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔発明の利用分野〕 本発明は、無給油式スクロール流体機械に係
り、特に真空ポンプとして適用するのに好適な旋
回スクロール駆動部の構成を備えた無給油式スク
ロール流体機械に関するものである。

〔発明の背景〕

従来の無給油式スクロール流体機械は、特開昭
59−58188号公報に記載のように、旋回スクロー
ルと駆動要素との結合部は転り軸受で構成されて
おり、この軸受部にはグリースが封入されてい
る。

しかし、この軸受部に対してガス抜きの点につ
いては配慮されていなかつた。

このため、このスクロール流体機械を真空ポン
プとして作動させるとき、被真空対象である真空
容器に吸入口を接続し、旋回スクロールを駆動要
素に結合して旋回運動を行わせると、吸入圧力は
真空圧力となるが、これにともなつて旋回スクロ
ールの鏡板摺動部からの漏れにより、旋回スクロ
ール背面にある背圧室も真空圧となる。

無給油式スクロール流体機械を真空ポンプに用
いれば、到達真空度が10^-3Torrと非常に小さく
することができるが、従来の構成では、軸受部の
グリースなどによつて封じられた大気が除々に漏
れるため、もともと小さな体積であるにもかかわ
らず、ガスが完全に抜けきるまでには多大の時間
を必要とし、真空排気性能の観点からは不十分な
結果をもたらす原因となつていた。

また、他の問題として、軸受内から大気が漏出
する際に、潤滑用グリースも持ち出されるため、
軸受寿命に多大の損失をもたらすことになつてい
た。

他の先行技術例としては、特開昭55−160192号
公報には、旋回スクロールの鏡板部内に旋回軸受
内に連通する放射状穴が開示されているが、当該
放射状穴は、駆動軸内に設けられている給油穴か
らの潤滑油を旋回スクロール鏡板摺動面に供給す
るためのもので、当該放射状穴は給油のための穴
であり、しかもその開口部が摺動面に位置してい
る。

このようなスクロール流体機械を真空ポンプと
して運転すると、モータ室内のガスも完全に抜か
なければ、到達真空度が高く得られないという問
題があつた。

また、前記開口部が、固定スクロールの鏡板部
により閉塞されている構成のため、ガス抜きの効
果が期待できないという問題が生じる。

しかし、ここに示した前記二つの公報には、ス
クロール流体機械を真空運転するということは記
載されておらず、組立時に軸受部のグリースなど
で封じこめられたガスを真空ポンプ運転の起動と
ともに抜き取るという点については全く配慮され
ていなかつた。すなわち、前記先行技術は、潤滑
油を摺動部分へ強制給油するための方策であるた
め、その無給油式スクロール流体機械を無給油式
真空ポンプとして機能させることは不可能に近い
ものであつた。

〔発明の目的〕

本発明は、上記の従来技術の問題点に鑑みなさ
れたもので、無給油式スクロール流体機械を真空
ポンプとして用いるものにおいて、組立時に封じ
込められた大気を、真空ポンプ作用の起動にとも
なつて速やかに排気する手段を備えた高い真空排
気性能を有する無給油式スクロール流体機械の提
供を、その目的としている。

〔発明の概要〕

本発明に係る無給油式スクロール流体機械の構
成は、それぞれ鏡板と、この鏡板に直立して渦巻
状に形成されたスクロールラツプとを備えた固定
スクロールおよび旋回スクロールを、互いに前記
スクロールラツプを内側に向けてかみ合わせ、前
記固定スクロールに吸入口および排出口を設け、
前記旋回スクロールを転り軸受を介して駆動要素
に結合して旋回運動を行わせることにより、両ス
クロールラツプによつて形成される密閉空間を逐
次減少して作動気体を圧縮させる無給油式スクロ
ール流体機械において、前記吸入口を真空容器に
接続し、前記吸入口の吸入圧力と均圧になる背圧
室を旋回スクロールの鏡板の背部に設けるととも
に、前記旋回スクロールと駆動要素との結合部に
ガス抜き手段を設けたものである。

なお、本発明を開発した考え方を付記すると、
次のとおりである。

従来、先行技術として開示されている特開昭59
−58188号公報記載の無給油式スクロール流体機
械を、真空ポンプとして作動させる場合、高い真
空排気性能を得るためには、スクロールラツプ間
のギヤツプの適正維持、ケーシングからの漏れ防
止、駆動軸からの漏れ防止などを図る必要がる。
これらの技術は、既に公知の技術の組み合せによ
つても達成することができるが、ポンプ内部の密
閉部からのガス発生の低減あるいは、吸入室等と
の同時排気という点については何も配慮されてい
なかつた。

この２点に関し、前者の密閉部からのガス発生
の低減という観点については、従来から用いられ
ている単純な密封手段では高真空下での漏出を防
止することができない。よつて、本発明では、後
者の方法、すなわち、吸入室と同等にガスの排気
を行えるよう配慮した結果、以下にのべる実施例
のように、旋回スクロールと駆動要素との結合部
に構成される密閉空間にガス抜き穴を用け、この
空間も同時に真空排気が行えるようにすること
が、高い真空排気性能を得るために非常に効果的
手段であると考えた。

また、旋回スクロールと駆動要素との結合部
は、無給油式スクロール流体機械の場合、無給油
のためにグリース潤滑としているが、このグリー
スの漏出防止を図る必要があり、その解決策とし
ても、組立時に封じ込められたガスのガス抜きを
行うことは、非常に有効な方策と考えたものであ
る。

〔発明の実施例〕

以下、本発明の各実施例を第１図ないし第６図
の各図を参照して説明する。

まず、第１図は、本発明の一実施例に係る無給
油式スクロール流体機械の縦断面図である。

第１図において、１は固定スクロールで、鏡板
１ａと、この鏡板１ａに直立してインポリユート
曲線などによつて渦巻状に形成されたスクロール
ラツプ１ｂを備えている。

２は旋回スクロールで、鏡板２ａと、この鏡板
２ａに直立してインポリユート曲線などによつて
渦巻状に形成されたスクロールラツプ２ｂを備え
ている。３はフレームで、前記固定スクロール１
は、フレーム３に固定されている。４は、フレー
ム３に設けた旋回スクロール支持部材で、前記旋
回スクロール２を支持している。

固定スクロール１と旋回スクロール２とは、互
いにそのスクロールラツプ１ｂ，２ｂを内側に向
けてかみ合わせて圧縮作動室を形成している。

固定スクロール１には前記圧縮作動室の吸入室
１２に連通する吸入口１１と排出口１３を有して
いる。

固定スクロール１を固定し、旋回フレーム２を
旋回可能に支持する前記フレーム３は、さらにケ
ーシング８に固定されており、固定フレーム１、
フレーム３およびケーシング８の３要素の間には
大気とのシールを目的としてＯリング１７などの
密封手段が設けられている。

また、前記固定スクロール１には、ピンクラン
ク６が同一円周上に複数個配置され、旋回スクロ
ール２の自転を防止できるように、旋回スクロー
ル２の鏡板２ａに連結されている。

１０は、旋回スクロール２を駆動する駆動軸で
駆動軸１０は図示ないし駆動モータに連結して旋
回スクロール２の駆動要素を構成しており、転り
軸受に係る玉軸受９ａ，９ｂを介してケーシング
８に支持されている。また、この駆動軸の軸封手
段１８がケーシング８の内側に設けられ、旋回ス
クロール２の裏面の背圧室５の密封を保つてい
る。

駆動軸１０の先端部（第１図でハツチングして
示した部分）１０ａは、駆動軸１０の軸心Ｏ−Ｏ
に対して偏心しており、その状態で転り軸受１５
を介して旋回スクロール２のボス２ｃ内に結合さ
れている。転り軸受１５は、スクロール流体機械
を無給油化するためにグリース潤滑となつてい
る。

７は、偏心軸１０ａ先端に旋回スクロール２と
駆動軸１０との結合上形成される密閉空間であ
る。

１４は、偏心軸１０ａに穿設され、一端を前記
密閉空間７に、他端を背圧室５に開口したガス抜
き手段に係るガス抜き孔である。

背圧室５は、旋回スクロール２の反ラツプ側、
すなわち鏡板２ａの背部に形成される密閉空間領
域で、この背圧室５は、フレーム３に穿設した均
圧孔１９により積極的に吸入圧力との均圧が図ら
れている。ただし、現実には、旋回スクロール２
の鏡板２ａには、旋回スクロール支持部材４があ
るものの微小すきまがあり、均圧孔１９がなくて
も背圧室５と吸入室１２との均圧を図ることがで
きる。

このような無給油式スクロール流体機械を真空
ポンプとして作動させるため、吸入口１１を被真
空対象に係る真空容器（図示せず）に接続し、排
出口１３はダクト等を介して処理槽（図示せず）
に接続するか大気に解放されている。

次に、このような構成の無給油式スクロール流
体機械の動作について説明する。

モータ等の駆動要素により駆動軸１０が回転す
ると、旋回スクロール２が自転せずに旋回運動だ
けが伝達される。

真空容器に接続する吸入口１１からガスが吸入
され、固定スクロール１、旋回スクロール２の両
スクロールラツプ１ｂ，２ｂによつて形成されて
いる密閉空間を、両スクロールラツプ１ｂ，２ｂ
の中心に向つて逐次減少し、吸入ガスを圧縮して
排出口１３から処理槽または大気に排出される。

このとき、背圧室５のガスも同時に吸入され、
吸入口１１と同じ真空圧に到達する。そして、旋
回スクロール２と駆動軸１０との結合部に形成さ
れている密閉空間７に溜つていたガスも、ガス抜
き孔１４を介して背圧室５とほとんど同時に真空
引きが行われる。

このように、スクロール流体機械の真空ポンプ
用ポンプ室として機能する各部が、ほとんど同時
に真空圧となるため、到達圧力に達するまでの時
間が短時間となり、真空排気性を高く維持するこ
とができる。

また、他の効果として、真空運転時でも軸受の
内外に差圧が生じないために、長期にわたつてグ
リースの保持が行われるので、その結果、常にグ
リースにより良好な潤滑が行われ、軸受の寿命を
格段に向上することができる。

また、グリースの流出を未然に防ぐことができ
るので、グリースの消費量の低減効果もある。

次に、本発明の他の実施例を第２図を参照して
説明する。

ここに第２図は、本発明の他の実施例に係る無
給油式スクロール流体機械の縦断面図であり、図
中、第１図と同一符号のものは同等部分であるか
ら、その説明を省略する。

第２図に示す実施例は、旋回スクロール２Ａと
駆動軸１０Ａの偏心軸部１０′ａとの結合手段が
第１図の実施例と異なつたものである。

すなわち、旋回スクロール２Ａの突出軸２ｄと
偏心軸部１０′ａの穴とが軸受１５Ａを介して結
合されている。７Ａは、この結合部に形成される
密閉空間である。

１４Ａは、この密閉空間７Ａに一端を開口し、
背圧室５Ａに他端を開口するガス抜き孔である。

１６は、旋回スクロール２Ａの自動防止手段と
なるオルダムリングである。

第２図に示す実施例によれば、先の第１図の実
施例と同様の効果が期待されるほか、ガス抜き孔
１４Ａが第１図のものにくらべて短く、加工工数
を低減できる効果がある。

次に、第３図は、本発明のさらに他の実施例に
係る無給油式スクロール流体機械の縦断面図で、
図中、第１図と同一符号のものは、第１図の実施
例と同等部分であるから、その説明を省略する。

第３図の実施例が、第１図の実施例と異なると
ころは、ガス抜き孔１４Ｂの密閉空間７に、他端
は固定スクロール１、旋回スクロール２の両スク
ロールラツプ１ｂ，２ｂによつて形成される密閉
空間２０に開口していることである。

ガス抜き孔１４Ｂが開口する密閉空間２０は、
真空排気性能の点から考慮すると、できるだけ吸
入室１２に近い個所が望ましい。

このような構成の第３図に示す実施例によれ
ば、先の第１図の実施例と同様の効果が期待され
るほか、真空ポンプ作用の停止時に軸受部１５の
封入グリースの蒸気が発生したとしても小さな作
動室内に充満するだけであり、吸入口１１や真空
容器（図示せず）に流出することなく完全に無給
油式真空ポンプとしての機能をもたせることがで
きる。

次に、第４図は、本発明のさらに実施例に係る
無給油式スクロール流体機械の縦断面図で、図
中、第１図と同一符号のものは、第１図の実施例
と同等部分であるから、その説明を省略する。

第４図の実施例が、第１図の実施例と異なると
ころは、ガス抜き孔１４Ｃの一端は密閉空間７に
他端は旋回スクロール２の鏡板外周部２ｃに開口
していることである。

第４図に示す実施例によれば、先の第１図の実
施例と同様の効果が期待されるほか、旋回スクロ
ール２と駆動軸１０との結合部に形成されている
密閉空間７のガスをもつとも効果的に排気するこ
とができる。

以上第１図ないし第４図の実施例でいずれにも
言えることは、旋回スクロール２と駆動軸１０と
の結合部、すなわち転り軸受１５部の密閉空間７
にガス抜き穴が連通する位置は、当該部の中心に
位置させることが最良の方法である。何故なら、
軸受部には潤滑のためのグリースが封入される
が、運転とともに、駆動軸１０の偏心部１０ａの
遠心力作用により密閉空間７内のグリースが転り
軸受１５内の外周部に集合せしめらるので、効果
的なガス抜き位置は、その中央となるのである。

次に本発明のさらに他の実施例のガス抜き手段
について第５図および第６図を参照して説明す
る。

第５図および第６図は、いずれも本発明の前記
各実施例における無給油式スクロール流体機械の
ガス抜き孔部の構成例を示す拡大断面図であり、
図中の符号は、先の各実施例の符号に合わせてい
る。

まず、第５図の実施例は、ガス抜き孔１４の中
にフイルターあるいは多孔質物質２２を設けたも
のである。

この構成により、組立時に誤つてグリース２１
を過封入して、ガス抜き孔１４に侵入することが
あつても、フイルター２２により捕足されるた
め、真空圧となる空間領域に漏出するのを未然に
防止できる効果がある。

次に、第６図の実施例は、ガス抜き孔１４の中
に絞り要素２３を設けたものである。

この実施例は、絞り要素２３を安価に形成する
ことにより、ガスの流路抵抗を小さくでき、グリ
ース２０の漏出防止を図ることが可能である。

なお、この場合、ガス抜き孔１４を管状に形成
し、その一部を潰して流路を絞つた構造のガス抜
き管として採用することも可能である。

〔発明の効果〕

以上述べたように、本発明によれば、無給油式
スクロール流体機械を真空ポンプとして用いるこ
とを可能にし、組立時に封じ込められた大気を、
真空ポンプ作用の起動にともなつて速やかに排気
する手段を備えた高い真空排気性能を有する無給
油式スクロール流体機械を提供することができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は、本発明の一実施例に係る無給油式ス
クロール流体機械の縦断面図、第２図は、本発明
の他の実施例に係る無給油式スクロール流体機械
の縦断面図、第３図および第４図は、いずれも本
発明のさらに他の実施例に係る無給油式スクロー
ル流体機械の縦断面図、第５図および第６図は、
いずれも本発明の前記各実施例における無給油式
スクロール流体機械のガス抜き孔部の構成例を示
す拡大断面図である。 １，１Ａ……固定スクロール、１ａ……鏡板、
１ｂ……スクロールラツプ、２，２Ａ……旋回ス
クロール、２ａ……鏡板、２ｂ……スクロールラ
ツプ、２ｃ……鏡板外周部、２ｄ……突出軸、
３，３Ａ……フレーム、４……旋回スクロール支
持部材、５，５Ａ……背圧室、６……ピンクラン
ク、７，７Ａ……密閉空間、８……ケーシング、
９，９ａ，９ｂ……玉軸受、１０，１０Ａ……駆
動軸、１０ａ，１０′ａ……偏心軸、１１……吸
入口、１２……吸入室、１３……排出口、１４，
１４Ａ，１４Ｂ，１４Ｃ……ガス抜き孔、１５，
１５Ａ……転り軸受、１６……オルダムリング、
１７……Ｏリング、１８……軸封手段、１９……
均圧孔、２０……密閉空間、２１……グリース、
２２……フイルター、２３……絞り要素。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ それぞれ鏡板と、この鏡板に直立して渦巻状
   に形成されたスクロールラツプとを備えた固定ス
   クロールおよび旋回スクロールを、互いに前記ス
   クロールラツプを内側に向けてかみ合わせ、前記
   固定スクロールに吸入口および排出口を設け、前
   記旋回スクロールを転り軸受を介して駆動要素に
   結合して旋回運動を行わせることにより、両スク
   ロールラツプによつて形成される密閉空間を逐次
   減少して作動気体を圧縮させる無給油式スクロー
   ル流体機械において、前記吸入口を真空容器に接
   続し、前記吸入口の吸入圧力と均圧になる背圧室
   を旋回スクロールの鏡板の背部に設けるととも
   に、前記旋回スクロールと駆動要素との結合部に
   ガス抜き手段を設けたことを特徴とする無給油式
   スクロール流体機械。 ２ 特許請求の範囲第１項記載のものにおいて、
   ガス抜き手段は、旋回スクロールと駆動要素との
   結合部に形成される密閉空間に一端を開口し、他
   端を真空に排気されるべき空間領域に開口するガ
   ス抜き孔である無給油式スクロール流体機械。 ３ 特許請求の範囲第２項記載のものにおいて、
   ガス抜き孔は、他端を背圧室に開口するものであ
   る無給油式スクロール流体機械。 ４ 特許請求の範囲第２項記載のものにおいて、
   ガス抜き孔は、他端を吸入室あるいは吸入通路に
   開口するものである無給油式スクロール流体機
   械。 ５ 特許請求の範囲第２項記載のものにおいて、
   ガス抜き孔は、他端を両スクロールラツプによつ
   て形成される密閉空間に開口するものである無給
   油式スクロール流体機械。 ６ 特許請求の範囲第１項ないし第５項記載のも
   ののいずれかにおいて、ガス抜き手段は、ガス抜
   き孔の中にフイルター機能を有する部材を設けた
   ものである無給油式スクロール流体機械。 ７ 特許請求の範囲第１項ないし第５項記載のも
   ののいずれかにおいて、ガス抜き手段は、ガス抜
   き孔の中に絞り要素を設けたものである無給油式
   スクロール流体機械。